月惑星研究会関西支部例会・支部通信 No.94

2018年04月22日

  今回は新年度の始まりの時期で、参加が少なく残念でした。惑星界は木星が夜半全に東天に昇ってくるようになり土星や火星の観測も本格的に始まりました。夜半前に昇ってくる木星に、夜明け前の火星や土星と、寝る時間が難しい状態になりました。

例会集合写真
参加者

 参加者は6名でした。  

自己紹介と近況報告

畑中
光軸はあってきたが今一歩足らない。合わない原因がどこか探しているが、まだよく分からない。望遠鏡の調整に手間取り観測は少ししかできていない。観測は厳しく、分断睡眠になっている。これからは自分の機材に合わせた観測方法をとっていこうと思っていっる。最近、地域の観光の仕事にも関わり、忙しくしている。
荒川
1月の例会でみなさんからの刺激を受け、帰宅後290MCカメラを注文した。入手後、試行錯誤を繰り返しているが、なかなか安定して撮れていない。自宅の望遠鏡の改造もしたので、今日はあとから発表する。
熊森
今朝、観測をしてここに来たが、今朝は1.3テラ使った。前はHDをためていたが、さすがに手におえず、良いもの以外は消して使うようになっている。観測が終わると、カラーの画像の処理をPCにまかせて寝るようにしている。次に起床してからモノクロの処理をしているが、今日は例会があるので、途中でここに来た。PCの処理時間が長くて大変だ。しかも木星の観測時間が長いのと、明け方に火星があるので、本当に大変だ。
堀内
望遠鏡の光軸が合わない。いろいろ手を加えてきたが、もうあきらめた。基本的にセルがダメ。セルにひずみが出ているようだ。観測前に毎回光軸を合わせるようにして始めている。光軸を合わせてから始めると1〜2時間は維持できる。土星などシビアなもには手が出ない。PCの処理も追いつかずPCを買い替えたいと思っているが、介護が入ってきたので、状況は厳しくなってきた。
奥田
30年近くニュートンを使っている。今は、観望だけになってしまった。今日は皆さんからの刺激を受けに来た。
安達
火星の年になり、いろいろ忙しくなってきた。天文普及研究会がらみでastroHSでの火星担当になった。高校生用の観測マニュアルを作ったり、プレゼンを用意したりと、急に忙しくなった。観測活動も続けているため時間に余裕がなく、忙しくしている。4月から今までと同じ仕事をするようになり、ますます忙しくなっている。

長谷部さんの月面観測

 例会には来られなかったが、最近の様子を報告された。前回来られた後、月面の溶岩流の観測を続けておられます。
  前回の皆様からのアドバイスによりASI224MCを購入し撮影を始めました。まだまだ好条件に恵まれず、逆の太陽光下画像も得られていません。とりあえず2/26・3/28の写真を報告します。ということで、右のような月面画像を2枚送ってこられました。そのうち1枚を掲載します。矢印先端付近が溶岩流の可能性があると考える部分です。
 1枚だけの画像では分かりにくいですが2枚あると存在がよくわかります。


木星の近況

いつも安達がまとめていますが、時間がなく中途半端なまとめしかできませんでした。

(1) STr Distの様子

 事前にロジャースのかかれた本をもとに1902年に起こった攪乱付近の記録をもとに見てきました。1902年は図のようなものが見られていますが、この時はSTr Distの前端部分がGRSに会合して、前方にジャンプする様子が記録されています。図を見ると、確かに前端がGRSの前方に出ていますが、注視するとその前端はSEBsには流れ込んではいません。すき間ができているのです。ジャンプ途中なのかもしれませんが、このような姿なら今シーズンに起こりそうです。小規模なものはすでに3回みられました。
 記録を見ると、この時のかく乱現象は1901年から1939年まで存続したと記されています。長いですね。この間8回もGRSに会合したようですが、いずれもジャンプしたようです。このように考えると今回の会合はまだ始まったばかりですから、まだまだ変化が続いてもおかしくありません。ただ、1900年代の攪乱の歴史を見てみると1〜2年で終息しているものが多く、どのような変化が起こるのかは全く予想が付きません。しかし、上の図のようなことがこるだろうということはよそうできますね。
 この現象も水元さんが展開図を頻繁に更新してHPに出していただいていますので、それを見ながら確認しました。


(2) STB gohst

 STBにある模様ですが、肉眼観測ではなかなか見えてきませんが、画像では特異な模様が記録されており、最近では非常に長く大きな暗条に成長しました。このようになるきっかけはSTZにできた小さなWSが元でした。
 2月4日に発生した小さなWSは、あたかも卵子に精子が入るかのごとくgohstに侵入しました。途端にgohstは大変化を遂げました。(上のIR図)
 その後、現在のような大きな暗状に成長しています。とても大きな変化した。


(3) JUNOのとったGRS

 このような大変化の起こっている木星にJUNOが飛んでいるのは幸いですが、GRSとSTr Distとの会合に関連する画像で図のようなものが公開されました。GRSの渦が隣にできた渦に巻き込まれてはがされているものです。皆さんも驚かれたことと思います。これを見ると、GRSを作っている赤いものは色のついたガスなんだというのがよくわかります。
 ところで例会の時には気づかなかったのですが、新しい事実を発見しました。GRSの前端部にできたこの青っぽい渦は、なんとGRSと同じ方向に回転しています。同じ方向だとすると低気圧ですが、赤くなく、形状から見て高気圧的な姿をしています。GRSと同じ向きの高気圧!!そんな馬鹿な!
 巨大な渦が近くにあると、逆向きの別の性質を持った渦ができるという例になるものが、また見つかったという気がしています。


(4)注目画像

 本当なら、もっとしっかり追跡したかったのですが、できませんでした。興味のある方の追跡をぜひお願いしたいと思います。
@ 1月29日のAndy Cselyの画像
 まるで葛飾北斎の大波のようなDistの画像。左右同じものが二つあって、後端以外は全部前方に向かって影響されていることを示しています。
A 2月2日のDamian Peachの木星像
 NEBとSEBが見事に同じ幅。いやあ、赤道縞らしくて素敵です。でも、中央下のEZsに目立った白斑が!こりゃあなんじゃ!
B 2月3日のDamian PeachのNEBには逆方向に傾いた白雲の帯が!NEBの上空にはこんな気流があったんだ!
C 2月25日のまたしてもDamian Peachの画像にはNTBnからNTrZに侵入する強烈なovalが!追跡したい!
D 3月28日の山崎さんの画像
 GRS直後のSEBの内部に3本のフィラメントが記録されています。2本までは良く見ますが3本!どう流れているの?
などなど、気になることがありますが、時間切れ!どなたかヘルプ!


参加者からの持ち寄り話題

(1) 荒川さん

 290MCカメラの発注や望遠鏡の改造に取り組まれました。屋上での観測なので機材はいちいち持ち上げなければなりません。そこで効率よく観測に入れるように、画像が撮りやすくなるようにいろいろ改造されましした。
・PCの持ち運びは辛いものですが、いち早く観測に入れるように、入れ物を工夫しておられます。野外なので夜露という強敵がいます。それを撃退する工夫を紹介されました。海外用のドライヤーを使うそうです。
・電動フォーカスに!
 大阪日本橋でギヤドモーターをいくつか買われました。非常にゆっくり回り1分間に2回転くらい。そこで、それを使って微動調節。図の右端の黒くて四角いものがギヤドモーターのギヤ部です。もちろん強力ですから、なんと赤緯軸に歯車で取り付け、ここも電動化されました。


(2) 熊森さん

 プラネタリウム協議会の火星ワーキンググループの研修会で使うためにプレゼンを作られました。今まで撮像や処理をされていない人ができるように親切に解説されたものです。これからやってみようとする人はぜひ見てほしいです。いかに魔法かが分かります。(^^)詳しくは「RB星のブログ」の中を探してください。
 もう一つ。6月から7月にかけて沖縄遠征観測を実行されますが、基地が決まった(民宿)ようで、その紹介がありました。すごいですね。みんな羨ましいと思ってみていました?観測は行ってみないと分からないこともありますが、特有の風を防御するのにも適当な場所を探されました。地表観測ではなく2階の屋上か3階の屋上も使えるとか。ここならハブもいないですね。頑張ってください。


火星の近況

(1) 極冠の見え方について

 現在は、南極冠の北縁になる位置に濃い白雲がドーナツ状に取り囲んでいます。まだ、ばっちり見えていませんが、先日Mare Sirenumの南方にそれらしき姿を見ています(安達)。
現在のLsは180°付近ですが2003年の時には152°でそれらしき姿が見えていますから、そろそろ見てきても何ら不思議のないところに来ています。


(2) 氷晶雲

 まだ、低緯度地方に見えていますが、一時に比べると非常に淡くなりました。Mare Acidariumの南方やTharshis付近は相変わらず見えています。
 安達は、これらの変化が気になるのでHPにこれらの分布図を画像から主観に基づいて拾い上げて公開しています。まだシーズン初めで全面はできませんが、これからシーズンが進み全面ができるようになると、何か見えてくるものがあるかも知れません。


(3) ダストストーム

 2003年の大接近の時は168°で中規模のものが発生していますが、今回はそこまで大きいものはまだ出ていません。しかし、例会までにいくつか候補になる現象がありました。
@ 2月6日にHellasの内部に雲の晴れ間
 撮影者がDust stormだと記述していますが、可能性があります。安達は晴れ間だと思うのですが確証はありません。
A 2月15日Hellasの西側
 この時期、Hellasから西側に雲が流れ出るのはいつものことですが、この流れに乗ってダストストームができています。画像では黄色っぽくなっていますので、濃くないものの砂が巻き上げられています。
B 3月5日Mare Acidaiumの東側に光斑・Meridiani付近に光斑
 局部的に明るくなりました。小さな嵐があったらしいです。
C 3月12日にMeridiani北方に光斑
 追跡してみると移動していますが、氷晶雲の小さく濃い部分でした。
D 3月27日Sinus Margaritiferの南北にダストストームの黄色い雲発生!
 熊森さんらが見事にとらえられました。安達も肉眼で見ています。翌日にはあっという間にベール状に広がり、付近の模様を著しく見えなくしました。かなり広い範囲が子のベールに覆われたことから、地表からは離れた高さに広がった可能性があります。
E 4月9日Hellasの北西から
 この現象は熊森さんだけが記録されています。安達もこの時は肉眼で見ています。MROの画像に見事なものが出ています、これも3月27日同様、1日で拡散しました。


 火星は、これから視直径がどんどん大きくなります。今は毎日0.1秒ずつ大きくなってきています。10日たてば1秒大きくなります。

  気を付けてほしいこと
 ダストストームが出たときの注意です。ダストストームはベールになって広がりますすると、模様のコントラストが低くなります。処理をするときについ濃く処理をしていまいますが、一番濃い模様が自然の模様と同じ濃さになるようにしてください。
 淡い模様を濃くしないでください。そうでないと本当の火星面の姿を現したことになりませんから。


事務連絡

(1) 会費受領

 以下の方々から会費を受領しました。いつもありがとうございます。
  菅野 清一さん 2月16日に振替で2018年分
  中井 健二さん 3月30日に振替で2018年分
  奥田 耕司さん 4月22日に例会で2018年分


(2) 今後の予定

 7月例会 7月8日(日) 山科アスニー
 10月例会10月28日(日)山科アスニー いつもと違う、多目的室です。木星会議と同月ですが、皆さん貯金して準備してくださいね!



月惑星研究会のHomePageへ戻る  関西支部のPageへ戻る