月惑星研究会関西支部例会・支部通信 No.86

2016年04月17日

 木星の観測好機と火星の観測好機を迎えての例会となった。今回は久しぶりに高松市の野々口さん。堺市の柚木さんが参加され、懐かしい顔が見られた。また、例会には熊野市の畑中さんが新宮市の田阪さんから皆さんへということで、デコポンを持参され、参加者に配られた。誌面をお借りし、田阪さんにお礼申し上げたい。また、今回も京都教育大学の学生さんと、滋賀県立米原高校の生徒さん2人が参加された。

例会集合写真
参加者

野々口・畑中・安達・中野・布村・柚木・坂本・山田・宇根・堀内・堀井・熊森
 参加者は12名でした(順不同)。  

自己紹介と近況報告

野々口
10年ぶりに参加した。地震の影響を受けて新幹線は遅れていた。松と違い、人の多さにまいってしまった。人に酔った感じだ。最近は松も天気が悪い。以前はスケッチだけしていた。最近のデジカメのことはよくわからない。近年は美星天文台の講座によく行っている。
畑中
三重県立少年自然の家で仕事をしている。晴れれば月10回くらい、学校団体に星を見せている。今日は新宮市の田阪さんからデコポンを預かってきたので、もらってほしい。最近アイピースをかえた、プローセルのアイピースが使いやすく、性能も良いように思う。
安達
まだ観測を頑張っている。晴れたら望遠鏡をのぞくようになっている。気流が良くなく困っている。最近ドームのスリットに下から上にあげるシャッターのようなものを布で作り、使っている。シーイングが若干よくなった。
中野
京都教育大学から今日も一人連れてきた。専攻は惑星科学で、小惑星を研究している。小学校5年生の時にやった自由研究でやった、木星のスケッチがでてきて懐かしかった。三重県の美杉にドームを2つ作ったが、今になってトラブルが起こってまいっている。
布村
中野研究室で4回生になった。30cm反射を作って木星を撮ってみた。今日はとったものをみていただき、アドバイスをいただきたい。ガニメデは小さく思い通りに行かず困っている。
柚木
1年ぶりに来た。体調などいろいろあって冬眠状態だった。その間に、撮影するカメラが変わってしまった。今日は刺激をもらいに来た。本当は香川県にできた望遠鏡博物館に行きたかったが、最近の地震のことを思うと、気が引けてしまった。
坂本
今日も生徒を2人連れてきた。学校にようやくC11を買うことができ、それで撮り始めた。さすがに、今までよりもよくなった。生徒を学校に泊めて観測をすることになるが、泊まれる日が少なく、なかなか成果が出ない。
山田
高校2年。今年から学校の課題研究が始まるので、テーマを考えている。最近、対物プリズムが出てきて、使ってみると暗線が写るので、それを使って火星のスペクトルを撮ってみようかと思っている。
宇根
高校3年。とうとう受験の年になってしまった。しかし、天文とは離れられない。しかし家ではできないので、将来大学に進学したらちゃんとやりたいと思っている。
堀内
今まで通り、観測活動を続けている。3月初めにZWO224を導入した。使いやすいためこのカメラが中心となった。IRpassをつけてとっている。メタンフィルターも手に入れたが、あまりにくらいので今は使っていない。カメラはいいが、容量をものすごく食うためまいっている。木星を撮って火星に回ると300Gを越えてしまう。何かいい方法を教えてほしい。(モノクロでの撮像にして合成すると早くなるとか・・・)
堀井
ドブソニアンで撮像している。パワーメイトの4倍を付けるとバランスがくるって撮れなくなったが接眼部の反対側にバランスウェイトを付けることによって、バランスが取れるようになった。しかし、オーバーウェイトになって苦しんでいる。
熊森
毎日は日曜日になり、観測をしている。モノクロの178を買って撮像している。今日はそのレポートを発表する。

木星の近況(安達)

(1) SSTBのWSの動き

 特別に目立った変化は見られない。それぞれのWSの間には逆向きの明部があり、一定の間隔を保っている。中には2つのWSの間を言ったり来たりしているものもあり、追跡すると面白い。

(2) BA付近の変化

 展開図を並べていき、ドリフトを調べると、BA直後の暗斑から小さな暗斑が吐き出され、それが後方に流れている様子が見られた。例会直前に堀川さんの作ったドリフトチャートと比較してもその吐き出された暗斑の動きが見事に追跡された。
 堀川さんの作られたものでは、STB Ghostでも同じことの起こっていることが確認され、同じ性質を持つことが分かった。

(3) SEBの変化

 SEBの北側に明部ができている。長さが60°くらいあり、SEBの中を前進している。大赤斑に次第に追いつくが、先端が大赤斑の右下に到達すると、SEBの大赤斑後方かく乱が活発化するような気がする。もっと追跡しないとはっきりしないが、気になる現象を見つけた。

(4) SEBZ

 大赤斑前方のSEBZには細い明部がGRSまでつながっているが、その中に、昨年「謎の明部」と呼んでいた部分の先端と後端には小さな白斑が見られたが、GRSに近いほうはGRSの直前に位置していたが、GRS Hollowにぶつかった。その後の変化はこれから見て確認しなければならない。一方、後端のWSは順調にGRSに近づいてきたので、今後の変化が面白い。
 SEBの北側に明部が連続してみられるが、これらの動き方がpost-SEB-disturbanceに 影響を与えているように見える。

(5) Post-SEB-disturbance

いくつも発生するSEBの白斑がMid-SEB-outbreakかもしれないということで、追跡したが、どうやらWSが同じところで発生するわけではなく、Post-SEB-disturbanceのようだ。

(6) ダミアン・ピーチ氏の画像から

3月18日の画像を見ると、STrZなどは米粒のような白斑で覆い尽くされている。そのほか、精緻な画像を報告してこられる観測者の画像を調べていくと、まるで太陽光球の粒状班のような微妙な構造がとらえられていることに気が付いた。(支部通信を書いている間にも。国内は熊森さんが撮影されている)もっとさかのぼれるのかもしれないが、安達は今になって気が付いた。
 一つ一つが明るい雲のようになっており、興味深い。衛星画像でこういった画像がないかをチェックしていただける方があればお願いしたい。

(7) メタン画像から

今年の木星は南極が明るく写る。昨年は大きな差は見られなかったが、今年は明らかに南極が明るく写っている。


米原高校山田さんの発表

1月例会の後、学校ではC11を購入することができ、今はそれを使って撮像している。今までの望遠鏡よりも良い成果が出ている。今日は撮った木星画像を持ってきたのでいろいろ教えてほしい。
   <参加者から>
○ 撮影画像の大きさが小さいので、もっと大きくなるように撮影するほうが良い。

京都教育大学の布村さんの発表

大学構内で30cm反射を自作して、取りあえず完成し、今日は撮像した結果を持ってきた。重さを軽く作らないと架台に負荷がかかるが、なんとかそれをクリアすることができた。ただ、架台の追尾制度が良くなく、追尾中に振動が出る。そのため、安定した撮像ができないので、今後はそれを克服することができるようにしたい。

熊森さんの発表

新しくモノクロPCカメラを購入しました。ZWO ASI 178MMで、思ったよりも良く写ります。ピクセルピッチが2.4μmと小さいので撮影システムも短くしました。



下が撮像の結果です。システムは上のカメラの画像を参照してください。(安達)


火星の近況

(1) 南極冠の形成

火星の現在のLsの値と火星の軌道図をもとに、現在の火星の位置を確認し、これからは南極案の形成時期に注目が集まることを確認した。

(2) ヘラスの雲

前回1月から今日まで、火星面の最大の特徴はヘラスの白雲である。昨年の12月26日に、かすかにヘラスが青画像で明るくなっていたが、12月27日にはっきりと記録された。その後、このヘラスの雲は盆地一杯に広がるようになり、その後、お決まりのように東の方向に流出するようになった。この雲は極地方を右から左(西から東)に動いており、火星を一周した。
火星を一周すると、だんだん濃くなり、4月には全周を覆うようになった。この雲はその後濃さをまし、例会前日には火星の極を一周取り巻いた。その後この雲は南極の極雲として見えることになり、その後、この極雲は濃さをまし、南極冠の形成へとつながる。
今回は、ヘラスの盆地に発生した雲がどのように広がっていったかを各観測者の画像をもとに解説した。

(3) メリディアニ北方の明部

メリディアニの北方に明部ができていた。次ページの画像のように、青画像でも明瞭に白く写り、雲だということが分かる。Clyde Foster氏の画像を毎日点検するとその形が変化してることが分かる。同じ位置に雲が出るというのは、下に山がある場合だったり、盆地があるときが多い。しかし、この位置にはそういったものがない場所であり。不可解である。



(4) 北極の渦状雲について

月惑星研究会の近内氏からMLに情報が流された。毎年同じ位置に発生しているが、今年も同じ位置に発生しているようだ。残念ながら地球からの明瞭な観測報告はないが、今後も注意を払っていきたい。

土星の近況

目立った変化は見られない。昨年と比べても大きな違いは見られなかった、表面の白斑は、小さなものはひんぱんに発生しており、精緻な画像を見ると小さなものが見つかっている。
6月3日が衝になっているので、再び衝効果が観測できる時期が迫ってきている。

木星会議について

  会場となる静岡科学館と連絡を取り合っている。4月になって担当者の方が決定したこともあり、細部にわたって詰めを行っている。大方のことは決まった。10月9日(土)午後から〜10日(日)午前中までとなる。気になる点は宿泊で、駅前のためホテルはいくつもあるが、早めに取らないと大変だということ。特にサッカーの試合がある場合は、宿はいっぱいになるとか。
 安達の方で確認を取ろうと思うが、参加される方は早く行動を起こしてほしい。会場の隣がホテルで。土曜日の宿泊は1泊1食で8000円くらいだとか。追ってMLで情報を流します。

  会場は公の建物のため、5時には完全退出です。施錠されますからPCなどは置いたまま出られます。朝は9時半開場です。ちょっと時間に不満もありますがお許しください。
  特別講演はまだ決まっていませんが、ISASの佐藤 毅彦さんから「あかつきの見た金星」ならできますという返事をいただいています。どなたか候補がありましたらお知らせください。

 また、来年の木星会議のことも検討してください。当日までには内諾をとりたく思います。

 お願い・・・・木星会議でやりたいことを安達までお聞かせください。学生諸君の提案でもOKです。何か出してください。
        なにも出ないと、独断と偏見で決めなくちゃいけません。

事務連絡

次回例会予定

  これからの例会は次のようになっております。よろしくお願いいたします。
    2016年 7月例会   7月17日(日)
    2016年10月例会  10月30日(日)

会費受領

  2016年分 中井(郵便振替にて)


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