月惑星研究会例会通信 No.150■ 日時:2013年03月31日(日曜) 13時−17時 ■ 場所:川崎市多摩市民館(向ヶ丘遊園) 第1会議室 ■ 出席者(計36名)敬称略
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■ 内 容 1 自己紹介
2 木星面近況(堀川)1.NTrZの白班の合体NEBの北側に2つの白班があった。説明の便宜のため経度の小さい方からWSA+, WSZと命名。○ ○ WSA+ WSZ WSA+はもともとWSA,WSB,WSCの3つが合体したもので、またWSZは1997年から16年間生存しているこの緯度の主、古株、親玉的存在である。 ■1月31日から2月10日までの観測 両者が近づき、WSA+が南, WSZが北に少し移動する高気圧的な渦の典型的な合体の様相を示した。 WSA+の形成合体の時はあっという間に進行したが、今回はなかなか合体が進展しなかったという印象。 ■2月13日から2月20日までの画像 11,12日の観測が無いので肝心な部分が分からないが、13日時点では両白班の位置が入れ替わっていると思われる。 20日には一つの白班の後ろ側にアーチがかかっているが、そのもとは14日までたどれる。白班にはぎ取られつつもその間にあまり変化の見られない模様だった。 ドリフトチャートを見ると、WSA+がWSZに引き込まれ後者のドリフトを引き継いでいるようにみえる。従ってアーチはWSA+により形成されたものだろうと考えられる。 アーチはその後WSZから離れて後退している。3月後半になると消失してしまった。 WSZは以前より明るくなり、目立つようになった。今後同じように白班が出来ても全て取り込んでしまい、いつしか大赤斑のようになってしまうかもしれない。 一連の白班の衝突合体は、Williams & Wilson (1988)の数値シミュレーションを見ているようだ。(大赤斑の形成とは過程が違う) 2.NEBの幅3月6日の永長さんの展開図をみると、NEBが細くなり始めている部分があるのが分かる。これは今後全体に広がるだろう。NEBの幅は4?5年周期で増減するが、南側の位置がほとんど固定されていて北側の位置が変わるだけである。幅変化に際して暗斑や白班が増えて来ている。 白班の両脇に暗斑がある様子(●○●)をロジャースはtripletと呼んでいる。 3.北半球その他NNTBの南側の緯度帯に高速で前進する暗斑群がある。これをきっかけにNNTBが復活するかもしれない。4.BAの後ろのSTBBAの後ろにSTBの後方が緯度の増加に伴って南方にずれ込む構造がある。我々は”床屋の看板構造”と呼んでいる。STBは本来濃かったが最近ここ20年くらいは長くなったり短くなったりしている。これがいまBAにぶつかりつつある。 11月22日の観測ではBAの後ろに小さな暗斑があり、そのやや離れた後方にSTBが位置していた。 その後STBの前端がBAに接近したが、間にある暗斑と青白い白班が邪魔をしている。また、暗斑の周りに白い縁取りが出来ている。 BAの前身であるBCもいろいろなものをせき止めて来た。BAはこの緯度帯に大きな影響を与えるものなのだろう。 これまでもBAの前方で出来た暗斑が伸びてSTBとなっているが、最終的にBAにたどり着き、暗斑となっている。 どの世代もBAの約60°手前で発生しており、ここ20年ほどは同じような活動が繰り返し起きている。 5.南半球その他SEBが安定な状態ではあるが大赤斑は非常に赤く、眼視で見ても輪郭がクリアにみえる。SEBの南側に暗斑群があるが、大赤斑に到達して周りを回る様子が見られた。 この際にブリッジが出来たりちょっとしたストリークが形成されていたが、大赤斑に特に影響は無いようだ。 6.AWO (Anticyclonic White Ovals)SSTBに高気圧性の白班AWOがいくつか存在している。最近になって白班群の間隔が迫っている箇所があるので合体するかもしれない。 7.SEB内部の薄い白班大赤斑の前方にうっすらとした白班が存在しているが、高解像度で見ると実態はよく分からない。白班の上に暗い模様が覆い被さっているようなイメージだ。メタンバンドで見てもよく分からず、ミステリアスな模様だ。 3 パンスターズ彗星の写真米山さん、石橋さん、さいとうさん、宮田さんから、3月に撮られたパンスターズ彗星の写真の紹介。4 木星会議の報告(宮田)木星会議3日前に名寄入り、観測でも出来ればと考えていた。雪がすごかったが屋上にある望遠鏡群を開けてみせてもらった。 リーズナブルなお値段でコテージに泊まった。 会議では閃光観測の中間報告、観測風景の紹介を行った。(増田、戸塚) 三鷹の報告(増田) 川崎の報告(六車) かまぼこ観測所での報告(石橋) 近況(堀川) 研究発表 大赤斑の長径変化(堀川) 床屋の看板構造の重要性(田部) 5 惑星フェスティバル(仮)(戸塚)観測技術を学ぶために、大学生を中心として合同観測会を開きたい。座学で学べる知識を得る機会は多いが、実際の観測はやってみないと分からない事が多い。 ベテランのみなさんの技術を盗む事が出来ればと考えている。 実際に自分たちの行っている風景を見ていただいて、改善点をご教授頂きたい。 対象ごとに観測で気をつけるべき点なども知りたい。 6 浅田さんの発表の紹介(三品)天文学会@埼玉大学での発表の紹介。木星をメタンバンドで観測し、周辺減光の変化を経年追跡しているというもの。 7 Autostakkert2の紹介(山崎)Autostakkert2という惑星画像編集ソフトウェアの紹介。Webから無料ダウンロード出来る。惑星の拡大率はドーズの限界と照らし合わせて、光学系と惑星ごとに目安を設けている。 Registaxのような複雑なパラメータ設定の必要がなく、処理が非常に簡単。 土星の処理と比較的相性が良さそうという印象。 8 天文ガイド最優秀賞をとられた平林会長のコメント日頃からねらいや目的意識をしっかりと持って取り組む事が重要です。9 次回例会日程未定○例会後は「ちゃすけ」で2次会が行われた。 |
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