佐藤健さんは、1938年生まれで享年79歳、木星観測の中興の祖と言われていた方でした。
彼以前にも佐伯さん、木辺さん、村山定男さんが居られました。村山さんは1940年代の始めから
熱心に活動されており、偉大な記録を残された方です。佐藤さんは1950年台に入ってから活動を
始められました。その当時のOAAの木星土星課長は村山さんでした。佐藤さんは、村山さんの
後任として1960年から木星土星課長を11年間務められた。その後は、私が18年間、次は宮崎さん、
そして堀川さんにリレーされています。
佐藤さんは天文雑誌に木星関連の連載を掲載されており、その中で数多くの木星のスケッチを
紹介しており、私はそのスケッチを模写したりして勉強していた。
その当時、火星観測は歴史が長く、書籍なども多かったが、木星観測の資料は少なかった。
その様な意味で佐藤さんの存在は意味があった。
月惑星研究会(以降は当会と記載)との関わりは、1960年代の中頃から佐藤さんに色々と教えを
請うていた。当会の発足は1959年で、1963年に広島に行った時、入院中の佐藤さんに始めて
お会いした。その時の佐藤さんは20歳台前半でお若く、色々と教えて頂き、佐藤さんに当会の
顧問を要請した様です。(記憶になかったが後日、佐藤さんから聞かされ失礼した覚えがある)
その後、佐藤さんから当会や当会の資料を精力的に各方面に紹介して頂いた。
1981年に当会から惑星ガイドブックを編集し誠文堂新光社が出版したが、その中で佐藤さんから
巻頭言を頂き、惑星観測の歴史や方法から当会に不足していた水星・金星・天王星・海王星
・冥王星の原稿を執筆され、同時に木星関連などの多くの文献を提供して頂き、その本の出版で
お世話になった。
最近では、当会の英名(ALPO-J)が海外では多くの方が米国のALPOの日本支部と誤解されている
事を気にされ、昨年の11月に米国ALPOの機関紙に、ALPO-Jは、ALPOの日本支部ではない旨を
記載した記事を執筆され、先方の編集者と連絡を取り合い、今年の春に発行となった。
佐藤さんは、1990年代から癌を患われ、その後、何度も手術などの治療を重ねられ、その都度
健康を取り戻されたけど、昨年の夏に主治医から有効な抗癌剤が無くなったと言われ、そこで
覚悟されたそうです。12月入って容態が悪化され入院・手術された。1月に退院予定でしたが、
2月に急に容態が急変され3月4日に亡くなられた。
当会は長期に渡ってお世話を受け、国内外で活躍され、また小惑星の命名でも実績があり、
138個命名されたそうです。当会では、私・田部さん・石橋さん・長谷川さんが命名された。
64年間のお付き合いで、見える所・見えない所でお世話になりました。
平林会長の話の後、参加者全員で黙祷し、佐藤様のご冥福を願いました。また、月惑星研究会
から御霊前(1万円)を出す事とした。
2.自己紹介
自己紹介は、個人情報保護の観点により削除しました。
3.木星の近況(堀川)
(1)概況
・南熱帯攪乱と大赤斑の会合始まる。
・STB Ghost outbreak(STB Ghostと永続白斑BAの衝突現象)発生。
・NEBはベルト北縁が後退し、細くなりつつある。
(2)南熱帯攪乱と大赤斑の会合
・攪乱前端は、1月中旬に加速し2月初めにRS bay後端に到達するも、減速/停滞。RS前方への
ジャンプはまだ気配なし。
・3月に入り、微速後退するRSに押し戻されている!?。
・RSは3月に入っても顕著な後退がない。過去の会合時には加速したことが知られているので、
攪乱による影響が出ているのかもしれない。
・攪乱前端の暗柱は衰弱、循環気流による暗部のUターンも弱い。
・攪乱後端は-0.1°/dayで定速前進。
(3)STB Ghost outbreak
・STB Ghost outbreakとは、STB Ghostが永続白斑BAに衝突する現象。STBの活動サイクルの
一部(後述)。
・2/4にSTB Ghost後端部に小白斑出現。白斑はメタンでBAよりも明るい。
・その後、青いフィラメント領域だったSTB Ghostは濃化。BA後方に元々あった暗斑
(STB Remnant)と一体となり、長さ40°のベルトの断片に変化。
・BAは薄茶色のリング白斑で、大きな変化なし。II=60°付近。STB Ghostの衝突により今後
加速する見込み。
(4)STBの活動サイクル
・STBには低気圧的循環を持つベルト・セグメントが3つ存在する。
・ベルト・セグメントは暗いベルトの断片にこともあれば、青いフィラメント領域のこともある。
・これらは南温帯流(ST Current)に乗って前進し、永続白斑BAに衝突し消滅、すると新しい
セグメントが形成される。
・衝突によりBAは加速するが、ベルト・セグメントが短縮して小さくなると減速する。
・2000年以降、ベルト・セグメントは6つ形成され、BAとの衝突は今回4回目。
(5)NEB北縁の後退と白斑/バージ
・NEBの北部が淡化しつつある。
・拡幅時の北縁が淡く残るが、ベルトが細く見えるようになっている。特にII=140°前後の区間で
著しい。
・北縁に白斑とバージ(暗斑)が形成されている。明瞭な白斑は4つだが、白斑化しそうな明部や
bayがある。バージは8個で増殖中。
・WSZはII=30°にある、薄茶色だが明るい。
・WSZはゆっくりと前進。他の白斑やバージはほぼ停滞。直近で合体が期待されるものはない。
(6)mid-SEB outbreakの終息
・シーズン序盤はII=20°より前方で白雲のバーストが見られた。
・上記の活動は今年1月で終息、現在のSEBは細かい濃淡が見られるのみで、極めて静か。
・今回のoutbreakの活動は発生から1年以上と長期間に及んだ。
(7)STB Spectre濃化?
・大赤斑の南を通過後、STB Spectreの後方でSTBが濃化。
・南熱帯攪乱前端の循環気流により供給された暗部によるものか?
・大赤斑通過後のSTB Spectreのドリフトが-0.7°/dayに急加速。
(8)新しいAWOの形成?
・1月、A4前方に小白斑出現。
・当時、大赤斑南を通過中のSSTBの低気圧的フィラメント領域(FFR)後端付近で形成された
可能性あり。
・一方、A5aは小さく不明瞭。
(9)NT Current-Bの暗斑群と北温帯攪乱
・II=70〜80°付近にあったNTBnの青黒い断片が淡化・崩壊しながら前方に暗斑群を放出。
・暗斑群は-2°/day前後のNT Current-Bのスピードで前進。
・後方のNTZは暗化して、長さ40°の北温帯攪乱が形成されている。
堀川氏の解説資料(PDF)
4.2017〜18の木星(水元)
2017〜18木星(展開図・タイムラプス動画(体系II)とJuno PJ9〜11画像を使用して)の
状況を以下に紹介する。リンクをクリックすると画像、PDF、MP4動画が表示されます。
・01_2017-18_Jupiter-Sys2-Maps(PDF)
・02_2017-18_Jupiter-Sys2-Movie(MP4)
1)SSTB(南南温帯縞)
・AWO(Anticyclonic White Oval):9個
2)STB(南温帯縞)
◆STB outbreak
・2018/2/4 STB Ghost後端付近(II≒110゚)に小さな白斑出現(CH4 bright)
・急速に前方に拡がり、2/10頃にはSTB Ghostのほぼ全体を覆う
(STB Ghost:CH4 dark,STB outbreak:CH4 bright)
・STB Ghost が斑模様に(白雲が拡散 or 沈降?)→ 暗化(暗斑が目立つ)
◆STB:断片的なベルト形成傾向
・STB Ghost & その後方
・GRS前方(STr Bandとは別に) → STB Spectre が関係?
・03_2018_STB outbreak-Maps(PDF)
・04_2018_STB outbreak-Juno(画像)
・05_Juno-PJ11_STZ&SSTB-FFR(画像)
・06_Juno-PJ11_Gerald Eichst_dt-Movie(MP4)
3)STr Disturbance(南熱帯攪乱)
・合(2017/10/27)直前に発生?:Juno PJ9(2017/10/24)'発見
・07_Juno-PJ09_Global-Map(画像)
・前端:明瞭な暗柱を伴い暗柱を介して前方へ暗雲を供給(循環気流:Circulating Current)
(循環気流:SEBsとSTBnのジェットストリームが、STrZを横切って連結する現象)
:GRSに接近するにつれて加速、2018/2上旬にRSH後端に到達.到達後減速
:RSH到達後も暗柱部を介して暗雲がGRS前方へ供給 → 前端の暗柱:細く
:GRS本体後端との間隔:徐々に狭く
:前端とは別にSTrD中央部からも時々千切れたように暗雲がGRS前方へ供給
・後端:ゆっくりと前進.暗柱は一時不明瞭になるが2018/2上旬頃から再び明瞭化
・前端が加速したためSTrDの全長は長く(15゚→ 30゚)
・08_2017-18_STrD-Maps(PDF)
・09_2017-18_STrD-Movie(MP4)
・10_Juno-PJ10_cylmaps_S-hemis(画像)
・11_Juno-PJ11_cylmaps_S-hemis(画像)
・12_Juno-PJ12_Map_180227-rolled-to-180401(画像)
・13_Juno_new_53-d-schedule_to-2019(PDF)
4)GRS(大赤斑)
赤味強く、STrDの影響は認められず(II≒285゚)
・14_NASA_ Juno-Plunging-Into-GRS(MP4)
5)SEB(南赤道縞)
◆mid-SEB outbreak
・2017/12頃までは白斑活動が認められたが、その後衰えた模様
◆W.Spot2 & barge
・昨シーズンのSEB outbreak source1の後方にあったSEBZ中の明部
・その後この明部は北へシフトすると同時に隣接してbargeが形成され、II系に対し後退から
前進に転じる → 現在は殆ど停滞(II≒180゚)
・barge:CH4 dark
6)NEB(北赤道縞)
・北縁が明化して幅が狭くなりつつあり、部分的にNEBnが微かに存在
・北縁はbargeと明部(白斑)が交互に存在(明部の中には輪郭が不明瞭なものもある)
・NEBn白斑WSZ,WS-d,WS-a,WS-bは今シーズンも存在.新たにWS-m発生(合の頃? II≒285゚)
・NEBn白斑(明部)のドリフトはII系に対して殆ど変化なし(WSZは前進).
昨シーズンは急速前進する白斑が観測された(WS-d,WS-aなど)
・幅が狭くなることに伴って白斑が南へシフト?(WS-d,WS-a,WS-b)したことと、白斑間にある
barge(白斑よりやや南に位置)に動きを阻まれているものと思われる
・WSZは周囲にbargeがないこともあってか?前進継続(II≒30゚)
7)NTB(北温帯縞)
・全体にオレンジ色、昨シーズンは北側は灰色.細くなり淡化傾向
8)NNTZ(北北温帯)
・2018/1下旬〜2018/2上旬、2つの白斑が急激に接近するが、後方の白斑が減速し離れる(II≒270゚)
・後方の白斑が南へシフト?
5.次回の例会日程
・次回の関東地区例会は、2018年5月27日(日曜)に明治大学生田キャンパスで開催予定。
2次会:懇親会
向ヶ丘遊園駅近くの居酒屋で14名(内学生3名)参加の懇談会でした。