月惑星研究会関西支部例会・支部通信 No.66

2011年04月10日

  未曾有の大震災から約一月がたちました。会員の中には、被害やご不幸のあった方もあるのではないかと思います。日本の再生に向かい、みんなでがんばっていきましょう。折りしも例会当日は選挙の日、中には投票のためにこれなくなった会員もありますが、参集していただいた方々と、木星や土星について、いろいろ話し合うことができました。

参加者
熊森・林・瀧本・畑中・安達  以上5名
 さびしい例会となりました。
例会集合写真


近況報告

畑中
春の異動で、海の家から山の家に転勤になりました。奈良県との境に近いところで、自宅から車で30分くらいのところになりました。パラグライダーをしている人もいて、習えそうで、楽しみにしています。土星を撮像していましたが、報告を遅れたら、つい遅くなり2ヶ月も遅れてしまいました。シーイングは最近になってようやくましになってきたように思います。画像処理は熊森さんに教えていただき、80パーセントの大きさで処理をするとうまくいくことが分かりました。
20日くらいおきに土星の撮影をしている感じになっています。カメラをDFKにしたいなと思っています。木星のほうは最後まで追いかけられずまともには見ることができず、失敗したなと思っています。関西天文同好会に鳥取県の中学生が惑星観測を習いたいと入会者があって、その中学生が2回ばかり自宅に泊りがけでやってきて、刺激を受けています。ブログにも載せられて驚いています。この中学生は、本部の米山さんとも知り合いのようで驚きました
安達
観測はほとんどしていません。最近は火星のシミュレーションの次年度版の作成に時間を使っています。でも、PC98の機械の状態が良くなく、せっかく修正したのに保存できなかったりして、合計6時間くらい時間を捨ててしまいました。がっくり来て作業がストップしたりして、なかなか進んでいませんが、それでも何とかがんばってやっています。
瀧本
安達さんの書いた本を購入しました。また、ミラーレスでオリンパスの一眼レフを買いました。今日は早速持ってきて、いろいろ写しています。値段は3万円くらいで安く、重さも軽くとても扱いやすいです今年になって帰宅が遅くなったため、木星の観測はやめてしまいました。土星を撮影していますが2月から3月は天気が悪く思うようにできませんでした。何とか土星の良い画像を撮りたいと思っています。ミラーレスのカメラを買ったためDFKが買えなくなってしまい、反省しています。
熊森
退職して一年がたちました。DMKにイギリスからかったチップを着けなおして撮像をしています。今までと比べると、総じて2倍ほど感度が上がりよい結果が出るようになりました。合成Fは40あまりで撮っています。

木星のまとめ

 前回の例会でも話題になった、SEB revivalの南分枝や北分枝・GRSについて話し合いました。

(1) 南分枝

  @移動量
   大赤斑との会合は1月の初めだという、堀川さんのレポートがあった。それに基づき。12月
  から1月にかけての木星の画像から、追跡を行った。
   南分枝の活動は文献によると、100°〜150°が出ている、最初のひと月間は、進行が遅く
  思われたが12月になって展開が変わってきた。1月8日や9日の画像を調べると、どうやら
  南分枝はGRSと会合しているらしいことが分かる。特に9日のDamianの画像ではGRSの右側
  に抜け出ている様子が見られる。経度を計算すると日と月当たりの移動量は170°/月となり、
  文献から出ている移動量とは大きく違っている。先端をもう少し長めに見れば175°位だという
  こともできそうである。すなわち、今回の南分枝の移動量は、今までにない速さだったと考え
  られる。

  A先端の位置
   南分枝の先端がどこにあるのかを判断するのは非常に難しい。1月9日の例をとると、SEBs
  の鋸の刃のような模様を通常のSEBとすると、その境目が先端となる。安達はそこが先端だと
  考えて計算したが、例会では熊森氏が、鋸の刃の模様でも色の違うところは南分枝の影響を
  受けていると考えられると指摘された。(影響がなければ色は変わらないはず)
   そう考えると、色の変わったところまでを先端と見るべきかもしれない。南分枝だけに寄らな
  いが、表面の模様の下に先行した流れができていると考えたほうが良いのではないかという
  考えになった。過去の100°〜150°の値は、最近のような高精度の画像を使ったものではなく
  眼視観測レベルの観測であり、同じレベルで扱うのはよくないだろうということが背景にある。

  B暗斑群
   過去の観測を見ると暗斑群が経度増加方向に移動していることが記されている。これは鋸の
  刃の付け根が暗化して暗斑として観測されていたもので、実は、過去の南分枝は毎回、今回
  見つかった鋸の刃のような模様が出現していた可能性がある。
   昨年の8月は鋸の刃の眼は細かかったが、発生時にはかなり荒くなっていた。こういったことも
  revival発生の前兆現象といえるかもしれない。

(2) 北分枝

  @今回の進行状況
   特別に注目していたのは、大赤斑の北側の通過である。通過するときに、北分枝の一部が
  大赤斑の右側に巻き上がり、南分枝と合流するかどうかということ。これについては、南分枝は
  前方に進んでいくものと、SEBsに向かっていくものとに分かれたというのが、例会での共通の
  認識になった。
   南分枝のところでも書いたことだが、北分枝の流入によって、SEBs側に回り込んだものは、
  追跡が困難になった。
   その後、北分枝は一週回ってしまった。南分枝のAの所でも書いたことだが、過去の文献は、
  過去の肉眼観測に基づく観測結果であり、一月当たりの移動量は、肉眼的には出ている通り
  だが、最近の精緻な画像では、もっと早く進行しているのではないか。だから、今回出てきた数値
  が過去のものより早いのは、観測方法がより進歩したことによる影響ではないかということで
  ある。

  A1993年のときの北分枝
   1993年は、安達は初期の様子を毎日観測できた。とりわけ重要なことは、今回の北分枝の
  細くとがった先端を、このとき観測していることである。一月当たりの移動量は文献の数値と
  たっていたはずだが、肉眼では気流のよいときに(30cmでの観測)、とがった先端を観測して
  いる。展開図をつくるときに気がついたことだが、かなり速いスピードで進行している現象をとら
  えている。
   次回の例会までにその様子を整理して、今回の現象と比べてみたいと思う。

土星のまとめ

(1) 発生
   12月8日に発生した。5日間で30度くらい経度増加方向に伸びていく姿が記録された。

(2) 白斑の特徴の整理
   右のような特徴が見られた。1903年6月15日にとらえられたバーナードの斑点はヤーキース
  天文台の102cm屈折でNTZにとらえられてる。残念なことに詳しい情報は例会までには見つける
  ことができなかった。


(3) 移動について
   +2.8°/day出移動しており、大きな変化はなく、1ヶ月で84度くらい移動している。

(4) 南へ拡散
    右の写真は3月23日のD.C.Parkerさんの画像だが、矢印の先に、白斑がいくつも並んでいるが
   これは新たな白斑の発生ではなく、その下に二条ある白いベルト(南分枝)が一週回って、この位置
   に流れてきたものである。この様子は例会直前に熊森氏が作成された北極を中心とした全周の
   展開図にも非常によく確認で、きる。大きな渦になって南に広がっている様子が鮮明にとらえられて
   いる。
    例会の出席者でこの展開図を見ながら、全体の様子と白斑の発生源を確認した。興味深いのは、
   この画像からは、誰が見ても先頭の小さな明るい白斑のように見えるが、発生源はその正反対の
   30度くらいにある(丁度ぼやけた部分)暗斑であるとことだ。
    しかし、例会の参加者からは、発生源から汽車の煙よろしく経度増加方向に本当に広がっている
   のか疑問に思うと言う声が相次いだ。

(5) 発生源
    発生源は移動していなく、そこから沸きあがった雲が白斑だとすると、白斑は、大気中に浮かんだ
   雲の発生源ということになる。白斑が衰えていくのならなんとなく分かる気もするが、新しい明るい
   白斑が繰り返し発生するのが、もともとの発生源から供給されているものとは到底考えにくく、
   参加者一同、首をかしげていた。
    ここに出ている範囲なら分かる気もするが、一周遅れとか、それ以上になると、理解しづらい
   ものがある。

(6) スポーク
  そもそもいつから発見されたか
   ○1980年にボイジャー探査 機で発見
   ○カッシーニ探査機が土星に到着したときは、観測されなかった。
   ○2005年に再び姿を現した。
   ○環の平面の傾きが小さい時期に出現すると言われている。
  成因の説
   ○土星の雷による電磁波でできるという説。今回の白斑と関連するかもしれない。
   ○粒子の向きが変わるために起こるのではないかと言う説。(磁力線と合うか?)
    この二つが出てきたが、まだ解決されていない。
  探査機の観測から
   ○探査 機ボイジャー2号の画像を分析した結果、直径が1ミリミクロンの極小微粒子の 集合体で
    あることが判明 。
   ○環状構造の面の境界に対する観測によって確認
   ○すべてが楔状の形をしている
  HSTの観測から
   ○環の面と太陽のなす角度が大きくなるにつれて,スポークは次第に消えていく様が観測された。
   ○カッシーニが同じ条件で観測したが写らなかった。
   ○スポークの形成は突発的。
   ○位相による効果でないことが分かった。
  最新?の理論
   ○ゴーアーツ氏とモーフィル氏の理論(有力視されている)
   ○隕石が環を形成する物質と衝突
   ○局所的に密度の高いプラズマを生成
   ○衝突に続いて,急速に膨張し,高密度の中性粒子雲が形成
   ○膨張するにつれて,太陽の紫外線により電離
   ○プラズマとなり回転しながら表面に移動する。
  このような流れから、リングの表面付近に模様が発生し、自転と共に楔形に変形していくと言うのだ。
 残念だが、これを詳しく解説できる人がなく、分かる範囲で想像するにとどまってしまった。(無念)
  報告されてきた、スポークの動画を鑑賞した。

新しいレジスタックス6

  熊森さんから、新しくなったレジスタックス6の特徴をレクチャーしていただきました。
  内容は次の通りです
  (1) Y800コーデックの1GB超えのファイルが読めるようになりました。
  (2) 多数ファイルの処理が途中で止まります。
  (3) マルチアライメントポイントが標準になりました。
  (4) マルチポイントでは繋ぎ目破綻が起こることが多い。
  (5) パソコンのマルチコアCPUに対応するようになりました。
   働くと処理速度がもの凄く速くなります。
   これが働かないことも多い。理由は分からない。
  (6) ノイズフィルター処理が着いたので上手く使うと最大エントロピー処理に近いものが得られる。


その他

(1) 観測用のフィルターについての討議は、柚木さんが欠席され、お預けとなりました。
(2) 月面課
    大阪支部の時代にあった月面課の課報が全部PDFのファイルになりました。課長の大口さん
   ががんばって全部PDFにしてくださいました。単純に考えれば、これをHPに掲載すればいいの
   ですが、個人の住所なども含まれており、全部を点検し、住所の部分をカットするなどの処理を
   しないと、そのまま掲載はやめてほしいと言う大口さんの希望もあり、安達のほうでこの問題も
   預かりとさせていただきます。
(3) 次回の例会
    本来は7月ですが、安達が7月の日曜日がどうなるか(全部あかない)可能性が出てきたた
   め、急遽6月になりました。ご理解ください。


次回の例会は 6月19日(日)山科アスニーです。


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