1997年6月13/14日の木星

安達 誠・浅田秀人・伊賀祐一・奥田耕司・忍穂井幸夫・土山由紀子・堀川邦昭・繭山浩司


6月13日の木星観測です。この日の午後に関西支部の例会が行われました。

注目するSTrの白斑は、6月2日にPic du Midi天文台で、3日にD. Parker氏のCCD画像で大赤斑直後のSTrZに見出されました。日本では6月6日に観測が可能でしたが、特に白斑らしいものは見つからず、今回の観測に注目が集まっていました。

結局、どの観測者からもこの白斑の観測はありませんでした。大赤斑付近はノーマルな様相を呈しており、大赤斑の前後のSTrZにも大赤斑湾内にも白斑は存在していないようです。

この日は木星の衛星の現象が多く見られました。

ガニメデ(III)14h38m(UT) 影潜入18h16m(UT) 影離出
イオ(I)16h47m(UT) 影潜入19h05m(UT) 影離出
カリスト(IV)17h27m(UT) 本体潜入
イオ(I)17h57m(UT) 本体潜入
ガニメデ(III)19h21m(UT) 本体潜入
安達氏・伊賀氏が3個の暗斑を観測していますが、これは左からガニメデの影の経過、イオの影の経過、カリストの本体の経過です。イオ本体の経過は見えなかったようです。

浅田秀人 (305mm Newtonian, MUTOH CV04 CCD Camera)


  • RS周辺に会合した白斑及びその影響は見られない。
  • STBの太い部分がRS南方にさしかかっており、アーチ構造ではないが、真南だけは暗い。
  • SEBZのII=125付近に白斑状の光点がある。
  • NEBnはII=50〜90で淡化している。II=145付近のnickはやや増大したか? 
  • 19h01mのEZほぼ中央の暗赤点は不明(画像上のノイズ?)。
    注:この暗赤点はイオの本体の経過です。18h27mの画像の右側のカリスト本体の
      経過の下にもイオ本体が写っています。

奥田耕司 (250mm Newtonian, BITRAN BT-01 CCD Camera)


1997.06.13 17h53m(UT)
I=192.4 II= 78.1
R1 Filter
注:右上の白い四角は送付された
  画像にあったものです。 

1997.06.13 18h10m(UT)
I=202.8 II= 88.4
R1 Filter
注:少し画像処理がきついようです。

1997.06.13 18h28m(UT)
I=213.7 II= 99.3
No Filter


安達 誠 (310mm Newtonian, drawing)


1997.06.13 17h34m(UT)
I=182.5 II= 68.3

1997.06.13 18h26m(UT)
I=214.3 II= 99.7

1997.06.13 19h 8m(UT)
I=239.9 II=125.0
支部例会の日に観測をしました。GRS周辺部分のみについて報告しておきます。

STr白斑は結論からいうと、見えませんでした。いたってノーマルな姿でした。シーイングは7/10でしたが薄雲が出たり入ったりと、安定した観測ではありませんでしたが、まずまずの観測だったと思っています。

GRSは形が不規則で、どう表現したら良いかわかりません。楕円形のエッジが少しでも見えていたら良かったのですが、わたしの目には見ることができませんでした。浅田さんや伊賀さんは赤みがかって見えていたそうですが、赤に弱いわたしの目では感じることができませんでした。例のSTr白斑はSEBsには見ることができませんでした。消えちゃったように見えました。


伊賀祐一 (305mm Newtonian【浅田氏所有】, drawing)


1997.06.13 17h41m(UT)
I=185.6 II= 71.4
支部例会の前夜祭として浅田氏を訪問しての観測となりました。

  • 大赤斑の前後にはSTrの白斑は見えなかった。
  • 大赤斑後方のSEBsは二条になり、SEBnは淡い。その後SEBnは太くなっている。
  • NEBnのCM付近の前後40°ぐらいは淡化してしまっている。
  • NEBsの右端にはBayの幅広いものが見えてきた。
  • NTrZのCM左に少し明るい領域がある。
  • NTBは北に湾曲している。
  • NTZに2個の暗柱らしきものが見えるが、白斑があるのだろうか。

忍穂井幸夫 (200mm Newtonian, drawing)


1997.06.13 16h30m(UT)
I=142 II= 28

1997.06.13 17h25m(UT)
I=176 II= 62


土山由紀子 (105mm Refractor, drawing)


1997.06.13 18h48m(UT)
I=227.7 II=113.1

  • 薄曇り。シーイングは時々落ち着く。雲が薄くなった時にスケッチした。
  • 前方SEBは若干太い。RSとも思うが確認できない。SEBの北端EZ中に衛星の影。SEB北端の先行部に若干濃い部分あり。
  • NEBにはフェストーン(?)が2つ。NTBは後方が少し二重に分かれているように見える。
  • STrZは白く,くっきり見える。

堀川邦昭 (160mm Newtonian)

この週末は全国的に天気が良かったようで、観測報告がたくさんでていますね。
横浜は13日がよい天気で、シーイングもよくかなり詳しい様子をみることができました。

ただ、衛星の影やら本体が次々とEZを通過し、たいそう邪魔でした。
14日の晩は意外にも曇ってしまい、3時ころにちょっとだけ晴れただけでした。


1997.06.13 16:23UT
ω1=139.2 ω2= 25.4

1997.06.13 17:35UT
ω1=183.1 ω2= 68.9

1997.06.13 18:45UT
ω1=225.8 ω2=111.2

1997.06.14 18:04UT
ω1=358.8 ω2=236.7

  • 大赤斑は一見何の変哲もない楕円形だが、好条件下では濃淡があり、少し変形している。右肩が濃く左下が明るい。前後端は淡いshadeでSEBとつながっており、南縁にアーチができつつあるのかもしれない。内部や周辺には白斑らしきものは見当たらない。
  • 大赤斑前後では後方のSEBsの方が緯度が高いため、大赤斑が傾いているようにも見える。
  • 大赤斑前方のSEBZには明るい部分が偏平に広がっている。
  • 大赤斑直後のSEBZは明るいが拡散しており、白斑状のものは存在しない。しかし、ω2=122.6には比較的明るい白斑がある。新たに発生したと思われる。後方のSEBは暗い。
  • 永続白斑は3つともよく見える。
  • NEBnはω2=60°付近の小白斑の後方で淡く、一見NEBが細くなっているように見える。この状態は120°付近で終わっているが、この後方ではNEBZにかなり明るいrift構造が見られる。
  • ω2=53.1から後方でNTZが強くshadeされ、NNTBもやや南へ寄っていて、全体としてかなり乱れている。NNTBは100°付近で通常の見え方に戻っているが、NTZのshadeは徐々に淡くなりつつ、もっと後方まで続いている。
  • ω2=220°付近のNTZのbargeは淡いが、後方のNNTBが濃い。

繭山浩司 (200mm VISAC)


1997.06.13 17h16m(UT)
I=171.6 II= 57.4
6/13 17h16m U.T.に大赤斑付近を観測しました。観測時刻の経度は、1系171.6度 2系57.4度でした。

大赤斑はやや赤味を帯び本体をはっきり見ることができるが、前方北側がやや淡く感じられる。大赤斑湾の中でも大赤斑周辺でも白斑状の部分は見られない。

大赤斑後方のSTrZは明るく見え、SEBsがシャ-プに感じられる。SEBsは大赤斑前方の方が、大赤斑後方より濃く見える。


月惑星研究会関西支部のHomePageへ戻る 木星セクションへ戻る