2010/11/11

2010/11/11: Conjunction of STBn jetstream spots with GRS
STBnジェットストリーム暗斑とRSとの会合
(Yuichi Iga)

STBnジェットストリーム暗斑とRSとの会合


STBnジェットストリームについて

・北温帯縞北縁(-26〜28°)を流れる前進方向(自転方向に吹く)ジェットストリーム
・ボイジャーの観測では、木星のジェットストリームで最も幅広い
・風速は約+44m/s (-3〜4°/day)


過去のジェットストリーム暗斑の観測例

・1900年代はほとんどが南熱帯攪乱(South Tropical Disturbance)に伴う循環気流と関連しており、STBn単独の暗斑群はほとんど見られない。
・GRSとの相互作用の観測は、わずか2例。いずれも1960年代のニューメキシコ州立大学(NMSUO)による写真観測で発見。例1 GRSに暗斑がトラップされた例2 GRSの手前で停止


最近のジェットストリーム暗斑の観測

・2004年以降、継続して暗斑群が観測されている
・2010年は特に大量の暗斑が出現し、STBnが無数の暗斑で埋め尽くされている


STBnジェット気流暗斑群の大赤斑との会合

・2010年9月中旬から、前進するSTBnジェット気流に乗る暗斑群が大赤斑後方に接近する様子が観測されました。
・STBの暗斑や白斑BAは、大赤斑の南方に接近すると、大きな影響を受けることはなくて通過します。ところが、STBn暗斑は緯度がやや北寄りで、より大赤斑に近いコースを通ることから、何らかの相互作用を予想しました。おそらくはSTBn暗斑も大赤斑の南を通過していくだろうと考えられますが、大赤斑の周りの強力な気流にとらえられて飲み込まれてしまうかもしれません。
・さらに、大赤斑直後のSTropZには、大赤斑孔に沿って円弧状の暗部が出現していて、もしかしてSTBn暗斑がこの暗部に沿って北向きに移動して、さらにSEBsジェット気流に乗って後退するかもしれないと考えました(STropZの大循環気流)。
・この中間報告は、9月11日から10月1日までの観測に基づくものです。


1) 大赤斑へのアプローチ

9月14日

前進するSTBn暗斑群の先頭の一つが、いよいよ大赤斑孔直後の注目すべき位置に到達しました。
9月16日

STBn暗斑は大赤斑孔内部に進んでいます。この時点で、STBn暗斑のSTropZへの反転の可能性は無くなりました。
9月17日

大赤斑に接するまでに接近しています。
9月18日

大赤斑の真南まで進み、STBとの間の狭い領域に達しました。
【赤色矢印】

Click for the original size
2) 暗斑が白斑に変化し、大赤斑前方に移動

9月19日

STBn暗斑が大赤斑の真南を通過した後で、暗斑の位置に突然白斑が出現しました。おそらく暗斑が白斑に変化したものと思われます。
9月21日

白斑が大赤斑の周りの気流にとらえられて、次第に大赤斑の周りを反時計回りに移動しています。しかし、白斑は次第に大赤斑から離れています。
9月23日

白斑は大赤斑の前方(東)に進んでいます。
【赤色矢印】

Click for the original size
3) 大赤斑前方から、再びSTBnジェット気流へ

9月25,26日

条件が悪いためか、白斑は見えません。
9月28日

白斑がBAの北に出現していて、大赤斑前方から再びSTBnジェット気流に乗っているように見えます。
9月29日

白斑はBAを通過して、さらに前進しています。
10月1日

白斑は暗いエッジに取り囲まれて、比較的見えやすいようです。
【赤色矢印】

Click for the original size
4) 白斑消失と新しい白斑の出現

10月1日

白斑の直後でBAの真北に、新しい白斑が形成されました。
10月3日

最初の白斑は2日には消失したようです。新しい白斑は丸くはっきりとしてきました。
10月6日

白斑はBAに対して少し前進しています。
10月8日

白斑は斜めのストリークに変化しました。
10月10日

白斑が変化したストリークは東西に伸びています。11日にも見えているかもしれませんが、13日には消失しています。
【オレンジ色矢印】

Click for the original size
5) 第2のSTBn暗斑

9月22日

暗斑は19日に大赤斑孔内部に入り、第1暗斑と同様に、大赤斑の真南に達しています。
9月23日

暗斑は大赤斑の南を少し通過するまで追跡できました。これ以降は暗斑は見えなくなり、消失したようです。また、第1暗斑のように白斑に変化した痕跡も見られません。
【ピンク色矢印】

Click for the original size
6) 第3のSTBn暗斑

9月23日

暗斑は大赤斑孔直後に達しています。
9月26日

暗斑は大赤斑の真南に達する前に、白斑に変化しました。
9月28日

白斑は大赤斑の真南に達しましたが、以降は消失したようです。
【黄色矢印】

Click for the original size
7) 第4のSTBn暗斑

9月29日

暗斑は大赤斑孔の後方に接近してきました。
10月1日

STB Remnantの白雲と接触して、暗斑が白斑に変化しています。
10月2日

STBに取り込まれた白斑は消失したようです。
【青色矢印】

Click for the original size
8) 第5のSTBn暗斑

10月3日

暗斑は大赤斑孔の後方に接近してきました。
10月6日

暗斑は大赤斑孔に侵入し、東西方向に長く引き伸ばされています。その10時間後には、丸い暗斑として大赤斑の南に達し、その後消失しました。
【水色矢印】

Click for the original size
9) 第6のSTBn暗斑

10月8日

やや大きく緯度が少し北寄りの暗斑は大赤斑孔の後方に接近してきました。
10月10日

暗斑は大赤斑の南に達し、その後消失しました。
【緑色矢印】

Click for the original size
考察

・ 今回の解析によって、STBnジェット気流に乗って前進する暗斑群が、大赤斑の南を通過する際の奇妙な振る舞いを明らかにすることができました。それはこれまでにない高解像度画像が連続して得られたことによる大きな成果です。

・ この解析では、6個のSTBn暗斑の大赤斑通過を追跡することができましたが、大赤斑通過には3つのバリエーションが観測されました。
1. 暗斑は大赤斑の真南で白斑に変化し、大赤斑の前方へ進み、再びSTBnジェット気流に乗って前進しました(第1)。
2. 暗斑は大赤斑の真南で白斑に変化しましたが、すぐに消失しました(第3、第4)。
3. 暗斑は大赤斑の真南で消失しました(第2、第5、第6)。

・ 大赤斑の前方からBAの真北には、薄い黄色の雲の領域が見られます。この領域はさらに前方に伸びていて、STBnジェット気流の範囲を示しているようです。大赤斑前方の領域には、淡い白色ストリークや薄暗いストリークがしばしば見られましたが、模様を同定することはできませんでした。もしかして、大赤斑の真南で消失した暗斑や白斑の痕跡かもしれません。


・ また、10月08日以降には大赤斑のエッジに移動する小さな暗斑が見られますが、うまく同定できませんでした。これは大赤斑の渦にとらえられたSTBn暗斑の可能性もあります。



・ STBn暗斑が大赤斑を通過する際に、BAの影響が考えられます。BAの真北には、何らかの乱流があるようで、それが10月01日に新しい白斑を形成させたのかもしれません。これが正しいとすると、BAが大赤斑にもっと近くに位置にあった時のSTBn暗斑の通過に、BAが及ぼす影響があったかもしれません。

・ 大赤斑孔直後で白斑が発生し、SEBsを後退
- 大赤斑直後には、大赤斑孔に沿って円弧状の暗柱があります。この暗柱直後では、小白斑が定期的に発生しています。小白斑は、暗柱に沿って北に移動し、さらにSEBsを後退しています。これらの小白斑が、今シーズンのSEBsジェット気流に乗って後退する白斑群の発生源であるかどうかは、解析を行っていないので分かりません。
- また、STBn暗斑は暗柱に影響されることはなく、そのまま大赤斑に向かいます。暗柱で白斑が発生していますから、南熱帯南部を前進する気流がありそうですが、これまでに明白な模様は検出されていません。


謝辞

第1暗斑が大赤斑の真南を通過した後で、私は暗斑を追跡できなくなりました。暗斑としてのしっかりとした斑点が見えなくなったことや、大赤斑前方に新たに白斑や白雲が生まれたようで、暗斑の同定を難しくしていました。それでBAAのRogers氏に組画像を送ったところ、すぐに暗斑が白斑に変化しているとの解説が届きました。
また、暗斑が大赤斑通過時に白斑に変化した同様な現象は、2008年の南熱帯に出現した"Baby Red Spot"の例を教えてもらいました。Rogers氏に感謝します。

To PageTop

Presentation: The 34th Jupiter Conference (Himeji), October 23/24, 2010

Presentation: Conjunction of STBn jetstream spots with GRS [PDF] (Japanese)
STBnジェットストリーム暗斑とRSとの会合
伊賀祐一(代読:堀川邦昭)

To PageTop

BAA Report: The Great Red Spot and spots moving around it

Jupiter in 2010 - Report no.12
The Great Red Spot and spots moving around it (continued)

John Rogers, Yuichi Iga, & Toshirou Mishina : 2010 Nov.6


In 2010 September, Jupiter reached its closest opposition for 47 years, so the amateur images showed more detail than ever before. Here we report continuing observations of the various spots moving around the GRS. The GRS continues to retrograde, being at L2 = 156 around Oct.1 and 159 around Nov.1.


STBn jet-stream spots encountering GRS
(analysis mainly by Yuichi Iga)


Now that Oval BA has passed the GRS, STB-2 lies alongside it, and a train of STBn jetstream spots has been arriving at the f. end of both. Yuichi Iga has analysed what happens to them. The first two spots veered S to pass between the GRS and STB-2. The first one changed to a white spot as it passed the S side of the GRS, and then expanded into an orange cloud on the p. side of the GRS (Sep.21) - just like the Baby Red Spot did in 2008 -before reassembling into a bright spot on STBn prograding past oval BA. The second spot disappeared as it passed S of the GRS (Sep.23). The third and fourth spots changed into white spots when they reached the f. end of the GRS and STB-2 (Sep.26, Oct.1), then disappeared. The fifth spot also disappeared at the f. end of the GRS and STB-2 (Oct.6). The sixth spot, however, halted at this location and merged into the vertical dark line around the f. side of the GRS (Oct.8). In many of these cases, the last image of the jetstream spot resolved its disruption as a tiny streak.


Although all but the first spot disappeared alongside the GRS, traces of them did emerge as a growing stack of oblique bright and dark streaks Sp. the GRS - especially well shown in the v-hi-res images on Sep.28 (S. Ota) and Oct.3 (G. Walker) and Oct.8 (I. Sharp, T.Barry in IR). At least one of these has again rounded up to form another prograding bright spot on STBn alongside oval BA (Oct.1-8). So, the dark spots have all been disrupted, but traces of them survive and can reassemble into vortices after the passage.


In contrast, the conspicuous sixth spot, which merged with the narrow column just f. the GRS, seems to have spread down it to generate a dark streak spreading f. along SEBs on Oct.10-12 -- dissipating thereafter. Another STBn dark spot began the same journey on Oct.18 (Fig.2). Then on Oct.23-25, when the next spot arrived at the GRS, it was distorted but did speed through the channel S of GRS, very fast. Even more analysis could be done if anyone has time.


Bright plume N of the GRS
(analysis by T. Mishina & JHR)


The bright white plume has erupted again N of the GRS, starting on Sep.22-23. It was also seen bright in methane images on Sep.23 and Oct.3 (Tomio Akutsu, Don Parker), though it was rather small and variable up to that time. Chris Go first pointed out that the northern edge of the GRS was very bright on Oct.6.


On Oct.6, the plume was brighter in methane images (T.Akutsu & A.Yamazaki) and also in visible light. On Oct.8-13 it was very bright in visible light, esp. when near the limb, indicating its high altitude; a thin dark string was expanding west of (f.) this bright spot around the Red Spot Hollow as far as the STB; and the blue triangle east of (p.) the plume was expanding to the east. All these phenomena recapitulate previous appearances of this bright plume.


It was particularly bright on Oct.12 & 13, as Glenn Jolly and Chris Go both remarked. The plume was also methane-bright, and growing: The E-W extent in methane images was 7500 km on Oct.12 (Yunoki, Yamazaki) and 13200 km on Oct.13 (Go), i.e. growth of 5700 km in 7 days.


It was faded somewhat after Oct.13, but was back in full force by Oct.23, when it was well shown in the images by Tomio Akutsu and Don Parker, in both visible and methane bands. As they pointed out, it was a very distinct methane-bright spot on that date. By then it had become quite extended in longitude.


On Nov.6 (Sadegh Ghomizadeh & Chris Go), the white plume had disappeared (in visible and methane). But the blue-grey triangle Np. it was still very distinct.


We don’t yet have recent measurements of the plume and its environs, but in July, when the plume was present, the JUPOS chart showed several dark spots prograding at DL2 ~ -80 to -90 deg/month within the blue streak or at its p. end. This motion agrees nicely with what we found in 1990 Feb., when the p. end of the blue streak extended at DL2 = -92 deg/mth for a few days.


John H. Rogers, Ph.D.
Jupiter Section Director,
British Astronomical Association.


To PageTop

BAA Report: 大赤斑とその周りを移動する斑点

Jupiter in 2010 - Report no.12
The Great Red Spot and spots moving around it (continued)

John Rogers, Yuichi Iga, & Toshirou Mishina : 2010 Nov.6


2010年9月に、木星は47年で最も接近した衝を迎え、おかげでアマチュアの画像はかつてない詳細をとらえた。これは大赤斑の周りを移動する様々な斑点の継続している観測を報告する。大赤斑は後退し続けていて、10月1日にL2=156度、11月1日にL2=159度である。


大赤斑と会合するSTBnジェット気流暗斑
(主にYuichi Igaによる解析)


現在、白斑BAが大赤斑を通過し、STB-2がその側にあるが、STBnジェット気流暗斑列が両方の後方に到達している。Yuichi Igaはそれらに何が起こっているかを解析している。最初の2個の暗斑は大赤斑とSTB-2の間を通過するために南に向きを変えた。最初の暗斑は大赤斑の南方を通過した時に白斑に変化し、その後大赤斑前方のオレンジ色の雲の中に拡がった(9月21日)。その後、ちょうど2008年にBaby Red Spotが見せたように、白斑BAを通過し前進してSTBnで白斑に再び集まった。第2の暗斑は大赤斑の南を通過した時に消失した(9月23日)。第3と第4の暗斑はそれぞれ大赤斑とSTB-2の後端に達した時に白斑に変化し(9月26日、10月1日)、その後消失した。第5の暗斑も大赤斑とSTB-2の後端で消失した(10月6日)。しかしながら、第6の暗斑はこの場所で停止し、大赤斑後端の周りの垂直な暗線とマージした(10月8日)。これらのケースの多くで、ジェット気流暗斑の最後の画像は小さなストリークとしてその分裂をとらえている。


最初の暗斑以外は大赤斑のそばで消失したが、それらの痕跡が大赤斑の南前方に斜めの明暗のストリークの成長する積み重ねとして現れた。特にこれらは、9月28日(S. Ota)、10月3日(G. Walker)、10月8日(I. Sharp, T.BarryのIR画像)の超高解像度画像に見られる。これらのストリークの少なくとも1つが再び集まって、BAのそばでもう1つの前進するSTBnの白斑を形成した(10月1-8日)。こうして、暗斑は全て分裂したが、それらの痕跡は生き残り、通過後に渦として再び集まることができる。


対照的に、大赤斑直後の狭い暗柱とマージした第6の目立った暗斑は、暗柱を下に拡がって、10月10-12日にSEBsに沿って後方に拡がる暗いストリークを作ったように思われるが、その後消散した。他のSTBn暗斑が10月18日に同じ行程をたどり始めた(図2)。その後の10月23-25日には、次の暗斑が大赤斑に接近すると、暗斑はねじ曲げられたが、非常に高速に大赤斑の南のチャネルを通って速度を上げた。もし誰か時間があるならば、さらに解析ができるだろう。


大赤斑北方の明るいプルーム
(T. MishinaとJohn Rogersによる解析)


方に噴出している。それまでプルームはかなり小さくて変化していたけれども、9月23日と10月3日にはメタン画像でも明るく見えた(Tomio Akutsu, Don Parker)。Chris Goが、大赤斑北端が10月6日に非常に明るいことを最初に指摘した。


10月6日、プルームはメタン画像(T.Akutsu & A.Yamazaki)および可視光でも明るかった。10月8-13日には、プルームは可視光で、特にリムの近くで非常に明るかったが、それは高い高度であることを示している。薄暗いひも状模様が赤斑孔の周りをSTBまでこの白斑の西(後方)に拡がった。また、プルームの東(前方)の青い三角形は東へ拡がった。これらの現象の全てはこの明るいプルームの以前の出現を反復している。


Glenn JollyとChris Goの二人が述べるように、プルームは10月12日と13日に特に明るかった。プルームはメタンブライトでもあり、成長した。メタン画像での東西の拡がりは、10月6日に7500km(Yunoki, Yamazaki)、10月13日に13200km(Go)であり、すなわち7日間で5700kmの成長であった。


10月13日以降プルームはやや淡くなったが、10月23日までにTomio AkutsuとDon Parkerの画像の可視光とメタンバンドの両方で、完全な力を取り戻した。彼らが指摘するように、プルームはその日に非常に明瞭にメタンブライトであった。その後は経度方向にかなり拡がった。


11月6日に(Sadegh Ghomizadeh & Chris Go)、白色のプルームは消失した(可視光とメタン)。しかし、プルームの北前方にある青灰色の三角形は今も非常に明瞭である。


我々はプルームやその周辺の最新の計測を持っていないが、プルームが存在していた7月に、JUPOSチャートによれば、複数の暗斑が青いストリーク内部かその前端でDL2=約-80から-90度/月で前進していた。この動きは、我々が1990年2月に見つけた、青いストリークの前端が数日間DL2=約-92度/月で拡がったことと見事に一致している。


John H. Rogers, Ph.D.
Jupiter Section Director,
British Astronomical Association.


To PageTop

Figure


Click for the original size

Figure A1. Conjunction of Dark Spots on STBn jetstream with GRS


Click for the original size

Figure A2. The GRS with STBn jet. spots arriving at its Sf. edge,
& brilliant plume on its N edge: 2010 October

To PageTop