月惑星研究会関西支部例会・支部通信 No.101

2020年01月19日

2020年最初の例会です。7人が集まりました。今年は火星の準大接近が控えています。すでに観測シーズンは始まっています。夕方に金星が見えており、月惑星研究会には世界中から金星の観測報告が送られてきていますが。関西支部では金星の観測はなく、みなさん火星にシフトされています。

例会集合写真

近況報告

 7人の参加者からそれぞれ報告していただきました。前回からの3か月間に観測環境が大きく変わった人もあり、興味深く話を聞きました。


木星の近況(安達)

(1)BA・STrZ

 BAは1年間ほぼ変化なく推移しました。観測シーズン最終時にはSTrBに暗斑群が発生して、BAより前方にずらずらと伸びていきましたが。途中で暗斑の発生は止まり、塊だけが進行しています。観測シーズンが始まってどのようになっているか注目です。


(2)NEBのリフト

 11月になってNEBの中にWSが発生して、そこを起点にリフトの活動が見られました。今シーズンは目立ったリフトの活動はなく、最後になって発生しました。その後の変化は合になったのでわかっていませんが、これも観測シーズンが始まれば変化が起こっているかも知れません。


(3)EZの色調

 年間を通してほぼ変化はなく、同じような色調のまま過ぎました。


(4)STrZの明部

 堀川さんが公開されているドリフトチャートを見ていると、いろいろなものが発見できますが。次のようなものを見つけました。


 図の中に赤で囲んである部分は、水色のSEBs白いパートに当たります。下から2列目は見事に1列に並んでいますから、それを赤で囲みました。PCのモニター上でコピペすると、同じ傾きで囲みがいくつも出てきますので、それをほかの部分にずらしますと、この図ができます。GRSに突き当たってもそのまま何事もなかったようにGRSの後方(少し離れます)から再び発生します。しかも長命です。
 2019年2月ごろからGRSの後方でWS(リング暗斑)ができ始める時期と重なり、別の明部もできています。何らかのかかわりを感じます。このように、ドリフトチャートをしっかり見て考えることも大事だと思います。


(5)STrZの明部

 JUNOの公開画像を見て、気が付き、MLに安達が流した後、水元さんが高解像度の画像を公開してくださいました。見るほどにすごい画像です。この二つのWSはこの後、共通重心のような位置を中心にお互いが回りあって、その後マージします。(おそらく)その端緒となる画像です。
 大きいWSのA7がA5aから雲を取り込んでいるように見えます。例会ではこれを写しながら、A7の上に乗っかっている雲がどのようにしてできたのか。今後どうなりそうかを考えました。もちろん結論は出ませんが、いろいろ想像しました。続きが見たいです。


火星の近況(安達)

(1) 火星面の暗色模様と砂漠

 視直径は3秒台から4秒台に入りました。かなり小さかったのですが、最近になって若干大きくなったことが観測するとわかります。気流がよいと肉眼でも模様が見えますが、形を正確に把握できるような見え方はまだしていません。しかし、画像での観測は非常によく進み、暗色模様については、大きな変化は見られていません。前シーズンのダストストームの影響はいまのところ見えませんが、これから大きくなれば細部が見えてくることでしょう。
砂漠も今のところ目立った変化はなく。いつもの火星面に見えています。


(2) 氷晶雲と山岳雲

 現在のLsでは、低緯度地方に氷晶雲がよく見える時期に相当します。また、タルシスの成層火山にも山岳雲がかかる時期になっています。集まってきた報告画像を見ると、氷晶雲や成層火山の山岳雲の記録されたものが見られ、いつもの姿に見えています。
 ヘラスも白雲が出ており、1月に入ってからのヘラスは白雲をたたえた姿に記録されています。しかし、あと1〜2か月でこの白雲は見えなくなり、砂漠の色になっていくことでしょう。そのころには南極冠が完成しています。


(3) ダストベールが見つかる

 シーズン初めから北極地方が黄色っぽく記録されていました。これは北極地方にダストストームが起こっていたからだと考えられます。この時期、こういった現象は珍しくなく、しばしば起こる現象です。しかし、視直径が小さいので詳しい様子はわかりません。  1月5日の熊森氏の画像を見ると、小さくなった北極冠と周囲のダストストームが見事に記録されています。
 その後、1月13日になり、ウートピア付近がグリーン画像で記録されにくい状況になりました。極付近のダストストームが拡散して、この一帯を覆ったことが原因でしょう。広い範囲がこの影響を受けています。画像でもこの付近一帯の暗色模様が見えにくくなっています。

図は1月9日の様子(熊森氏)


(4) 極冠

 今は、北極冠が小さく見えています。永久北極冠です。非常に小さくなっていますが、気流の条件が良ければ記録できます。南極冠は雲の中で形成されていきますが、残念ですが影の部分に当たり、その様子はまだしばらく見ることはできません。
 これからの観測は注意が必要です。


(5) 撮像している人へのお願い(安達)

 撮影される対象を考えて、撮像してほしいです。
  カラー一発:火星前面の様子が、可視光と近い形で記録できます。
        画像を見る眼を持っている人でないと、それからいろいろな火星面の状態
        をつかむのは難しいです。しかし、全体のバランスがよくわかります。
  IR画像  :火星面のダストベールや白雲などは、光が通過して見えますから、ベール
        や白雲の下の模様を調べるために有効な波長です。火星において最も有効
        なものは、火星表面にできた霜・氷(極冠)の固定されたものを記録しま
        す。南極フードの中に極冠があれば、IRでなら形の記録が可能となりま
        す。R画像もこれに準じますが、IRほどの効果はありません。
        火星面にダストベールや白雲がないとしたときの、最もノーマルな状態
        を記録できるため、ダストベールや白雲の観測の時に重要な資料となり
        ます。
  G画像   :ダストストームは明るく写ります。ダストベールもやや明るく写ります。
        輪郭は記録されませんが、IRの画像があれば、それと比較することに
        よって、ダストベールの存在が分かります。広がりや濃さなどもわかりま
        す。
  B画像   :火星面の雲の様子が分かります。撮像は他の波長域と違って、大変です
        が、雲の分布を知るうえでは重要です。
 (L)RGB合成画像
        処理の段階で、人為的に強調できます。白雲がよくわかるようにすると、
        雲の様子を同時にのせることができます。ただし、人によって、のせ方に
        差がありますから、明るい雲なのか淡い雲なのかは判断できません。   極冠の観測画像
        極冠と火星面を同時に記録することは、明度の差がありすぎて不可能です
        から、できれば、極冠に露出を合わせた画像の報告が入るとベストです。
        多くの方は、模様に中心をおかれて、極冠の変化が記録されず、まとめに
        とても困ります。極冠をぜひ、適正露出で記録してください。


木星観測者列伝

 本部の水元さんが作成された、木星観測者列伝を、みんなで見ました。昔の人のことをあまり知らない人にとっては良い勉強になったことと思います。国内の方も出ていましたが、薦田さんについては、世界大戦中の記録がとられており、貴重な観測になっていることなどを追加したりして、見あいました。


会員からの持ち寄り話題

(1) 30cmから40cmドールカーカムへ(荒川)

 年末に、右図のような、40pドールカーカムの望遠鏡を購入して、今までの架台に積み替えました。前の鏡筒や今回の鏡筒の脱着に苦労された話もさることながら、星像が甘く、光軸調整が大変で、セカンダリーを調整するなど、春までに使えるように追い込むのが大変そうだとのことでした。参加者からは副鏡の位置がずれているかもしれない、などの意見が出ていました。鏡筒からセル側に排気できる隙間があるとのことで注文していたが、届いたものには隙間がなく、取り付けができない状態になっているとのことでした。


(2) 「播磨遊星会」の紹介(黒田)

 もともとは永長塾だが、メンバーの入れ変わりがあるので、上記の名前に決めました。永長さんのところで、画像の勉強会を行っています。遠くは富山から参加されている人もあります。宿泊を伴い。いろいろな勉強会をしています。イベントとして「C14の解体ショー」もやりました。


(3) 長めのディ・ローテーションなど(熊森)

 木星会議で発表したものですが、その後、40分と60分の時間差のある処理画像から、その時間差によって、模様がどれくらい違って見えるのか(自転周期による位置ずれ)について、検証した画像の紹介がありました。細かく見ると違いはありますが、はっきりわかるほどの差は見られないとのことでした。
 最近の火星の撮像について、観測時の動画と処理後の様子を紹介されました。さすがによく出ており、感心しました。


金星の近況(安達)

 金星の観測画像がたくさん報告されてきています。それを見ているとAnsony Weslyさんが4日間連続で観測されていました。UVとIR1000の2種類ですが、いずれも模様がよく出ており、それを並べて調べました。お目当ては4日間というスーパーローテーションが分かるのかどうかです。「あかつき」のサイトから金星の大気モデルを探し出し、UVとIR1000との撮影画像が大気中のどの位置を見ているのかを確認しました。
 IR1000は、地表から50qの硫酸の雲の下部を見ており、濃淡が見える深さを示します。一方、UVは70qくらいの雲頂部を見ています。スーパーローテーションはどの高さの雲を見たのかわかりませんが、UVで見たのじゃないかと考えて、4枚の画像を見ましたが、結局、UVもIR1000もどちらとも、はっきりしませんでした。
 そのうちManos Kardasisさんの動画が報告され、それが目に留まりました。同じ日の7時間差の観測です。IR1000での動画は、明らかに模様の自転が確認できます。そこで、その二つの画像をもとに、1自転の時間を計測しました。その結果約7日で1自転しているという結果が出てきました。4日とは全く違いますが、これは硫酸の雲の下部での話です。
 じゃあ、UVでは4日が出るのでしょうか、今後の観測に期待しましょう。


事務連絡

(1) 次回の木星会議

 今年の9月に開く予定で、会場をいろいろ物色していますが、たいていの会場は6か月か7か月前にならないと予約できません。まして、土曜日の午後と日曜日の午前の連続で借りようと思うと、適当な場所がなく、行き詰まっています。どこかいい会場があれば情報をお願いします。この支部通信を書いている時も、時間を見つけては探しています。6か月前に予約会に行って申し込むしかないかと思っています。


(2) 会費受領

 2020年分の会費受領者 荒川・井上・熊森・山岡・黒田・奥田・安達
 振込での会費受領は、今まで郵便で通知が来ていましたが、ネットで調べないと見えないシステムに代わりました。そのため、うっかりすると、支部通信から漏れる可能性もあります。
 上に出ていない方は、安達までメールをください。

 振込先 00940−6− 132972
     月惑星研究会 関西支部
 連絡先 jh_3svw@yahoo.co.jp

(3) 今後の予定

 4月例会  4月19日(日) 午後1時から ・・・ 第2研修室
 7月例会  7月12日(日) 午後1時から ・・・ 多目的室



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