月惑星研究会関西支部例会・支部通信 No.81

2015年01月18日

 新年最初の例会でした。今回は、滋賀県立米原高等学校の生徒たち1年生が7名、顧問の坂本先生と一緒に参加されました。米原高等学校は、地学の坂本先生を指導者に、毎年地学の研究を続けられ、天文に地質に活発な活動をされています。今年は天文に興味を持つ生徒たちもいて、例会に勉強をしたいということで、遠方か参加されました。

例会集合写真
参加者

柚木・堀内・奥田・佐藤・畑中・熊森・安達・ 坂本・高校生7人  

自己紹介と近況報告

安達
天気や気流が悪く、観測活動はあまりできていない。今回は、高校生がたくさん来るというので、それまでに木星観測を頑張ろうと思っていたが、ろくな成果を上げることができなかった。 今年は例年になく気流が悪く、ひどい状況だ。最近になって、ラブジョイ彗星が出ていることを聞きつけ、写真を撮った。
柚木
堺市で教員をし、リタイヤして5年がたち、いよいよ今年の3月で再任用も終わる。今後何をしようかと思案中。観測所は、下半分は自作したが、上の部分はプロに作ってもらったため、今でも順調に動いている。中には26cmのニュートンが入っている。26cmでは口径が小さいので、もっと大きいものがほしいので、いろいろ考えている。先日、ラブジョイ彗星を見たが、尾までは見えなかった。
堀内
柚木さんと同じ年齢になる。昨年3月にリタイヤし、毎日好きなことができるようになった。天文活動は会社勤めをしている間は封印してきたが、リタイヤを機に自宅にドームを作り、ニュートンの30cmを置いた。昨年から今年は気流が悪くまともな画像は撮れていないため、意欲が失せている。(いやいや、その中にあってはよく撮れていますよ、気流が悪いといいながらも)
奥田
滋賀県信楽から来た。自宅には25pの反射を庭に置いている。天文活動は小学校6年から始め、彗星を見ていたが、1991年に惑星のスケッチをはじめた。その後冷却CCDを使うようになったが、ウェッブカメラが登場したころから、観望しているだけになった。望遠鏡のグレードアップを考えている。(先日、安達の自宅までドームの見学に来られました)
佐藤
河内長野から来た。3年前に入会した。中学2年の時に15pの鏡を磨き、ハレー彗星や惑星を観望してきた。その後ミューロン21pを入手した。まだ皆さんのレベルまでは到達していないので、これからも習いながらやっていきたい。
畑中
小学生の時に天文活動を始め、田阪さんの53pで火星を見たことから、火が付いた。その後20pのかえ、次いでアスコの架台と30pにアップグレードした。現在は家を建て、その上のドームに40pを置いている。現在はC11を同架している。海岸に近いため、波の振動の影響がある。
熊森
団地天文台にC11で撮っている。今年もシーイングが悪いのでいいものは撮れていない。木星は自宅からまだ見えないので力が入っていない。2017年の北米の日食にはいきたいと思っている。2018年は火星が大接近なので一回くらい沖縄に行って観測したいと思っている。
坂本
現在の天文台のある学校の勤務が10年になった。天文台の望遠鏡の扱える人が見つかるまでは残りたいと思っている。センター試験の最中なのに、苦悩は熱がでて不安だった。今日は高校生を連れてきているが、惑星の好きな子もいるので、教えてやっていただきたい。 以下、高校生が名前自己紹介。

木星の近況(安達)

(1) GRS付近の変化

 10月10日頃、大赤斑の南側にアーチが再び発達、大赤斑前方に流れ出して、南熱帯(STrZ)に暗部を形成した。
この暗部は永続白斑BAの前方に伸びる南温帯縞(STB)北組織と一体となり、大赤斑から分離し10月末には、STrZ南部を覆う長さ30°の不規則な暗部となる。
12月前半には大赤斑前方のSTrZ北部はかなり薄暗くなっていた。STrZ南側が薄茶色に変化した。SEBsの上にいくつかの白い白斑が見えるようになった。

(2) BA

   9月下旬、BAは大赤斑の南を通過した。BAの後方の大赤斑の南側のSTBと南南温帯縞(SSTB)が一体となって、幅広いベルトを形成している。本当のSTBは20〜30°だと思われるが、STBnの色調が赤っぽく、今までのSTBと違った色調になっているのが気になっている。12月12日の観測画像によれば、この色調の違った部分がSTBnかどうか、怪しいように思ったが、12月30日の観測では、STBの姿に戻っていった。
   BA前方のSTBnはジェットストリームに乗って、STB Ghost に接近してきた。


(3) SEBの謎の明部

   2012年に発生した謎の明部(すだれ模様状の明部)は、分かりにくくなってきたものの、まだ存在している。位置もほとんど変わらない。135°〜165°にある。が10月下旬からだんだん衰退してきている。


(4) SEBは淡化してきたか?

   年末からSEBの北半分が淡くなってきている。長さ60°位の広がりで、SEBの北半分が淡化してきた。今後の展開に注目したい。


土星の近況(佐藤さん)

   オーストラリアのトレバー・バリーさんの観測を使ってまとめをPDFで送っていただいたものを映して解説していただいた。
   IR742nmの画像を2013年12月27日から2014年10月8日までのものを日付順に選びだされ、それを見てまとめられている。同じ日のRGBの画像と比べると、極付近のベルトや帯の様子がだんだん変化してきていることがよくわかった。
   IR画像によれば、2014年の最初はNTBが暗いバンド状になっていたが、2014年6月ごろには一時淡くなっていた。8月ごろからはNNTZが明るくなり始め、現在もその様子が続いていることが認められる。

   2014年7月21日から白斑の報告が見られるようになった。この白斑はこの図のようにリニアに乗っていることが報告されている。


地球の低気圧と宇宙からの見え方

  安達が地球の低気圧や高気圧について調べた結果、火星の様子と関連づくことをまとめてみた。
 地球上には、温帯低気圧と熱帯低気圧がある。熱帯低気圧は、温まった空気が上空に上がり雲が発生する。コリオリの力の影響を受け、北半球では時計と反対回りの渦を作る。一方、温帯低気圧は冷たい空気と暖かい空気がぶつかりあって起こるもので、前線を伴うことが多い。このとき宇宙から見た雲の温度は、周囲と比べてどうなるのだろう。


いずれも地表近くの水蒸気が上空に上昇することによって雲になるわけだが、この雲になる過程では熱を出し、周囲の空気をあたためることになる。下からの上昇気流の先端部は、宇宙から見ると白斑になり、温度は高くなる。大赤斑が台風と呼ばれることもこれでうなずける。上昇してきた空気は、その上昇気流の周囲で下降気流になることがよくあり、地球では雷雲や寒冷前線通過時に起こるダウンバースト現象となる。白斑の周りが黒っぽくなることは、これで説明できそうだ。
前線は、北半球の場合温度の低い空気が北側から南下し、暖かい空気の下の方から侵入する。コリオリの力の影響を受け、時計と反対周りの渦となる。空気の境目では、盛んに雲が作られることになる。この現象は、火星の極冠の周りでも起こっており、火星のMGSやMROの画像を点検すると、これと思しき模様がよく見つかる。詳しく精査すれば温帯低気圧を見つけることができるのではないかと思う。 地球と比べれば短命だが。

火星の近況

10月18日付近に起こったダストストームから

   10月17日ごろ、ヘラス付近にダストストームが発生した。もっとも明るくなったころは、ヘラスの形がはっきりしなくなるという状況になった。また、時を同じくしてイシディス付近にも明るいダストストームが発生した。


   この影響は月末まで続き、10月28日には火星画像のリムが黄色く観測された。今回、イシディスのダストストームが、MROにはっきり写ったことにより、ダストストームの移動速度の概算を試みた。その結果、時速62qという値を得ることができた。2014年5月14日にフランスのC.ペリエ氏がアキダリウム北方で記録した高速のダストストームは時速130〜140qになってことから見ると、その半分近くになる。極付近の周回気流(ジェット?)によって流される気流と、緯線方向に移動するダストストームには大きな移動速度の違いがあることが分かる。

事務連絡

会費をいただきました。

  2015年分 (敬称略)
   例会で:畑中・堀内・佐藤・奥田・坂本・柚木・熊森・安達
   堀井3月10日・中井3月31日
   以上10名です。

次回例会予定

   4月例会  4月19日(日) 山科アスニーにて
   7月例会  7月26日(日) 山科アスニーにて
  10月例会   未定(10月には会場がとれず、11月中旬になります)


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