月惑星研究会関西支部例会・支部通信 No.96

2018年10月28日

 木星会議直後の例会のため、出席数が少なくなるのではないかと危惧していたが、9名の参加者を得て例会を行うことができた。今日は京都教育大学から学生のビジターがあった。木星はほぼシーズンが終わった。火星は新しいダストストームが発生し、まだまだ活発な様子が見られている。
 例会の最初は、初めての人もあり、自己紹介や近況報告を行った。参加者は荒川・柚木・薄出・奥田・堀内・黒田・森田・熊森・安達の9名。

例会集合写真

木星会議報告(安達)

 10月17日・18日と鳥取県米子市、国立米子工業高等技術専門学校を会場に開かれた。
 関東方面からはかなり遠方になり、飛行機での参加が多かった。そのためか、関東の学生の参加はなかった。しかし、いつものメンバーが集まり、木星会議は盛会のうちに終わった。関西からは熊森・畑中・柚木・永長・堀井・黒田・安達が参加した。
 開会のあいさつは安達が担当したが、会場になかなかつけず、滑り込みで間に合った。その後、堀川氏から今シーズンの木星のまとめがあった。STr Distの経過・AWOのマージ・NNTBのWSのマージ・BA後方の攪乱などを中心に解説された。また、最後には恒例の来シーズンの見通しが紹介された。


木星の近況

(1) STr Distの様子

 安達が毎回まとめてきて、紹介しているが、今年は火星に振り回され、まとめがほとんどできていないため、堀川氏の木星会議のまとめを思い出しながら、きいておられない方々に紹介した。  事前に水元さんから1シーズンの展開図のまとめを送っていただいていたのをフル活用し、解説を行った。このPDFの展開図にはメタンバンドの展開図も含まれており、NEBの濃化部やメタンブライトのWSの位置などの確認を行った。
 展開図を動画にしたものを、水元さんが作られており、それを見ながらSTr Distの動きを確認した。前端はGRSの前方にジャンプしなかったが、後端はGRSを越えて、projection状の模様がGRSの前方に現れて、移動していく様子が見られた。大規模なジャンプではなかったが、後端はGESをジャンプしたと考えてもよさそうだ。


火星の近況

今シーズンの火星の観測から見られたことを整理して紹介した。

(1) ダストストームの発生地点

 5月30日発生して以来、小さなスポットとして、ダストストームが発生したが、発生地点だけを月ごとに整理した。6月は火星面全体で発生しているが7月は一部に発生の偏りが見られた。上の図は、7月の発生地点だが、明らかな偏りが見られる。
 9月10月は、極めて少なくなり、今回のダストストームの発生期は7月と8月の2か月間だったことが分かった。


(2) 極からの冷気の吹き出し

 今回のダストストームは極冠の大きな時に起こったものだった。そのため、極冠からの冷気の吹き出しが頻繁に観測された。とりわけ、Argye盆地の経度。Hellespontusの南方の極冠の位置。Aoniusの南方の極冠からの吹き出し。この3か所が、最も多かった部分に位置する。
この位置は、いつも極冠の晴れている部分と一致する。


(3) 極冠の大きさ

 ダストストームが極に達し、極冠を温めているため、昇華が早くすすみ、いつもよりも極冠の小さくなるスピードが変化するのではないかと思い、集まってきた報告を使って、簡易な方法で調べてみたが、2003年の時と同じであった。今のところ、ダストストームによる影響は見られない。


(4) 地形とダストストーム

 HP火星のコメントにマリネリス渓谷に入ったダストストームによって、谷の形状にぴったり当てはまる線状の模様ができ、安達は勝手な判断で、堆積物ができたためだろうと書いていたが、最近になって、全くその姿が見えなくなっている。もしも堆積物だとしたら、そんなにすぐに見えなくなることはなく。どうやら渓谷内に滞留している浮遊ダストが見えていただけだと分かった。  これから、コメントの訂正バージョンを作って、掲載する予定だ。
 また、今回のダストストームの分布を見ると、いつもMare Cimmeriumの中心やSyrtis Majorのあたりなど、黒く見えているのが不思議だったが、これらの場所はいずれも高地であり、標高の高い部分が黒く見えていたということが判明した。


(5) アルシアからの線状の雲

 アルシア山からの線状の雲について、山(地形)の影響を受けて、風が雲を線状にたなびかせているという見解があるが、安達は理解に苦しんでいる。なぜならば2009年に出た、同じような雲画像は、山とは無関係なところで発生しているからだ。山の影響ならば、ほかの山でももっと明らかな雲が見えるの通常だし、それに雲の濃さも大きい。
 アルシア山には謎の竪穴がいくつもあるが、そこからの水蒸気の吹き出しがこの雲の原因ではないかと考えている。(安達)


持ち寄り話題

(1) 竹筒を使った望遠鏡(森田)

 「江戸時代の天文観測器機の作製から考える科学史教育」
 京都教育大学の森田さんが、竹筒と老眼鏡を使った望遠鏡を持ち込まれた。参加者で、各自見え方を試してみました。その後、昔の天文観測機材(象限儀)の製作などの苦労話をしていただきました。いろいろと試行錯誤を重ねながら作っている様子に感心していました。


(2) 火星観測の沖縄遠征の結果報告(熊森)

 今年の夏にひと月間の遠征に行かれての報告でした。前回の例会でどこを選定して、何処に行くかを紹介されましたが、今回はその報告です。
・ 雲のない快晴の空はないといってよい。いつも雲が通過する。観測は雲の合間。
・ シーイングが良くないといっても自宅の良いほうと同じくらい。
・ 台風に悩まされたが、それなりに成果の出た遠征になった。


(3) 望遠鏡の転倒防止策(荒川)

 自宅の屋上に望遠鏡を設置しているが、ドームや観測小屋はなく、カバーをしてロープで固定している。先日の21号のような強烈な風でも何とか持ちこたえられた。
 なるべく早くロープの脱着ができるようにロープのかけ方に工夫したことが紹介されました。
 屋上の観測はなかなか大変です。


(4) 7月から8月の火星の展開図(荒川)

 ご自身で撮られた火星像から作成した展開図を紹介されました。


(5) スカイウォッチャーの35.5cmの望遠鏡について(安達)

 柚木さんが使っておられた、望遠鏡(鏡筒部分)を引き取りました。自宅の架台に載せて使っています。もともとドブソニアンの筒のため、ニュートンの架台に載せると光軸が頻繁にずれて、調整が厄介であることを紹介しました。なれればすぐに元の状態戻せますが、そこまではずれるたびにバタバタして使い勝手が悪かったが、気流が良いとよく見える。
 光量がありすぎて火星などは非常にまぶしい。そこで、最近はND4のフィルターを着けられるようにしたが、光量が適当になって、快適になった。


月惑星研究会のサーバー機について

(1) 極冠の見え方について

 木星会議の時に鈴木さんが困っておられることについての紹介をした。アップロードが大変で、今年のように惑星がたくさん出ていると、もうアップするだけで手いっぱいの状態。掲載したものの確認作業まではなかなか手が回らない。
 誰かきちんと掲載されているかどうかを確認してくれる人を募集している。
 お願い
 支部の皆さんで、掲載された画像が正しく見えるかどうかの点検してくださる方がないでしょうか。
 画像の中に入っている文字情報のおかしいことがよくあるため、それが正しいかどうかを調べてくださる方がないでしょうか。やってもよいという方は安達までお知らせください。


事務連絡

今後の予定

 1月例会 1月27日(日) 山科アスニー 第1研修室
 4月例会 4月21日(日) 山科アスニー 第1研修室
 1月になりましたら、会費納入をお願い致します。サーバー機の購入など、これからの出費に備える意味でもよろしくお願い申し上げます。



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