月惑星研究会関西支部例会・支部通信 No.57

2008年7月20日

参加者
浅田・柚木・畑中・薄出・風本・瀧本・林・安達・坂本(ビジター)・高倉(ビジター)・里田(ビジター)  以上11名
例会集合写真
 今回は、高校生が二人ビジターで訪れ、例会の様子をはじめから終わりまで見学してくれた。高校生は滋賀県立米原高校地学部の1年男子2名だった。顧問の坂本さんの声掛けで気持ちよく来てくれたとか。高校生の参加は何年ぶりだろうか。うれしい限りである。これから、こういう高校生や、大学生など、若手の参加を大いに期待したいとおもっている。
 今回は、急に伊賀さんの体調不良が入り、内容的な心配があったが、伊賀さんが事前に作ってHPにアップしてくださった資料や、BAAのレポートなどを参考にしながら例会を行った。今まで、伊賀さんにどれだけお世話になっていたかを思い知らされる会になってしまった。参加された人から助けていただきながら、なんとか、有意義な例会ができたことに感謝したい。


近況報告

浅田
例会には見たいものがあれば参加するようにしている。6月で観測はストップしている。木星のLRSに興味を持ったが、小さくて観測できない。とても小さく、画像を撮っても見えていない。なかなか難しい対象だ。HPに今までの木星の写真をすべて載せた。載せてみて感じることは、全体のバランスだ。並べてみると年月の傾向が見えてくる。(本部の石橋力さんも同じ事を言っておられますよ。同じ望遠鏡で同じ光学系で同じ感光材料で処理をすることで、見えてくることがたくさんあると。時代と共にだんだん難しくなってきましたね。)
柚木
今日は高校生が来るということなので資料をいくつか持ってきた。英文のものがあるが高校生の方もがんばって欲しい。LRSを狙ってモノクロで撮像していたが、良い結果がでなかった。モノクロの解像度は悪いが、手を抜かず、風本さんの言われるようにすると、よく写るようになった。手抜きは禁物だと、つくづく思った。こういったことに気が付いてよく写る様になったらLRSはもう分からなくなっていて、残念なことをした。これからは精進したい。望遠鏡を改良する計画をしている。(私と同じ商売やのに、お金持ちやなァ〜。うらやましおす。)
畑中
天気が非常に悪く、観測はできない状態が続いた。LRSは何度か、それらしきものを記録できた。観測できる機械を増やそうとC11を買って来た。いざ使おうとおもったらカメラとディスプレーが離れていてピントが合わせられなかった。壁に穴を開け、きのう、ようやくピントあわせができるようにした。PCも必要になり、大変だった。これからいろいろ試したい。
薄出
2003年から5年間冬眠していた。ドームもぼろぼろになり大変だったが、何とか再開した。5年間開いたため、勉強することばかり。今はただ、ただ面白い。最近は蛍のほうに興味を持っている。(浮気者ォ〜!)蛍で滋賀県に行ったら苗村さんの家の近くだったので家を探した。みィつけた〜。とおもってぱちぱち写真を撮った。でも、よく見るとお隣も苗村さんだった。同じ名前が一杯あって・・(笑)(私も探すのに苦労しました。分かりますよ。)(^^)
風本
10月の宮古島に観測所が完成し、最近6月に3泊4日で観測に行った。3日間ともに良い天気だったので、観測を行って報告した。シーイングは8以上だった。シーング10/10に出会いたい。月に1回くらいは観測に行きたい。6月30日のアビファイルを持ってきたのでみんなで見たい。モノクロとカラーの合成を行っているが、木星の高度が低いのでモノクロでは良い画像が撮れないので、ウェッジプリズムを使って撮影してみたいので、今日、林さんからプリズム装置を借りた。
瀧本
南の方から雲がわいているくるので、観測ができない状態になっている。4階建ての校舎が近くにあって、成果があがらない。最近、東京本部の例会に出たが、本部の例会はとても楽しかった。なにやら賭け事のようなものもあったとか・・(^^)  関西はまじめすぎる!(反省) m(_ _)m 例会では流星の話も出てきたとか。来年は月惑星研究会創立50周年になるので、記念の会議としたい。何かイベントをと計画されている。アルバムCDを作りたいということになった。夜は関西と同じく宴会になった。居酒屋でお決まりの宴会。値段固定で飲み放題食べ放題とか・・(ウソやろォ!そんなん、店つぶれるやん。)
HPを見て、「永長さんの観測は朝方やなあ。観測はまだやなあ。」と、おもっていたら、夕方に見えていて気が狂いそうになった。それからやわら始めたが気流が悪く観測にならない。12までに南中するようになれば観測数も増えるかと思う。火星はもうあきらめた。シーイングは相変わらず悪い。 観測は中学生の頃から始めた。高校生の諸君もがんばって欲しい。スケッチはやめて、画像を撮ってがんばって欲しい。(ぷんぷん!by:A)
坂本(オブザーバー)
2回目の参加になった。ToUcamにはまっている。しかし、仕事が忙しく、天文活動になかなか手が回らないので、気になっている。DMKをとうとう買ってしまった。(あ〜ァ、わなにはまったんですね)
高倉(ビジター)
高校1年生。小さい頃から宇宙に興味を持っていた。米原高校には天文台があるので、入学した。月1回のペースで惑星や月を撮影している。観測の日ごとに天気が悪く、何もできない状態。先日何とか撮影できたので、持ってきた。初めての写真。地学部員は男子が多い。全員で15人くらいいる。地学部だから鉱物をやっているものもいるから天文というと少数。 アンモナイトの話に横道にそれてアンモナイト同好会のように・・(^^)
里田(ビジター)
学校に入学し、初めて土星の写真を撮った。まだ知識もないので、これからよいものを撮りたい。よろしくおねがいします。
安達
最近は、帰宅が遅く観測活動はできていない。おまけに望遠鏡は周期運動が激しくなり、観測にはだんだん難しくなってきた。昨夜は無理をして観測をした。シーイングが7もあり、衛星が円盤像に見えた。久しぶりのよい気流だっだのでうれしかった。大赤斑が見えたが赤さはあまり感じられなかった。観測は、もっぱら眼視観測を中心に行っている。眼視観測を続けることによって、経年変化を感じることができると考えているからだ。画像は個人の主観で色を再現したり、コントラストを変更するが、眼視観測は見えたものをそのまま記録するという原始的な方法だが、多くの観測者のなかに変わり者がひとりくらいいてもいいだろう。

木星の近況報告 

 今回の例会の目玉はなんと言ってもLRS(Little Red Spot)だろう。どういう経過で、 今回の現象が起こっているかを確認した。
 伊賀さんの提案された6つの予想パターンについて解説し、どれになるか予想を立てた ことを確認しあった。参加者の思いはいろいろあったが、結果から逆に画像を戻って確認していった。直前にBAAから出たこの現象についてのレポートが出たので、それについて検討した。高校生がいるので、どのような現象かを解説しながら説明した。

LRSについて

(1)LRSはGRSの左下にいるのか。
  BAAからのレポートは一気にGRSの左下にあるように記載されているが、ほんとうにそうか、伊賀さんが作成されたレポートの動画を全員で眺めた。動画は、18日までの画像で構成されており、微妙な動きが見られたが、判断はつかなかった。

(2) LRSの予想を確認しあった。
  A〜Fまでの予想からどれに相当したかを確認したが、単一の予想と一致するわけではなく、CとFの複合型ではないかという結論になった。
(A) STrD-2は大赤斑後方で停止し、消滅する。
(B) STrD-2は無事に大赤斑を通過する。
(C) STrD-2は大赤斑を循環する気流に乗って、大赤斑の周りを回転する。
(D) STrD-2はすぐに停止して、その後ゆっくりと後退を始める。
(E) STrD-2が大赤斑を通過すると、南熱帯攪乱が復活する。
(F) STrD-2はSTB白斑"BA"と相互作用して、2つの白斑はマージする。
  予想は、以上のようになっていた。

(3) HSTの画像の点検
  LRSのGRSとの会合の3画像が発表された。アストロアーツが公開したということで、早速その画像を確認した。一番肝心のGRSの南側の通過中のものがなく、核心部分は淡からないままとなった。しかし、いくつかの特徴が確認された。
@ 画像の強拡大
 非常に大きな画像であり、モニター上での強拡大に十分耐えうる。ご覧になる方は、思い切り拡大してごらんになると良い。こんなに大きくできるかと思うほど大きくなる。大赤斑の内部やBAの中のディティールなど非常によく分かる。そのためGRS周辺の気流の流れがはっきりする。

A BAがGRSの真上に来たときの姿
 GRSを取り巻く黒っぽいアーチを形成する模様があるが、これがGRSのちょうど真上で黒く背の低い突起のように見えるところができている。GRSの反時計回りの気流が、南方のBAの気流とぶつかり合い、ウェーブのように波立っているのではないかという指摘があった。これは、LRSがGRSを通過するときに何がしかの影響を与えるものではないかという話になった。

B GRSの形状
 GRSはオレンジ色の明瞭な輪郭があり、きれいな楕円形をしているが、LRSが通過した後の姿に微妙な形の変化があるという指摘があった。しかし最終的には微妙すぎて、はっきりしないという結論になった。

C BAの変化
 BAの下をLRSは通過した。通過後のLRSの赤みが少し増したように見けられる。

D 肝心のLRSは・・
○ GRSの直前で停滞した。
  時計と反対周りに回転している気流がお互いに反発しあうため、すんなりGRSの南方に入り込めなかった。予想通りか。(安達)

○ GRSの気流の影響を受ける
  GRSの強大な気流の影響を受け、LRSは一気にstreak状に変形し、大赤斑の南方に滑り込んだ。この様子は動画でもはっきり確認できるので、ここまでは確かだろう。

○ BAに一部が吸収される
  動画を見る限り、LRSがBAの真下に来たときに、BAに一部が取り込まれるような姿を感じる。はっきり確認できないが、何度も繰り返してみていると、BAに一部が引き込まれたように見える。

○ GRSを通り過ぎた
  GRSを通り過ぎた直後、ほとんどはGRSの前方に出ているSTrZのstreakの先端に移動していったが、一部はGRSの渦に引き込まれ、GRS Hollowに引き込まれたように見える。これはHSTの画像を見ると、一部が流れているように見えることから判断した。

E 疑義
  GRSの前方に姿を現し、HSTで捕らえられた姿は、確かにGRS Hollowに引き込まれているように見えるが、果たしてそれがLRSの一部であるかのつながりが不明確である。色がないこと。引き込まれた部分は白く、GRSのHollowに見えなくもない。よって、BAに幾分か取り込まれ、一部がstreakの先端に移動したということかもしれない。いずれにせよ、かなり微妙な見え方になっていた。以上が、LRSについての支部例会における見解である。会員の皆様方の見解をお寄せいただきたいと願っている。

NTrZの白斑のマージ

前回の例会のときに起こりかけていた現象だが、NTrZにある白斑がマージした。その様子は、HPに伊賀さんがレポートを出している。展開図と動画があり、非常に良く捕らえられている。まだ、ご覧になっておられない方はぜひごらんいただきたい。今回の白斑は両者に微妙な緯度の差があるため、NTrZの中央付近を移動してきた白斑が、南北に並んだ直後から時計回りに回転しながらマージする様子が鮮明に記録されている。ドリフトチャートがあれば面白かったのだが、残念ながら用意できないため、動きを正確に見極めることができなかった。

火星の近況報告 

 火星は4秒台に入り、非常に小さくなってきたが、柚木さんはまだ観測をされている。ご本人曰く、「意味のない画像に思える。」との事だが、一見情報のない火星画像のように思えても、実はまとめをしているものから見ると、まだまだたくさんの情報があり、決して無駄ではなく、続けて欲しいと思っている。
 今回の例会では、前回の例会以後に起こった火星面の変化をまとめた。4月以降、北極冠周辺に少なくとも3回、小規模なダストストームが発生した。そのたびに北極冠が黄色っぽくなり、白い姿を観測できなくなる様子が記録された。北極冠は非常に小さくなってきたが、この季節は北極冠の周囲では時計と反対周りの嵐が起こり、この手のダストストームは頻繁に起こっている。一番新しいのは6月30日である。
 北極冠が黄色くなる現象は頻繁に起こっているが、観測者は北極冠が写っていないためよくない画像だと判断し、報告されない画像があるのではないかと心配される。しかし、それは大きな間違いである。
撮影したら。処理をして、必ず報告するように、心がけて欲しい。


○ 氷晶雲が見られる
 6月になって、低緯度地方の氷晶雲が見え始めた、見えてきた場所はいつものようにソリス(Solis lacus;90W,-25)北方とシルチス(Syrtis Major;295W,+10)付近だ。この付近は早くから観測できる。おそらく地表付近に水分の補給源があるに違いないと安達は考えているが、今シーズンも見られている。視直径は小さいが、可能ならば青の単色画像が欲しいところだ。

土星の近況報告 

 (1) STrZやSTBに白斑が何度も出現した
  前回の例会以後少なくとも4回の白斑の出現があった。下に上げたものは6つあるが、同じものの可能性がある。ドリフトをおっていないため、確定できていない。   例会以降で 4月23日・・・・STrZにできた白斑
        4月28日・・・・STB内部にできた白斑
        5月1日・・・・・STrZにできた2つの白斑
        5月14日・・・・STrZにできた複数の白斑
        6月12日・・・・STrZにできた小さな白斑
        6月30日・・・・STrZにできた白斑

(2) 昨シーズンとの比較
  南極付近が大きく変化した。昨年は南極の周囲が赤く大きな広がりを見せていたが、今回は、赤みがほとんどなくなり、それどころか緑っぽく変化している。非常に大きな変化だ。前シーズンの画像と比較するとはっきりしている。

(3) 北半球は冷調
  リングの北側の北半球は全体が目立って青っぽく見えている。顕著な特徴だ。

(4) タービスポット
  柚木さんがMLで指摘したものだが、原因については、ただのコントラスト効果だけかどうか話し合った。肉眼でも感じることがあるが、衝の前後には見えず、衝から30度以上離れた位置で確認できる。位相が決まっていることから、単にコントラスト効果だと決め付けるには、怪しい面がある。
  これに関する資料を回覧してもらったが、本体の影が、本体のエッジの形とはまったくちがう記録が残されており、興味深いものだった。果たして結論はいかがなものか。次回のシーズンまでお預けとなった。

事務連絡

○ 10月の例会日は10月26日になった。1月例会の日程は、申し込みに行ったがすでに一杯で、2月1日にできないかと思っている。予約は8月1日にせねばならないが、伊賀さんの奥さんがトライしてみるということで、あつかましくお願いすることになった。

○ 月惑星研究会創立50周年記念
来年の木星会議は東京で行い、木星会議が済んだ後、会場をかえて、どこかでパーティーをする計画があるようです。皆さん来年は、こぞって参加しましょう。今年都合の悪い人も、来年は今から予定しておいてください。

○ 観測解析について
伊賀さんに全面的に甘えてきた解析の仕事を、今回から支部のメンバーで穴埋めを行うために何とかしようということになった。1次会以降に帰宅された方には大変申し訳ないが、みんなで分担して解析をがんばろうということに話が進んだ。

2次会出席の人でとりあえず次のように手配りを行うようにした。
 土星全般・・・・・・・・・・・・柚木
 木星の大赤斑について・・・・・・林
 金星全般・・・・・・・・・・・・畑中
 天王星・海王星・・・・・・・・・薄出
 火星全般・・・・・・・・・・・・安達
これらの方々で、例会の時には、そのとき折々のトピックをお願いすることにしました。木星の位置測定やドリフトチャートなどの解析は、出来そうな人に個別に安達から打診することにしますが、皆さんの力をお借りしながら、集まった画像をもとになんとか解析をしたいと思います。今まで伊賀さんにまかせっきりでしたが、みんなで分担したいと思います。

本部の方に
 今回、このようなことにとりあえず決めましたが、本部の中でHPに出ている画像を使って解析をされる方が出ていただけないかと思っています。この解析の作業は支部の問題ではなく、月惑星研究会全体の課題かと思います。ご協力いただけるとありがたいです。特に木星の解析は時間と手間がかかります。いろいろ分けられるとありがたいのですが。

例会模様
例会模様
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例会模様
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撮影:瀧本さん

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