月惑星研究会関西支部例会・支部通信 No.62

2009年10月18日

 木星会議のあとの例会となりました。今回は、8名の参加ですが、中身の濃い会になりました。とりわけ木星については、浅田秀人さんが参加され、いろいろ検討することが出来ました。

参加者
畑中 明利・永長 英夫・浅田 秀人・福井 英人・柚木 健吉・林 敏夫・瀧本 郁夫・安達 誠  以上8名
例会集合写真


近況報告

畑中
まだ木星を中心の観測活動を行っている。最近はWinJUPOSで展開図を作り始めた。画像の撮像では、ピントがどこで合っているのか分からず困っている。衛星でピントを合わすようにしている。ピントを合わせるのが難しいが、そのまま撮っているのが良いか迷っている。これからは、火星にシフトしたい。
瀧本
日食に行ったり、木星会議に行ったりした。観測は気流が悪く困っている。特に木星が南から南西の空に回るととたんに気流が悪くなって困っている。最近は火星の観測も始めた。NPCがきれいに見えている。早起きをして4時から5時の間に観測しようと思っている。
天文とは関係ないが、ポケットに入るカーナビを買った。音声ガイドもあるし、現在地の緯度経度も細かく出てくる優れものだ。使い道はいろいろありそうだ。また、ジグソーパズルの木星儀を買った(記念写真の中央にあるもの)。結構面白かった。
柚木
日食で前回の例会は欠席させてもらった。最近の観測は木星から火星にシフトしつつある。カラー画像よりも単色のほうが良く撮れる。熊森さんと5〜6kmしか離れていないのに写りかたがずいぶん違い、困っている(熊森さんは地上高の高いことが違いのようだ)。最近は21時ごろに寝て2時半から3時の間に起きて観測している。心臓にはステントをまた入れた(都合2本になったとか)。もう年になってきたので長時間の観測は出来なくなってきた。
浅田
久しぶりに例会に来れた。最近ニコンのP300を買った。先月に新製品が出るということのため、旧モデルを安く買うことができた。今までにないカメラで、良い結果を期待したが、グリーンは冷却CCDに勝てるが、赤と青では良くなく冷却CCDには勝てなかった。最近はこのカメラで月面を撮っている。40年前を思い出してやっているが、非常によく写っている。自分のHPに月面を加えた。特に最近やったこととしては新月の22時間前の月(月齢28.4)の撮影に成功した。
木星のことだが、大赤斑の下の白斑は7月から見えているように思っている。Bayの北側がくびれたように写っていた。
安達
最近は、込み入ったメールが毎日のように届き、その対応に追われ、観測らしい観測は出来ていない。木星会議までは、木星を一生懸命に観測したが、過ぎ去ったら他の用事に追われ、観測が出来ないようになってきた。
永長
腰痛がひどく(ヘルニア)、生活に支障をきたすようになってきた。撮影しても処理が出来ず、8〜9月の撮影したものはHDにはいったままになっている。望遠鏡のほうは20年以上メンテナンスしておらずとうとう、モータードライブが不調になった。イーゼウスと言うのを買って、それを使っている。非常に精度がよく驚いている。カメラでの撮像としてデジカメの動画で撮れないかと考えている。木星は、2〜3日がんばれば展開図を1周作れるが気流が悪く、できない状態でいる。
HPに出ているように、気流がぼろぼろだ。カラーはだめだが、単色ならどうにかなると思っている。ブルーは420・530nm、IRでは76〜80nmで撮像している。東は良く撮れるが、京都も南から南西に回ると撮れなくなってしまう。
福井
半年振りに例会にきた。半年くらい観測を報告できていない。撮っているが、処理をしないままになっていることが多い。日食は杭州に行った。風本さんと現地で会って驚いた。日食は雲ってしまったが、ビデオには、雲の隙間から少しだけ撮る事ができた。8月11日には大きな地震で目が覚めた。地震は朝5時に起こり、望遠鏡も大きく揺れたが極軸がずれたくらいですんだ。木星会議には参加し、ロジャースさんに本にサインをしてもらった。

木星の近況報告

(1) 大赤斑の左下に出来た白斑について

 10月になって目だって見えてきた、大赤斑の左下の白斑について、参加者と検討を行った。例会直前に伊賀さんからHPに届いた報告を見ながら、話し合った。
 浅田秀人さんからこの白斑は、7月から見られているように思うとの指摘があり、早速7月の画像を探してみた。すると、7月19日Jim Kolさんの画像にGRS Bayのくびれとして怪しい姿のあることが分かった。そこで、10月までのGRSの画像を探してみたが、あちこちにGRS Bayの下にくびれのあるものや、白斑らしき淡い光点のあるもの。あるいは、SEBsがGRSの真北で切れている場合に、こういった現象がたびたび起こっていることがわかった。

   8月2日(永長)の画像では、かすかに見られる。
  8月5日(Pujicさん)ではメタンで明るく写っている。
  9月3日には見られない。
 10月2日にはPoupeauさんのものが良くわかる
    12日には明るくはっきりした白斑として記録された。

 これらからわかることは、白斑として捕らえられたのは、10月だが、似たような傾向は早くから見られたことがわかる。今回はたまたまSEBからの白雲が供給され、下図のような気流の相互作用で、背の高い雲として発達したものではないかという結論になった。
 林さんが、8月9月10月の3か月分のGRSとその周辺の動画を作成されてきたので、それを全員で繰り返し見ながら、今回起こった現象がどのようなものかを考えた。
 この白斑の位置ではSEBsが切れているように見えるが、これはIRで撮像すると暗斑の南北が暗くて細いベルトで囲まれた姿に写っている。また、メタンでも明るく写る。このことからこの白斑は高い高度まで達していることが分かった。
 また、この白斑は位置を変えることがないことは、今まで盛んに観測されてきたSEBsの南側に出来るドーナツ白斑と異なっている。これは、SEBsのすぐ北側にある気流とSEBsの後退暗斑を運ぶ気流との会合部であることがその原因だと考えられ、時計回りの白斑だろう。今まで今回のような顕著な白斑は見たことがないが、これが元になって、何かの大きな現象になるとは思えない。

(2) SEBの淡化について

 7月 SEBは二条に分かれており、SEBZは明るくなっていた。また、SEBZに赤いBargeができたこともあり、木星会議ではロジャース氏はSEBの淡化の兆候だと解説された。このBargeは8月になって3個になり、10月には4個となった。それぞれGRSに近寄ってきているが、一番東側でGRSに近いものはまったく位置を変えず、同じところにとどまっている。
 SEBは木星会議のあった9月には活動がおとなしくなり、その後、淡化の傾向は進行していないように思われる。

(3) NEBについて

 7月には、大きく3つのリフト領域が発生し、R1のリフトが8月半ばに50度〜170度まで乱れた姿をしていた。
 2=20度付近のNTBnには北側に突き出た部分があったが、それは大きな暗斑に成長し大きなリング暗斑に成長した。9月になって、拡幅現象はどんどん広がり、9月になると2=200度台に暗斑群が発生し、大きな変化を見せている。今後もNEBの拡幅現象は全周にわたって広がるものと思われる。

(4) NNTZにおけるLRS

 NNTBに赤い色をしたLRSが発生した。6月27日Goさんの画像にはすでに鮮明に キャッチされている。大きさはそれほど大きくなく、SSTBに見られる小白斑の大きさ程度のものだった。
 その後、現在も姿を変えず、長命な暗斑の一つとして見えている。ちょうどこのLRSの直前に白斑があって、その後部に接するようにこのLRSは出来ていた。メタンバンドでは明るく写ると思われていたが、浅田氏の提案で位置を詳しく調べると、メタンバンドで明るく見えていた白斑は、このLRSではなく直前の白斑であることが分かった。今後も追跡していきたい。

火星の近況(安達)

(1) 7月に起こったダストストームについて

 7月31日にベラルーシのYuri Goryachko & Konstantin Morozov両氏の観測で、ダストストームが発生したと、天文ガイドを通して報告した。クサンテ(Xanthe;52W,+13)とクリセ(Chryse;33W,+10)に明るいものが写っていた。報告者(上記)はクリセ(Chryse;33W,+10)付近が明るいのでダストストームかと報告されていた。安達も形状からダストストームだと天文ガイドに記述した。ところがTHEMISの画像を見るとそれは大きな誤りで、本当はアルギレ(Argyre;35W,-50)付近を中心とするダストストームが本命だと分かった。
 われわれのHPにはアルギレ(Argyre;35W,-50)のダストストームがわかるように、THEMISの画像を合わせて掲載している。是非このページをごらん頂きたい。このアルギレ(Argyre;35W,-50)に発生したダストストームは小規模なものだったようで、すぐに衰えた。
 次にダストストームの発生したのは、8月18日で、フランスのStanislas Maksymowicz 氏がヘラス(Hellas;295W,-50)の東側が明るくなっている様子を報告されてきた。このダストストームもTHEMISの画像ではっきりしていました。
 また、8月22日にはベラルーシのYuri Goryachko & Konstantin Morozovのお二人が、画像によってアマゾニス(Amazonis;155W,+15)一帯が広い範囲に明るくなっていて、ダストストームの発生している様子を報告されてきました。アマゾニス付近での発生は、ここしばらくなかったことで、珍しい現象でした。
 今シーズンの、ダストストームはこれで全部で3回の発生となりました。

(2) ダストストームの発生地点

 安達は、ダストストームの発生地点は地下の氷か二酸化炭素の氷が解けて、地形が陥没するときに舞い上がったダストが、ダストストームの発生場所だと考えているので、今回THEMISの画像で、発生地点がピンポイントで分かるところだけ地形図で精査してみた。
 精査の結果、地形と関係していそうなところもあるが、関係を考えるには難しいと思われるところも含まれていた。最終的には探査機の画像が偶然に撮影していないと、はっきりしたことは言えないが、可能性はあるものと考えている。


10月13日の画像(右の画像の下に見える白雲状のベルトは北極冠)

(3) 北極冠が見えてきた

 北半球は今月末で冬至を迎える。そろそろ北極冠が見えてきてもおかしくないため、注意深く観測報告を調べてきたが、いよいよ北極冠の姿がキャッチされた。9月13日フランスのJean Jacques Poupeau氏の画像で確認された。2002年のMGSのLs=355度の画像で、NPCは周辺部から形成されていることがわかっている。今回のJean Jacques Poupeauさんの画像は、まさしくそのときの様子と同じになっている。Jean Jacques PoupeauざんのNPCの端の位置はMGSの画像と非常によく一致している。また、形成時の初期は北極冠の中心部は氷で覆われておらず、砂漠色に見えることも2002年に確認されていて、今回も極地方が砂漠色になっていることも確認されている。
 また、9月18日ベラルーシのYuri Goryachko & Konstantin Morozovの二人がエリシウム(Elysium;215W,+23)付近で撮った画像も、NPCの周辺部を記録しており、全周で見えていることがはっきりした。すなわち、今シーズンのNPCは9月13日の観測を持って確認できたと考えられる。

(4) 今後の展望

 火星の季節が進むにつれ、山岳雲や氷晶雲がこれから見やすくなってくると思われるので、青画像がなるべく得られるような観測活動を望んでいる。

最近の月面探査から

(1) 2009年9月30日月面に隕石衝突の瞬間画像が得られた

 アメリカの打ち上げたルナ・リコネサンス・オービターは月面に隕石がぶつかり、クレータが出来る瞬間を撮影した。クレーターから衝突後に月面内部の石等が四方に飛び散る様子が、見事に記録されている。非常に興味ある画像が公開されている。

(2) 月面に水

 インドの打ち上げたチャンドラ・ヤーンが観測した月面南部の水のあるクレーターの画像を公開した。かなり広い範囲に水があることが観測された。水があれば月面基地の計画は急速に進行するものと考えられる。今後のデータ公開が楽しみである。

(3) エルクロスの月面衝突

 NASAは、エルクロスが月面に衝突する瞬間の画像の撮影に成功した。クレーターの内部に見事に衝突し、赤外画像で明るく輝く閃光を観測記録した。思いのほか飛び散り方が少なかったようだが、欲しいデータは得られたとか。今後の発表を待ちたい。

木星会議報告(参加者から)

 瀧本さんの持参された画像を次々にうつしながら、参加された会員から思い思いの感想が述べられた。のべ80名ほどの参加になり、例年の2倍にもなったにぎやかな木星会議となったことが報告された。今回はイギリスからロジャース博士にお越し頂き、盛り上がった50周年記念パーティーとなった。残念だったのは海部先生が欠席されたことだ。月惑星研究会の大先輩に当たる海部先生が次期IAU委員長になるとのことで、われわれとしても嬉しいことだ。

その他

月面課のその後と展望

 われわれの会は、惑星研究会ではなく、月惑星研究会であるから、どこかに月面のコーナーがあってもよい。しかし、現実には設けられていない。原因はいくつかあって

@ 簡単にコンパクトデジカメでも撮れる

  これによって、何でもかんでも報告されてしまい、大変な公開作業になることも考えられる。したがって、すぐに受けることは出来ない。そこで今回は例会に参加したもので話し合った。その結果を整理すると次のようになった。

 ・ 観測画像しか受け付けない
  何かの目当てを持ち、観測画像として報告されてきたものだけを受付するようにすればどうか。
  報告には、何を観測したのか報告を義務とする。

 ・ 月齢別の全面画像は受け付けない。

A 研究は受け付ける

 ・ レポートの受付
  レポートは他の惑星と同じく、受け付けることにする。

 このような、方向で受けるのならある程度、縛りのある中でできるのではないかと言う方向になっていった。しかし、実際には、これの受付とHPにアップする作業が必要になる。池村さんにお願いすることは、量的に今回の無理があるから、支部通信をもとに、支部とは限定せず、本部を含めて月面に関心のある方に名乗り出ていただき、人があれば開設できるように進めて行きたいと思う。
 そこで全会員にお願いだが、月面のHP作業をしてもいい方はありませんか。 なかなか大変な作業かと思いますが、いかがでしょうか。先日報道された月面の発光現象(隕石の衝突による発光)など面白そうなこともありそうです。

事務連絡

(1) 例会今後の予定
   2010年1月24日
   2011年4月25日
 会場予約の関係で決まっていますので、予定に入れておいて下さい。

(2)来年の木星会議は神戸を第1希望として話を進めたい。安達 誠がその任に当たる。


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