月惑星研究会関西支部例会・支部通信 No.60

2009年04月25日

 今回の例会は、高校生が5人来られて、いつもとちがった雰囲気の例会となりました。滋賀県立米原高等学校の天文クラブのメンバーで1年生と2年生の5人を顧問の坂本先生が引率して参加されたわけです。例会は、高校生にも分かるように、解説を交えながら進めました。話が難しくなって「もう懲りました。」といわれないように、がんばりました。これからこういった若い人が参加されることを大いに期待しています。

参加者
畑中・柚木・林・坂本・里田(高2)・倉(高2)・木村(高1)・津田(高1)・折戸(高1)・奥田・安達  以上、11名


近況報告

柚木
アストロドンのビーナスUVフィルター3種類を入手して金星を撮像している。D.C.Parkerさんの画像が刺激になっている。このフィルターは明るいので使いやすい。赤外漏れは無い様に思う。土星の撮影も楽になった。しかし、シーイングがよくないため、良いものは撮れていない。国内では良い画像が見られないが、これはシーイングのせいだろう。最近、望遠鏡で撮像するときに毎回光軸がずれているので、観測のたびに合わせ直してから撮像するようにしている。
最近は土星だけの観測をしている。京都市内は気流が非常に悪く、おまけに透明度も悪い。これからはWinJUPOSを使ってみたいと思っている。
里田
これで3回目の例会参加になった。今回は天候が悪く少ししか撮像できていない。2月6日にNHKが学校の活動の取材に来た。ロケで水平になってきた土星のリングやルーリン彗星を見た。前回の例会のときに教えていただいたので、15cmの屈折での撮像を30cmカセグレンでの撮像に切り替えている。今日は、あとで画像を皆さんに見て頂きたい。
高倉
最近の活動は4月17日に土星の撮像を行った。シーイングが悪くぼけた画像しか撮れなかった。30cmではどうしても像がぼけてしまう。どうしてこうなるのかわからない。
<会員から>
 どんな像をしているの?との質問から、柚木さんが、望遠鏡の内外像を見ながらチェックする方法を解説してくださいました。改めて、光軸のチェックについて参加者も確認しました。鏡に不安があるとのことでしたが、ゴールデンウィークが開けたら、安達が米原高校まで出かけてチェックしてみるという方向で進んでいます。
木村
今回の例会は初めての参加ですが、よろしくお願いします。
津田
まだ始めたばかりで、分からないことが多いのですが、よろしくお願いします。
折戸
初心者なのでよろしくお願いします。
坂本
今日の高校生たちのクラブの顧問をしている。今日は1年生も含めて一緒にやってきた。ご指導をよろしくお願いいたします。新年度に入り、環境が変わったが、仕事は落ち着いてきたが、今のところ特別何もできていない。
畑中
光軸合わせに苦労している。凸鏡をあわせるのが大変で光軸が悪いのかシーイングが悪いのか分からない状態。最近分かったことは、バーローレンズはかなり像に影響を与えることが分かってきた。バーローレンズによって、写り方がずいぶんちがう。いずれにせよ、大きく撮るほうが良い結果がでる。とりわけ4月9日は気流がよかった。先週の日曜日に今度の日食の説明会が京都であり、そのときに安達さんに頼んで花山天文台の見学をさせてもらった。望遠鏡のバランスが良く取れていて感心した。

木星の近況報告 (安達)

近況に入る前に、高校生のために木星のベルトの見え方と、自転周期に違いよる見え方を解説。

(1) SEBの変化
  シーズンが始まって、木星の観測報告が次第に集まり始め、それにつれて木星の状況も次第にはっきりしてきた。最も顕著な変化はSEBで、SEBは中央のSEBZが淡化し、2条に見えるようになってきた。イタリアのMarco Vedovatoさんの作成した展開図を見ながら、全面に渡ってこの様子がわかることを確認した。この様子は2000年と同じような姿になっている。そのことを奥田さんや永長さんの画像を見ながら再確認した。

(2) 大赤斑(林)
  昨シーズンの大赤斑と、今シーズンの大赤斑の画像を比較した。
  昨年はアーチが東西にかかっている場合が多かったが、今シーズンの最初は、アーチは見られず、単独で見えている。特に大赤斑の前方と北側には明るい部分が取り巻いており、明るく記録されている。
  大赤斑の位置は 2=133度と、なっており、昨年とほとんど同じ位置に見えた。

(3) BAについて
  2=357度(4月2日)にいて、前シーズンと同じ姿を保っている。昨年は後方に目立った暗斑が見られたが、今シーズンはかなり小さくなってしまった。昨年顕著だった南温帯(STZ)の大型リング暗斑が、BAに約20°まで接近。6月か7月にはBAにかなり接近することが予想され、ひょっとすると衝突・合体するかもしれない。

(4) SSTBの小白斑
  Marco Vedovatoさんの3月26日27日の展開図を見ながら位置を確認した、A7の白斑の所在がまだ分からない。これから観測数が増えると、位置がはっきりしてくると思われる。

(5) NEB
  今シーズンも活発なようで、3月28日に白斑が見つかった。残念ながら大きく成長することはなかったが、これからは、あちらこちらで同じような現象が起こると思われる。

火星のダストストーム情報

伊賀さんからの情報で調べたもの(安達)で、MRO(マーズ・リコナッサンス・オービター)の画像で、3月23日に発生した、ダストストームの報告を行った。
 発生場所は、近年最も多くダストストームの発生しているクリセ(Chryse;33W,+10)クサンテ(Xanthe;52W,+13)方面で、3月23日には姿がはっきりととらえられた。公開された動画を注意深く点検すると、経緯がはっきり分かり、次の図のようになった。
最初はマリネリス渓谷付近ではっきりした姿がとらえられたが、次第に南に広がっていった様子が分かった。発生後、暗色模様は淡くなり、ダストのベールが広がっている様子が確認された。今回のダストストーム発生のLsは232度となっているが、過去のダストストームの発生したLsを見ると、やや早期のように思われるが、これからこういったダストストームがどんどん発生する時期に来ているので、面白い時期になっている。地球からの観測はできないが、ナサの情報を頻繁に確認しながら、火星の状況を把握していきたい。
   ・ 大規模ダストストームの発生時期
   ・ 1956年・・・・・・Ls=240度
   ・ 1971年・・・・・・Ls=260度
   ・ 1973年・・・・・・Ls=300度
   ・ 1977年・・・・・・Ls=268度
   ・ 2005年・・・・・・Ls=308度
   南半球の夏至はLs=270度

高校生のレポート

里田さんのレポート(米原高校2年生)
  撮像画像を元に
   金星 小さいけれどよく撮れていた。
   木星 2008年11月の画像。よく撮れている。15cm屈折での画像。
      DMKを使って撮像している。
      メタン画像もある。衛星が明るく写っている。大赤斑も白くでている。
      画像処理をすればまだ明るい画像にできるだろう。
   土星 NHKのロケがあったときのもの。DMKの画像。よく撮れている。
   天王星 丸い姿は出ている。
   月面 オレンジのフィルターを使って撮像すると、青のにじみが取れてシャープになる。
  レジスタックスだけでの処理画像のため、柚木さんのPCに入れてアンシャープマスクを   かけて処理をする方法を実演した。
<参加者から>
 30cmでは良く撮れないと聞いているが、今回の画像を見ると、決して鏡が悪いのではなくて、気流の問題が大きいように思われる。光軸の調整、光学系の点検、さらに観測条件の点検など、いくつかの課題を点検する必要性があるのではないかとの意見が多かった。

  <休憩>

土星の近況(柚木さん)

(1) ハイリゲンシャイン現象
  ホイップルの「月・惑星」 と 惑星ガイドブックに書物として解説がでている。
  どんな現象かを、高校生向けに解説していただいた(柚木)。
  Goさんの画像を使って、明るさを測るグラフを作った。
ハイリゲン・シャイン現象がリングの細いと きでも、起こるかどうか注目されたが、今回も 起こった。しかし、今までとはちがって、衝の 前で明るいが、衝のときはすでに暗くなってい た。普通は、リングの明るさが増すのは、普通 は衝をはさんで前後対照的になるのだが、今回 はちがって、前半だけ明るい状態となっていた。 考察   衝(3月9日)のときに暗くなってしまった 原因は(天文年鑑156ページ参照)グラフに もあるように、地球から見るときはリングの南 側を見ているが、太陽の照らしている位置が、 地球より南側からてらしているか、北側からてらしているかによって、違いが出ている。今回は、衝の あとは地球よりも北側から照らすようになることが原因だと考えられる。
(2) 白斑
  報告を始める前に、土星大気の見え方を解説。体系1と体系2の違いを説明してもらった。体系3は電波源の経度となっている。
 前回の例会以後、体系2を使うようになった。今までは使われていなかったが、探査機の観測などから判明した大気の流れは、木星よりもむしろはっきりした1系と2系の境があって、2系を使ったほうが合理的であることが分かった。WinJUPOSも池村さんの計算ソフトも最近は2系が入っている。今度出版される「惑星観測の教科書」でもそのことについて触れている。
 今シーズンもいくつかの白斑が出現している。次回までに追跡をしたものを提示したい。

(3) STZの白斑
  STZに、もう1ヶ月間見えている。(STBと言っている人もいる)
1月の終わりではなかったものが2月中旬に出てきていることが分かった。これから位置の測定に測りたい。体系3のほうが移動に合っている様な気がする。以前出た雷雲と同じだといわれているが、決まった発生源があるように思われる。 (4) EZにでた白斑
  リング直下に見えている小さく明るい白斑。明るいものとの2つがあって、これらも追跡できる。2月7日以降と、それ以降に出たものがあるように思う。

金星の観測報告(畑中)

5ヶ月間の観測をまとめた。最も観測の多い人は柚木さんだった。観測者の分布を世界地図にプロットしたものを紹介した。
  かなり細い金星の観測をならべた。スケッチの観測報告が4人あった。観測中の鏡筒の中には太陽の光が差し込んでいる状況での観測をされているわけで、非常に危険を伴う観測で、凄いことだと思う。
また、波長別に観測画像をならべてみた。波長によって高度がちがっているわけで、見え方を比較した。地表の模様は5人の観測者が記録に成功した。特にこの波長(IR)は昼間でも観測できる(柚木さんによる)。地表の模様と非常によく一致する。ただ、今回は模様の見えにくい地域だったため、はっきりしなかった。三日月の形のときに観測すれば可能だろう。

その他

 ・ 天文観測年表についてのもうする対応(佐藤健先生の提案を受けて)
   安達 誠のほうで、他の観測分野の方々と連絡を取り合い、何らかの対応ができないか、方法を探ることにする。
 ・ 惑星観測の教科書の進捗状況(安達)
   最終段階になっている。もうすぐ出版となるだろう。
 ・ 会費受領 奥田さんから2009年分の会費を受領しました。
   皆さん、会費を送ってくださいね。
    郵便振替は 00940−6− 132972  月惑星研究会関西支部
 ・ 今後の例会の日程
   7月26日(日)いつのも第1研修室
   10月18日(日)いつもの隣の第2研修室
       (もう10月は一杯で、ここだけしか空いていませんでした。)


月惑星研究会のHomePageへ戻る  関西支部のPageへ戻る