月惑星研究会関西支部例会・支部通信 No.63

2010年01月24日

 2010年最初の例会でした。高校生も含めて9名となりました。
 高校生も来るので、初心者にも分かるような説明できる資料を作らなくてはならないと思っていましたが、十分な時間がかけられず、不本意な準備となりました。例会は、毎回時間が足らず申し訳ないのですが。今回もばたばたと終わらなければならず、忙しい例会でした。

参加者
瀧本・林・熊森・畑中・坂本・山岡・ビジター(里田・木村:高校生)・安達 誠  以上9名
例会集合写真


近況報告

熊森
例会は1年に1度は来たいと思っている。今日は会費を払わなければならないと思い、参加した。今年の3月にはとうとう定年を迎える。4月からどうするかはまだ決まっていない。観測三昧を期待している人もいるようだが(安達のことです。はい。)そうはならないと思います。
瀧本
仕事が忙しくて思うように観測できない。夜の観測が難しいので昼間に太陽を見ている。土曜日と日曜日にだけ観測している。昨日は北半球と南半周に1群ずつ見られた。(今はSame Longitude Sun Spotと言って、同じ経度で黒点が発生しています。by 安達)4月からはますます忙しくなり、観測は厳しくなる見込みです。火星は、時々見ていますが、気流が悪く観測にならない日が続いています。
安達
仕事が忙しく、観測は少ない状態が続いています。今シーズンの観測は、木星の観測で48枚。火星は15枚と非常に少ない状態で、報告すらできておらず、池村さんに申し訳ない状態が続いています。今日の例会も何とか木星の模様についての解析をしたかったのですが、グラフにまで手が届かず、皆さんに申し訳ないことをしています。
畑中
望遠鏡と格闘しています。写真を撮っていますがコントラスト不足なので、いろいろ試したら、鏡の内側と外側で3mmも焦点位置がずれていました。凸鏡が原因のようでいろいろ試しながら改良を加えています。     おまけ:行ける人で畑中さんの家まで望遠鏡を見に行くツアーを計画し、望遠鏡をどのように修正したらよいかをみんなで検討しあうツアーを組もうかと話が出ました。帰りに熊野詣でもいいかも)
山岡
例会には始めて参加しました。年間数かしか見ておらず、スケッチも年間1枚しかスケッチをとりませんでした。もっぱら眺めているだけです。でも、少しがんばってみたい。21.2cmの反射で見ています。
観測はあまりできていません。昨年はテレビに出ました「となりの人間国宝」と言う番組です。それを見た人から連絡があって、大阪府高槻市のお年寄りから「月を撮りたい」と言う連絡があり、昨夜撮っていただきました。昨年、安達さんが自宅で観測されたときに「コントラストが低い。」と言われたので、原因を考えました。C14のCPが汚れているかもしれないと思い、望遠鏡に詳しい友人に拭いてもらいました。その結果、コントラストが上がり、手入れしないとまずいことを感じました。
坂本
子どもが産まれ、観測活動はできなくなりました。(そりゃあ〜。家庭のほうがだいじだよ。)火星が近づいているので何とか今月末には観測をしていきたいと思っています。高校のある滋賀県米原市は天気が悪く、今日は山科に来て久しぶりに青空を見た気分になりました。
里田
今年に入って、観測活動はまったくできていません。今は、晴れたときに太陽黒点を見ています。太陽黒点が研究活動に使えないかと思っています。クラブでは化石のこともやっています。
木村
よろしくお願いします。

最近の木星から

(1) SEBのBargeについて
 一時期は、GRSのBayに衝突するのではないかと、情報が流れましたが、残念ながら衝突は起こりませんでした。衝突すれば大赤斑の北側に回りこみ、面白い変化が見られることを期待していましたが、残念なことに、最近になって反射するかのように、前方に戻っています。衝突の可能性は今のところなくなってしまいました。また、最近になって長さも延びてきています。
 Bargeは大赤斑に近い一つではなく、前方にさらに3つあるが、そのうちの2つ目のBargeも微妙に前方に移動しているように見える。きちんと位置を測らないと確実なことは言えない。大赤斑直前のBargeは経度方向に長く伸びた姿となっていきました。今後どうなるのか注目していきたいと思います。


(2) 大赤斑北側のメタンブライトな白斑について
 この白斑は10月になって注目されました。大赤斑の北側に小さく明るく輝く白斑が目だっていました。いろんな人の調査から、メタンバンドでも明るいこの白斑は、9月から発生したのではなく、4月ごろにも発生していました。また、1月になってふたたび、白斑があかるくみえるようになりました。

 BAAのロジャースからのレポートではSEBの淡化する際には、このような白斑はしばしば起こっており、1989年・1990年にも発生していることが、BAAから報告されてきた。この白斑と、SEBの淡化とにどのような関係があるのかは分からないが、これからも続けて見ていきたい。最近になってふたたび明化しているので、SEBの淡化はさらに深まるのかもしれない。

(3) SEBの淡化
 SEBは順調に淡化を進めており、大赤斑の前後だけでなく、淡化は進行しています。現在はSEBnが青黒く残っています。このパターンはよくある傾向です。これから先になって、さらに淡くなっていくと思われますので、どのような進行になるかを注目したいと思います。残念ながら合に近く、観測意条件は次第に厳しくなりますが、目が離せません。
 また、いつ復活劇(SEB 大攪乱; SEB Revival)が起こるかわかりませんので注目する必要があります。SEBに白斑が出現したり、目だった模様が出た場合は、早急に連絡を取り合い、集中した観測ができるといいなと思います。

(4) BAの様子
 BAは輝度がなくなり、すっかり見えなくなってしまいました。気流のよいときに撮った画像によれば内部にリングはあるものの、リングの周囲の輝度はなく、非常に分かりづらくなっています。最近はBAのメタンバンドでのはっきりした画像がありませんが、だんだん、衰えているような印象を受けます。また、直後にある目だった暗斑も最近になって淡くなってきたように見えます。

(5) STBの小暗斑の連鎖
 11月下旬に、STBに小暗斑がたくさん並んででき、興味ある様子を示していたが、一つ一つの暗斑を追跡できていないため動きなどの様子は分からないままになってしまったが、面白い光景でした。下の画像は11月28日のGo氏の画像。たくさんの暗斑の連鎖が見られる。

火星の近況など

(1) 現在の火星の状態
 Lsは40度過ぎで、北半球の晩春となっています。極冠が少しずつ小さくなってくるときになり、極冠を中心に面白いものが見られるようになってきました。また、視直径は14秒となり、そろそろ最大視直径となってきています。残念ながら気流が悪く、よい画像は撮れていませんが、観測は架橋を迎えています。

(2) 1月20日のPaulo Casquinha Palmelaの画像にはたくさんの山岳雲が記録されています。タルシス3山とオリンピカは、なじみのあるものですが、それ以外にも目立つ山岳雲が見られたので、地形図とあわせてみました。
あと3つの山岳雲が見られたのですが、アルバ(Alba;115W,+45)に見られる山など、位置を同定することができました。タルシス(Tharsis;90W,+5)の3つの火山よりも明るい山岳雲が出ており、興味深い姿の火星像となりました。これらの雲は火星表面の大気の様子を示している、大切な指標となります。タルシス(Tharsis;90W,+5)の3つの火山とオリンピカ(Nix Olympica;135W,+25)は良く知られていますが、今シーズンはそのほかにも見られ、興味深い姿が見えています。


(3) 北極冠周辺の気流
 この時期の北極冠の周囲には時計と反対周りの強い気流が起こります。
 右の画像のようになっています。たとえば、Bのすぐ上のように斜めの前線面のようなものができています。この気流によって、ダストが巻き上げられることがあります。また、極地方から直接冷気が噴き出すことも知られています。
 極域は、縮小を始めると高気圧性の気団となりますが、極の近くはその気流によって周りへと噴出し、晴れている部分を形成するのではないかと安達は考えています。次の画像のが画像の、アキダリウム(Mare Acidarium;30W,+50)の北極冠と接する部分は黒くなっていますが、これはそれにあたる部分だと考えられます。
 極冠が縮小するときに頻繁に極周辺に出現しています。また、これらの晴れた領域は、ほとんどの場合、大きな暗色模様と同じ位置になっています。このことから、地表の模様の濃さ(熱の問題)と関係していることが予想されます。


(4) ダストストーム
 2009年7月31日にダストストームが発生したと、天文ガイドに書きました。場所はクサンテ(Xanthe;52W,+13)とクリセ(Chryse;33W,+10)だとも書いています。この発見は、Yuri Goryachko & Konstantin Morozov: Minsk - Belarusによるものです。ところが、これは誤報となってしまいました。実はその画像のノアキス(Noachis;350W,-40)に写っている白い模様が本当のダストストームで、間違った情報を流してしまい、迷惑をかけました。
 このダストストームは8月5日にはヘラス(Hellas;295W,-50)にも飛び火していますが、8月上旬で収束しました。
 その後、8月20日ごろにエリシウム(Elysium;215W,+23)付近に次のダストストームが発生しています。最近はクリセ(Chryse;33W,+10)の付近での発生が多かったのですが、久々のエリシウム(Elysium;215W,+23)での発生となりました。8月下旬に近づくと、クリセ(Chryse;33W,+10)にも弱いものが発生していますが、すぐに拡散して行きました。
 安達 誠が常に考えている、「ダストストームの発生場所(極域のものは除く)は、地形の陥没している端の部分じゃないか」と言う考えをもとに、発生地点を地図で照合する作業を進めていますが、今回は半分くらいしか当たっていませんでした。

(5) ブルークリアリング
 1月17日、柚木さんの画像に記録されました。その後、はっきりとしたものは記録されませんでした。衝の起こるLsは、接近のたびに同じではなく年によって異なります。そのため、火星の季節も異なりますが、年によってブルークリアリングの起こり方もかわります。今シーズンのような晩春の接近のときは、ブルークリアリングが淡かったことを記録しておきたいと思います。
 今回は、高校生の諸君も来ていましたので、ブルークリアリングとはどんな現象かも、解説を行いました。衝効果との関連が高いものと思われます。撮像するときも、衝の位置では露出時間が非常に短くなることから、これと大きな関係があるだろうとの参加者からの意見でした。

(6) 雲の高さとダストストームの高さ
 天文ガイドの「惑星サロン」に出したものを解説しました。古い画像とはいえ、そういったものの中から有用な情報があることを、改めて感じたと言う内容です。同一画面に雲と影の映っている部分があり、それをもとにダストストームの高さを計算すると、雲の18倍以上の高さになることを見出したことを示しました。
 オリンピカ(Nix Olympica;135W,+25)にかかる山岳雲よりもはるかに高く、ダストストームにスッポリ覆われることがはっきりしました。こんなに高いところまで舞い上がるとなると、小規模なダストストームでも、簡単に山岳雲よりも高くなることが予想され、地球上とは大きき異なることがはっきりしました。
右の円形の中に上空に浮かんだ雲とその影が見られます。左側にある直線は、ダストストームの影を追跡し、ダストストームの頂と影の一致したところの影の長さを示しています。長さを測定した結果、雲の高さの18倍と言う長大なながさとなった。

土星の近況

 合を回り、だいぶ時間がたって、観測条件は良くなったが、木星や火星の観測に重点を置いている人が多く、観測数は少ない。しかし、気になることとして、合の前よりもベルトが全体的に目だ立たなくなり、縞模様のはっきりしない様子になっている。おとなしい姿になり興味深い。

本年度の木星会議について

本年の木星会議の会場として、第1候補として神戸大学を挙げていましたが、残念なことにお互いに意思疎通がうまくいかず、神戸大学は候補から落ちました。例会では、別の候補を話し合いましたが、結論的に、京都産業大学をお願いできないか聞いてみることになりました。京都産業大学は、会員の河北秀世氏がおられ、ひょっとするとできるかもしれないという可能性を感じました。
2月14日現在、大学側と協議してもらっているところです。可能性はありそうですが、まだ確定的なことはいえません。京都市市街地の北縁になります。JR京都駅から地下鉄で10分の「北大路駅」下車。バスに乗って20分くらいです。決定できれば、月惑星研究会、ならびに月惑星研究会関西支部のMLで情報を流すことにします。

事務連絡

(1) 会費
   新年になりました。月惑星研究会関西支部は1月が会員としの更新の月となっています。例会当日には参加者からの会費を頂きました。まだ納めておられない方は、下記まで送っていただきますよう、よろしくお願いしたします。
 郵便振替では「1月17日に小澤さん」「1月29日に野口さん」からの会費を受領しています。

(2) 昨年の木星会議の御祝い金について
支部から、50周年記念のお祝いとして、3万円を差し上げました。しかし、本部では会費を集めていないうえ、会員からのお祝いもとらない状態で、支部の中からお祝いをいただくのは忍びない。東亜天文学会からの後援費の5万円と会費で十分にまかなえたとのことでした。本部の活動としての例会では、毎回会場日を集めており、特段に経費をかけていることもなく、支部にお返ししたいとの申し出をうけました。
 ロジャース氏の交通費も今までの経費で何とか乗り切れましたとのことですから、会長と話し合い、支部に引き取り、今度の木星会議開催への資金とさせていただくつもりでいます。会員の皆さまのご了解を賜りたく思います。もしも産業大学で開催するとすれば、会場費が必要になりそうなので、それに充当させていただければ、皆さんの意思を生かすことができると考えております。なにとぞご理解の程、よろしくお願い申し上げます。


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