月惑星研究会関西支部例会・支部通信 No.58

2008年10月26日

 本年最後の例会になりました。木星は夕刻に南中を迎えるようになり、シーズンも残りわずかとなりました。その木星を迎えるように西の空には金星が姿を現しました。また、夜明け前には土星が、その細くなったリングを見せ始め、あたらしい様子を迎えています。
 今回の例会は、伊賀さんも病状を押して参加されました。また、前回の例会で参加された会員に振り分けさせていただいた、各惑星のまとめもそれぞれ行われ、実りの多い例会となりました。ただ、まとめ役の安達がその任を十分に果たせず、参加された方々には不満足なことになり、申し訳なく思っています。火星については、まったく手が回りませんでした。今までの例会は、伊賀さんのまとめのおかげで、質の高い会議ができていただけに、どれほど力を借りていたかを思い知らされました。これから先は、真剣にがんばらねばならないと思いました。

参加者
畑中・風本・林・伊賀・福井・薄出・柚木・熊森・安達  以上9名
例会集合写真


近況報告

畑中
望遠鏡の光軸の調整の結果、光軸を合わす事ができて、ようやく撮像できるようになったが、8月後半になって、シーイングが悪くなり、まともに撮像できなくなった。DFKファイヤーワイヤーを買うつもりで注文したが、まだ手元に届いていない。前回の例会で「金星担当」としてまとめを頼まれたので、2回撮像を試みた。10月18日と19日の2回挑戦したが、19日のものには模様を記録することができた。
風本
急遽例会に出席できるようになった。画像を撮って報告するだけの活動しか出来ていませんが、これからは観測好機となる金星や土星にがんばりたい。自宅の望遠鏡は昭和の25Eに交換したいと思っている。現在使っているミカゲ210はオークションに出そうと考えている。交換するメリットとしては、赤緯微動が手動から電動になることと、積載重量が20kg増えることの2点だ。
先日のメーリングリストで流したように、観測しようとしてもなかなかいいものが撮れないので残念に思っている。永長さんの画像を見ると、自分の撮像している時刻よりも早い時刻にされているため、やはりもっと早い時刻にしないといけないことが分かった。木星は南中後はどこともよくないようだ。前回の例会では「大赤斑」のまとめをすることになった。何をしようかと悩んでいるが、今日は展開図だけはがんばって作ってきた。ドリフトチャートはまだ着手できていない。
伊賀
病状が進行し、大きな声を出すことができなくなった。ベッドにいることがほとんどになっている。ごくたまに1時間くらいの外出をしている。Webで皆さんの活動の様子を見せていただいているが、自分ではメールを打つのが大変で3行に30分かかっている。木星会議には参加できないことが残念だ。
福井
木星の撮像には、薄明中が適しており、暗くなると気流が非常に悪くなっている。早く帰って観測したいが、日の暮れがどんどん早くなり、なかなか帰れない。まだ見えているので、がんばっていきたい。
薄出
パソコンやカメラで高い授業料をはらってしまった。ToUcamとビスタの組み合わせはうまくいかず、コントロールを開けることができなかった。そこで、ロジテックのカメラを購入し、挑戦してみたが、露出やガンマのコントロールがうまくいかず、とうとうあきらめ、PCを買いなおしてしまった。(菅野さんがビスタでもやっておられるという話を聞き、驚いておられました。菅野さん、ビスタでもうまく処理できますか?教えてね。安達)
柚木
今日の例会には、バスに乗り遅れ遅刻してしまった。木星の撮像は薄明中までがよく、暗くなると気流が悪くなり、観測は困難になるようだ。仕事の方はあと1年とすこしで退職になる。望遠鏡は修正研磨をする予定だったが、日頃お世話になっているIK技研の石川氏に新規にシタール材で磨いていただいた。めっきは石川氏の紹介で静岡の河合光学というところに出した。メッキの均一さの為に真空釜の中央にミラーを置いてもらいメッキした。釜を一枚のメッキのため占領したのだから高めの値段は仕方ないと思う。 昨日メッキが完了して自宅に届いたが、まだ封を開けていない。
熊森
1年半ぶりに参加した。仕事は、後1年半で定年になる。惑星はHPとブログで出している。木星は観測できる時間が少なくなり、そろそろ休日以外の観測は困難になってきた。土星にシフトしたいと考えている。
安達
望遠鏡が壊れて以来、改造に取り組んできたが、ようやく完成した。大きかったピリオディックモーションも改善され、実用範囲になった。あとは鏡面のメッキをやり直したいが、それは来年になるだろう。観測活動はまったくできていない。自宅からの木星観測はもう困難な位置になったので、これからは林さんの天文台を使いに出張する予定。

木星の近況報告 (安達・林)

 前回の例会の後に注目されている現象の紹介を行った。ただ、冒頭にも書いておいたことだが、報告 するべき安達のほうに、時間的ゆとりがまったくないため、ろくなまとめができていないため、かいつまんでの紹介になったことをお許しいただきたい。

(1) NEBの変化
  8月までは、全体的には穏やかな状態にあったが、8月から後には変化が見られる。
 大赤斑のちょうど北側になる位置で、小さな白斑が出現し、outbreakの様相を呈し、リフトに成長する現象が起こった。その後同じことが、いずれも大赤斑の北に発生するということを合計3回繰り返し、大きなリフト構造ができてきた。リフトの南の端はジェット気流に乗って先行し、前方のリフトの後方の南に覆いかぶさる(オーバーラップ)ようになってきている。
 9月11日の永長氏の画像を見ながら、どのような姿になっているかを確認した。それぞれのリフトの動きや発生場所など、ドリフトチャートが作れれば詳しくわかったのだが、誰も作成できない状態であるため解析作業はできていない。
 イタリアのMarco Vedovato氏が月に3回作成して送ってくれている展開図を見ると、1=150°〜210°付近のNEBs(リフトの先端部分)は大きく乱れ、EZの内部にまで暗斑が入り乱れている状態になっている。EZ内部は8月以降フェストーンヤプロジェクションは見られなくなり、肉眼的には何も見えない状態になっている。これは、NEBの状態と連動していると思われる。

(2) 大赤斑周辺
  大赤斑はきれいな楕円形の姿をしているが、そのエッジを囲むように青黒い模様が取り巻き、大赤斑の形をはっきりさせている。中心にはコアが見られるが、ここしばらく同じ姿をしている。大赤斑は楕円形の明るい穴のような姿になり、大赤斑孔になっている。過去に見られた大赤斑孔は大赤斑の周囲に明るい部分があったり完全に大赤斑が見えなくなり、大赤斑よりも一回り大きなHollowが形成されていたが、今回のように大赤斑の周囲をすっぽり覆うような姿は見られたことが無く、今までに無い特殊な姿をしていることを報告した。
 この大赤斑を取り巻く青黒い模様の出所は大赤斑後方のSEBsが大赤斑の渦に引き込まれて回転しはじめたものと思われるが、大赤斑後方のSEBsの様子を見ると、まだしばらくはこの傾向が続くようだ。
 大赤斑の後方からは、LRSのような暗斑が接近してきているが、これによってまた変化が起こりそうである。

 林氏が3か月分の大赤斑周囲の動画を作成され、全員でそれを確認した。大赤斑を固定した動画だが、大赤斑の前方にdark streakが伸びていく様子が克明に分かる。BAが大赤斑の南側を通過するにつれ、BAの北側の位置まで伸びて止まっている様子が良くわかる。
 BAの位置から前方のSTBnは北側にやや膨らんでいく。その影響でdark streakがそれより前方に進行しなかった可能性もあるが、はっきりしない。Marco Vedovato氏の展開図を見ると、BAの北側にギャップが見られ、何らかの関連性を示唆していると思われる。

(3) NTBnの変化
  NTBnは復活後オレンジ色を呈していたが、青黒い模様が見えてきている。次第に長くなっており、今後の変化が注目される。

(4) SEBに新しいmid SEB outbreak
  最近になって、SEBに新しいmid SEB outbreakが発生した。2=220°にあり、10月18日現在2個の白斑が並んでいる。前をさかのぼると10月13日の風本氏の画像に1つの白斑が写っている。そのほかにも熊森氏・池村氏・林氏・菅野氏・永長氏の画像にも記録されている。
 今後の変化が注目されるが、気流が悪く、国内での追跡は大変だろう。

金星の近況報告 (畑中)

 われわれのHPに報告された金星の観測者の一覧表を作成してみた。観測報告者は12名で、うち日本国内からの観測者は2名だけだった。それぞれの観測者の望遠鏡を使用フィルターを一覧表にした。
ターワークが必要だ。それぞれの観測者の使っている組み合わせについて討議した。
○ ラッセルさんの観測数は非常に多くスケッチが29回送られてきている。
○ フィルターの見解
   IRは W25+W47の組み合わせが良い。 700nm〜950nm
   IR90のフィルターが何とか使えるだろう。
   UVはバーダーのUVフィルターがよく320nm〜400nmが良いだろう。
○ 撮影はピントあわせが大変だがフィルターを取り付けてから合わせる必要がある。

水星の近況報告 (畑中)

 模様の見える観測は少ないもののキビッツ氏の観測はずば抜けており、表面の模様が記録された報告を送ってきている。

天王星の近況報告 (薄出)

 天王星の観測報告をピックアップしてきた。それぞれの観測をスクリーンに映し出し、見え方の特徴を話し合った。報告されてくる天王星の画像には一部分が黄色っぽく着色されたものが多く見られるが、果たしてそれは実在の模様かどうかの討議を行った。参考資料としてハッブル望遠鏡の画像と比較すると共に、天王星の天球上の見取り図を考慮しながら考えていった。
 結論として、黄色っぽく観測された部分は、地球大気の大気差による着色現象と思われることがはっきりした。HSTの画像には黄色いものは一切記録されていない。むしろ極地方が白っぽく観測されていることが分かる。しかし。極地方が白っぽく観測された画像は報告されていないため、かなり淡いものと思われる。
 肉眼での観測には模様の描かれたものがあり、注目された。熊森氏や安達はこれまでに模様を肉眼で見たことがあり、こんかいのものと比較しながら見え方について話し合った。
 今年は、天王星は自転軸が水平になり、惑星の公転軌道が黄道面から垂直になっており、南北の模様を見るには好都合な位置になっていることが分かる。このような位置取りの現象は1965年にも同じことが繰り返されている。大型の望遠鏡(ケック)ではリングが真横になるときに、明るさの変化が起こるが知られている。今回の消失の現象はそういった意味では興味深い。

海王星の近況報告 (薄出)

 HSTの画像から報告されたものを、支部に送られてきたものと比較した。地球からのアマチュアの望遠鏡では歯が立たず、丸い姿を記録するにとどまっている。

土星の近況報告 (柚木)

 今シーズンになって最初の観測は、グレーさんのものだった。10月14日のもので、ものすごく大きな画像だったが、今日までスケッチだとは思わなかった。(例会のときにdrawingと書かれてあるのを発見!でも、鉛筆のこすりあとがまったく無く、どうして作図したのかは不明)模様がばっちり描かれてあり、暗斑(NEB)が描かれている。(ちょっと濃すぎる:by安達)
 スッセンバッハさんからリングの細くなった画像が報告されてきている。細いリングを見るなら、観測は早めのほうがよく、時期遅れになると見えなくなったり、記録できなくなる可能性がある。
 土星の表面は、リングの影から出てきたほうがいつも青っぽく観測されるが、過去の例をさかのぼって調べてみた。カラーの画像は意外に少なく見つけるのが大変だったが、1978年に池村さんがカラーの土星を報告されているのを見つけた。それを見るとわずかに青くなっていることが記録されている。この現象は、カッシーニの画像でもダミアンピーチの画像でも見られ、かなり良く見られている現象だということが分かる。ところが、リングが真横になったときにはこの現象は見られず、南北対象の色になっている。今シーズンは、リングが真横になるときに当たるため、どんな色に観測されるかが楽しみになってきた。
 エンケの隙間は、アマチュアの望遠鏡で見えるかということについて調べてみた。望遠鏡の分解能が定義されているが、その定義から考えると、隙間の幅は1/100くらいのわずかなものであり、その炉靴からは、見えるとは到底考えられない。しかし、実際には、肉眼で観測された記録があるし、画像にも記録されたものがきちんと残っている。線状のものは分解能の定義には当てはまらないもののようだ。
 エンケの空隙についての話は、2001年の支部例会のときに話題が出て、昔エンケの空隙があるといわれていたものは、エンケミニマムといって「偽エンケ」と呼ばれ、単にA環の薄暗くなっている部分にリング状の空隙があると錯覚されていたものだった。その後、A環の1/6(内側からの距離)のところにキーラーが空隙を発見した。ところがその後、さらにその外側の1/50の位置に極めて細い空隙が見つかった。そこで、国際天文学連盟では名称を発見者とは別に規定し、キーラーの発見した広いほうの空隙をエンケの空隙とし、外側のきわめてほそい空隙をキーラーの空隙として名称を固定している。  偽エンケと呼ばれている部分は、肉眼では暗く見えることが多いが、これはリングの位相によって見えている可能性がある。今回はリングが見えなくなるのだが、いつごろ見えるかを注意深く観察したい。

安達からのコメント
 画像では、こういった微妙なものは記録されにくい。画像で記録されれば証拠になるから大切なことだが、肉眼で注視し、見えているかどうかを言葉の記録でも良いから記録するようにして頂きたい。

会員からの情報

(1)安達の31cm望遠鏡情報
 安達の31cmの望遠鏡の製作過程のプレゼンを報告した。昔N製作所から頂いた廃棄された極軸と赤緯軸を組み立て、バーバルを改造して作ったバランスウェイトを取り付け、今までの鏡筒を載せたもので、費用は6万円かかって製作できた。これで全天向けられ、惑星以外にも観望できるようになった。
 息子たちが使えるように改造を行い、ToUcamをつけて撮像できるようにしておきたい。伊賀さんから1台いただけるというので、早速それを取り付けられるようにしていきたい。まずは接眼部に電動フォーカサーを取り付けたいが、情報を求めている。

(2)惑星観測の教科書について
 安達が誠文堂新光社から依頼を受けた件についての報告です。
高校生くらいの年齢というか、高校生くらいのレベルの人たちを対象にした、惑星観測の教科書なるものを作る計画ですが、内容の構成と執筆者の割り振りを決めて、それぞれお願いしました。月惑星研究会のメンバー以外の方にも協力を頂き、原稿が集まりつつあります。
 眼視観測、画像撮影と処理、解析作業、各惑星の観測対象とまとめ方、参考になる情報という手順で進めています。年内に校了がめどになり、来春から販売となる方向で進んでいます。あくまで予定ですが・・。

事務連絡

○次回の例会は
     2月1日(日)
 本当は1月例会ですが、会場が取れなかったので、変則で2月1日になります。皆さん都合をつけて集まってください。ちなみに、4月例会は4月26日に決定していますから、予定に入れておいてください。まだ来年のカレンダーも出ていないのに気が早いですが、予約の都合でこうなりました。

○スライファーの本
 広島の佐藤 健氏がローウェル天文台に行かれたときに、ECスライファーの写真集を購入され、 お土産として日本に持ち帰られました。月惑星研究会のメンバーに何冊か寄贈されたのですが、本部の田部さんと支部の伊賀さんには別に1冊ずつ贈られて来ました。本部は田部さんのところに保管され、貸し出し図書として準備されています。
例会のときに伊賀さんが会場に持ち込まれ、欲しい人にあげて欲しいといわれましたが、例会に参加された人のほとんどが、本部と同じようにしたいという意向でしたので、その意向を大切にして、貸し出し用とすることに決めました。最初は土星のことをまとめてくださっている柚木さんのところに行きました。使われたり、記録されたりした後は、柚木さんから借りる希望申し込みをMLで流されますから、借りたい方は柚木さんまで連絡していただきますように、お願いいたします。

○木星会議
 香川県の瀧本さんからの情報で、仙台で行われる木星会議の情報が無いかということでしたが、支部からの参加者は今のところ、林・瀧本・畑中・熊森・福井・安達だったかな?(ちがっていたらごめんなさい。)飛行機組が多く、当日の朝9時発伊丹空港から仙台に向かう人が4人います。瀧本さんはツアーをうまく見つけられ安くできる方法で参加されます。仙台は遠いですが、瀧本さんと同じ方法なら安くいけますからぜひとも参加してください。
 来年の木星会議は東京で行われます。月惑星研究会創立50周年のパーティーも計画されています。こちらのほうもよろしくお願いします。

例会模様
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撮影:薄出さん

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