Jupiter Conference 2007/11/17-18 木星会議

【第31回・木星(観測者)会議の報告】 


                                    2007年11月17日(土)・18日(日)
                                    於:滋賀県犬上郡多賀町ダイニック・アストロパーク・天究館
                                    主催:月惑星研究会
                                    共催:ダイニック・アストロパーク・天究館
                                    後援:滋賀県教育委員会
                                        犬上郡多賀町教育委員会
                                        東亜天文学会

 表記の木星会議は滋賀県で行われた。アストロパーク・天究館での開催はこれで2度目になるが、アストロパーク・天究館の要請で開催されることになった。今回は、特別講演として前国立天文台台長の海部宣男先生を講師にお迎えし、地元の参加者を含め、たくさんの方々に太陽系の全容の講演をうかがった。会は盛会裏に開催された。
 31回の木星会議を開催するまでの1年間は木星に大異変が相次いだ。NTBの復活。SEB攪乱。STrZの攪乱現象、それも2箇所で同時に発生するという珍しい年になった。そのため、これらの異変についての解析に時間が必要となった。また、夜には晴夜での観望会があり、盛りだくさんの会議となった。
 後援団体(多賀町・東亜天文学会)から後援費用を頂いた。この場を借りてお礼申し上げたい。

【11月17日(土)・・・・・・・・・・第1日目】

【開会式】

主催者の挨拶(安達)


来賓の多賀町町長さんのご挨拶


天究館館長の挨拶


 

【特別講演】

テーマ 「解けた冥王星の謎と新しい太陽系の姿」
 講師 前国立天文台 台長 海部宣男先生


 9大惑星がひとつ減り、8つになった。冥王星は、かねてから軌道が他の惑星とは大きく異なり、異質なものと考えられてきたが、相次いで見つかったエッジワース・カイパーベルト天体との研究から新しい太陽系の分類が決められた。これにより、より真実に近い分類が行われ、全体がすっきりした構成となった。と、紹介された。詳しくは講演の記録をごらん頂きたい。

 この講演は、一般市民も参加された。今回の木星会議は全県に「びわこ放送」・新聞で紹介され、また、近隣の学校やコミュニティー新聞にも紹介された。そのため、講演はたくさんの観客が集まられ、太陽系の新しい姿についての勉強をされた。









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【自己紹介】

 一般市民の方々がこられる関係で、特別講演の後に自己紹介という、いつもとは違った順序で進行され、全国から参加された方々が、めいめい自己紹介および、簡単な近況報告をされた。




 

【木星の近況報告】

 堀川氏にまとめ役をお願いし、本年に起こった木星の変化についてのまとめを行った。
 今年度の木星は近年になく活動的で、下記のような観測史に残る重要な現象が立て続けに発生した。どれも14〜17年ぶりの現象で、循環気流による暗斑のUターンに至っては73年ぶり、史上2度目という貴重な観測となった。そのため、今年はいつにも増して内容の濃いセッションであった。
 ・南熱帯攪乱(2個)
 ・NTBs outbreak(北温帯流-D)
 ・SEB淡化とSEB攪乱
 ・循環気流






南熱帯攪乱




NTBs outbreak(北温帯流-D)






SEB淡化とSEB攪乱







循環気流


 

【木辺鏡観望会】

 ダイニック・アストロパーク・天究館では、当日の夕方7時半から一般観望会があった。運よく晴天に恵まれ、一般観望会に参加された方も多くあった。また、それと同時に新館の屋上にある木辺鏡(30cm)の望遠鏡での火星観望も行われた。早速、内外像をチェックしたり、火星を観望するなど、思い思い観望を楽しんだ。あいにく気流が悪く、火星面の詳細をつかむまでには行かなかった。しかし、作られた当時、一般のアマチュアでは10cmでも大きな口径だと思われていた時代に、これだけのものが存在したという実感は、さすがに参加された方は、感心されていた。





 

【懇親会】








【11月18日(日)・・・・・・・・・・第2日目】

【朝食】


 

【研究発表】


 今回の会議では、5つのテーマで発表が行われた。
「2007年南熱帯攪乱と循環気流に関する考察」  堀川 邦昭

 今年5月に発生したSEB攪乱では、SEBsの高速後退暗斑群が南熱帯攪乱(STrD-1)で反転し、STBnを前進する循環気流が観測された。循環気流による暗斑のUターン現象の観測は73年ぶり、観測史上2度目のことである。今回はUターンした暗斑の減速と合体という、過去にない特徴が見られた。これは、暗斑の緯度が低下したことが原因である。特に暗斑aは徐々に緯度が下がった結果、8月後半、再度後退運動に転じてしまった。これは大赤斑の形成モデルに大きな示唆を与えるものと考えられる。





「デジタル化プロジェクトの進捗」       田部 一志

 東京方面を中心に過去に観測された木星のスケッチをデジタル化する計画は
順調に進んでおり、2万枚くらいのスケッチをデジタル化できた。どのよう
に公開するか、どのように利用するか考えている。





「2007年のNTB復活」            伊賀 祐一

 NTBは2002年12月に淡化していたが(14年ぶり)、2007年3月27日にNTBsのI=47.5,103.4度の2ヵ所に輝く白斑が出現した。この先行白斑がNTBs outbreakの始まりとなり、その後の劇的な17年ぶりとなるNTBの復活につながった。先行白斑は北温帯流-Dに属し、高速で前進したが、通り過ぎた跡には北温帯流-Cで移動する暗斑群がNTBを埋め尽くした。また、先行白斑から北寄りに北温帯流-Bで移動する小さな白斑群も出現し、45日後には1周してきた先行白斑と一体となって、NTBは完全に復活した。その後NTBは赤みが強いベルトとして観測されている。







「新しい撮影機材」              福井 英人

 最近、Imaging Source社製のCCDカメラ(DxKシリーズ)を使用する観測者が増えている。このカメラは圧縮率の低い動画が得られ、Registaxなどのソフトで処理することにより、高画質の惑星画像を得ることができる。会場では実演を交えながら、カメラの概要と撮影方法について説明した。





「解析ソフト(伊賀版)の紹介」        瀧本 郁夫

 伊賀さんが作成したソフトウエアの紹介を、自らの観測画像を使用して説明を行った。木星や火星の表面模様変化を追跡するためには、模様の緯度・経度を正確に測ることが必要であるが、模様をマウスでクリックするだけで緯度・経度がテキストファイルとして出力される。また、このテキストファイルを使用してドリフトチャートの作成を行える素晴らしいソフトウエアである。






「LRGB法による惑星撮影」        熊森 照明

 





 

【閉会行事】

次回の木星会議は、新装成った仙台天文台で行うことに決定された。



【プログラム】

                                    2007年11月17日(土)・18日(日)
                                    於:滋賀県犬上郡多賀町ダイニック・アストロパーク・天究館
                                    主催:月惑星研究会
                                    共催:ダイニック・アストロパーク・天究館
                                    後援:滋賀県教育委員会
                                        犬上郡多賀町教育委員会
                                        東亜天文学会


第1日目 (11月17日 土曜日)
  12時30分 受付
  13時00分 開会・・・・・・・・・・・・・・・・・司会 安達
受け入れ側挨拶・・・・・・・・・・・・月惑星研究会関西支部 安達
来賓挨拶・・・・・・・・・・・・・・・多賀町長
会場挨拶・・・・・・・・・・・・・・・高橋館長
事務連絡・・・・・・・・・・・・・・・安達
  13時20分 特別講演・・・・・・・・・・・・・・・・・司会:安達 誠
 海部宣男先生 前国立天文台長・国立天文台名誉教授
     「解けた冥王星のなぞ‥‥‥新しい太陽系の姿」
  14時50分 休憩  
  15時10分 参加者自己紹介(30分間)
  15時40分 今年の木星のまとめ(堀川)・・・・18時まで
    異変続きの木星面の報告と、今後の見通しについてまとめる。

18時00分 記念写真 (研修室にて)
  撮影後施設見学
  19時00分 夕食(研修室)アルコールなし
  20時00分 宿舎移動
 21時まで一般観望会に合流(希望者)あるいは、参加者自主交流。
  曇天時は木辺鏡などお宝拝見。
  21時00分 懇親会 (研修室)23時まで
       
第2日目 (11月18日 日曜日)
  0700分 起床・洗面
  07時30分 朝食(研修室など)と、参加者は荷物を整理し、研修室へ。
  08時30分 ポスターセッション見学
  09時00分 研究発表(1)
 ○ 堀川・・・・・「2007年南熱帯攪乱と循環気流に関する考察」
 ○ 田部・・・・・「デジタル化プロジェクトの進捗」
 ○ 伊賀・・・・・「NTB復活」
 ○ 柚木・・・・・「フィルターを使った惑星撮像」
  10時30分 休憩
  10時45分 研究発表(2)
 ○ 安達・・・・・「大赤斑の濃さについて」
 ○ 福井・・・・・「新しい撮影機材」(仮称)
 ○ 瀧本・・・・・「解析ソフト(伊賀版)の紹介」(仮称)
  11時50分 事務連絡
次回開催地について
  12時00分 閉会式 
 希望者は昼食・・・・希望される場合は受付時にお知らせください。


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