月惑星研究会関西支部例会・支部通信 No.104

2021年2月14日

 2021年1月例会の報告です。1月例会でしたが、安達の個人的な事情で、のびのびになり、2月になってしまいました。Zoom例会を行いましたが、それでもまだトラブり、とうとう例会の開始も1時間ずれ込んで、参加者の方々にたいへんなご迷惑をおかけしました。お詫び申し上げます。例会は、荒川さんの支援をいただき、何とか終えることができました。
 安達を含め、参加者の皆さんにも病気との闘いをされている方があり、年々敬老会的になっている感じです。皆さん、健康が一番です。コロナにも気を付けて、頑張ってください。


近況報告

 参加者からの近況報告をしていただきました。安達から開会のあいさつと近況報告をさせていただきました。
 参加者(順不同)14名:荒川・阿久津弘明・黒田・熊森・田部・畑中・堀井・堀川・井上・米山・石橋・山岡・松岡・安達


木星会議の検討

 以下は、検討して決定したことだけを記します。

(1)URLの公開と個人情報等の保護

 URLは公開です。そのため、だれでも参加できます。前回までは、事前申し込み方式でしたが、公開型となると、参加者の絞り込みはできません。そのため、個人情報などを保護するために、録画(YouTubeに公開されても困りますから)はホスト、および発表者に限るということにします。

(2)参加人数枠

 Zoomの申し込みは、最大100名のコースにします。公開されるプログラムは、木星に興味のない人には、かなり敷居の高い内容ですから、おそらく十分と考えられます。
 参加はホストの方で、95名までで切り、発表者や進行上必要な人が後からでも入室できるように配慮します。

(3)研究発表

 現時点で4人の申し込みを受理し、プログラムに挙げています。(プログラム参照)長くなければあと一人は入れられるかと思います。安達が18日以降メールの送受信できる環境がなくなりますから、引継ぎは田部会長に一任しました。新たなものは、田部会長までご連絡ください。

(4)懇親会

 このような時世ですから、オンライン懇親会となります。木星会議当日(3月7日)の午後8時から60分間をあてます。ここだけの参加や、途中参加も引き受けます。オフラインじゃないため、心苦しいのですが、ご理解ください。

(5)安達からのお知らせ

@ 休憩時間: それぞれの内容の間に5分程度の休憩が頻繁にあります。うまく活用してください。
A 質疑応答: Zoomのチャット機能を使います。ホスト側で管理しますので、質問は口頭ではなく、チャットで送るようにしてください。質問の答えは、発表者からしていただきます。質問が多いと時間がかかりますが、5分間とさせていただきます。
B 発言内容: 念のために書きますが、不特定多数が入室される可能性がありますから、社会的に認められる発言をお願いいたします。


火星の解説(安達)

 火星は、視直径が7秒にまで小さくなりましたが、高度が非常に高く、観測可能時間もそれにつれ長くなりました。高度が高く、よいシーイングの元、良質の画像もたくさん報告されています。
  以下の内容は、例会の発表順ではありません。

(1)いつも黒く見えていた場所と地形の関係


  シーズンを通して黒く見えていた地点を、地形図の上に載せてみました。赤い破線で示されているところが黒く見えていた地域です。東西方向に6ポイントあります。
〇 標高の高いところ 1・2・3・5
   ダストの光学的厚さ(大気層の厚さが地形のため薄くなる)が薄い。その他の地域の標高
  の高い部分も、暗く見える所と一致します。
   Solis / Tithonius / Tharsis / Alba Monsなど(5〜6)の間の地域は高度が高いので
  すが通常黒くならず、砂漠の色に見えるところです。おそらく成層火山群の噴出物による影
  響、地溝帯などの地下内部の影響を多大に受けていることを示していると思われます。
〇 4・6
   標高が高いわけでもないのに、いつも黒く見える地域です。地形的に影響を受けるような
  ものはなく、地表に黒いものがあるとしか思えません。


(2)2020年11月のダストストームの広がりと地形

 ダストストームのどのステージを抽出するかによって分かりやすさは異なります。安達は南に進行して南縁まで行った時点を抽出しました。いったん大きく広がって止まった11月20日の様子です。


 毎日作成している分布図の、茶色く広がったダストストームの外形を、赤い破線で示しています。それをそのまま下の地形図に下ろしました。
 Hellasの西側(右側)は、Hellasができる際に飛び散った岩石によってできたと思われる、高地が取り巻いています(標高の高い茶色の場所)。一方、西にはSOLIS PLANUMと呼ばれる高地(えんじ色)が行く手をふさぎ、青色の星のマークで発生したダストストームは南に進行してから東西に広がりはしたものの、この両方の高地で止まりました。
 西に進めないのは、高地と西風による影響かと思いますが、一部はSolis Lacusに流れ込んでいます。勢いが強かったのか・・・
 東(左)は、Hellespontus〜Syrtisの台地にブロックされています。しかし、地形図では赤い矢印の位置は、低くなっている谷のような地域です。ダストストームはこの部分を通ってHellasに侵入しました。
 計らずも、その矢印の先のHellasは盆地がえぐれており、通常の風の影響を示唆しているものと思います。最近のHellasの明るい部分は、このへこみと見事に一致しています。
 ダストの広がりが、2020年11月のダストストームも、2005年の双子のようなダストストームも、同じ広がりになることが当然であることが、地形図を見ることで、よくわかります。


(3)エッジダストストーム

 2020年の観測シーズンは、南極冠が小さくなっていく過程を、克明に観測する絶好の機会でした。2月12日にLs150°(SPC最大)となり、そこから10カ月かかりじわじわと縮小していきました。
南半球は、通常西風が吹いていますが、そこに、極からの冷気が赤道方向に吹き出します。この時エッジダストストームが起こります。SPCの周りの塵を巻き上げながら進むことが多いのですが、実際には昇華したSPCの割れ目から吹き出す気体にSPCの下にあった塵が含まれることが多く、SPCがダストに覆われることがよく見られます。 今回は、エッジダストストームの顕著なものがどれくらい見られるか、画像を見直してみました。月惑星研究会に報告されてきたものから探すと、次のようになりました。

   2月26日(W280)
    3月 7日(W190) 12日(W25 ) 17日(W310) 20日(W35)
     23日(W20)  25日(W30)
   4月 6日(270)  13日(W50) 13日(W50) 30日(W25 )
   5月16日(W210)
   6月17日(W130 )
   7月15日(W220 )30日(W150~200)・・大規模
   8月 5日(W90) 19日(W100)

 2月から始まり、3~4月と、7月の2回ピークがありました。SPCの構造がドーナツ状の明るい部分と、中央の2つの構造になることと、関係があるかもしれません。


(4)Tharsis台地の火山による白雲と地形の影

 前回の支部通信でも、発表したように、2005年と2020年の2つのダストストームには共通の要素が多くありました。(2)でもそのことに少し触れましたが、前回の例会後、調べました。ここには例会で発表しなかった内容も入れて報告しておきます。
2005年・2020年ともに、発生場所は左下の画像の位置になりました。
 左の画像 撮影:熊森氏 2020年11月11日  この画像の矢印の先が12日から明確に広がるダストストームの初発の現象です。
 この発生場所に光斑ができると、ダストストームの発生が見られるかもしれないという予想を立て、2018年シーズンと2020年シーズンの全報告画像をチェックしました。シーズン途中に何回か明るくなっている画像を見つけました。
 2005年に起こった現象は、伊賀氏によって動画が作成され、その進行の様子が記録されています。また、2020年のダストストームは、最近になって熊森さんが動画として作成されました。この2つを見ても、同じ場所で発生していることが、明確に分かります。
 調査結果を次に記します。

 2005年10月13日 明るくなる →  ローカルダストストームが起こる。
 2005年10月18日 明るくなる →  中規模ダストストームになる。

以下、2シーズンの調査結果

 2018年 3月26日 明るくなる →  ローカルダストストームが起こる。
     (5月28日よりグローバルダストストーム発生により追跡困難となる。)
     (ダストが淡くなり、9月1日から調査再開)
     12月31日 やや明るい → ローカルダストストームになる
 2020年 3月11日 明るくなる → 該当地域の観測がない
      5月21日 明るくなる → 該当地域の観測がない
      6月22日 明るくなる → 該当地域の観測がない
      6月23日 明るくなる → 中規模ダストスームになる
      9月24日 明るくなる → ダストストームは起こらない
     11月11日 明るくなる → 中規模ダストストームになる(昨年の南コース)
     11月14日 明るくなる → 中規模ダストストームになる(昨年の東コース)

 発生地点を地形図上で見ると、左図のようになりました。 一見何もない平原です。ただ、言えそうなことは、北から南に吹いてきた風が、谷間で収束する場所と言えることでしょう。
 今後、上のシーズンだけでなく、調べる年代を広げていきたいと思っています。









事務連絡

(1)支部会費を次の方々から入費を受領しました。

 野々口さん(2021)、山岡さん(2021)、畑中さん(2020、2021)、井上さん(2021)、安達(2021)
振込先 00940−6−132972
    月惑星研究会 関西支部
連絡先 jh_3svw@yahoo.co.jp


(2)次回の例会は4月です。

 日程は、後日MLで発表いたします。



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