月惑星研究会関西支部例会・支部通信 No.97

2019年01月27日

 2019年最初の例会。観測シーズンもそろそろ終わりかと思われた火星だが、ダストストームが発生してにわかに忙しくなった。明け方には木星も顔を出し、まるで腹巻をしたかのような姿を見せて、楽しませてくれている。今回はビジターの井上さんや愛知からは長谷部さんが来られた。参加者は熊森・安達・柚木・井上・長谷部・堀内・黒田・荒川氏の8名。

例会集合写真

木星の近況

 火星の観測やまとめに忙しく、状況を報告できる状況にはないが、水元さんが公開してくださっている地図や、集まってきている状況をわかる範囲で説明することを試みた。

(1) BAの白化現象

 合の後の観測が始まってから、BAが白くなっているという報告が入ってきた。確かに集まってくる画像もJUNOのが画像も、両方ともBAが白くなっている。今までは、白斑の中にオレンジ色のリングがはまり込んでいたが、今回は外周部に黄色っぽくなって見えているだけになった。
 前シーズンからこの傾向は続いている(熊森さん指摘)が、今シーズンはその様子が顕著にみられる。JUNOの観測画像でもその様子がよく分かった。地球からの観測ではメタンであまり明るく写らず、白斑の高さが低くなっているように見える。1月6日のGoさんのメタン画像でその様子が分かった。今後の変化に注目したい。


(2) EZの暗化(オレンジ化)

 年明けにあつまってきた画像では、赤道帯がオレンジ色になって、あたかも腹巻のような姿を呈している。そこで、昨シーズン水元さんが作成された展開図の動画を見た。EBがどんどんオレンジ色になって、その後も広がり、全体に広がってく様子を見た。EZの南側は白いままだが、幅が狭くなったことや幅が狭くなっていることなど、いくつかの要素が絡み合って、このような状況を作っている。
 過去の記録を遡ると次のような年代に同じような木星面になっていたことが分かった。1890年・1897年・1963年・1972年の4回だった。漏れ落ちている可能性もあり、4回しかなかったと思わないでいただきたい。このうち、1972年の時はEZに巨大な白斑が出現した時であり、今回の暗化に伴い、同じような現象が見られないか注意する必要がある。


(3) UVにおけるEZnの暗化

 阿久津富夫氏のレポートで初めて気が付いたが、EZnが昨年と比べると見事に暗化していた。追跡もしていないため、いつからどのようにこのような姿にあったかは不明のまま。


(4) SPRの中にある高速移動白斑

 移動の様子が非常に早く、注目されている。過去にカッシーニの画像に早くから見つかっており、新しく見つかったというよりも、追跡ができるようになったという方が正しいだろう。カッシーニの画像でも同じ緯度にある白斑に接近すると止まってしまう様子が動画で記録されている。地上からはなかなか観測しづらいものだが、これから気流が良くなると。記録される機会も増えてくるだろう。どのようなふるまいをするかに注目したい。


火星の近況(安達)

(1) ダストストームの発生

 1月2日にPaul Maxson氏がSinus Margaritiferのすぐ西隣にダストストームを記録した。  その後、非常に大きく発達して、南北半球に広がり、全球の経度にして1/3を覆う、大ダストストームに発展した。視直径が6秒と、非常に小さくなっていたが、私の呼びかけでたくさんの観測が集まり、そこそこ追跡することができた。誌面を借りて、お礼申し上げる。
 このダストストームは、実は前兆現象があった。MROの画像を遡ると、12月28日にほとんど同じようなダストストームが同じ位置で発生していた。上の画像はその時のものだが、1月2日の様子と位置も大きさも瓜二つだ。しかし、この時は1日だけの発生で収束している。1月の広がり方を考慮すると、発生地点はChryse南部かと思われる。もの地域は北側に開き、南に狭まる地形をしているところで、その進行方向には巨大なマリネリス渓谷の入り口が控えている。
 12月と1月のダストストームはこの地域に北側から吹き込んできた風によって引き起こされた可能性がある。1月6日の風の情報を三品氏が公開されたので、早速それを見せていただいた。残念なことに例会日の朝だったので、十分な確認を取る時間はとれなかったが、発生地点は風のあまりない地域になっていたようだ。風がないのにダストストームが起こるのは、今一つ合点がいかないが、発生後3〜4日間ほとんど広がらなかった事実をうまく説明できる。
残念なことにこの間の決定的な観測画像はなく、広がっていないとは断言できない。HPに分布図を公開しているが、1月6日になって国内のたくさんの観測者が記録してくださったおかげで様子がよく分かるようになったことはありがたかった。6日には図のように大きく広がっている。過去の記録から推測すると。4日以降に急速に拡大したと考えられる。                        大杉氏1月6日撮影
 1月7日になると、かなり濃いダストストームが広がり始め、ソリス側のダストストームのエッジには大ダストストーム特有の黒い模様(ベルト状)が現れ、驚かされた。いよいよ大きく広がるなという姿を見せた。図はその時のもので、オレンジ色のダストストームの右側(西側)に暗部が見える。

 その後、南北両半球に発展していったが、半月くらいで、衰退していった。


(2) Hellas付近のダストストームの変化

 日本国内で、ダストストストームを観測していときに、アメリカではHellasに異常を観測していた。ちょうど1月6日だった。Hellasの北西部(左下)に見つかった。その後時計と反対周りに広がり、1月9日には南内縁半分に広がった。しかし、Jim Melka氏の指摘通り数日で収束した。しかし、13日になって、日本で観測していたダストストームの先頭がHellasに到着した時あたりからHellasの内部も明るくなっている。肝心の部分は欠測になっているため、確認できない状況となった。しかし、1月18日には、東進したダストストームは南半球にも北半球にもほぼ同経度まで広がり、次第に拡散していった。


(3) Hellas東部のダストストーム

 1月19日になって、Hellasの南東部にあったダストストームが南極方面に広がっている様子が観測された。一見、Hellasのダストストームが広がったように見えるが、三品氏の情報を合わせて考えると、Hellasの東側を北から別のダストストームが南行したようにも見える。しかし、これも観測情報がなくわからないままとなった。あとはMROの画像を見て調べるだけの状況になった。


(4) 南極冠

 非常に小さくなった。時々SPCの近くに白雲(氷晶雲)が広がり白く見えている。もうすぐ見えなくなっていくだろう。


会員からの話題

(1) PJ17の画像から(安達)

 PJ17の木星画像に白く小さなスポットが見られた。1枚だけしかなく、画像処理をした人も一人だけのもので、ノイズだとMLではバッサリ!でも、何となく気になっていて、ノイズのある場所に○をつけて、どんな場所にあるかを調べてみたら、次のようになった。ノイズだと言ったほうがいいとは思うが・・・


(2) 月面の溶岩流の研究2(長谷部)

 前回きたときに、低太陽高度で観測できる月面の溶岩流の観測をしていると報告したが、その後の様子を報告する。  1年くらい撮っているが、必要条件で撮影できるタイミングが非常に少なく、観測に苦労している。今日は観測(撮像)に協力して戴ける方がないかと来ました。 影から測った溶岩流の厚さで、当時のマグマ活動の規模を推定したい。
 上右写真の白い線はIRO画像(上左)で溶岩流フロントの可能性があると見ている個所。画像の幅は約14km。白丸の座標は(0.86N, 41.57W)。下左写真は、月面上のおよその位置、下右写真の赤矢印が対象溶岩ユニットを示している。 撮像に協力してみようという方はMLで声を出してください。


(3) フィルターによる惑星画像(柚木)

 「大切なことは目にみえない」  3色合成の惑星画像処理は色合わせが大変で、安定させるのに大変苦労している。撮像するときはフィルターの特性に気を付けてする必要がある。フィルターの透過曲線をよく調べ、目的に合わせた選択をしないと意味がない。たとえば、火星の場合、青フィルターで撮像すると火星面の模様は写らない。すなわち雲だけを記録することができる。
 惑星の色を正しく表現するにはRGBでの合成をしないといけないだろう。画像に二重リムが出てくることがあるが、機材は、各部の接続はすべて旋盤でのねじ切りをした、リングを回す方法で固定しており、差し込んでクランプをするだけの部品にしていない。そのほうが光軸が完全になる。完全に出てくると、リングが出にくくなることがわかった。
(この発表はプリント資料があります。ほしい人はメールで安達まで連絡をください。柚木さんの了解があれば送ります。)


事務連絡

(1) サーバー機の問題について

 例会で取り上げるつもりでしたが、時間切れになって、取り上げる間がありませんでした。後日になってMLに出ましたが、その後個人的にメールを6人の方々からいただいています。 いろいろな問題がありますが、総じていえば、個人宅に置くのではなく、外部にするのが良いという意見でした。もう少しして、全体に投げかけますが、安達までご意見をお寄せください。


(2) 会費

 次の方々から2019年の会費をいただきました。
  長谷部・柚木・井上・安達・熊森・黒田・荒川 (順不同)
  郵便振替 菅野清一さん(2月1日) 
    郵便振替 00940-6- 132972 月惑星研究会関西支部


(3) これからの例会予定

 2019年4月21日(日) 山科アスニー
     7月14日(日) 山科アスニー



月惑星研究会のHomePageへ戻る  関西支部のPageへ戻る