月惑星研究会関西支部例会・支部通信 No.83

2015年07月26日

 夏本番を迎え、暑い中でしたが、9名の参加者での例会となりました。いつものメンバーが少な い状況でしたが、高校生たちの参加があって活気のある例会となりました。また、神戸から久しぶ りの参加もあり、和やかな例会となりました。参加者の写真の一部が切れていました。お詫びします。

例会集合写真
参加者

松尾・坂本・大輪・西澤・近藤・宇根・堀内・熊森・安達 以上9名  

自己紹介と近況報告

 初めて顔を見る方がありましたので、近況報告を兼ねて自己紹介をしてもらいました。
安達
天気が悪く、観測は何もできていない。自宅の天文台を既製品のドームに替えたことから使い勝手がよく、効率は上がっている。最近は薦田さんのスケッチの読み込みにかなりの時間を使っている。 松尾: 神戸市東灘区から参加した。3〜4年前にHPを見て一度参加したことがあったが、天文活動をしているグループを探し、これから参加していきたいと思っている。
坂本
高校生を4人連れてきた。(以下4人が高校生)3日後に高文協の全国大会で、連れてきた高校生達は発表するので、忙しくしているが、研究対象を天文としている生徒もいて、今日は勉強してもらうために引率してきた。しかし、観測しようという日は曇っていることばかりで、作業は進んでいない。
大輪
課題研究で木星の研究をしたいと思っている。
西澤
金星の研究をしようと思っている。
近藤
金星の研究をしようと思っている。
宇根
木星の研究をしている。今回は前回よりもよく撮れた画像を持ってきた。
堀内
ここしばらく災難が続いてまいっている。ドームのスリットを開けたまま寝て、雨にたたられたこと。PCがクラッシュしたこと。望遠鏡の光軸がくるったこと。赤道儀の駆動装置が壊れて、メーカにドックイン。と次々に。
熊森
新しいウェッブカメラを購入して、いろいろ試している。今日はこれについての発表を用意している。

冥王星の画像から

 マスコミに流れた冥王星の画像をとりこんできたので、それを映し出しながら、気が付いたこと や分からないことを出していった。

(1) 冥王星の黄色い着色部

メタンと関係があるような資料が目につくが、なぜあのような着色された部分があるのか理解に苦しむ。

(2) カロンの黒い模様

まるで地球の衛星(月)の海のような暗い部分が写っている。熔岩平原?とは思いにくい。冥王星の周囲を公転している様子を見ると、暗い部分はいつも画面の上を向いたままになっている。月はいつも表側を地球に向けているが、カロンは違っている。

(3) 冥王星の山

一つ一つを詳しく見ていくと、高い山は上が白い。まるで雪をかぶったかのように。でも、雪が降るような雲があるとは思えない。じゃあ、あの白いものはなにか。

(4) 氷の平原?

流氷のような割れ目があって、下には液体状の何かがある。広がりながら大地に侵入しているような姿に見える。とても理解しやすい画像だが、割れ目から山のような黒いものができている画像については、黒いことが興味深い。


高校生の発表(宇根くん)

 前回の例会に木星の撮像したものを持ってきたが、処理がよくできなかったので、改めて撮像しなおし、処理も練習してきた。(前回とは格段によくなっており、研究に使えそうな画像が撮れていた)
 フィルターを交換するのに時間がかかり、撮像時間が長引いた。色ずれを補正すると、衛星が色ずれを起こしてしまった。どうすれば色ずれが起こらないかという疑問が出たが、WinJUPOSのDerotationを使えば修正できるとアドバイスを受けていた。実際に撮像した画像を使っての実習も試みた。
 また、RGB合成の時にL画像を撮る理由がわからないということだったが、Lを入れることにより、模様の解像度が上がるという回答があった。また、撮像した画像から展開図を作る方法を聞かれたが、WinJUPOSで作れるところまでは紹介したが、参加者の中で作った経験者はほとんどなく、自分で勉強するしかないと思う。ステライメージで展開図を作る方法を、安達が紹介したが、経度を入れるすべを知らないので、これも中途半端に終わった。
 どなたか、WinJUPOSで展開図を作る方を公開していただけると嬉しいのですが。(安達)


木星の近況(安達)

 木星のシーズンは事実上終了した。IRの画像が報告されてきているが、詳細な表面の様子をとらえることは困難だと思われる。前回の例会後、安達が見つけたことをいくつか紹介した。

(1) BA後方のSTBから流れ出る小暗斑

BAの後端には暗斑があるが、長さがどんどん小さくなってきており、7月26日にはBAよりも小さくなってしまった。この小さくなる過程で、暗斑の後端から小暗斑が次々に放出され、後方に流れていくが、30度ほど後方にあるリング白斑に到達すると、このリングの流れに吸収されて、小暗斑は消滅している。時々大きな暗斑ができた場合は、吸収され切らず、リング白斑の後方に流れていくものもあるが、今回はそういったものも、しばらくは離れていくが、自然消滅をしているようだ。
 小暗斑は、BA後端の暗斑から放出されるが、そのすぐ北側(SSTBn)にあるBAの後端にある暗斑のような循環している気流の部分から暗斑が北側に放出される場合もあった。この南側から来た小暗斑と、BA後端の暗斑から放出された小暗斑が、リング白斑の15度くらい前方でマージしている姿も記録されていた。
 BA後端の暗斑が小さくなってきたため、放出される小暗斑はほとんどなくなり、最近はほとんど見られなくなった。この現象は、2008年6月20日〜7月12日にかけて作られた動画と、うり二つの現象だった。この2008年の画像では、BA後端の暗斑もSSTBnにある循環気流もすべてが、まるで再来のようだった。
 この時の小さくなったBA後方の暗斑の後、どのような変化が起こったかの追跡調査をする時間はなかったが、大いに参考になるものと思われる。





(2) SEBの謎の明部

大赤斑の前方にあった、謎の明部はいよいよ分からなくなってきた。


図の中の青い線は、明部の前端と後端の位置を示しているが、5月になって、位置がはっきりしなくなってきた。6月9日には、SEBの中央に同じような明るさの小さな明部がいくつかならんでする様子が見られるだけになった。この分で行くと、消失してしまうように思われる。図の中の黄色い線は前方から接近してきた、同じ緯度になる明部だが、この明部が接近してきたことと、謎の明部の形状の変化とは、なにかの関連性があるように思える。残念ながら、これから先の変化は合になるため分からないままとなりそうだ。


(3) SEBの明化

大赤斑後方かく乱領域  大赤斑のすぐ後方のSEBZには、通常、かく乱領域がある。今シーズンはSEBnが淡くなって、見えにくくなっているが、5月21日の画像のように、大赤斑の下に、SEBの赤いベルトが滑り込んでくることが時折みられる。最近は、この傾向がはっきりしていた。そのため、大赤斑後方かく乱領域はSEBsとの間に挟まれた狭い領域だけになってしまった。IRで撮った画像を見ると、SEBsはGRSの北側を通り、大赤斑後方のSEBに流れ込んでいる。この時、IRでは前端でも後端でも同じ緯度に暗いベルトができる傾向がある。
 後方かく乱領域は、SEBの南半分で、それよりも南側の部分(STrZに拡幅されたように見える部分)は単純にかく乱領域だといえないかもしれない。


新しい惑星用カメラ(ZWO ASI224MC)の紹介(熊森)

 SONY IMX224のCMOSセンサータイプのカメラだ。ZWO(中国製)のカメラである。最大の特徴は感度が高いことで、ZWO ASI120MCよりも約6倍も感度が高い高感度PCカメラである。ただし、カメラはカラーのみである。
 ノイズは多めだが、高感度であるだけでなく、若干赤外域にも感度があり、メタンバンドに使えるかもしれない。現在、テスト中である。



熊森さんからの報告

土星の近況  今シーズンの土星は、IR画像において大きな変化がとらえられており、カラーでは何もなかったかのような姿になっている。
 図のような目立った暗斑は、IRでのみ記録された。画像をさかのぼると、5月16日のティジャーノ・オリベッティー氏のIR画像にさかのぼることができる。


 このような大きな変化は少なくとも6月いっぱいは続いている。詳しい追跡はできていないが、例会では、IRの画像を日にちごとに並べ、姿を確認していった。最大、経度方向に180°位の広がりにまで乱れていた。これからの土星の観測に、一石を投じることになったように思われる。


薦田一吉氏の木星観測

 1959年を中心としたスケッチブックを、安達が持参し、原版を参加者で見る機会を持った。東亜天文学会のスケッチ用紙に描かれたものが、大学ノートに貼り付けてあり、スケッチとその時のコメントがその横に記載されているというスタイルである。
 1枚1枚見ていくと、無理のないスケッチが並んでおり、攪乱が起こった時のSEBの様子や、大赤斑孔になった時の姿などが記録されている。詳細は、後日整理して公開することにしている。スケッチは1枚2・5Mbの大きさのファイルになっている。HPにあげるためには縮小して掲載するように処理をする予定だ。


事務連絡

次回例会予定

 これからの例会の予定
 11月8日(日)午後1時から山科アスニーにて
         いつもの隣の第2研修室になります。お間違えのないように。
 1月17日(日)午後1時から山科アスニーにて
         元に戻って、第1研修室です。
 日程の確保をお願いいたします。たくさんの参加をお待ちしています。


月惑星研究会のHomePageへ戻る  関西支部のPageへ戻る