月惑星研究会関西支部例会・支部通信 No.72

2012年10月21日

 今回は、非常に参加人数の少ない例会となってしまった。会場の広さがもったいなく感じられた。
来年の2月は旭川の木星会議が開かれることになっており、できれば関西からも何か発表してもら える人を募りたい。旭川までは札幌の新千歳空港まで格安航空会社ができたおかげで、非常に安く 便利にいけるようになった。2月ということで、服装はそれなりの対策が必要だが、東京での木星 会議と、出費という点ではそれほど大きな違いは出なくなった。大変ありがたいことである。
 旭川の木星会議には、たくさんの参加をお願いしたい。

例会集合写真
参加者

薄出 ・ 林 ・ 柚木 ・安達  以上4名  

1 参加者の近況報告

薄出
ドームの老朽化がいよいよ深刻になってきました。フレームは軽量鉄骨ですが、木部が朽ち果ててきています。現状のまま、その上からFRPを貼ってしまおうか?などと考えています。(安達は、自宅のドームをその方向で考えています)
柚木
「2週間ほど前、職場の人からタカハシのP-2を貰いました。ほとんど使っていない奇麗な状態のものです。久しぶりに暗いところに持って行って星夜写真を撮りたくなってきました。
最近も惑星の撮影はしていますが、いつも通りの稚拙な処理ですから、意欲がわかず放置している画像も多くあります。以前に比べてこの数年、睡眠をとるようにしていて、殆ど8時から9時頃に寝ています。50歳後半になると無理すると身体に深刻なダメージが残ります。末永くマイペースで天文を楽しむと云う心境のこの頃です。
そうそう、反原発デモや集会には出来るだけ参加していて、喚いているところがYou tube や新聞にも載ってしまいました・・・(汗)
木星観測も各地で本格化してますが、皆さんの画像を見るとすばらしい像に追いつけないと、9月の画像も出してません。今年は少し体調を壊したので、今後の観測方法や体勢を考える良い時にきた様である
安達
最近になって、木星の眼視観測を何回か行っている。残念ながら気流が滅茶苦茶で、木星の縞模様すらはっきりしないような日があったりして、スケッチをしない日もかなりある。無理やり一度だけスケッチをしたが、シーイング1という状況で、濃淡がかろうじてわかる程度だった。観測にならない日は、31cmに同架している4cm屈折を8cmに取替え、CANON IOSのカメラがつくようにした。月の全面写真が撮れるようにという構想のためだ。ちなみに31cmでは月齢9以降ははみ出してしまうため。

2 木星の近況(8・9・10月)

(1) NEBとNTB

著しい着色現象の結果、カラフルな木星になっているが、10月になって色は別として、ふだんのNEB・NTBにもどってきたように思われる。一時期、NEBにはリフトの活動が見られなかったが、最近は小規模なリフトの活動が見られるようになり、それに伴いNEBの内部には小さく輝く白斑が見られるようになってきた。
 ロジャースからのレポートが届き、送られてきた画像の右上にNEBsのおもな模様によるドリフトチャートが載っていた。これはHPにも掲載されている。(下図)


(BAA ロジャース氏 作成のドリフトチャートから)

これを見ると、NEBsの模様には地域による違いが見られ、L1では200°〜300°の間のフェストゥーン(あるいはプロジェクション)は線状にドリフトしているが、それ以外のものはかなり経度方向に広がる傾向が見られる。(ナンバーは5〜10まで)経度方向に特徴のあることが分かった。
 NTBsはオレンジの強いベルトとなり、NTBnは青黒いベルトとなって対照的な姿を見せている。昼間のNTrZは一部暗い部分があり、その位置で観測すると、NEBからNTBまでが幅の広い帯のような状態に観測できる。しかし、そういった姿も、今は弱くなってきている。

(2) BAと後方の白斑

   BAは赤いリングが中に見られ、近年では最も赤さが強くなっている。肉眼ではコントラストが低く、見づらいが、画像だと非常に鮮明に記録されている。BAのすぐ後方には顕著な暗斑が見られ、さらにその後方には淡く青っぽい白斑が見られる。

8月6日 柚木さん
8月17日 Torsten Hansen   Germany
8月20日 Goさん
8月25日 山崎さん
8月30日 山崎さん
10月6日 Alessandro Bianconi:Perdasdefogu ITALY


 淡い青っぽい輪郭を持ち、さらに内部にはフィラメント状の青いベルトが見えている。低気圧性の白斑だと思われるが、上の画像でもあるように、内部を東西に横切るフィラメントがほぼ同じ状態で記録されることから、果たして本当に低気圧性の渦なのかどうか怪しい気もする。
 現在は暗斑が二つの白斑の間を保っているが、これがなくなって、BAに追いつけば、STBに大きな変化が怒る可能性もあり、今後はこの動向に気をつけたい。

(3) SEB

 7月末には、SEBsの北側にあるDark Streakは顕著で、2=110°から前方に、まるでSTr Dist.のような姿になっていたが、8月になって急速に淡化していき、8月末にはほとんど完全に見えなくなった。反対に、大赤斑の後方攪乱領域は次第に伸長している。内部には小さく明るい白斑が見えるが、目立った変化とはいえない。
 2=90°には赤く目立ったバージが見える。また、その後方の2=120°付近には大きな明部が見られるが、これといった変化は見られていない。

(4) 全面の様子から

 特別に大きな変化はなく、着色現象は著しいままであるが、いつもの木星面にもどったように見える。

(5) 閃光現象

 9月10日11時35分(UT)、木星面で小天体の衝突と思われる発光現象があった。前回は2010年8月だったので約2年ぶりの現象。観測者はアメリカのダニエル・ピーターセン氏(Daniel S. Petersen)で、東縁近くのNEBの南に約6等級の白色の輝点を2秒間観測された。情報が流れてきてからこの動画を何度もみたが、安達が見る限り、木星面の流星のように見えた。
 その後、この落ちたと思われる地域の精査が行われたが、表面模様には変化が見られず、上空で消滅したらしいことが確認された。ロジャース氏からのレポートも出ており、そのようすが発表されている。

(6) 最近の画像処理から

 木星の画像を見ると、表面にたくさんのスポットの出ているものと、模様の多くがstreakになってできいているものに分かれているように思う。(安達の主観的に見方)そこで、それらの画像を比べながら、原因を話し合った。 ソフトによって違いがあるが、気流がいまいちよくないときにはこういった仕上げになることがあるということだった。処理の結果、なってしまうのなら仕方がないが、位置測定のできない処理は困るので、撮影時刻がきちんとしていて、位置の測定が可能な画像が大切だということを確認した。

3 画像の処理について

 最近の報告されている画像を見ると、吉田さんや山崎さんの画像処理は、非常に滑らかで綺麗な処理になっており、DMKやカメレオンのカメラなど、いろいろな機材についてのことが話し合われた。実はこの話がもりあがり、各人の苦労話が飛び出した。

4 キュリオシティの観測から

 火星のゲールクレーターに着陸したキュリオシティの画像で、堆積岩の礫や礫岩と思われる画像が公開されたので、その画像を見ながら、形成過程について意見を交換した。
 画像を見る限り、川による礫(海のまんまるい礫ではない)に見えること。近くにその元になったと思われる礫岩があること。画像の一部に水が流れたように見えるところがあること。礫岩の表面が新しく、火星特有のオレンジの砂があまりかぶっていないことなど、かなり新しい時代の表面ではないかと、考えた。
 礫岩ができたり、礫ができるということはそれなりの水の流れがなければおこらない。また、火星の重力は地球のそれと比べて1/4しかないとういう条件になる。このような状況から礫ができるということはかなりの深さが必要になるだろうということが予想された。考えれば考えるほど面白い。

  <画像から見つけたこと>
 ・ 礫が堆積岩のものに見えること。(もうすでにたくさん報道されている)
 ・ 礫は角の丸まった円磨度の低い礫であること。これは川などの礫に多く、海岸(波打ち際)の礫ではないこと。
 ・ 礫に色は様々で、黒っぽいものが見られる。地球上ならチャートか玄武岩のような色合いである。白っぽい礫も多く見られる。
 ・ 礫岩ができるということは、礫になった母岩がある。母岩は深い水底ででき、高圧で永年耐えなければ堆積岩とはならない。重力が地球の1/4の世界で堆積岩ができる環境が本当にあったのかどうか。
 ・ 落ちている礫の横に、母岩(礫岩)があり、断面が新しくみえる。古いものだと火星の細かな砂が堆積しているだろうが、画像からはそういった姿が感じられない。
 ・ 落ちている礫は水で運ばれて埋まりこんだような姿に見える。
 ・ 礫岩の母岩はゲールクレーターができたときの衝撃で割れたものだと考えられる。だとすると、母岩の下に落ちている礫は、どのようにしてこの場所に集まったのかが分からない。
 参加者でいろいろ考え、討議した。もちろん結果などはないが。

5 金星の観測から

 最近はUVで撮影され、雲の様子の良くわかるものが報告されてきている。東方離角で撮影されたものと、反対の西方離角のときに撮影されたものをならべて比べた。もちろん日にちも観測年もまったく違うが、東半球と西半球の雲の様子を表しただけの画像である。どちらもUVの画像だ。

 右の図のように、Y字の形の雲が出ていることが分かるが、太陽からの直下点では、何か特別な現象にむすびつくものは、金星の東方離角の画像の中からは見られない。もしも太陽の直下点でなにか起こっているならば、これらの左右の画像の両端に光斑があるかもしれないがそういったものは感じられなかった。
 現在、金星は明け方にあり、右側の姿を示している。太陽の直下点にもやもやした模様があるが、変化には注目したい。
 それにしても、UVの画像は雲の変化が著しく、近隣の国との共同観測を計画すれば、面白いことが見つけられそうである。昔の金星画像を知るものには、隔世の観がある。

6 木星会議

 2月の木星会議に参加できそうな人は、今回の出席者の中では安達だけだった。問題は2つで、
  ○ 寒いこと ・・・・・ 服装などの心配
  ○ 経費 ・・・・・・・ 経費が高くなるだろう
 いずれ、旭川の阿久津さんからアナウンスがあるが、思うほど警戒する必要はないと思う。昔は かなり冷え込んだが、ここ近年はそれほど冷えず、冷えてもマイナス15℃くらいだとの話を聞い ている。スキー場に行く程度で十分だとの話である。
 支部からどなたが行くのか・・・最近は格安航空会社のチケットが出て、東京に新幹線で行く費 用とほとんどかわらない。できるだけたくさん出かけていただきたいと思う。

7 その他

今後の例会の予定

 2013年1月例会 ・・・・・ 1月13日(日) 山科アスニー(いつものところ)
      4月例会 ・・・・・ 4月21日(日) 山科アスニー
 今回は、参加者がすくなく、とても残念でした。みなさん、早めに日程を確保しておいてくださ いね。


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