月惑星研究会関西支部例会・支部通信 No.71

2012年07月08日

 木星の大異変が起こりつつあります。集まってくる情報にドキドキしながら、木星のすごさに改めて感心しています。今回の例会は直前まで参加者が少なくやきもきしましたが、5人の参加者を得ました。
東京の学生さんたちの活躍がうらやましいです。
 関西地方でもぜひ参加していただきたいと願います。関西在住の皆さんは、ぜひ後輩に声をかけていただき、惑星観測や研究をしてみたいという人を募ってみてください。動かないと何も始まりませんね。

例会集合写真
参加者

岡本 彬宏・柚木 健吉・林 敏夫・畑中 明利・安達 誠  

自己紹介と近況報告

林さんが撮影したところによれば、ムービーで撮像したものをコマに落として調べると5〜6秒間だけリングになっていたような気がする。Jpgのままなので怪しい気もするが、北限界線よりも2km内側なのでもう少しはっきりするかと思った。画像はムービーメーカーで分解した。
金星のaureoleがかろうじて写った。シーイングはかなり悪く、円には撮れなかった。
岡本
金環日食を目指し山梨県(富士五湖)まで旅行した。目的地では4分50秒だった。残念ながら雲が凄かった。雲の中のリングをデジカメで撮ったが、趣のある写真が撮れた。
畑中
天気予報では、熊野は悪かったので、和歌山県御坊市に向かおうと計画していましたが、出発直前、友達とやはり東に向かおうと言うことになり12:30 熊野を出発、静岡県浜名湖SAを目指しました。到着時は晴れていたのですが、 日食の時間には厚い雲に覆われてしまいました。
そこに熊野、桑名、鈴鹿から見えているという情報が入り、晴れそうな気配が無いので、あきらめようと機材を車に積み込み、帰ろうと東を見ると明るいので、東に向かって走り、浜松IC で降り、道ばたで撮影しました。以後はほぼ快晴で日食を十分楽しめました。
 途中で撮影を切り上げ再びSAに戻るとここも晴れており、東京方面から来た天文ファンが撮影を続けていました。

 と、ここまでは一人ひとりの感じでしたが、あとは、柚木さん畑中さん、そして安達がめいめい誰とはなく発言し、まとまりませんでした。柚木さんのところは自宅の観測所が映し出され、結構はれていたようで、組写真を大急ぎで作られたようです。大急ぎといいながら出来上がりを見せてもらい「さすがや!」と思ったのは安達だけだったでしょうか。
 近況報告は、一人ひとり回していましたが、今回は金環食の画像を見ながらしていたため、結局みんなでわいわい話し始め、結局、ここまでとなりました。
    みなさん、金環日食も金星の日面通過も思い思いの方法で観測され、それなりの成果の挙げられたことが分かりました。欠席された皆さんに物もいくつかはHPから取り上げました。とりわけAureoleについては、たくさんの方がねらわれていたことが分かりました。みなさん、凄いですね。


柚木さんの観測


薄出さんの観測

木星の近況

 安達が忙しく、今回は木星の近況をほとんどまとめることができないままの開催となりました。伊賀さんからのレポートや、ロジャースのレポートを下に、木星状況を振り返りました。例会の行われた7月現在、木星の赤道以北は着色現象が進み、めったに見られない状況になっています。昨年はNEBが非常に細くなり、なくなるのじゃないかと思われましたが、その後まったく逆に転じ、NTBを含めたような幅の広いバンドに成長していきました。

(1) NEBの変化

今からおよそ100年前(1893年〜1918年)3年周期で濃化と淡化を繰り返したときがあった。
この間、NEBは淡化して細い南組織だけになったが、突然乱れた暗部が出現。濃化復活したことが記録されています。まるでSEB攪乱のような活動だったようです。
 今回は、突然暗部が出現したわけではありませんが、リフトの活動とNT―Cの活動などが重なり合い、激しい変化へと展開していきました。

(2)

NTBs jetstream outbreak 以前はNT-Cの活動と読んでいましたが、ロジャースは上記のような表現をしています。Manos KardasisはNEBとNTBsに注目すべき攪乱を昼間に記録しました。今までは昼間の観測例はほとんどなく、今回は重要な観測となりました。日の出直後の木星を低空の悪気流の中でねらう方法もありますが、日中にねらう方法もあることが示され、かつ、今回は有益な情報を提供してくれました。
 ロジャースのレポートには「Kardasisの最新の画像には、早急に追跡が必要なL2=約115度の明るい白斑を含めて複数の目立つ白斑と、より高分解能での確認が必要なNTropZ(北熱帯)の赤味がかった色が見られる。これらの模様は長い間続かないかもしれない。」とありましたが、まさしくその傾向になりました。
 今回の現象は2007年以来5年ぶりの現象でした。2007年のときの画像を見ながら現象の確認を行いました。NTBとNEBの間にはまだ白く明るい部分が残されていますが、これらの領域がどのように変化するか注目していかなければなりません。今回は暗斑は3つ確認されています。


(3) EZの変化

 着色現象で最も目立つのはEBでした。今までは青黒い見え方になるのが最も大多いパターンでしたが、今回は赤いバンドになっています。以前言われていた赤い部分は上昇気流で青黒い部分は下降気流だとすればまったく正反対になったわけです。もちろん、こんな簡単な理屈では説明できませんが、まったく逆の色になったことは事実です。青い模様と、赤い模様。色による模様の見え隠れと高度の違い。IRなどの単波長の見え方の違いなど、NEB〜NTBの陰に隠れたテーマがありそうです。
   永長さんが6月28日に観測された画像にはfestoonの内側が赤く着色された明部がEZnに見られます。こういったものも珍しい現象で、丹念な追跡が必要なものだと思います。

(4) BA

   赤いリングとして目だっています。気流の悪いときでも赤い色がはっきりと写り、今までになく赤くなっています。ただ、眼視で確認できていないので、肉眼で見てもはっきり分かるほど赤くなったのか、画像処理の結果こういう写り方になったのかがはっきりしません。次回までに肉眼観測をして、色についてはコメントできるようにしたいと思います。もうすぐGRSの真南に差し掛かります。何か変化が起こらないかについても注目していかねばなりません。

火星の近況

   火星は、どんどん遠ざかり小さくなりました。報告数も激減し、日本は梅雨のため観測は皆無となりました。

(1) エリシウム北部のNPC

  エリシウム(Elysium;215W,+23)北部のNPCは、NPCを取り巻くくらいバンドがありますが、その外側に白い部分がここ何ヶ月かは常にみえています。雲ではないことは確実です。いつも同じ見え方をすること。さらにMROの画像を見ると、白く小さな斑点が見られることなどから、霜のようなものだと思われます。
   小さな白い斑点は深さのあるクレーターの底にできた霜であると考えるとうまく説明できます。時々砂嵐に覆われるようで、黄色く変色した姿が記録されています。

(2) ターミネータープロジェクション

   前回の例会でも取り上げたものですが、衝の直後に6回記録されたターミネータープロジェクションと同じようなものが、肉眼で観測されました。5月17日フランスのstanislas maksymowicz氏によって観測されました。今回はターミネーターではなく、リム側で観測されています。この現象の発生地点はエリダニア(Eridania;210W,-45)で、今まで発生したところと位置的には一致します。stanislas maksymowicz氏は確認観測がほしいと報告されていますが、残念ながら今回は同時の観測報告がありませんでした。リム側でも起こるとなれば、過去の観測の洗い直しが必要になってきますが、まだ、手がつけられない状況です。もしも、これが同じようなものだとしたら、発生メカニズムの見直しが必要になってきます。

土星の近況

   6月14日から19日にかけてダミアンピーチ氏やDCパーカー氏の画像のSTBに暗斑が記録されました。明瞭な小さな暗斑で、国内でもかすかに記録されています。今まで白斑の見られた地域ですが、今回は暗斑が見つかりました。ただ、長命なものではないようで、その後は記録されなくなりました。きちんとした追跡は行っていませんので、はっきりしたことはわかりません。

金星の夜の観測

   stanislas maksymowicz氏が金星の夜の側の観測報告を盛んに送ってきています。バックが暗くなってからの観測では到底見ることはできませんが、日中に赤いフィルターをかけて観測されているようです。観測時刻は12時半ごろ(UT)ですが、フランスなので日本で言えば真昼間です。
   観測のコメントによれば、金星の夜側は空よりもほんの少し明るく見えるとのことです。3種類の観測をされていますが、どなたか挑戦される方はないでしょうか。

事務連絡

次回の例会の日程

    10月21日(日) 
    1月13日(日)
   以上のように決まっています。日程の確保をお願いします。


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