月惑星研究会関西支部例会・支部通信 No.102

2020年07月12日

 2020年はコロナに毒され、例会が開けない状態になりました。本部も同じ状況に追い込まれています。仕方なく、とうとうオンライン例会となりました。事前に練習会を行い、皆さん体験していただく時間を設定して、開催にこぎつけました。開催に当たっては、荒川さんにすべて準備いただき、そのかいあって、成功裏に終えることができました。荒川さんには厚くお礼申し上げます。
 今回は13名の参加を得ました。本部からも3人参加してくださり、感謝しています。

近況報告

 参加者(順不同)から近況報告をいただきました。
水元・井上・畑中・三品・山岡・生川・米山・熊森・三宅・荒川・堀井・野々口・安達


火星の近況

 年明けからいろいろなことが起こっていますが、模様の変化と、ダストの様子についてざっと説明しました。

(1)暗色模様の目立った変化

 〇Margaritifer Sinusの北西側に目立った暗部ができました。Margaritifer Sinusの北に
  はOxiaと呼ばれる暗斑がありますが、そのすぐ西側にある薄黒い暗部が巨大になり、
  北西側にあるNiliacus Lacusとが濃く太いバンドでつながるようになりました。
 〇Mare Tyrrhenum(ヘラスの北東部)の中央が淡くなり、南北2つに分断されている。


(2)ダストとダストストーム

 火星の南半球はだんだん季節が進み、ダストストームの発生しやすい季節に入ってきました。あちらこちらでダストが発生しています。
今シーズンは、観測の最初からいつもになく、模様のコントラストが低く、肉眼では非常に観測のしづらい状態が続いていました。シーズン初めから、寄せられる観測から大気の情報を探していると、ダストストームとは言えない程度のダストの舞い上がりによる透明度の低下がよく起こっていました。とりわけオーロラ(Aurorae Sinus;53W,-10)付近には、ダストの舞い上がりが何回か起こっていました。その結果マリネリスの谷にダストが入り込んで、谷の形がはっきり出てくる見え方も起こっていました。
 6月22日に明瞭なダストストームが発生するまでに、2回こういった様子が観測されています。そのため、このオーロラ(Aurorae Sinus;53W,-10)付近はそのほかの地域よりもかなりダスティーな状態になっていました。
 くしくもこの位置ではっきりしたダストストームが起こりました。現在は、東はヘラス。西はアマゾニス方面まで広がり、Encircling dust stormになりました。これからも、発生が続くと思われ、ひょっとするとグローバルになる可能性もあります。たくさんの観測が得られることを祈っています。

左端は6月12日オーロラの左にダスト。中央は6月14日マリネリスに侵入。それ以外は収束。右は20日オーロラがない。
 上の3枚の画像は、6月22日の発生前にダストが付近を覆っていたことを示します。
そして、6月22日に発生となりました。


ダストストーム全体が見えた日の地図。


(3)6月22日のダストストーム

 今回のこのダストストームは、発生後およそ4日間ほぼ同じ位置に見えました。この時期赤道付近の風の流れは遅く、その影響を受けていました。22日に見つかったときには、すでに拡散していましたから、発生は21日になるかも知れません。しかし、この22日に出たものと23日にそれより北に明瞭に出たものとは位置が異なり、別のダストストームである可能性も残されています。発生日については、23日としたほうがいいかもしれません。もう少し調べていきたいと思います。
 7月10日現在、西に進んだものは、オリンパスモンスを通りすぎ、エリシウムの方に進んでいます。また、南の方では暗色模様の上を西に拡散しシレーンの付近に達しています。東はヘラスまで来ていますが、ノアキス(Noachis;335W〜10W,-25〜-30)にこん棒状のダストストームが発生し、1956年のダストストームのような姿を見せています。ただ、動きは遅く、あまり変化はないように見えます。


(4)SPC

 だんだん縮小が進み、形がいびつになってきています。それに伴い、輝点が見えたり、一部分にダストが覆い、黄色くなっている部分ができています。局部的に黄色くなった部分からは北に向かってエッジダストストームが発生していますから、色のついた部分があれば要注意です。


参加者からの持ち寄り話題

(1)2061年8月に見られるハレー彗星 (三品)

 2061年8月に見られるハレー彗星の見え方の京都版を作りました。これを紹介します。
 昨年の木星会議で渡部先生が紹介されたハレー彗星です。私たちは見ることはできませんが、若い人は見られます。 2061年のハレー彗星は,8月のお盆過まで西の空に見えています。京都で見るのに良さそうなところを探していると、ちょうど五山送り火,鳥居形がよく見えるときに、同時に彗星が見えることが分かりました。
 広沢池の畔からですと,7月31日の夕方には愛宕山のところに現れ,南に移動して,8月17日には小倉山のところで見えなくなります。8月16日には,夜8時過ぎまで小倉山のところにハレー彗星が見えており,彗星が沈んでしばらくすると鳥居形に火が入ります。
(みんさん!長生きしましょう!!!:by Adachi)


(2)架台を変えました(堀井)

 今まで使っていたドブソニアンを換えました。(写真)使い勝手は良くなったのですが、ピントがうまく出ず、ただいま調整中です。


(3)木星のトピック(水元)

 今まで作成したGifの木星画像をもとに、今起こっている木星面の現象で面白そうな部分を紹介されました。
@  GRS前方で、SEBsに流れてきた暗斑に3つUターン暗斑が見つかっていた(昨年)
  これと同じくリング暗斑は、今シーズンに入ってみんなドリフトが遅くなっている。
A  GRSは小さくなってきた
  2か月で12°まで小さくなったが、今年は14°に戻っていた。しかし、その後5カ月
  かかって12°に再び小さくなっている。
B  SEBsのリング暗斑のドリフトが変化したのは、緯度の変化によるもので、GRS後方の
  SEBsの広がった部分に影響されているようだ。


(4)木星の近況(安達)

 今回は、火星に手を取られ、ほとんど準備ができませんでした。でも、ちょっとだけ準備していたものがあったので、それを使って、現在進行形の様子を紹介しました。


〇 Clyde’s スポット
〇 GRS前方のDark Sterak
〇 NEBの拡幅(NEBの拡幅部の北縁が全周に見られ、まだ続きそう)
〇 NTBが淡化中(全周に及びそう)


(5)Clyde’s Spotの画像に出ていたGRSを覆う雲状の模様(安達)

 JUNOの画像に出ていた、GRSを覆う波状雲のような模様についての紹介。
 水元さんから、JUNOの画像処理をされた方にRogersさんの方から問い合わせをしていただいた結果、画像処理の段階で出てきたものであって、実在のものではないことが分かったということでした。
 ここに画像を載せると誤解を招きそうなので、掲載はやめます。どのようなものか知りたい方は安達まで申し出てください。ワードにしたファイルを送らせていただきます。


(6)火星のオーバーフローしない画像処理(熊森)

 火星は、極冠のように周囲の模様からかけ離れた輝度を持つため、模様に濃さを合わせると極冠が白とびしてしたり、リムが明るくなりすぎたり(赤とび)してしまうことが多いです。明るい部分がちょうどよい明るさに処理すると、表面が暗くなって、見られたものじゃありません。そこで、次のような工夫をしています。
 レジスタックスで操作します。コントラストを下げ、ガンマの値を変えると、極冠の様子も模様の様子もなんとか一枚に表現できます。そのあとの、アンシャープなどの処理過程でもとんでしまうことが起こりがちですから、そのたびに調整しています。(右図)
<安達からのコメント>
 ありがたいです。極冠が飛んでしまうと、ダストに覆われた部分や極冠の禿げた部分が分かりません。特にエッジダストストームの状況をつかむためには、極冠の情報は極めて重要です。みなさん、よろしくお願いします。


(7)火星の報告の形式について(荒川)

 今年の火星の報告は6枚セットにしている。右上にはWin JUPOSのシミュレーション画像をつけること・報告したRBG単色画像を使って、RGB合成画像をそのまま使わず、火星の表面に広がるダストなどがよくわかるような処理をして、カラー画像を報告している。
 火星に刷毛目模様ができた。実在のものか心配になったが、熊森さんの画像などそのほかの観測者の画像にも写っていて、実在のものと分かりほっとした。(右図)

<安達から>
 火星の解析をするためには、ダストも雲もない状態の火星面が知りたい。それがわかって、皆さんからの画像を見ると、どこにダストや雲があるかが分かります。火星は、ノーマルというか、ダストが全面均一状態になる時が非常に少ないのですが、IRやRで時々均一なときの高精細の画像が得られます。今年は熊森さんがRでアマゾニス周辺の良い画像をゲットされています。こういった画像を物差しにして、ダストを探しています。
 画像は、模様を黒くするとダストの情報が失われ、せっかくの画像が死んでしまいます。
 ぜひ、見た状態に近くしてください。コントラストを上げるのは禁物です。不安なときは、一度、私まで送ってください。


(8)40pの調整(荒川)

 鏡筒をSCに取り換えたのですが、今ひとつピントがしっくりこないので、鏡を外したり接眼筒を外して、コレクターレンズを調整したりしています。重くて大変ですが、ジャッキをうまく使い、それほど時間をかけずに分解組み立てができるようになりました。少しずつ追い込んでいきたいと思います。


その他

(1) 例会日

 10月の例会は18日(日)山科アスニー 第2研修室です。
    会場は押さえてありますが、コロナでどうなるか・・・様子を見ます。
 1月例会は、1〜2月が会場の工事で閉館となります。会場からの連絡が入り、
 急遽変更。
    12月13日(日)山科アスニー 多目的室です。


(2)木星会議

 コロナの影響をもろに受け、滋賀県と京都で交渉していた会場はアウトです。といってもこのご時世ですから皆さんが一堂に会するのは無理でしょう。例会で話し合いましたが、結局、遅いほうがいいのじゃないかということで、木星の合のあたりでどうかという方向になりました。堀川さんと相談し、いつごろにすればいいかを再度考えたいと思います。


(3)支部会費

 郵便振り込みで、中田さん(1月28日)・野々口さん(2月1日)・菅野さん(2月7日)から、受領しています。ご協力ありがとうございました。
振込先 00940−6−132972
    月惑星研究会 関西支部
連絡先 jh_3svw@yahoo.co.jp



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