月惑星研究会関西支部例会・支部通信 No.74

2013年4月21日

 今回も、高校生の参加があり、年齢の幅のある会となりました。若い人に来ていただけるというのは嬉しいものです。例会に先立って、伊賀さんのお宅に、お見舞いに行きました。8人のメンバーでお伺いし、久しぶりの伊賀さんとの再会を喜びました。伊賀さんは年明けより、病状が進行したとのことで、みんな気遣っていました。会話はPCのモニターを通して行います。今回は、新調した液晶プロジェクターを壁面に映し出し、PCの画像を全員で一度に確認しながら意思の疎通を図りました。初めての人もあり自己紹介をしたり、近況報告をしたりしました。
 その後、例会会場に移動しました。高校生二人と顧問の坂本さん。奈良からこられた伊藤さんと合流し、例会を行いました。

参加者

林 ・ 永田 ・ 河村 ・ 大橋 ・ 安達 ・ 薄出 ・ 熊森 ・ 奥田 ・ 柚木 ・ 畑中 ・ 坂本  

例会集合写真


自己紹介と近況報告

永田
鳥取から来た。望遠鏡はC8(20cmシュミカセ)を使っている。米子の天文同好会に所属している。木星の撮像をしていたが、高度が低くなり、土星一本でがんばろうかと思っている。
屋上の天文台に行くのがおっくうになってきたが、週に1〜2回安達さんが自宅に観測に来るので一緒に見るようにしている。それ以外は休止状態となっているが、できるかぎりやっていきたいと思っている。
柚木
例会があるので4月17日に久しぶりに土星の撮像を行い、報告をした。仕事のほうでは、退職したが再任用教諭として仕事をしている。反原発の活動は、相変わらずがんばっている。
佐藤
奈良の香芝市から来た。ここずっとHPに最新の例会の案内がなく、来たくてもこれない状態になっていました。今回はHPで案内を見て例会に参加することができた。最近は惑星だけでなくいろいろな天体を見ている。これからは記録を残していきたい。
安達
春休みに入り、観測活動を再開したが、自宅からはマンションの影に入ってしまい、観測不能のため、林さんのお宅に伺い、観測を何回かさせていただいている。これからももう少しうかがうつもりだ。春で退職したが、再任用で、今までとまったく同じ状態での勤務を続けている。長年使ってきた観測用紙がとうとうなくなる。代わりのものを探さなければならず、探し回っている。
大橋
高校2年生。初めて例会に参加した。今日はいろいろ勉強したい。
河村
木星と土星を撮像したが、今日は持ってくるのを忘れてしまった。しかし、今回もいろいろ勉強したい。
坂本
今日は高校生を二人連れてきた。天候が悪く思うように撮れていないが、それなりにがんばっている。学校の30cmカセグレインはどうもダメで、18cmのミューロンの方がはるかに像がよく、これからはこれをメインにしたい。今日はできればWin JUPOSについて勉強したい。
畑中
光軸のあわせ方がようやく分かってきたように思う。これからがんばりたい。
薄出
自宅のドームのスリットが脱輪していて、開閉には多大な時間がかかる。何とか早く修理をしたいと思っている。
奥田
現在、観測はできていない。1990年から安達さんに教えてもらいながら、スケッチ観測をしていた。現在、自宅に観測所を作ろうと計画中。
熊森
C11を使い、団地のベランダで観測しているが、今年は木星の緯度が高く、もう見えなくなった。
 

木星会議報告(畑中) 2月16日(土)〜17日(日)

 今回の木星会議は、関西からは安達さんと私の二人が参加した。厳冬期の旭川を体験したいという気持ちも強く、しっかり準備して行って来た。私は中部空港から飛行機で新千歳。安達さんは関西空港から新千歳というルートで、旭川に向かった。
 札幌から旭川に向かう途中は、一面の銀世界の平野が続き、広大な大地を感じることができた。 会場は旭川市科学館「サイパル」で行われ、木星会議は2回目の会場となった。科学館などの挨拶終了後早速、北大の高橋幸弘先生から特別講演を頂いた。
 特別講演 高橋 幸弘先生(北海道大学理学部地球惑星科学科 教授)
    「北大ピリカ望遠鏡と飛翔体で探る惑星と地球の大気」
 高橋先生は、「あかつきプロジェクト」にかかわりのある先生で、惑星の研究をされている。主に名寄にある1.6mのピリカ望遠鏡で観測をされている。望遠鏡には1nm刻みの波長で惑星を撮像するカメラがあって、それを使って観測されているとのこと。いくつかの大学共同で、宇宙に小望遠鏡を打ち上げる計画を進めておられるが、現在は気球を使って観測をされているそうだ。ノルウェーに行って気球を打ち上げると、非常に良い気流があって、1週間も下に落ちない状態での観測が可能だそうで、ヨーロッパまでの遠征観測をされている。観測対象はスプライトがあり、宇宙と大気とのつながりを考えられている。
 名寄の望遠鏡のミラーはガラスではなく、セラミックの鏡材だそうで、時代の流れを感じた。
 木星会議後、その日のうちに帰った人は無事に帰れたが、私や安達さんのように1日遅らせて帰った人は、大雪で飛行機が欠航になって、まともに帰れず、ひどい目にあった。

木星の近況(安達)

 1月から4月までのようすを整理して見て頂いた。今回は大赤斑の大きさが小さくなったときがあったり、NEBの北側にある白斑がマージしたりして、面白い現象が見られた。

(1) 大赤斑

 2012年9月末・10月末・3月14日あたりに長径13°に縮小し、大きさが不安定になっている。4月7日にGoさんが下の画像を報告されているが、前端と後端は図のようになっていて、後端が見えにくくなって起こった現象かもしれない。この様に判断したのは、GRSの中央付近に直径が1/3くらいの楕円の核が写っており、それを中心と見ると、うまく説明できるためである。
 

(2) 大赤斑孔

 SEBsが大赤斑の北側で湾入しており、SEBsの南側のジェットで運ばれてきた暗斑がGRSの北側を回り込むようすが観測されている。1月23日には大赤斑孔の直前に達したが、その後、暗斑は、北側を回りこみ、GRSの後方に抜けていった。暗斑は大赤斑の渦には取り込まれず、SEBsを伝い、さらに後方に移動していったが、このときに興味深い現象が起こった。
 

 イギリスのPeter Edwardsによる画像だが、大赤斑前方のSEBが大赤斑孔を横切り、大赤斑後方のSEBsに流れ込んでいる様子が記録された。それに伴いSEBsが濃くなっていくようすが記録された。この様子は永長さんも記録されている。永長さんの展開図では、このSEBのバンドの南側にSEBsの灰色のバンドが併走している姿も見えていた。
 

NEBの変化

 昨年の11月以降、拡幅していたNEBは一部分淡くなって、やせていく傾向が見られるようになって来た。特に合体した白斑と大赤斑のある経度までの間が不明瞭になってきており、堀川さんはいつもより早い時期に細くなり始めたようだとのことだ。
 

 2011年の展開図を見ると、バージがNEBの北縁に飛び出たような姿になっており、今回はこういった姿になる一歩手前の現象かもしれない。バージのたくさんある2008年・2002年や白斑の並んだ2006年の展開図を見て、これからのようすについて考えた。

NEBnの白斑

 安達の方でドリフトチャートができないので、堀川さんの作られたものを見ながら、変化の様子を確認した。最終的にWSZが非常に大きな姿になってマージを終えたことを確認した。WSCとWSAとの間にもう一つ白斑があって、マージしたのは3つではなく4つの可能性もありそうだと考えている。
 ロジャースから送られてきたマージするときの展開図をならべた画像を見ながら、巨大なWSZになっていく様子を確認した。

STBの様子

 BAの後方にSTBのセグメントが接近してきた。セグメントの前方にはBAの直後にバージがあり、そのさらに後方には青っぽい白斑(明部?)が見られていた。その様子は上の(2)大赤斑孔の項目でもはっきりととらえることができる。3月10日のロジャースからのレポートを引用し、現在の様子を確認した。現在はBAの直後にセグメントが突き当たり、バージは消えた。青っぽい白斑は、まだ健在だが、まわりに小さな白斑がSTZに発生している。この白斑はセグメント本体には影響をあまり及ぼさないように見える。セグメントの一部はBAを反時計回りに回り込み、BAの前方に向かって伸び始めている様子がうかがえる。今後はこの傾向が続き、セグメントがBAを追い越していくのではないかと思われる。

火星の話題から(安達)

 現在火星は合(4月19日)になっており、見ることすらできない状況である。火星の北半球の季節は冬至を少し回った位置にあって、季節的には真冬になっている。北極地方は軽い白雲ができ、南極では小さくなった南極冠がノアキス側に偏った位置になって見えている。
 探査機の画像を見ながら、火星の様子を調べると、タルシス(Tharsis;90W,+5)などに見られる成層火山の上に、白雲の出ている様子が記録されており、いつものような姿を見せている。
 
 今回は、火星の話題として、マクラーリンクレータで水性の炭素質粘土が発見されたことを紹介した。粘土の広がりは、水よる波打ち際の広がりが特徴である。これらの様子は、マクラーリンクレーターの内部とのことで、クレーター形成後にできた水によって作られたとのことであった。
湖の中で生成された炭酸塩を作っているようだ。そこで、今回は炭酸塩および、炭酸塩鉱物を調べてみた。
<炭酸塩の仲間>
 炭酸アンモニウム ((NH4)2CO3)- 炭安とも呼ばれる。生物由来
 炭酸カリウム (K2CO3)- 植物の灰の成分であり、古代より洗剤として利用。現在はガラスの原料と
                して重要。
 炭酸カルシウム (CaCO3)- 石灰石、サンゴ骨格、貝殻などの主成分。
 炭酸ナトリウム (Na2CO3)-トロナと呼ばれる鉱石が原料(湖や大河が干上がるとできる。
                 水性の証

 炭酸バリウム (BaCO3) - 天然には石灰岩質の堆積層の中に形成された熱水鉱床の中に産出。
 炭酸マグネシウム (MgCO3)-天然鉱物の菱苦土石(マグネサイト)として産出。方解石と同じ
                  グループで、水で溶けた成分が再結晶してできたもの。水性の証
 炭酸リチウム (Li2CO3)-天然では塩水を濃縮すると、その中に生成される。水性の証
 炭酸銅(II) (CuCO3)-銅・真鍮・青銅につくさびのこと。水が必要
 炭酸鉄(II) (FeCO3)- 湛水状態におかれた水田土壌中にはしばしば炭酸鉄(II)の結核が形成され、
              0.5-1.5cm程度の大きさの灰白色の果粒状のものが見出される。これは空気
              に触れると酸化されて青黒-黒褐色に変化する[5]。
 炭酸銀(I) (Ag2CO3)-実験室的化合物。
<炭酸塩鉱物>
 方解石・霰石(CaCO3)
 苦灰石(CaMg(CO3)2)
 孔雀石(Cu2(CO3)(OH)2)
 藍銅鉱(Cu3(CO3)2(OH)2)
 菱苦土鉱(MgCO3)
 菱マンガン鉱(MnCO3)
 菱鉄鉱(FeCO3)
 硫酸カルシウム・・・石膏の主成分で、海水中に多く含まれている。
キュリオシティーの観測によれば、今回は硫酸鉱物が見つかり、水性とは言うものの、酸性の水だったことが分かるという。ということは、生命の痕跡は発見できにくいということを表しており、 せっかく探査をしても、生命という点では期待薄の可能性があるということだ。

佐藤央隆さん(奈良)の話題提供

 佐藤さんの観測機材の紹介のあと、ご自身の撮影による木星像の紹介があった。いろいろ考えながら撮像をしているが、ウェッジプリズムをつけたときとつけないときの違いをしらべてみたいとおもっている。  カメラはどんなカメラがいいか。カラー一発がいいか、LRGBがいいか、いろいろ試してみるつもりだ。

土星の話題

 昨年と、今シーズンとの土星の比較をおこなうと、北極点の暗部の大きさがずいぶん違うことが確認できる。最近の高精緻な画像では、六角形の北極がとらえられているが、昨年はその六角形よりも広い地域で暗化が見られ、六角形が見えにくくなっていた。さかのぼって調べてみると、
 


このようになり、極付近の様子が大きく異なっていることが分かる。2012年の間に、2回程度暗化と淡化を繰り返しながら、現在の六角形のはっきり分かる極域へと、変化してきたようだ。
 また、この画像でわかることとして、NTZが2012年は青く明るく見えていたが、今シーズンはやや目立たなくなってきているのが読み取れる。また、NTB~NEB付近の暗化も変化の一つだ。ドラゴンストームと名づけられた大規模な白斑の活動領域は、かすかな白斑ができたり、暗斑が出現したりしているが、いずれも小規模で活動は、ほぼ収束したといえるようだ。土星の観測シーズンは、まだまだこれから。夏に向かい、気流のよくなるときもあると思われるので、極付近を注目したい。
 極の六角形の中に、白斑の記録されたカッシーニの画像も公開されているが、大きさから見ると、地上からとらえられる可能性もある。まだまだ面白いものが記録されそうだ。

事務連絡

(1) 来年の木星会議について

 京都産業大学の河北さんに尋ねてみたが、土曜日は毎回一般公開で部屋が空いていないので、残念だが、使っていただけるところがないとの返事を得た。よって、第1候補が消えてしまった。早急に、場所の選定を行いたい。
 また、いくつかの大学の天文同好会にアタックするつもり。

(2) 今後の例会予定

  7月7日(日) 午後1から 山科アスニーにて
  10月27日(日)午後1時から 山科アスニーにて
 以上、日程の確保をよろしくお願いいたします。

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