月惑星研究会関西支部例会・支部通信 No.622009年10月18日 |
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木星会議のあとの例会となりました。今回は、8名の参加ですが、中身の濃い会になりました。とりわけ木星については、浅田秀人さんが参加され、いろいろ検討することが出来ました。
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近況報告
木星の近況報告(1) 大赤斑の左下に出来た白斑について10月になって目だって見えてきた、大赤斑の左下の白斑について、参加者と検討を行った。例会直前に伊賀さんからHPに届いた報告を見ながら、話し合った。 浅田秀人さんからこの白斑は、7月から見られているように思うとの指摘があり、早速7月の画像を探してみた。すると、7月19日Jim Kolさんの画像にGRS Bayのくびれとして怪しい姿のあることが分かった。そこで、10月までのGRSの画像を探してみたが、あちこちにGRS Bayの下にくびれのあるものや、白斑らしき淡い光点のあるもの。あるいは、SEBsがGRSの真北で切れている場合に、こういった現象がたびたび起こっていることがわかった。 8月2日(永長)の画像では、かすかに見られる。 8月5日(Pujicさん)ではメタンで明るく写っている。 9月3日には見られない。 10月2日にはPoupeauさんのものが良くわかる 12日には明るくはっきりした白斑として記録された。 これらからわかることは、白斑として捕らえられたのは、10月だが、似たような傾向は早くから見られたことがわかる。今回はたまたまSEBからの白雲が供給され、下図のような気流の相互作用で、背の高い雲として発達したものではないかという結論になった。 林さんが、8月9月10月の3か月分のGRSとその周辺の動画を作成されてきたので、それを全員で繰り返し見ながら、今回起こった現象がどのようなものかを考えた。 この白斑の位置ではSEBsが切れているように見えるが、これはIRで撮像すると暗斑の南北が暗くて細いベルトで囲まれた姿に写っている。また、メタンでも明るく写る。このことからこの白斑は高い高度まで達していることが分かった。 また、この白斑は位置を変えることがないことは、今まで盛んに観測されてきたSEBsの南側に出来るドーナツ白斑と異なっている。これは、SEBsのすぐ北側にある気流とSEBsの後退暗斑を運ぶ気流との会合部であることがその原因だと考えられ、時計回りの白斑だろう。今まで今回のような顕著な白斑は見たことがないが、これが元になって、何かの大きな現象になるとは思えない。 (2) SEBの淡化について 7月 SEBは二条に分かれており、SEBZは明るくなっていた。また、SEBZに赤いBargeができたこともあり、木星会議ではロジャース氏はSEBの淡化の兆候だと解説された。このBargeは8月になって3個になり、10月には4個となった。それぞれGRSに近寄ってきているが、一番東側でGRSに近いものはまったく位置を変えず、同じところにとどまっている。 SEBは木星会議のあった9月には活動がおとなしくなり、その後、淡化の傾向は進行していないように思われる。 (3) NEBについて 7月には、大きく3つのリフト領域が発生し、R1のリフトが8月半ばに50度〜170度まで乱れた姿をしていた。 2=20度付近のNTBnには北側に突き出た部分があったが、それは大きな暗斑に成長し大きなリング暗斑に成長した。9月になって、拡幅現象はどんどん広がり、9月になると2=200度台に暗斑群が発生し、大きな変化を見せている。今後もNEBの拡幅現象は全周にわたって広がるものと思われる。 (4) NNTZにおけるLRS NNTBに赤い色をしたLRSが発生した。6月27日Goさんの画像にはすでに鮮明に キャッチされている。大きさはそれほど大きくなく、SSTBに見られる小白斑の大きさ程度のものだった。 その後、現在も姿を変えず、長命な暗斑の一つとして見えている。ちょうどこのLRSの直前に白斑があって、その後部に接するようにこのLRSは出来ていた。メタンバンドでは明るく写ると思われていたが、浅田氏の提案で位置を詳しく調べると、メタンバンドで明るく見えていた白斑は、このLRSではなく直前の白斑であることが分かった。今後も追跡していきたい。 火星の近況(安達)(1) 7月に起こったダストストームについて7月31日にベラルーシのYuri Goryachko & Konstantin Morozov両氏の観測で、ダストストームが発生したと、天文ガイドを通して報告した。クサンテ(Xanthe;52W,+13)とクリセ(Chryse;33W,+10)に明るいものが写っていた。報告者(上記)はクリセ(Chryse;33W,+10)付近が明るいのでダストストームかと報告されていた。安達も形状からダストストームだと天文ガイドに記述した。ところがTHEMISの画像を見るとそれは大きな誤りで、本当はアルギレ(Argyre;35W,-50)付近を中心とするダストストームが本命だと分かった。 次にダストストームの発生したのは、8月18日で、フランスのStanislas Maksymowicz 氏がヘラス(Hellas;295W,-50)の東側が明るくなっている様子を報告されてきた。このダストストームもTHEMISの画像ではっきりしていました。 また、8月22日にはベラルーシのYuri Goryachko & Konstantin Morozovのお二人が、画像によってアマゾニス(Amazonis;155W,+15)一帯が広い範囲に明るくなっていて、ダストストームの発生している様子を報告されてきました。アマゾニス付近での発生は、ここしばらくなかったことで、珍しい現象でした。 今シーズンの、ダストストームはこれで全部で3回の発生となりました。 (2) ダストストームの発生地点 安達は、ダストストームの発生地点は地下の氷か二酸化炭素の氷が解けて、地形が陥没するときに舞い上がったダストが、ダストストームの発生場所だと考えているので、今回THEMISの画像で、発生地点がピンポイントで分かるところだけ地形図で精査してみた。 精査の結果、地形と関係していそうなところもあるが、関係を考えるには難しいと思われるところも含まれていた。最終的には探査機の画像が偶然に撮影していないと、はっきりしたことは言えないが、可能性はあるものと考えている。 10月13日の画像(右の画像の下に見える白雲状のベルトは北極冠) (3) 北極冠が見えてきた 北半球は今月末で冬至を迎える。そろそろ北極冠が見えてきてもおかしくないため、注意深く観測報告を調べてきたが、いよいよ北極冠の姿がキャッチされた。9月13日フランスのJean Jacques Poupeau氏の画像で確認された。2002年のMGSのLs=355度の画像で、NPCは周辺部から形成されていることがわかっている。今回のJean Jacques Poupeauさんの画像は、まさしくそのときの様子と同じになっている。Jean Jacques PoupeauざんのNPCの端の位置はMGSの画像と非常によく一致している。また、形成時の初期は北極冠の中心部は氷で覆われておらず、砂漠色に見えることも2002年に確認されていて、今回も極地方が砂漠色になっていることも確認されている。 また、9月18日ベラルーシのYuri Goryachko & Konstantin Morozovの二人がエリシウム(Elysium;215W,+23)付近で撮った画像も、NPCの周辺部を記録しており、全周で見えていることがはっきりした。すなわち、今シーズンのNPCは9月13日の観測を持って確認できたと考えられる。 (4) 今後の展望 火星の季節が進むにつれ、山岳雲や氷晶雲がこれから見やすくなってくると思われるので、青画像がなるべく得られるような観測活動を望んでいる。 最近の月面探査から(1) 2009年9月30日月面に隕石衝突の瞬間画像が得られたアメリカの打ち上げたルナ・リコネサンス・オービターは月面に隕石がぶつかり、クレータが出来る瞬間を撮影した。クレーターから衝突後に月面内部の石等が四方に飛び散る様子が、見事に記録されている。非常に興味ある画像が公開されている。 (2) 月面に水 インドの打ち上げたチャンドラ・ヤーンが観測した月面南部の水のあるクレーターの画像を公開した。かなり広い範囲に水があることが観測された。水があれば月面基地の計画は急速に進行するものと考えられる。今後のデータ公開が楽しみである。 (3) エルクロスの月面衝突 NASAは、エルクロスが月面に衝突する瞬間の画像の撮影に成功した。クレーターの内部に見事に衝突し、赤外画像で明るく輝く閃光を観測記録した。思いのほか飛び散り方が少なかったようだが、欲しいデータは得られたとか。今後の発表を待ちたい。 木星会議報告(参加者から)瀧本さんの持参された画像を次々にうつしながら、参加された会員から思い思いの感想が述べられた。のべ80名ほどの参加になり、例年の2倍にもなったにぎやかな木星会議となったことが報告された。今回はイギリスからロジャース博士にお越し頂き、盛り上がった50周年記念パーティーとなった。残念だったのは海部先生が欠席されたことだ。月惑星研究会の大先輩に当たる海部先生が次期IAU委員長になるとのことで、われわれとしても嬉しいことだ。その他
月面課のその後と展望われわれの会は、惑星研究会ではなく、月惑星研究会であるから、どこかに月面のコーナーがあってもよい。しかし、現実には設けられていない。原因はいくつかあって@ 簡単にコンパクトデジカメでも撮れる これによって、何でもかんでも報告されてしまい、大変な公開作業になることも考えられる。したがって、すぐに受けることは出来ない。そこで今回は例会に参加したもので話し合った。その結果を整理すると次のようになった。 ・ 観測画像しか受け付けない 何かの目当てを持ち、観測画像として報告されてきたものだけを受付するようにすればどうか。 報告には、何を観測したのか報告を義務とする。 ・ 月齢別の全面画像は受け付けない。 A 研究は受け付ける ・ レポートの受付 レポートは他の惑星と同じく、受け付けることにする。 このような、方向で受けるのならある程度、縛りのある中でできるのではないかと言う方向になっていった。しかし、実際には、これの受付とHPにアップする作業が必要になる。池村さんにお願いすることは、量的に今回の無理があるから、支部通信をもとに、支部とは限定せず、本部を含めて月面に関心のある方に名乗り出ていただき、人があれば開設できるように進めて行きたいと思う。 そこで全会員にお願いだが、月面のHP作業をしてもいい方はありませんか。 なかなか大変な作業かと思いますが、いかがでしょうか。先日報道された月面の発光現象(隕石の衝突による発光)など面白そうなこともありそうです。 事務連絡
(1) 例会今後の予定 | ||||||||||
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