月惑星研究会関西支部例会・支部通信 No.98

2019年04月21日

 平成最後の支部例会でした。入院して手術を受けたという病み上がりの人や、腰痛で苦しんでおられる方なども、集まってきていただき、感謝です。とにかく、8人の参加ですが、若返りたい関西支部です。みなさん、木星の高度の低さに閉口しながらも、頑張っておられる姿に感服です。安達は4月からも、今までと同じ勤務先と勤務時間で現役生活を送っています。でも、あと1年でやめようと考えています。

例会集合写真

木星の近況

 安達は相変らず火星から手が離せないので、準備ができず、水元さんが作成してくださった資料をたくさん活用しながら、付け焼刃で木星の近況を見ていただきました。

(1) 大赤斑後方にできたメタンブライトの斑点について

 3月29日のGoさんの画像に、メタンブライトな斑点が見つかりました。色が赤く、たまたまJUNOの画像からGRSの赤い雲が、GRSから離れてちぎれ、GRSから後方へ離れて拡散していく様子がとらえられていました。  JUNOの画像を見ると、まさにその通りでしたが、赤い雲の下には下の白い雲が透けて見えており、高度が最も高いことがうかがえました。
 また、そのJUNOの画像の左にはSEBのベルトに赤い色の雲が写り込んでいますが、その赤い雲の下にも雲が透けて見えます。(図の左の↓)

 この矢印の赤い雲はメタンブライトではありません。したがって左右の赤い雲は、高さが違います。しかし、同じ色であることから、太陽からの影響を受けて、下から出てきた雲が赤く変色したのではないかと、安達は考えています。
 こののち、この赤い雲はGRSから離れ、前方に伸びながら拡散していきました。その過程がメタンバンドの画像に記録され、次第に明るさを失っていく様子が記録されています。この様子は、水元さんが作成されたアニメーションにもきれいに出ており、参加者全員で繰り返し見て、確認しました。


(2) SEBsのリング暗斑

 SEBsにたくさんリング暗斑の並んでいるところがあります。今シーズンはこのリング暗斑がGRS Bayに次々に侵入して、面白い変化をしています。リング暗斑がGRSの下に滑り込むことは、過去何度も観測され、珍しいものではありませんが、いつもきまって何かの変化が見られます。これを調べようとしていたのですが、私はそれよりも、なぜこのようにたくさんのリング暗斑ができたのかに関心が移っていきました。
 今シーズンはGRS後方攪乱が小さく、SEBの南1/3は灰色かがったもやもやしたベルトになっています。そのもやのような雲をくわしく見ていると、リング暗斑ができるような雲の動きが見えてきます。どうも、後方攪乱部からのbright streakが右上に伸び、もやのような灰色の雲の中で渦になり、それが次第にSEBsの南側に出てくるように見えるのです。まだしっかり見ていませんが、これから注目したいと思っています。


(3) GRSから伸び始めたdark streak

 例会直前にGRSから前方に向かって伸び始めたdark streakがおもしろい。4月20日の荒川氏の観測画像には、その様子が記録されているます。Go氏の画像も同じところを高解像度の画像でとらえています。GRSの南側をとおっている姿を見事に記録しています。GRS北側のGRS Bayの開口部が閉じており、この回り込みはまだ続きそうです。GRS周辺が明るくなっていることも関係していると思われます。


(4) SEBsからSTrZに伸びるred streak

 4月19日のBAの左下に、SEBsからSTrZに伸びるフェストーン状の赤いstreakが見られる。見なれない姿で興味深いです。左側のものは、形状が同じですが、色が全く違います。


(5) 日本の観測

 皆さん26時頃の南中付近を中心に観測されていますが、木星の南中高度が低く、気流が悪く苦労されています。海外からすごい画像がばんばん送られてくるのがつらいところだという声が多かったです。良い気流で観測できる日を心待ちにしています。


火星の近況

(1) 北極冠の形成

 気になる北極冠がいつから見えてくるかが、この小さくなった火星観測の中心的な目当てになりました。3月24日に春日井市の佐藤さんが、極地が白くなっている様子を報告されてきました。位置的に見て北極フードの可能性が否定できず、安達はこの時点では、白い姿を北極冠だと断定できませんでした。北極冠だと決めるのには、IRで白い姿が見えることがポイントだろうと、安達は思っていたからです。観測報告は柚木さんがIRで撮像されていますから、その結果を待っていました。
 BAAでは3月24日の佐藤さんのものが北極冠だと判断したと、連絡をしてきました。その後、いくつかの観測報告から、安達もこの24日でいいかと思うようになりました。形成時期はLsの値を見ても、標準の時期でした。


(2) ダストストームか

 3月19日のSimon Kiddさんの観測画像には、Mare Cimmeriumの北側が明るく記録されていました。形状から見てダストストームのような写り方でしたがが、もう観測者が少なく、同時観測はありませんでした。仕方なくMROの画像を確認して、これがダストストームであることを確認しました。
 このダストストームは大きくなることなく衰退していきました。


(3) MROの公開画像から

 昨年の大規模ダストストームの初期は、観測数が少なく、本当のダストストームの発達状況は、地上からの観測だけだと情報不足で、正確なことが分からない状況にありました。そこで、観測シーズンがほぼ終わってきて、MROの画像から、ダストストームの発達状況をピックアップしていきました。
 すでにHPでも公開していますが、要点をかいつまんで紹介します。詳しくはHPの火星観測情報の部分を読んでください。
@  ダストストームの発生場所
ダストストームが前面に拡散すると、新たなダストストームの発生場所を地上観測から探し出すことは困難になりました。しかし、MROの公開画像を見ると、発生地点では、ダストストームの発生場所はしわのできた地域になることが分かってきました。そこで、このしわを探し出して、まとめました。

 その結果、ダストストームの発生は、ダストストームが発生した6月から7月に集中していることが分かりました。8月は非常に少なくなり、9月になるとじわじわと下の暗色模様が見えるようになってきました。
A  最盛期のダストストームの発生源は南極冠
 ダストストームの発生地点は7月に入ると、がぜん南極冠から発達するようになり、しかも発生地点はMare Sirenumの南側に集中していました。
 右図は、南極冠の方から吹き出す冷気によるダストストーム。発生直後は、発生地点で1日動かず、2日目になると急速に移動する様子がたくさん観測されています。今まで知られていない現象でした。


(4) MRO画像に不思議な模様

 公開画像を調べていくと、画像におかしい模様のある事に気が付きました。紫色の模様です。明らかに実在のものではありませんが、不思議な模様で、たくさん記録されています。どなたか正体の分かる方はおられませんか?


会員からの持ち寄り話題

(1) 天文ガイドの画像処理の講座について(熊森)

 いきさつや、どのような講座かの説明がありました。ベテランが来ることも予想されますが、基本、初心者講座として行うということが紹介されました。


(2) 木星の撮影動画の報告(熊森)

 最近の木星の動画から、観測静止画像への紹介がありました。


事務連絡

(1) 会費受領報告

 野々口さん・・・・2019年分を振り込みで受領しました。
 中井さん・・・・・2019年・2020年分を振り込みで受領しました。
 例会当日、奥田さん・畑中さん・堀井さんから2019年分を受領しました。
 ご協力、ありがとうございました。


(2) 今後の予定

 会場は、いつもの山科アスニーです。初めて来られる方があるときはお知らせください。
 7月例会  7月21日(日) 午後1時より
 10月例会 10月27日(日) 午後1時より


(3) 支部の振込先

  郵便振替 00940-6- 132972 月惑星研究会関西支部


(4) お詫び

 またしても、発行が遅れました。申し訳ありません。
 次の支部通信で99号となります。大台まであと少しです。皆さん例会にお越しくださいね。



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