月惑星研究会関西支部例会・支部通信 No.93

2018年01月28日

  今回の例会には、月惑星研究会関西支部の前身になる「月面惑星研究会大阪支部」時代に活躍されていた、奈良県の荒川毅氏が参加されました。もう、40年近くにはなるかと思いますが、久しぶりに会えたメンバーもあり、いつもより和やかな例会になりました。

例会集合写真
参加者

 参加者は9名でした。  

自己紹介と近況報告

安達
昨年から火星の観測を始めています。まだまだ視直径は小さのですが、それでも気流が良ければそこそこ模様を見ることができます。でも、最近は気流も天気も悪く、観測は思うように進んでいません。昨年末から火星のシミュレーション用の画像修正に着手しており、約80%くらいで来ています。元画像は前シーズンの2016年の熊森氏のものをおもに利用しています。年明けからは例会の資料つくりに忙しくストップしていますが、支部通信を発行し終えたら、仕上げにかかる予定です。
五十嵐
昨年持ってきた長焦点の反射望遠鏡を、安達さんの手助けで改造しました。斜鏡金具を丈夫なものに取り換え、ファインダーも大きくしました。その結果、日中の水星を無事に撮影することができ、卒論の中に入れることができるようになりました。今日は、あとで発表させていただきます。
堀井
火星や木星が見えるようになってきたので、久しぶりに望遠鏡をベランダに出し、使おうとすると、オートフォーカスのスイッチが入らないようになっていました。メーカーに問い合わせると、なんとモーターごと交換だと言われ、仕方なく交換することになってしまいました。おかげで、ようやく観測ができるようになり、先だって報告をしました。今年はモノクロにも挑戦したいと思っています。
堀口
昨年導入した40cmに相変わらず悪戦苦闘しています。なかなか光軸が決まりません。原因は強度不足のようで、おまけに気流も悪く、やる気が失せてます。暖かくなるまでには調整を終わらせたいと思っています。
荒川
5年前に仕事を退職し、天文活動に復活しようと準備をしていますが、今日は安達さんからの誘いもあって、例会に出席することにしました。もう、40年ぶりかと思っています。 自宅には30pニュートンがあって、2階の屋上に望遠鏡を据えつけています。普段はシートで覆っていて、観測はシートを外して行うようにしています。まだ、調整の必要なところもあって、シーズンまでには終わらせたいと思っています。
岡本
1年間仕事が忙しくて出てこれませんでした。観測活動は何もできていませんが、今年は火星大接近の年なので、火星を観測したいと思っています。
熊森
今年は火星大接近なので、観測に沖縄に行きたいと思い、その準備をしています。先日下見に行ってきましたので、今日はその報告をしたいと思っています。予定では7月初めからひと月間です。
長谷部
3年ぶりに例会に来ました。昔は木星や月面の観測していました。60才になった時に月面の観測研究をしたいと思い、活動を始めています。名古屋大学にクレーターの年代学を研究されている先生がおられ、お目にかかって、いろいろ相談しています。今は、月面に見られる新しい時代の溶岩流に注目しています。自分の望遠鏡でも撮れるのですが、今日は撮影方法についてアドバイスをいただきたくてやってきました。
畑中
今日は松阪経由で来ました。昨年カセグレインからニュートンに改造しました。覗くところが結構高くて、落ちてしまいました。ニュートンは危ないですね。再メッキも完了しました。背が高くなったので、観測室の床を60cm上げました。その下にいろいろ荷物を収納したため、すっきりしました。今は、星雲を撮ってみたりしています。

 近況報告の時に、光軸の話に花が咲きました。ニュートンを持っている人は、皆さん光軸に苦しんでいるようで、接眼等から見た斜鏡の位置の合わせ方が、星像に影響しているかもしれないと話に盛り上がりました。熊森氏からは星像悪化の主原因はかなりが主鏡にあると説明されました。鏡の保持に問題があって、ねじがわずかに当たるだけでも星像は乱れるということで、主鏡の保持について、再点検をする必要があるなと、参加した人は思っていました。  主鏡は締めつけていなくても、ねじが横から当たるだけでもひずみ、星像に影響が出ると、具体的に説明されていました。

木星の近況

(1) 南熱帯攪乱について

 今回の合でも、木星には大変化が起こってしまいました。南熱帯攪乱です。
 最近の様子を見ながら、南熱帯攪乱がどのような現象かを確認しました。特にロジャースの執筆されたTHE GIANT PLANET JUPITERの中から図などを引用して映し出し、それを見ながら安達が解説しました。
 1979年に起こった時の南熱帯攪乱のスケッチを見ました。ちょうど例会に参加されていた長谷部さんの観測記録があり、それを映し出し、モデル図と合わせて確認しました。
 例会直前には攪乱によってできた左上がりのprojection(逆向きのフェストーン状)の後方に暗斑状の暗部が出てきていましたから、これからこれが暗くなるかどうかが注目されると思われました。しかし、まもなく大赤斑と会合するので、大きな変化が起こる可能性が高く、注意を払わないといけなくなっています。大赤斑を通過すると、大赤斑の前方に出てくることが多く、その後、STrZが暗化することがあったり、過去にはSTBが暗くなったり、SEBが淡化したりなど、大きな変化になることが多く観測されています。
 今回は大赤斑との会合がまもなくなので、気を付けていただきたいと思っています。ここひと月くらいの観測は重要です。


(2) NEBの模様について

 メタンバンドで撮影した時のように暗部と淡化部が交互に見えています。特に最近はこの傾向が強く、Ansony氏やGo氏の画像でその様子がはっきりしています。このメタンでの模様のパターンと可視光での模様のパターンは、今まであまり一致していなかったのですが、今回は非常によく合うようです。安達は、まだ追跡していませんので、はっきりしたことは分かりません。皆さんでどなたか追跡していただける方があるようでしたら、声をかけてください。


(3) JUNOの画像から

 木星会議の時にも、集まった方にはお見せしましたが、その後の画像も含めて、いくつかの画像からわかること(私見)を紹介しました。STB Spectre付近の画像をもとにして考えたものをみていただきました。STrZは下から湧き上がってきている東西の帯状のゾーンで、雲の様子を注意深く見ると、南北方向に広がっているように見えます。下から湧き上がってきているように見えるので、SEBsからSTBへの循環気流は考えにくいと判断しました。もちろん経度方向によって違いますが、このSTB spectre付近に関して言えば、そう思えます。ここに示した画像がそれに当たります。
 また、雲の様子を見ると、暗くなった部分には線状のバンドがそれぞれに存在し、あたかもこの暗い部分で沈んでいるように見えます。

 これらの見方は、安達個人のものですが、大きな違いはないだろうと思っています。 次に、GRSの縦方向の画像も公開されていますが、表面から90q以上150q未満の領域が熱の影響が及んでいる領域であることが示されています。意外に浅いという印象でした。図のようなモデルを考えました。実際のスケールとは大きく違い、150qとしても非常に薄いものですが、内部方向にはあまり広がっていないと判断できました。でも、例会の時に鉛直方向にはそう見えても前後には切片がないから、ひょっとすると東西方向に伸びている可能性のあることも指摘されました。なるほどと、一同感心しました。ただ、今はこの直前にSTrZ Dist.が来ていますので、このGRSの下をくぐるのか、脇をすり抜けるのか、注目しなければいけないと思われます。(GRSは、本当はもっとぺっちゃんこ!)


参加者からの持ち寄り話題

(1) 月面の研究の紹介(長谷部)

 昔から、月面には興味を持っており、今も何かできないかと模索していますが、最近は月面に流れた比較的新しい時代の溶岩流に着目して観測や研究をしています。名古屋大学にクレーターの年代学の研究をしている先生がおられ、その方に助言をしてもらいながら研究を開始めています。この溶岩流は、ターミネータになっている時に観測すれば自分の望遠鏡でも撮影することができます。厚さはだいたい35mくらいのものようです。
20億年くらい前が最新のもののようですが、チタンが多い地域になっているようです。最期のマントルの活動によるプルームによって、地表に流れ出たものようです。
 撮影に当たって、どのようなカメラで撮ればいいか、カラーがいいかモノクロがいいか迷っています。画素は多いほうがいいとは思っています。月面上の影の長さはそこそこあるので、認識するには1秒程度の精度でとれればよいと思っています。皆さんからの情報がほしいです。
(安達から:参考意見のある人は安達まで連絡をください。長谷部さんに転送します)


(2) 昼間に水星を見るために(五十嵐)

 前回の例会に、長焦点の反射望遠鏡を持ってきました。皆さんから構造に問題があるということで、いろいろ改良しました。とりわけ斜鏡サポーターについては、安達さんのお宅までお邪魔して作らせていただきました。遮光やファインダーの改良、撮影方法の工夫などをして、ようやく水星の画像を得ることができました。なんとなく丸ではなく三日月形に写っていることが分かってホッとしました。3日間撮像して記録でき、卒論にも間に合わせることができました。


(3) 近況報告(荒川)

 自宅の屋上(2階建ての屋上)に30cmの望遠鏡を設置しています。普段はシートでくるんでいいて、観測時にはそれを外して観測するようにしています。架台は自作で、筒は西村製作所のものになっています。鏡は田阪鏡。まだ、これからですが火星大接近もあってこれから使っていきたいとおもっています。(右図)


(4) 火星の沖縄観測について(熊森)

 今年はなんといっても火星です。国内で観測するといえば沖縄!じゃあ、沖縄にひと月間位住み着いて観測をしよう!と、下見を敢行しました。沖縄は那覇よりも南の方がよいとの情報で、那覇より南で何とかなりそうなホテルや民宿をいくつか下見してききました。なかなか良い条件のところはなく、今回は決めるにまでは至りませんでしたが、一応、候補ができ、現在交渉をしています。ついでに沖縄の宮崎さんの宅にも立ち寄ってきました。


(5) 観測所の改造(畑中)

 自宅の観測所の望遠鏡がニュートンになった関係で、床からの高さが高くなり、このままでは辛いので、床を60p上げることにしました。せっかく床下収納のできるところができたので、そこにいろいろ収納したらすっきりしました。(♪)使いやすくなったので、これから頑張っていきたいと思っています。


火星の近況(安達)

火星は、順調に大きくなってきていますが、それでもまだ6秒ですから、なかなか難物で、気流も悪くなって国内ではなかなか良い画像を得ることができない状態が続いています。

(1) 氷晶雲

 極冠が小さくなっている時期には、火星面の低緯度地方を東西に覆う氷晶雲がよく見えるようになるのですが、今回も現在は非常によく見えており、画像はもちろんなく眼観測でも経度によって見えるところがあります。今後は、極冠が見えてくると、見えなくなっていきますので、いつまで見えるかに関心があります。
 一般的に氷晶雲は、火星面の午前9時の位置が最も濃く見えることが多いので、時間とともに濃さには違いが出ることを知っておいてください。


(2) 南極冠

 まだ見えていません。ほんとは形成されている時期ですが、惑理緯度が北よりのため、南極地方はまだ闇の中で見ることができません。見えてくるのはMare Sirenum(シレーンの海)付近であることが多いのですが、南極冠のエッジに注目して観測していきたいと思っています。IRで撮ると白雲の下に固体の極冠をいち早くとらえることができますので、IRで撮れる方は狙ってほしいです。


(3) ダストストーム

 11月19日にMare Acidariumの北側に淡い光点ができました。一時的に低気圧によって地表の砂が巻き上げられた現象だったようです。1回きりの観測でしたが、MROの画像で確認が取れました。
 過去のダストストームの発生時期を調査しました。


仰天画

久しぶりの仰天画像の紹介です。ものすごくよく撮れたダミアンピーチの天王星画像やベルトが大きく乱れて記録された天王星の画像。など注意しなくちゃいけないものを並べて、見ていきました。


事務連絡

(1) 会費など

 会場費は、当日にいただきましたが、年会費をいただいた方のお名前を記載します。
 振替でいただいた方:1月20日 野々口さん2018年分
 2018年分までの受領者 荒川・岡本・熊森・堀口・堀井・畑中・長谷部・安達
 寄付 岡本さん3000円


(2) 今後の予定

 2018年4月例会 4月22日(日)午後1時より 山科アスニー第2研修室
    7月例会 7月08日(日)午後1時より 


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