月惑星研究会関西支部例会・支部通信 No.65(合併号)

2010年07月例会報告 2010年07月18日

 7月の例会は、9名の参加で行いました。
  今回は、午後の例会の前に伊賀さんのお宅に伺い(午前中)、伊賀さんとの懇談を行いました。伊賀さんの病気は徐々に進行していますが、パソコンのモニターに、伊賀さんの思っていることを表示してもらい、それを元に参加者がそれぞれそれについて答えるなど、久しぶりに、伊賀さんと交流ができ、参加者の皆さんも伊賀さんも喜んでおられました。

伊賀さん宅にて

木星会議準備の進行状況について、安達から報告しました。京都の大学で行いたいとお願いしましたが、結局のところ受けていただくことができず、会場の決定に苦慮していることを話しました。もう日があまりなく、追い込みにはいらねばならない時期になってのことで、あわてていることを報告しました。参加者から、会場の候補についての意見を出してもらったりしました。例会の直前に姫路科学館のほうで受けていただけそうで、ここで開催の方向でまとめていることを報告しました。

参加者
瀧本 郁夫・岡本 淋宏・前田 和儀・安達 誠・林 敏夫・柚木 健吉・ 奥田 耕司・畑中 明利・新宮 香耶子  以上9名
例会集合写真


近況報告を行いました

木星の近況

(1) インパクトその後
 同じところを撮像しているので同じ緯度に記録されてもいいはずだが、実際には緯度が違って記録されている。左側の画像はAnthony Wesley氏(Broken Hill; Australia)右はChristopher Go氏(Cebu;Philppines)。いくら地球からの画像で緯度が違うといっても、こんなにずれて写ることが起こるのかが話題になったが、理由のわかる説明はつけられなかった。
 安達は、大きな口径で、気流がよければ肉眼でみえることもありそうに思う。と語った。

インパクト時の輝点

(2) レポートから
 ロジャースから、たくさんのレポートが送られてきており、伊賀さんが精力的にそれの和訳を配信してくださっている。レポートにあった画像を使いながら解説を行った。
 @ 南半球の白斑や暗斑の動きに注目しBA・AWO(Anticyclonic White Oval)2つの高気圧性循環気流
  のマージ。
 A STB断片でのアウトブレーク
   アウトブレークは、6月17日に小さな明るい白斑として初めて記録された。WO2はSEB復活の発生源
  と同様な噴出プルームと思われる。
 B STBsの暗斑群
   次第に目だってきている。DL2=約+3.7度/日で後退している。

(3) SEB攪乱についての学習
 The Giant Planet Jupiterの挿絵を使い、SEB攪乱の基本パターンについて解説を行った。

火星の近況

 氷晶雲が東西に顕著だが、日中は東から西までにはまだ至らない。正午近くの位置で消滅している。火山は赤黒く記録されている。
 画像(撮影:Damian Peach)
5月11日にはNPCが二つに分かれて見える。北極冠にある谷の向きがこちらに向いているためか、このような見え方になっている可能性がある。色も明らかに黄色くなっており、砂嵐か砂嵐のベ ールが覆っているように見える。(右)
ヘラス(Hellas;295W,-50)は午前中は白雲に覆われているが、夕方になると、ふたたび白雲に覆われてくる様子がとらえられている。

火星


金星

 「あかつき」地上支援プロジェクトについて
  柚木さんから、いきさつが報告された。安達のところに和歌山大学の中串さんから協力要請の連絡があった。アマチュア側として協力してほしいと言うことだった。特に観測波長の決定については、柚木さんに御願いが回った。
  和歌山大学で最初の会合があって、柚木・安達が参加した。どのような画像をプロジェクト側が希望しているのか。どのような波長なら協力できるか。アマチュアが参加できるようなプロジェクトはどのような方法があるかを検討した。また、最近のアマチュアがどのような画像を撮っているかを見ていただいた。
  取れた画像は、アーカイブとして登録する方法を考えていることが、中串さんから報告があった。今後メールを通して検討されることになる。月惑星研究会のメンバーにも参加できる人にはこれから、逐次情報を流していきたい。

木星会議の細案検討

 大きな変化として、会場の候補がようやく姫路科学館に決まりかけていることを報告した。特別講演を計画していたが、講師の先生の都合でキャンセルとなり、講演会はなくなった。しかし、インパクトという面白い現象があったことから、かえって特別講演を行わないほうがいいだろう。



2010年10月例会報告 2010年10月16日

 10月例会は、木星会議直前の会となりました。また、安達の都合により、土曜日の開催となったため参加者は大変少なくなりました。申し訳ありません。

参加者
林・柚木・山岡・岡本・安達  以上5名
例会集合写真


近況報告

柚木
鏡筒の接眼部は、アスコのままだと薄いので3mmのアルミ板を曲げてもらい、鏡筒にあて金をした。また、ミラーのところにファンを2つ取り付けた。夏にヘルニアの手術を受けた。8月には新しいミラーが出来上がった。光軸があわせにくくあわせるのに苦労している。
夏の暑さで望遠鏡はチンチンになって、気流はメロメロになっている。とりあえず撮っているけれど撮れない。家では夕方はやりにくい。
どうせ、長生きできないのだからSCの鏡筒に穴を開けて、ファンをつけたらどうかと参加者からアドバイスが飛びました。(^^)
山岡
TS212mmカセグレインでスケッチをしている(木星を11枚くらい)写真を撮る気はない。継続して撮ることは仕事があってなかなかできない。やれるときにやるといったスタイルになっている。
岡本
大学時代の友達と大台ケ原でメシエマラソンをやってきた。60cmドブソニアンがあった。トラペジウムを見た。最近、スケッチはサボっている。
安達
仕事がいそがしく、観測はろくにできていない。帰宅すると遅くなって記録が湧かない。

木星について

◎ NEBリフトの生成パターンについて(林)   7月〜10月にかけて3つの大きなリフトが見られた。
  伊賀さんが以前提唱されたリフトのでき方の図を見ながら、今季のNEBを見返し、同じ出来方に
  なっていることを確認した。
  また、自分ためにと、展開図を作ることに挑戦した。

  淡化の進んだ木星について、展開図を使って木星面の全体をつかんだ。

木星会議について

 22名の参加の申し込みがきています。参加者のリストを見ました。また、最終のプログラムと役割分担の確認を行いました。
  安達が公務のため、初日は大幅に遅れていくことがはっきりしており、司会・歓迎の挨拶などの役割を確認しました。

金星の話題

 <和歌山大学での会議の報告を柚木さんにしていただいた。>
  フィルターについてよく知っていると言うことで、メンバーに加えていただいた。
  あかつきに搭載されたものに合わせたフィルターを、地上で支援できるフィルターとして探すことになり、テスト画像が見せられた。画像は近赤外か赤外で撮ってほしい。赤外は1000nmのフィルターでエドモンドのフィルターで何とか撮れた。午後の2時から3時くらいまでが対象になるが撮影は難しいかもしれない。2〜3月に同時観測をしたい。
 外合近くの金星を撮ってどれだけできるかあやしくなっている。900nmはもっと困っている。幅を狭くして撮らなければならないがアマチュアでは難しいだろう。



2011年01月例会報告 2011年01月23日

 11月に木星の攪乱が起こって最初の例会となった。模様は次第に元に戻りかけている。今回は、滋賀県の米原高校の高校生が3人参加され、にぎやかな例会となった

参加者
畑中・林・柚木・坂本・熊森・薄出・安達   高校生:小野・西澤・土本   以上10名
例会集合写真


近況報告

熊森
年1回くらい来ている。年金生活に入っている。現在は木星や土星を追いかけている。夜に起きているように思われているが、昼も起きている。(^^)今日はイギリスからカメラを買ったので、それを紹介する。
柚木
定年になったが働いている。週4回の仕事で土日は休みとなったが、のんびりした分観測ができなくなってしまった。やたらと寝て、画像処理に力が入らなくなった。処理しなければならないものがたくさん溜まっている。DMKを使っているが、メタン・紫外は感度不足だと思っている。
安達
相変わらず、仕事に追い回されているが、時々木星の観測を行っている。かく乱が発生し、気合が入った。これからは少しがんばらなくちゃと思っている。
畑中
5時半ごろ帰宅し、木星の観測をしているが木星はグニャグニャでろくなものが撮れていない。処理の仕方を熊森さんに習った。アイピースで拡大率を変えても像はよくならない。笠井の1.5倍のバーローが悪いのかと、試行錯誤している。(テレビューは悪くない。拡大率の低いのはあまりいいものが見られない。:柚木)
木星や土星を楽しく撮っているがシーイングは3以上にならず、ろくに見えない。風本さんのところは同じ京都で10kmくらいしか離れていないのに、どうしてこんなに違うのかと思っている。年末に土星を初めて撮った。伊賀さんからの情報を見ながら感心している。今はフィルターに悩んでいる。
坂本
1年生を3人連れてきた。理数科の実習で暗柱が写った。今後、どんなまとめ方をしていけばいいかを教えて欲しいと思っている。
高校生
それぞれがよろしくと挨拶

高校生の発表

 11月から撮像を始めて、11月12日に偶然、暗柱を記録した。めったに見られない現象だと 言うので観測を続けることにした。可視光とメタンで撮像している。
 可視光とメタンを比べ、色の違いから雲の高度が分かるのか。
 暗柱の高さを知りたいが、データで必要なものは何か。
 こういったことを知りたい。機材は15cmの屈折にDMKと冷却CCDで撮像しマカリで処理 する予定だ。明るさを測り、数値化し、変化を追いかける方法や赤道帯の明るさを調べたりするこ とも面白いかもしれない。
 参加者からいろいろ質問を受けながら、話し合った。

木星の近況

(1) NEBリフトの生成(林)
 伊賀さんの作られたNEBリフトのでき方の図を見て、NEB中央の白斑が成長してく様子を解説してもらった。高校生にも分かるように解説を行った。また、林さんが作られたNEBリフトの画像を見た。
(2) SEB攪乱
 かく乱が発生した。教科書的な変化を見せており、興味深い。伊賀さんからの情報や、ロジャースの発信したレポートの和訳が出て、大変勉強になっている。
<発生について>
 @11月9日にGoさんが2=290度の白斑としてとらえた。
 A日本では山崎さんが同じ日に初観測をした。堀川氏は同じときに肉眼観測をしているが、とらえては
  いない。
  ずいぶん前に仙台の小石川氏が、攪乱の発生に先立って白斑が見えた。でも、多くの人は見えな
  かったので、かなり肉眼では見えにくいものが先行して見えるといっておられたのを安達が聞いて
  いる。図らずも、今回はまさにその形となり、堀川氏の鋭眼を持ってみても捕らえられなかったことは、
  小石川氏の指摘が正しかったことを裏付けた。

攪乱の進行

 Bこの白斑はメタンやIRで明るく観測された。
 C一般に暗柱と呼ばれている青黒い模様は、この白斑の後方にできている。暗柱の肉眼による確認は
  11月12日になった。(堀川氏と安達のスケッチで確認)
 D攪乱の進行について
   ロジャースの本の挿絵などを使って、高校生にも分かるようにかく乱の教科書的な進行について
  安達から解説を行 った。
 E南分枝はかなり移動スピードに幅があり、1ヶ月に100度から150度くらいに達する。
   今回は11月9日と12月9日の1ヶ月間で105度移動(2=35度)しているからかなり遅いほうに
  分類される。2ヶ月間同じ移動速度だとすると、1月9日には2=140度となり、大赤斑の左側となる。
  (1月8日の池村さんの画像)
   もしも、この時点でできていたGRS前方の暗斑が南分枝の先端だとすると、その後1ヶ月たった
  1月9日は140度に加速したことになる。画像を点検する限り、GRSの前方の暗斑は南分枝では
  ないように思われる。
攪乱の進行

 F北分枝はー140度からー260度/1ヶ月と南分枝よりもさらに幅が広い。今回は120度から130度
  くらいに観測されているから、こちらもかなり遅い進行だと思われる。12月9日にはGRSのすぐ下
  (右下か)までやってきた。12月9日のFreddry Willemsの画像では2=160度か170度かはっきり
  しないが、どちらにも淡く小さな白斑が先行している。
   ところが1月9日のGoさんの画像からは先端は1周回ったsourceの下まで達している。このことから
  最初の一ヶ月は120度か130度だったのに、その後180度に達していることになる。
   これとそっくりなことは、1998年の攪乱のときに安達がおなじ現象を観測している。
攪乱の進行

 G中央分枝は1ヶ月間にー27度からー86度の値を示すが、今回の最初の1ヶ月間はー15度しか
  移動しなかった。しかしその後加速し、−50度だと思われる。ただ、12月9日の時点ではどこが中央
  分枝の先端かははっきりしない。茶色っぽく着色してきた部分の先端だと考えたほうが良いだろう。
  1月9日になるとますます分からなくなった。
   熊森氏は、SEBの南北につながっている部分の先端を中央分枝と呼ぶのが適当ではないかという
  考えを出され、参加者で納得した。それでもー50度ではなくー35度くらいにはなる。
 H注目したいことは右のABCの3点である。
 I発生源(source)は3箇所あった。元の発生源・中央分枝の先端・中間の発生源の3つである。
  それぞれの場所から出た白斑はロジャースのレポートに出ている。
 J1月15日の伊賀さんから知らせてもらった画像(00h36.5m)はSEBsが特異に見えるが、
  コントラストがかなり高く処理されていること。SEBnからGRSbayの右にもどり、SEBsにという経路で
  できた模様で南分枝と言うには移動距離が長すぎないかと参加者で考えた。12月29日の永長氏の
  展開図がその根拠になる。
   熊森氏からはのこぎりの歯状の模様と南分枝との関係がはっきりしないと指摘された。
  12月29日のHPに紹介されていない画像からも分かるが、どこからが南分枝なのかはみんなで議論
  する必要があるだろう。画像は赤黒い斑点のある位置を示す。
 K安達の仮説
   今回は、安達が考えていることを紹介した。
  地球の低気圧を白斑とすれば、上昇してきた気流は高空まで達し、そのあと下降気流になる
  白斑の進行方向ではなく後ろ側に下降気流が出やすいため、白斑の後方に晴れ間ができ、暗柱と
  なる。地球上の低気圧にできる寒冷前線後方の晴れ間と同じ原理ではないか。
攪乱の進行


土星の白斑について

 カッシーニの土星の画像を見ながら、各人感想を話し合った。巨大な渦の拡散に世界中が驚いて いる。Marc Delcroix氏のまとめられた画像を見ながら話し合ったが、整理してきていないため良 くわからないまま時間がたってしまった。北熱帯(NTropZ)の白斑です。最近は、南北に分かれて二 条になって記録されるようになり、ますます大きくなってきており、このままだと鉢巻になってし まいそうだと話し合った。

新しいカメラの紹介(柚木)

その他

 惑星観測用のフィルターの推薦
 月面課Lunaの処遇については、時間がなく、次回送りになりました。

事務連絡

 会費を次の方から頂きました。
 出席者から 1年分1000円 熊森・畑中・坂本・柚木・林・安達
 振り替えで 1年分1000円 野々口・菅野・中井
  途中入会の曽我さんは、8月に後期分として500円を送ってくださっています。
  お礼申し上げます。


 次回例会
     4月10日(日) 山科アスニーとなっています。


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