第30回木星会議高松大会 


 去る平成18年9月9日(土)午後から10日(日)にかけて、高松市の生涯学習センター視聴覚室で「第30回木星会議高松大会」が開催されました。全国各地のアマチュアが参加され、今シーズンの木星を始め、木星型惑星である土星を含め惑星の近況や、惑星研究の最前線について、熱い議論が飛び交い討論が行われ、節目である30回の会議を無事終了することができました。主催は月惑星研究会、後援は、四国天文協会と本会が協力して協力しました。木星会議も回を重ね、今回は、本州・九州から離れている四国で開催することが、昨年、北海道の旭川で開催されました第29回木星会議で承認されました。交通事情が悪いこともあって、航空会社の超割が適用されます期間を利用しての開催でしたが、北海道、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、三重、滋賀、京都、大阪、兵庫、福岡そして地元香川から41名の参加がありました。 会議の写真はこちら!

<1日目>平成18年9月9日(土)
 まず、四国天文協会の小島茂美顧問(OAA)から、木星会議の高松開催を歓迎するとともに、30回もの伝統ある会議に参加できることをうれしく思っていますとの開会挨拶があり、ご自身の天文への関わりを「天界」、「天文年鑑」、「天文ガイド」、「天気と気候のち天文と気候(のち「天文と気象」から「月刊天文」と改称)」の創刊号を手に持ち、参加した皆様への感謝の意を述べられました。
引き続き、参加者からの自己紹介があり、所属している天文同好会や、どのような星を見ているのか、近況をお話しいただきました。

 続いて、「惑星観測の楽しみ」と題してパネルディスカッションを行いました。これは、平林会長(月惑星研究会)をコーディネータとして、惑星観測のベテランであります安達誠氏(月惑星研究会・OAA)と永長英夫氏(月惑星研究会・OAA)と惑星観測初心者であります地元の香西清弘氏(四国天文協会)と森下陽子氏(四国天文協会)が参加し、惑星初心者が、惑星を見る場合の疑問や心得などを惑星観測のベテランにお聞きするといった形式で行われました。初心者から、木星を例に挙げ、"木星は2本の縞と4個のガリレオ衛星の説明だけになってしまうが、初心者が見る場合の要点といったものがあればお教え願います"との質問があり、ベテランからは、20cm程度の望遠鏡を使い、皆さんに見せる前にスケッチを取り、それを見せながら説明をすれば有効ですよとの説明がありました。また、"木星の疑問点として、木星の内部はどうなっているのでしょうか"との質問には、中島先生(九州大学大学院)から、昔は木星の中心に核らしいものがあるのではないかと言われていましたが、今もって不明との回答がありました。その他、惑星を見るための望遠鏡の工夫や惑星を見て感動したこと等ベテラン観測者からお話しいただきました。


 記念講演は、九州大学中島健介先生から「木星の縞・帯や渦などの模様について」と題して、木星模様の力学について、少し難しいお話ではありましたが、数々の図や動画を使って説明していただき、丁度話題となっている大赤斑および永続白班BAの高気圧の話しも盛り込まれ、とても良い記念講演となりました。
休憩の後、引き続き堀川邦昭氏(月惑星研究会・OAA木星・土星課課長)の「STBsのジェットストリーム検出」について研究発表があり、地上観測から得たデータを元に、このようなジェットストリームの検出ができることに、参加者も驚き感心しました。

 さらに、締めくくりとして、佐藤健先生(OAA元木星・土星課課長)の、惑星観測の経験談や、火星の地名(佐伯)命名のいきさつ等、昔懐かしい上野の"かはく"で開催された、第2回木星会議の写真も見ることができました。会議参加者が、あっ若い・・・と驚嘆の声も会場から揚がり、和やかな雰囲気で第1日目の会議を終了しました。
記念撮影の後、懇親会では、蒸し暑い高松の一日であったことから、平林会長の音頭で一同ビールによる乾杯で喉を潤し、地元彗星観測者の藤川繁久氏・佐藤健先生・中島先生を囲み、瀬戸内海の海鮮料理と讃岐うどん(今回は、"ざるうどん")で盛り上がることができました。参加者の中には、今回の木星会議期間中に、4回も讃岐うどんを賞味した方がおられました。名前は伏せときます。まあ、讃岐といえば、"讃岐うどん"しか無いので止むを得ません。また、酒宴の最中、宇宙酒(高知県の清酒)が登場し、この美酒にも賞賛の声が挙がりました。さらに唐沢英行(月惑星研究会)さんから提供していただきました、DVDが当たる"くじびき"も行われ、当たった人も含め、さらに盛り上がったことは言うまでもありません。

<2日目>平成18年9月10日(日)
 2日目、朝から雨の降る天候となりましたが、参加者が早めに会場に現れ、施設の開錠を待ったのですが、御役所仕事のようで、開錠は施設利用時間の僅か5分前でした。しかも、部屋の空調は効いておらず、会議の準備作業に皆さん、汗だくだくとなってしまいました。
大急ぎで準備し、2006年木星のまとめを伊賀祐一氏(月惑星研究会・OAA)と堀川邦昭氏(月惑星研究会・OAA)との掛け合いで、今シーズン話題となった木星面の近況であるmid-SEB outbreakの発生状況や、永続白斑BAの赤化、白斑Yと白斑Zのマージなど、詳しく解説していただきました。
 その後、平林勇氏による「25cmによる2005〜06年の土星面の画像観測と題した研究発表では、自分で撮ったものを、自分で解析してほしいという内容で、ご自身が撮影された画像を使って、解析方法等の解説がされました。
続いて、三品利郎氏(月惑星研究会)が「WinJUPOSの使い方」と題して、位置測定の使いにくいソフトであるが、機能は位置測定・ドリフトチャート・展開図の作成が出きるソフトであり、氏の惑星を撮像しなくてもサイエンスできる。と言う言葉が印象に残りました。
 さらに、伊賀祐一氏(月惑星研究会・OAA)の「2006年のmid-SEB outbreak」と題した研究発表では、2005年12月日に発生したmid-SEB outbreakの解説があり、この現象により大赤斑後方の白斑群が押しやられて、前方に噴出したとの解説がありました。
続いて安達誠氏(月惑星研究会・OAA)による「単波長の木星面」の研究発表では、単波長で撮影されている人と、フィルターを一覧表にした。IRだけで見ると結構いろんな波長にわたり、これといった決まった波長は特定できていとの報告がありました。
 続いて、田部一志氏(月惑星研究会・OAA)は、木星観測超極秘計画と題した発表では、SEB disturbanceの観測を某国立天文台で実施したいという希望を計画しているとのお話がありました。また、「惑星スケッチデジタル化プロジェクトの進捗状況」と題した発表では、3、000枚のスケッチが押入れに残っているので、なんとか後世に残したいという思いで惑星スケッチのデジタル化を行っている。多くの貴重な過去の記録も残したいため、最終的にはいろんな人のものをアーカイブにしていきたい。散逸させないように始めたという発表がありました。
 最後に、筆者が「鏡面冷却による筒内気流の改善」と題して、冷却FANを使用しての鏡面後方からの排気方法による鏡面冷却を実施し、鏡面温度と鏡筒温度の差を約0.5度まで近づけることができ、少しは筒内気流が改善できたのではと発表しました。温度測定は、サーミスタセンサーを使って測定。しかし、筒内気流の改善は今後とも試みつつ、次回の発表に改善を実施したい。なお、上空の気流が悪ければ、観測をあきらめることも大事であり、家族の協力無くしては、我々の惑星観測はできないと締めくくりました。皆さん納得!!

 なお、2日目に参加されました中村幸夫氏(日食情報センター)から、村山定男先生(四国天文協会名誉会員・OAA)の貴重な60年前(1947年7月13日および1947年11月17日の木星)のスケッチを先生ご自身が、この会議のためにと取り出してくださり、中村氏にコピー委ね、そのコピーを持参していただきました。出席者の皆さんに披露され、筆者も思わず感激したことは勿論のこと、会議に参加された皆様も大赤斑や永続白斑の当時の大きさに見入ってしまいました。この場をお借りしまして、村山定男先生にご感謝申しあげます。
最後に、第30回木星会議高松大会に参加されました皆様にお礼を申しあげるとともに、ご協力いただいた皆様、後援していただきました団体に重ねてお礼を申しあげます。
来年の木星会議は、滋賀県のダイニックアストロパーク天究館で開催されます。