#RASJuno Meeting 2018 in Londonの報告
木星探査機ジュノーの支援観測のための、プロアマ・ワークショップが5月10〜11日にロンドンで開かれた。
一昨年のニースに続いて2度目の開催。日本からの参加は堀川一人のみ(田部氏は仕事が多忙で欠席)。
会場はRAS(王立天文協会)。
バーリントンハウスという17世紀に建築された由緒ある建物の一角にある。
初日はRASの会議室、二日目は隣接するロンドン・リンネ協会(あの有名な博物学者)の会議室。
参加者は全部で53名、うちプロは18名。
EU以外から参加したアマチュアは私を含めて6名。
名だたるプロや著名なアマチュアが勢ぞろいし、国際版木星会議といった趣であった。
ダミアン・ピーチはバルバドスで観測のため欠席。
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[前夜]
ホテル近くのトルコ料理店でウェルカムパーティーがあり、アンソニー(Wesley)、クライド(Foster)といった面々と
初顔合わせの握手をした。
時差ボケの上、昼間は会場などの下見で歩き回って疲れていたので、パーティーの後半はほとんど意識がなかった。
[初日午前:Science from Juno]
- Introduction and Logistics - Fletcher and Rogers
- Overview of Juno Mission, Support Program, and MWR Results - Bolton & Orton
- Jupiter's Interior Structure - Guillot
- Jupiter's Magnetic Field - Jones
- Jupiter's Aurora and Atmosphere from JIRAM - Mura
- JunoCam: Public Participation and Results - Hansen
ミッションに直接関わっているプロからの話。
英語なので話の内容はよくわからないが、投影されているスライドを見て、大雑把なことは理解できた。
昼食は最上階のライブラリーでサンドイッチと飲み物が出た。
ひとつ下のライブラリーでは、RASとBAAのお宝が公開されていた。
デニング、フィリップス、ウィリアムス、モールスワースなどの生スケッチが並べてあって、ちょっと興奮。
イギリスはこういう古い資料をちゃんと保存する仕組みがあって、とてもうらやましい。
(写真1) RASの会議室。
(写真2) 昔のスケッチ
(写真3) Rogers氏と堀川
[初日午後:Imaging and Atmospheric Changes]
- Processing JunoCam Images - Eichstadt
- Pro-Am Monitoring of Jovian Variability - Hueso
- The Rich Dynamics of Jupiter's Great Red Spot - Sanchez-Lavega
- Present State of Jupiter’s Atmosphere - Rogers
- Measuring Features on Jupiter - Jacquesson
- JUPOS: Jupiter Regular Mapping - Vedovato
- Secrets of Getting the Best High-Resolution Planetary Image - Go
フエソの発表では、アマチュアの観測もふんだんに取り入れられていて、日本も熊森さん、岩政さん、永長さん、
小澤さん、堀内さん、鈴木(邦)さん、などの名前がズラリ。ちゃんとプロに貢献できているのだなと感じた。
クリス(Go)は日本で話をした時と同じで、シーイング、シーイング、シーイングと連呼していて、高緯度にいる
ヨーロッパの連中は皆、ため息をついていた。
夜はCooper's Restaurantでディナー・パーティーがあった。
クリスと共にスペイングループの席に加わったが、スペイン語と英語の混ざった話でちょっとちんぷんかんぷん。
隣のティアースは奥さんが日本人とのことでびっくり。
(写真4) RASの入口
(写真5) パーティーのひとコマ
[二日目朝:Royal Society(王立協会)見学ツアー]
ツアーは初日夕方と二日目朝の2回に分かれていて、私は二日目のグループだった。
RAは現存する世界で最も古い科学学会で、ピカデリー・スクエアからテムズ川に向かって南へ下ったところにある
カールトンハウスというところにある。
図書室の中に、このワークショップのために特別に蔵出ししてくれたお宝が並べてあったが、なんといっても目玉は
アイザック・ニュートンのデスマスク。箱を開けてもらうと、おおーっ!という感じ。
他には、ガリレオ・ガリレイの「星界の報告」(月のスケッチやガリレオ衛星が載っている)やハーシェルが
ジョージの星(天王星)を発見した時の直筆の手紙、カッシーニがカシニの空隙を発見した時のスケッチなど、お宝がズラリであった。
(写真6) RAのお宝見学風景
(写真7) ニュートンのデスマスク
[二日目午前:Amateur Imaging and Image Analysis]
- Up-sampling video data prior to processing planetary images (Wesley)
Adaptive optics and the Pic du Midi Obs. (Dauvergne/Colas)
- The periodic rifting in the Red Spot Bay (Horikawa)
- Making animations from amateur Jupiter images (Rosen)
- Latest developments in AutoStakkert! (Kraaikamp)
- Current amateur imaging & image analysis (Kowollik)
- Simple measurement of belt/zone latitudes (Kardasis)
- Monitoring impacts on Jupiter: Update on the DeTect project (Delcroix)
- Databases for planetary images: PVOL (Hueso)
堀川の発表はこの日の4番目。
昨年と一昨年の木星会議での研究発表ネタ。
2ヵ月前から台本を作ってリハーサルを何度もやって、質疑応答含めて15分で収まるようにし、さらに台本をでっかい字で
印刷して(ニースの時は字が小さくてよく見えなかったので)、メガネも家用の度の弱いものを持参して、準備万端で望んだ。
その甲斐あって、閊えることもなく無事終了。
反響は上々で、休憩時間にはプロアマを問わずいろいろな人が「Very interesting」とか「Good discovery」と声をかけてくれた。
これまで、ニースを含めて国際会議には何度か出席したが、どれも参加賞みたいな感じだったので、
やっとサイエンス的に貢献できたかな、という気持ち。
昼食はリンネ協会最上階のライブラリーでサンドイッチをつまんだ。
(写真8) リンネ協会の会議室
(写真9) 昼食風景
[二日目午後:Future Directions]
- Current and Prospective Juno-Supporting Results from a Network of Earth-Based Observing Stations (Orton)
- Juno’s atmospheric studies: plans and prospects for collaboration (Hansen)
- Future IR Observing and Mission Support (JWST/JUICE) (Fletcher)
- Analysis of the Jovian atmosphere using Methane Band and RGB Images - Sussenbach^2
Junoの今後の探査の予定や、その次の木星ミッションの紹介があった。
現在の53日周期の軌道だと、2021年6月末の木星突入までにPJ33を数える。
大赤斑の観測を優先的に行うようで、軌道の入れ替えを行って大赤斑の上を通る回数を増やす計画とのこと。
次に大赤斑の上空を通過するのはPJ18(2019年2月)となる。
それから、極とそれを取り囲むように分布する低気圧性の渦が発見された極域の観測も重要視されている。
Juno後のミッションとしては、欧州がJUICEという探査機を打ち上げる計画。
2022年6月の打ち上げで、地球と金星と火星でスイングバイを行って、2029年10月に木星の周回軌道に入り、
木星本体とガリレオ衛星の観測を2033年まで行う。
このミッションでもアマチュアによる地上支援観測は重要な位置づけとされている。
ところで、セッション中、オートンが立ち上がってコメントを述べていると、誰かが背後の壁に飾られている
大きなダーウィンの肖像画を指して「似ている」。確かにおつむのハゲ具合がそっくりで、会場大爆笑。
最後にグループ写真を撮ってワークショップは終了。
夜はピカデリー・スクエアにあるBras. Zedelというフランス料理のレストランでパーティー。
3日連続の宴会なんて、日本でも滅多にない。
フエソの立ち話を聞いていると、Junoのミッション中にもう1回くらいワークショップがあるかもしれない。
費用の負担は重いけれど、若い人にも参加してほしい。
(写真10) ダーウィンとオートン
[画像の南北問題について]
画像の南北については、現状の南北が混在する状況が容認された。
(重要) 報告画像の南北は「作成者」の判断に委ねられた。
惑星画像アーカイブは、報告された画像をそのままの状態でアップする。
PVOL2もALPO-Japanも同じ。
以上により、ALPO-Japanが何かの対応を迫られるという心配は当面ない。
「Our Policy」に書いてあるsouth-upの条項は自主的に削除する(当例会出席者全員の合意を得た)。
[#RASJuno Meeting情報(水元さん提供)]
https://www2.le.ac.uk/departments/physics/people/leighfletcher/ras-juno-europlanet-meeting-2018
https://britastro.org/node/14397
https://drive.google.com/file/d/1nBwVLpWtJgVefZpLRvi7hZkoB5eoxgw1/view