月惑星研究会関西支部例会・支部通信 No.69

2012年01月22日

 新しい年を迎えました。本年もよろしくお願いいたします。
 木星は西に傾き、かわりに金星と火星の季節になってきました。今回は、木星は言うに及ばず、火星や土星のことも話し合いました。

例会集合写真
<佐藤さん撮影>
参加者

奥田・岡本・風本・畑中・林・薄出・熊森・安達  

自己紹介と近況報告

奥田
昨年同様、実際の観測はできず、ネット上での観測をしている。自宅は、20年来使ってきた、望遠鏡の格納庫がおかしくなり、応急修理をした。これからは火星を見たいと思っている。
岡本
昨年末に結婚した。今はC8(20cmシュミカセ)の光軸修正に悩んでいる。木星の観測もできていない。シュミカセの光軸修正についてアドバイスを頂きたい。
風本
3年ぶりに例会に出席した。前回は2009年1月以来だと思う。観測は少しずつやっている。宮古島の50cmをうまく活用したいと思っている。今年の3月から10月までは、できれば月に1回くらい観測に行きたい。とりわけ天王星を取りたいと思っている。DMK618でIR742を使い1/4秒で写す事ができる。昨年の9月28日に天王星に模様が写ったが、こういったものをねらってみたい。
畑中
ここしばらくは雨が多く、とりわけ9月(台風12号)はすごかった。熊野川の水位は20mも上昇した。木星会議では熊森氏から画像処理を習った。光軸をまた狂わせてしまったが、合うとある程度は写るというのが分かった。仕事がから帰ると木星は南中を過ぎるようになってしまった。
観測はできていない。シーイングは極めて悪い。同じ京都なのに風本さんのところは気流が良く、残念だ。最近は画像処理の方法が分からなくなってきた。撮像し、記録を貯めているだけで処理ができていない。火星は、昨年末の月食のときに初めて見た。このときに自宅から初めてカノープスを見た。DFKを買ったのでやる気はあるのだが、気流が悪い。
薄出
2年ぶりくらいになるか、久しぶりに来た。昨年の秋に ToUcmaをやめてDMK618を買った。熊森さんから習いながら撮像している。カラーだけはまだ ToUcamを使っていたが、これも変えようと考えている。自宅のドームは作って20年になり、故障が起こり、修理が必要になっている。
熊森
退職したが、昨年から週に4回勤めている。火星が東から出てきたが時間が悪く、あまり観測できていない。視直径は10秒になったので気合を入れなくちゃと思っている。天文ガイド用の原稿を塩田さんから依頼を受けてかいていたが、原稿用のカラー画像の色調に悩んでいる間に終わってしまった。印刷用は難しい。
安達
観測はほとんどしていないに等しい。見ても、模様が見えなかったり、晴れているのに雨が降っているなど、何もできない状態が続いている。これからは火星をがんばりたいと思っている。

木星の近況(安達)

(1) STrZのDark Streakについて

9月末ごろは2=270°付近に先端が位置していた。先端からはSTBに向かって前方に淡いベルトが伸びている姿が見られていた。このstreakの前端とGRSとの間には、SEBsと思われる緯度に暗斑が並んでいる。この暗斑はDark Streakと同じ色調であり、SEBとは色調が異なっている。暗斑とDark Streakとの間には微妙な緯度の違いがあるものの、色調から見ると、何らかの関連があるのではないかと思う。
 また、高解像度の画像を見ると、最近のGRS前方のDark Streakは、今までとは形状が異なり、SEBとの間をグレーのバンドが埋め尽くしている姿を見せている。こういった特徴から、今まで知られていたDark Streakとは性質の違う、違った現象の可能性もあるのではないかと思う。
 今までの例から見ると、半年くらいで淡化しているようだが、今回は11月以降目立った淡化は見られていない。
 最近は、BAの真北にDark Streakの前端が位置しているが、その北側にSEBsの暗斑が入り込んでいるような姿が観測されている。SEB本体とは異なると言うことだろう。

(2) SEBの後方攪乱領域について

   11月の初めごろと、12月の初めごろの2回観測された。11月の初めごろの現象は、長く続かなかったが、12月の現象は比較的長く続き、GRS Bayから40°位まで後方に伸びていった。現在は、それがさらに長く伸びていく様子は見られない。しかし、1月11日に白斑が発生し、新たな活動かと思われたが、大きな広がりに発達することはなかった。
   この現象は、伊賀さんが指摘され、安達のところに報告されたものだが、収束したと言うわけではなく、今後も監視が必要だと思われる。
   SEBは、大赤斑の前方で赤みが強くなり、熊森氏は、1月になってから赤みが強くなったようだと指摘されている。

(3) STB

   STBは大赤斑の前方に比較的長い暗部が見られ、堀川氏は昨年後半はGRSの南方でSTBが再生され、この暗部の長さが伸長しているようだとして指摘している。1月になり、その傾向はなくなり、STBの暗部はGRSの南部からはなれた。このとき、STBsは最後まで長く残っていたが、STBnがかすかにGRSの南方を通り抜けている姿が観測されており、一時的にGRSによってSTBの幅が狭くなったこと。そして通過後にふたたび拡がることにより、STBの暗部が生産されていたのかもしれない。

(4)

NEBが細くなった現象について    9月以降、NEBは細くなってきた。現在はNEBの北側にあったBargeがむき出しになると言う劇的な変化を見せている。安達は、この現象のきっかけがないかと気にしていたが、画像をチェックする過程で、NEBの中央に赤い東西に伸びるバンドができたことが大きな原因ではないかと考えた。
   NEBは、このバンドの緯度で小さく明るい白斑ができ、それが南北に広がってリフトを形成することが多いが、この位置に東西に赤いバンドができたため、NEBの南側からNEBnに向かって流れる気流がさえぎられ、NEBnが淡化したのではないか。現在は、そのNEBの中央にできたバンドが、NEBの北縁を形成した姿となっていると考えている。
   具体的にいつからこのバンドができはじめたのか、バンドがはっきりできた右下のNEBnが淡くなったのかは、まだ追跡できていない。

火星の近況

(1) 10月以降の変化の追跡

   昨年10月以降の報告された観測から、火星面に見られた変化を紹介し、参加者と検討を加えた。

   北極冠が形成された後、縮小期に入ると、明け方のターミネーターや山岳雲が顕著に見られるようになった。これらの様子は各観測者から送られてくる画像からよく分かる。また、縮小期に見られる、極冠周辺の晴れた部分(青画像で黒く写る部分)も、ボレオシルチスやアキダリクムの南側など、大きな暗部のある地域に、いつものように見られるようになった。また大気中の水蒸気が増えると見られるようになる高緯度地方のターミネーターの朝霧も次第に顕著に見られるようになっている。

(2) 氷晶雲について

   氷晶雲も青画像や、顕著な部分ではカラー画像でも見られるようになった。とりわけクリセ(Chryse;33W,+10)やイシディス(Isidis;268W,+23)付近の上空はいつも決まったように氷晶雲が見られており、今回もご他聞にもれず、広がりが記録されている。このクリセ(Chryse;33W,+10)付近やイシディス(Isidis;268W,+23)付近は、火星面の中でも高度の低いところに位置している。地下にあると思われる水蒸気がこの付近で大気中に放出され、氷晶雲の水蒸気の供給源になっている可能性がある。

(3) ダストストームについて

   ここ3ヶ月の間は、明瞭なダストストームは観測されなかった。しかし、報告された火星画像の中には、明け方のターミネーター付近がかなり明瞭に黄色く明るくなったものがしばしば記録されている。そこで、MRO(マーズ・リコナッサンス・オービター)の画像を点検すると。北極冠から低緯度地方に向けて風が吹き出し、それに伴って小規模な砂嵐が起こっている様子が記録されている。報告画像の黄色っぽく記録された部分は、この砂嵐の拡散したものであることが分かる。
   MROの画像では、このようなダスティーな大気の様子は記録されることはなく、この部分については地上観測の独断場となっている。北極冠がどんどん小さくなってくると、大きなダストストームに発展する可能性もあり、いつ、どの場所で黄色っぽくなっているかを、記録にとどめなければならない。

(4) NPCの変化

   MROの画像を点検していて面白い事実に気がついた。NPCは縮小期にはNPCのエッジの部分が非常に明るくなり、輝点の見られることが多い。火星の視直径が大きいとクレーター底が明るい輝点になって観測されることもあるが、今回は視直径が小さく、クレーターとしての同定はなかなか困難だ。しかし、輝点がここ一月間の間に観測されるようになった。
   図のようにMROの画像から特定の同じ地域のNPCの画像をならべると、おもしろいことが発見できた。北極冠の左側に白く輝くクレーター底があるが、その左側は日によって大きく見え方が変化している。これは固体の極冠が見えているのではなく。気化した極冠からのガスによって形成された雲である。図の中には、固定された白い極冠が見られるが、特に明るい部分は明らかに雲であり、日によってこの雲は姿を変えている。肉眼で観測すると、こういった時期のNPCのエッジは日によって違った姿をしていたが、これがその原因だと思われる。
   今まで、こういった時期に極冠の周辺部が非常に明るく観測されていたのは、まさにこの白雲だったと考えられる。

土星の近況

   土星は、新しいシーズンを迎えた。明け方には南中近いところまで姿を見せている。月惑星研究会にも観測報告が送られてきており、中には精緻な画像も送られている。その中で注目されるのは昨年発生したSTZの大白斑である。送られてきた画像を見ると、まだその残骸ははっきりと記録されている。まだまだ目が離せる状況にはないようだ。
   また、1月1日のJim Phillips氏の観測ではSTrZに小さな白斑が記録されている。セブ島の阿久津氏からの観測画像を見ると。この部分には非常にたくさんのディティールが見られ、その中の一つが白斑として見えたものであることが分かった。今年は南半球が面白そうである。

金星の観測から

   視直径が大きくなり、高度も高くなったことから観測方向も増えてきている。ただ、フィルターの選択については、何をねらっての選択かはっきりしないものがある。ねらいを絞って観測し、目立った雲が出たときは、それの追跡をしなくてはならない。そのためには観測者が増えることがまず必要だろう。

天王星の観測から

   風本氏が昨年、非常に良い画像を得られた。今回の例会には出席されたので、そのときに状況をうかがった。最近はフランスのstanislas maksymowicz氏(なんと発音するのか分かる人は教えてください)が盛んに報告されている。この方からは、自分がどんな条件で観測しているか。どんな条件なら模様が見えるのかのレポートが来ており、和訳をした。
   それによれば、天王星は薄明のときの気流のよいときをねらって観測しなければ模様は見えないことがかかれている。淡い模様は暗い空の中では模様は見えなく、適正な明るさと倍率を必要としていることを力説されていた。そういえば、明け方の薄明中に猛烈にシーイングの良いときを何度も経験しているが、そういったときに観測すれば、模様を楽に検出することができそうである。もちろん、これは撮像についても同じことがいえるかも知れない。

Win JUPOSの最新版から自転補正をしながらの画像処理について

Win JUPOS最新版9118 自転補正をしながらコンポジット画像処理するもの。

  普段は3000フレームAVIで撮影している。 できた静止画の3〜4枚を新しいWin JUPOSでテストしてみた。AVIファイル直接の画像処理は上手くいかなかった。
  100秒間で撮ったAVIファイルをRegistax6で画像処理した静止画をWinJUPOSで自転補正を処理しながらコンポジットするもの。
  まずWinJUPOSで測定タブに画像を表示させ、マスクをあてて、視直径・時刻・傾きを測定し、ファイルに保存する。
  ツールのオプションにあるDe-rotation自転補正をかける。
  撮影時刻は、撮影時間の中央に自動的に記録され、その時刻を基にした位置でコンポジットされることになる。

  今回は5分間のデータをコンポジットした。


   撮影時間を長くしても大丈夫かと思われたが、自転補正画像はマップ展開と同じ方法をとっているので、画像はずれず、大丈夫だった。


<ここでテスト画像の紹介>
 枚数が多いほどSN比が上がり、はっきりするし強調も強くできる。
 このソフトは、土星でも動く。
 マップにしているので位置ずれはない。
 私は今までL画像には9000フレームを基準にしてきたので、このソフトを使ったからと言って、それほどの効果はないように思う。クリストファーGoさんのように、純粋なRGB分解撮影していると自転による色ズレ発生しない短時間での撮影に限られていたが、この自転補正コンポジットを使うと時間制限がほぼ無くなるので、特に効果があると思います。
 5分や8分もかけて撮影したものにでも問題なく効果がある。
 最近L画像は10000フレームが普通になりつつある。


木星会議の報告

 昨年の木星会議の様子を、撮影された画像を元に、順を追って説明した。今回の例会の参加者のうち3名は参加者だったが、5名は参加されなかったので、概要を解説した。
 木星会議の様子を知りたい方は、事務局の安達までお知らせください。文書の内容と、撮影された画像をCDに入れて送ります。

<次回の木星会議>
  2012年は木星会議はなく、2013年2月に旭川で行われます。格安航空券のピーチができましたので、新千歳までは、かなり安くいけます。問題は服装かと思いますが、今から積み立てたり、春になって放出される防寒服を仕入れておいてください。関西で普通にみんなが着ているダウンジャケットではダメのようです。上下スキー服のいようなものがいいようです。阿久津弘明さん。度ないですか?
  それから2013年の木星会議は沖縄と言う声もあがっています。北海道から一気に沖縄です。
 これも格安航空券がいいな。ピーチがつぶれなきゃの話ですが・・・。

事務連絡

(1) 会費

   木星会議のときに受領した方
    山田 真裕さん 2010年分・2011年分
    米山 誠一さん 2010年分・2011年分・2012年分
   振込みの方
    菅野 清一さん 2012年分
   1月例会での受領者
    風本 明さん  2010年分・2011年分・2012年分
    以下、2012年分を受領した方
      熊森さん・奥田さん・畑中さん・林さん・薄出さん・岡本さん・安達 以上です。

    会費を振り込んでくださる方は次のところにお願いします。
      郵便振替  00940-6- 132972  月惑星研究会 関西支部
    事務局住所 〒520-0242 大津市本堅田4-8-11  安達方 
                月惑星研究会関西支部

(2) 今後の例会予定

   4月15日(日)
   7月 8日(日)
  いずれも、山科アスニー(JR山科駅徒歩5分)
                 午後1時から5時まで (毎回希望者で懇親会)


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