1997年5月17日〜6月13日の木星

浅田秀人


 この期間の観測は5/17,22,25,26,27,6/6,7,12,13の9回である。STrZの白斑と大赤斑の会合をはじめ各部に興味深い模様が見られる。条件は6/7が絶好であった他は並みもしくはそれ以下である。

【概況】

 いずれの経度でも目立つbeltはSEBとNEBの2本である。 NEBは一様に茶褐色でSEBはその南北両縁が暗い。
 STBはRSの前方で見え辛く、またNTBはRSの後方で不明瞭だが、他の経度ではそれぞれ十分な濃度がある。他には、南半球でSSTBが捉えやすく、北半球ではNNTBが明瞭に見えるところがある。
 ZoneはEZとSTrZが明るい。NTrZは前者と同等に明るい部分があるが、全体的にはやや暗い。但し、以前見られたような赤味は感じない。

【各部の詳細】

SSTB以南:
 SSTBはSTBと同様に全周でおよそ右上がりに見えている。始点(最も北)はII=310付近。RS付近から南へシフトし、125付近(FAの真南)の白斑周辺で不明瞭。230付近から後方で濃く目立ち、330からもう一段南へシフトして、SSSTBの緯度へ伸びている。
白斑は上記の他1個。49.7(5/17,CMT)、44.9(5/22,CMT)で、5/10、54.9に見た白斑と同一である。

STB付近:
 STBの始点は北部だけの細いbeltで判断し辛いが、II=250付近から見え始めている。50付近でやや南へシフトして、75付近以降で通常の太さである。DEの後方から230まで濃く、そこから大きく南へシフトしてSSTBの緯度に達している。

LEBS:
 永続白斑は3個とも明るい。FAが南寄りでわずかに小さい。昨年見られたその他の白斑の内、BC〜DE間の小白斑が辛うじて認められる。 緯度はBC,DEと同じでDEにやや近い。

STrZ:
 全周で明るい。
 SEBsにbayを形成する白斑はRSとの会合を迎えたものの他にいくつかあり、次の3個についてCMTを得ている。
 6/07  197.4 STrZの南端まで広がる大きさで明るい。
 6/12  259.2 
 6/07  321.9 明るさは殆どなく、SEBsへの湾入が認められる程度。

RS:
 昨シーズンに比べると、RSを取り巻くアーチがない他は形状、色彩とも殆ど同じである。橙色で南半分に濃度がある。
 また、RS-bay内の隙間の広さ、明るさとも特に変化はない。
 位置はいずれもCMTで、5/17 63.0(c), 5/22 50.9(p) 61.8(c), 5/27 72.7(f)

RSとWS-STrZの会合:
 WSは5/17に47.3(CMT)に達し、その前端部がRS-bayに潜入した。
 5/22、RSとRS-bayの隙間のうち、RS中心の前方向が少し広がりをもっており、WSの存在を伺い知るものである。但し、眼視で「白斑」という程度の明るさは全く感じられない。R画像を強調すると小さな「涙形」が見え、RSの前方が明るく、経度の後ろ、緯度の北方向に細い部分が見られる。一方、B画像では47.3(CMT)に中心を持つ小白斑で、この値は偶然にも5/17と同じである。
 6/6,13の両日は条件が悪く詳細は不明だが、RSの周囲に変わった傾向は見られず、とりあえず白斑を見失っている。RSの色彩に変化は見られない。

宮崎氏、Parker氏の画像(初期段階は私の画像を含む)を見て推測した事柄WSは5/15にRS-bay前端に達し、その後急激な増速に伴って細長く伸び、主たる部分は5/24にRS真北に進む。そして、6/2にRS-bayの後端に達する。 各々9日間でRSの周囲を1/4周したのではないかと見ている。

SEB:
 ほぼ全周で、暖色の中心部を色彩なき暗色が南北から挟んでいる姿である。
 RS後方からII=120までSEBnは細く、SEBZから明域が北に広がっている。 また80付近までは昨シーズンと同様に白斑が並んでいる。形状は様々だがおよそ3個見える。
 120以降からSEBnは徐々に太くなり、また次第に南へシフトして経度長90度に及ぶband状である。
 250〜305ではSEBsとSEBnはほぼ均等にSEBZを挟んでいる。
 SEBZのII=309.2(6/7,CMT)に白斑がある。5/10から微かに見えているものであるが、好条件では「白斑」ではなく横一文字の光るareaである。この白斑以降でSEBNは太くなりRS前方の35から再び細くなる。
 SEBZが明るいのはRS後方〜120、その他の経度では暖色である。
 SEBs南縁の凸凹は120〜320の長い経度で見られる。

EZ:
 EZnは濃いfestoon,hump and veilが並び賑やかである。6/12他でNEBsにPlumeが立ち、南にfestoon、北はNEBにriftedが走る昨シーズンとよく似た傾向を見ている。一直線に整ったEBは見ていない。

NEB:
 NEBnにnotchがいくつか発生し、一部で北縁がやや退化傾向にあり、NEB全体としてやや淡化に向かっているようである。
 Notch(nick)の位置は 32.2(5/17,CMT), 145.5(6/6,CMT), 284.0(6/12,CMT)
* 284.0は他の日に 287.3(5/26,CMT)

 一方、同じNEBnに小規模だが濃度のある暗斑が見られる。
165.5(6/6,CMT), 276.2(6/12,CMT), 291.9(6/12,CMT)
 276.2と291.9の暗斑(dark-spot)は284.0のnickを挟んでいる。この3連模様は以前を辿ると5/9から確認でき、興味深いことにドリフトが見られない。
NEBnが広い経度で淡化しているのは50〜90付近。これについても5/9から確認できる。

NTrZ:
 明るい経度は47.3〜67.9(5/22,CMT)、120〜180付近。前者は5/10、4/28に見た2個の小白斑(53.1, 65)が前後に伸びた様相である。 後者の中間149.2(6/6,CMT)に暗柱の発生が見え、6/13も存在を確認している。
 この他の経度ではNTrZはshade状態で、色彩はない。

NTB:
 緯度幅は明瞭に見えるところで、NEBの1/3もしくはそれ以下で比較的細い。
 II=50から後方で北方にぼやけ、120付近までNTZにshadeが大きく広がっている。 120から再び独立したbeltに見え、150付近から南にシフトして178(6/6,CMT)から通常の緯度に戻っている。

NTZ:
 II=220付近に横長(経度幅約10度)、橙色の斑点があり、6/7の画像で捉えている。NTZが明るい範囲は240〜40付近。

NNTB:
NPRから続く暗い部分から切り離れてNNTBが比較的明瞭に見られる。特に見易いのは100〜330付近である。但し、120以前では上記NTBのshadeと重なっている。


305mm 反射 眼視観測,CCDイメージ /九条観測所(京都市)

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