月惑星研究会関西支部例会・支部通信 No.95

2018年07月08日

 まず最初に今回の支部通信発行が遅くなったことをお詫びいたします。
 火星の大接近を間近に控えています。夏の好気流の中で火星の観測が期待されましたが、5がつ30日に大ダストストームが発生し、出ばなをくじかれた感じがしています。今回は9人での例会となりました。なお、今回から「個人の近況報告」は個人情報保護の観点から廃止します。

参加者

支部会員 畑中・荒川・堀井・堀内・奥田・安達
ビジター 井上・毛利・東
 今回は、京都産業大学の学生さんが2人来られて、熱心に聞かれました。また、井上さんは最近素晴らしい惑星画像をHPに報告されておられる方です。所用があるとのことで、少し早めに帰られましたが、例会の様子をご覧いただけました。  

例会集合写真

木星の近況

 いつもなら、安達がまとめてくるのですが、火星の観測や集約に追われ、ほとんど何もできておらず、堀川さんのコメントや水元さんが作成してくださった資料を基にして解説するにとどまりました。申し訳なく思っています。それでも、学生の方がおられるので、それぞれの惑星の近況をまとめるまでには、その時折りにわかるような解説を加えながら進めました。

(1) 南熱帯攪乱は消滅か!?

 大赤斑の前方に見られた南熱帯攪乱は5月末にはやせ細り、見えなくなりました。6月中旬になると、STrZにできたベルトから、北に向かってprojectionができ、あわやSEBsと接合するのではないかと思われましたが、そうはなりませんでした。

 6月末の時点でのSTrZの様子
 矢印の先が、新しくできたprojection この後、元に戻っていった。


(2) SEBがゆっくり淡化傾向になった

 右の画像のように、SEBnが淡化し始めている。 どこまで進行するか注目したい。


(3) NEBは元に戻りつつある

 拡幅が進んでいたNEBだが、次第に細くなりもとの太さに戻りつつある。ただ、北縁は大きく波打つような模様になり、BargeやWSが交互に並んでいるところが多い。今後もこの傾向が続くものと思われる。
 ただ、まだ幅の広くなった部分も残されている。


火星の近況

(1) 近況

 5月30日に大ダストストームが発生し、一気に拡散し、火星の模様は見えなくなった。今日はこれまでに見つけたことを中心に報告する。発生直後のダストストームの拡大は大きく3期に活動期を区分できることが分かった。拡大中に次々にダストストームが発生しており、一つのダストストームが拡大するのではないことが見えてきた。


(2) ダストストームの区分 (初歩の講座として解説した内容)

ダストストームには次の4つの区分が知られている
 Local duststorm・・・・・・・小規模なダストストーム
 Regional duststorm・・・・・半球内にとどまり90°を超えるようなもの
 Encircling duststorm・・・・全球にわたって広がり大きな影響をあたえるもの
 Polorcap edge duststorm・・・極冠からの冷気が周辺にダストストームを引き起こすもの
基本的には異常のようなダストストームが知られている。しかし、撮像技術が向上し、非常に小さなものがとらえられるようになって、1日だけしか見えない、局部的なダストストームが観測されている。そこで、安達が勝手に一つ提案した。
 Spot duststorm・・・・・・非常に小さく1〜2日だけしか見られないもの


(3) ダストストームの発生初期の様子

 5月30日にEfrain Morales River氏がMare Acidariumに発見した。残念なことにこの段階の様子は日本からは見ることができなかったが、初期の観測報告がそこそこ寄せられたため、どのように発達していったかがよく分かった。
 発生前のMareAcidariumにダストベールが広がっていなかったかをさかのぼって見てみたが、残寝ながら観測報告が少なく、詳しい様子をつかむことはできなかった。図のダストストームが発生後、火星の大気はこれを引き金にして拡大するだけの準備が整っていたことになり、発生までの火星面の様子を精査することが重要だと思われる。


(4) 拡大は3段階を踏んだ

 5月30日には地表を這う様子がとらえられている。その後、次第に舞い上がり、標高が高いところにまで発達すると、拡散スピードが一気に速まった。また、極冠に達するころから発達スピードが一気に拡大し、高度が高くなると、広範囲に一気に拡散することが記録された。この時期になると、日本も観測が切るようになって、たくさんの情報が得られた。
詳しレポートはHPに軽視しているのでそれを参照されたい。
第1期 5月30日〜6月7日 ・・・・・発生初期
第2期 6月7日〜6月12日・・・・・・成長期
第3期 6月13日〜6月15日・・・・・拡大期


(5) ダストストームの分布図

 今回の接近も2001年の時と同様に、分布図を作って公開している。この図は、報告されてきた火星画像から安達が長年の経験をもとに主観的に描いたのものであり、測定は一切していないので、参考程度に見てもらいたい。しかし、情報は非常に多く、たくさんのものが得られるはずだ。
 図の中のMare Sirenuの北側にオレンジ色のスポットが描かれているが、これは新たに派生したダストストームで、HPでそれぞれの図を追跡してもらうと、発生場所を知ることができる。


(6) マリネリス渓谷とダストストーム

 今回のダストストームは、マリネリス渓谷に侵入した。この部分は深い谷になっており、2001年の時にもダストストームがここに流れ込んだ記録がある。その時も同じ経過が見られた。ダストストームが渓谷の中に入り込んだのだ。
 その後、図のように白い帯となてい、いつも記録されるようになった。谷の位置と、地形図が見事に一致している。


(7) 極冠とダストストーム

 今回のダストストームは極冠が大きい時に起こったため、面白い現象がたくさん起こっている。6月27日には、極冠を覆ったダストストーム(暖気)によって、極冠が急激に昇華し、ダストストームの上空に白雲が出現した。この現象はかなりの高度に上がったため、火星像の縁が膨らんで見えた。
 この雲の正体はCO2 だろう。


会員からの持ち寄り話題

撮影装置にフィルターを入れる方法(堀井)

 望遠鏡が軽量であり、接眼部を重くするとたわみが生じるため、いかに軽く作るかが自分の観測装置には欠かせない条件となっている、そこで、思い切って軽くするために、フィルターの保持装置を軽量化した。見かけにこだわらず、ひたすら軽くしようとした。
 その結果、前の状態よりも改善が見られた。


その他

今後の例会予定

2018年10月28日(日) 山科アスニー いつものところですが、部屋が多目的室になります。
2019年01月27日(日) 山科アスニー第1研修室
    04月21日(日) 山科アスニー第1研修室
いずれも例会後に懇親会を行います。



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