月惑星研究会例会通信 No.148

■ 日時:2012年9月30日(日曜) 13時−17時

■ 場所:川崎市多摩市民館(向ヶ丘遊園) 第1会議室

■ 出席者(計38名)敬称略 

鈴木達彦、成田広、細谷美和、中浜優佳、平林勇、大竹葉月、井守結子、 岩政隆一、石橋力、
高橋徹、高橋和平、田部一志、齊藤美和、山崎明宏、米山誠一、 秋山敬祐、宮田功太郎、
柴山大顕、諏訪允俊、杉山裕弥、六車遥、二宮翔太、村上達海、 戸塚一、富田黎、三浦朋之、
高木健太、秋山みちる、東海林千尋、新井恭輔、御神本慶太、 秋山航太郎、増田健汰郎、
堀川邦昭、松田笙吾、三品利郎、大川拓也、榎本孝之

■ 内 容

1 自己紹介

2 木星面近況(堀川)

1.アメリカで捉えられた閃光現象

 9月10日にアメリカのPetersenにより木星面で閃光現象が捉えられた。リム付近で起き、5?6等級程度であった。”おつり理論”による痕跡は残っておらず、また月惑星研究会の木星閃光観測グループによる観測でカバーは出来なかった。
 ロジャースはNEBの中で起きたと言っているが、画像を見る限りEZで起きている。

2.NEBの様相の変化

 昨年と今年を比較して、NEBからNTBにかけて活発化しており、NEBとNTBが1本の縞模様のようになっている。ただし、合の間に起きてしまったので、発展の詳細はよく分からない。
*質疑*
 平林:いつ頃拡幅したのか。
 堀川:6月はそれほど拡幅していない。7月はNEBとNTrZの境目ががよく分からないが、8月になるとはっきりしている。
 平林:NTrZがはっきりしたような印象だった。

●月別の様子
 6月
  NTBとNEBの間に斑点がぐちゃぐちゃと不規則に並んでいる。
 7月
  不規則な斑点は無くなったが、NTBが完全に復活している。
  NTBnは青暗いが、NTBsは赤茶色である。
  NTBとNEBの間は矢印を横にしたようなパターン(>>>)であり、東西風の風速差が最も大きい場所である事を思い起こさせる。(この様相は20日頃に最も卓越している)
 *質疑*
  田部:NTBの赤色の物質がEBに流れ込んだと言う事はありませんか。
  堀川:去年は白かった。NEBの活動が北側に広がったのだろう。
  山崎:festoonは北側は青黒いがEB南は赤茶色に見える。太陽光線等で変質している可能性は無いか。
  堀川:分からない。EZは全体的に暗い。
  田部:北半球が変わるとEZの様相が変わるのと同じように、中から変化すると考えるのが自然では。
  堀川:ロジャースは北半球に影響を受けて変化するのは珍しいと言っている。
  田部:NTrZの変化は全体的なので、やはりEZも中から湧いてるのではないのか。
  堀川:festoonが着色物質を運んでいる訳ではないだろう。ただしfestoon同士の間の色が変わっている事はある。
 8月〜9月
  NEBの中にrift状の模様、白班、暗斑、バージ等が形成されており、徐々に落ち着いて来た。今回の様相は1985年に似ている。
  NNTBは淡化して消失した。

3.WSZが生き延びた

 WSZ:1997年に形成された長命な白班
 2010年:ベルトの中にあり目立っていた
 2011年:ベルトの外にあり目立たなかった
 2012年:変動の中で見失われていたが、生き残っていた。7月頃に確認された。
 黒っぽくなったりいろいろな様相を見せながら生き延びていた。
 変化としては、運動が変わり、前進スピードが早くなった。

4.大赤斑とBAの会合

 9月15日ごろに大赤斑と永続白班BAが会合した。2年に1度程度の頻度で会合しており、その様子はまるで”だるま”の様で見ていて面白い。1980年代には会合のタイミングでSTrZが暗くなるような現象が見られたが、最近は見られていない。BA後方の暗斑は、STBの残骸が暗斑として形成されたものである。その後方にはボワーっとした白班がある。
 BAに関して:
  画像ではBAの方が赤みが強く見えるが、眼視ではぼんやりと拡散して見える。
 大赤斑に関して:
  以前測ったときには15°であった長径は13°しか無く、丸い形状はまるで”カッシーニの斑点”のようである。
  現在の大赤斑の経度はII=181?182°で、1987年頃のII=13°から数えると、木星をほぼ半周した事になる。木星観測歴の長い者にとっては感慨深い。経度増加方向への移動スピードは速くなっている。(1970年はII=50~60°で、2004年に100°を超えた)

5.その他の模様

 北半球:
  NTrZはシーズン始めは真っ暗であった。今は内部にバージや白班があるが、これらはNEB~NTBにかけて複雑な様相になる前から有ったものではなく、新しく出来たものであろう。(ロジャースは残っていると言っている)
  NTBの南北組織の様相は同じベルトとは思えないほど違う。
  EZの顕著なfestoonは等間隔で並んでいる。
  EBはI=300°台で濃くなっている。
 南半球:
  SEBは太く濃くなっており、大赤斑後方では活動的な様相である。この活動領域はメタンバンドで明るく見える事もあり、対流性の活動である事をうかがい知れる。
  STrZに伸びていたストリークは無くなってしまった。
  STBは大赤斑より前では何も見えなくなっているが、II=240~360°の範囲では何かしらのものが残っている。BAの後方にある白班が大赤斑と会合して何かしらのことが起きる事を期待している。
  SSTBは2条に分岐している部分がある。
  高気圧性の白班AWOが全周で9個ある。

3 閃光観測の報告

 名寄、三鷹、川崎、ほか各地での報告が行われた。

4 木星の立体視(石橋)

  時間を少し置いて撮影した木星画像を立体視すると、体系Iと体系IIの自転周期の差を見る事が出来る。

5 金星の偏光撮像観測(榎本)

 飛騨天文台での金星撮像観測について、簡単な報告を行った。

6 書籍の紹介(三品)

 「Mars」PeterGreago(Springer社)
 価格は3000円〜3500円で、内容はアマチュアにも分かりやすいような内容。
 木星版もあり「The Giant Planet Jupiter」のエッセンスを抜き出したような構成になっている。

7 次回例会

 2012年11月18日(日)
 川崎市多摩市民館4階 第1会議室
 13:00〜

*その後「ちゃすけ」にて2次会


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