1996年の木星 −第3回中間報告−

John H. Rogers, British Astronomical Association
1996年10月23日
伊賀 祐一訳
International Jupiter Watch(IJW) Newsletter Nov 11,1996から

あらまし

 7月27日の前回の報告から大きな変化はなかった。STBの白斑の並びは安定した状態を保っている。NEBの幅が広がって以来、NEBsのdark projectionは非常に顕著であり、多様なドリフトを示している。ある組は通常ではなくゆっくりと移動しているが、'PES Hotspot'を含んだその他のものは体系Iで静止していて、不安定である。現在では、安定なNEBs plumesもNEB bargesもjetstream spotの発生も存在していない。

 1996年9月23日までの宮崎 勲氏のCCDイメージの報告が送られている。4月〜7月のDon Parker氏のイメージもちょうど受け取ったが、この報告には含んでいない。何人かの眼視観測者からも報告が送られてきており、NEBs dark projectionのCMT観測はイメージからのデータと良く一致している。来月以降さらにデータが得られるだろうが、それ以降には来年の5月までこれ以上のデータは得られないだろう。

 経度は体系Iと体系IIで与えているが、最後に体系IIから体系IIIに変換している。体系I(II)のドリフトは°/30日である。緯度は木心緯度(zonographic)である。

北温帯領域(North Temperate Region)

 42.5°Nの2個の小さな赤班(Red Spot、メタンでは明るい)は、経度方向に不規則に変化していた。しかし、全体の出現を通して持続しているが、異なった平均ドリフトを示したいた。これらのドリフトから1995年に撮られた斑点と同じである見方が強くなっている。

 北温帯縞(NTB)はほぼ150°にも及んできれいに分枝した北組織を持っていて、そのために北温帯ドメインはこれらの経度で暗くなっている。他の経度では、黄色がかったNNTZから分離した狭いNNTBを伴ってはっきりと白色である。

 NTBsのjetstream spotはもはや存在しない。NTBsのjetstreamの発生が終了した後に短期的に北温帯流-Bが出現するという過去の傾向を保って、6月から9月までに-106から-150°/月(体系II)のドリフト量で移動する短く淡い領域(sector)が存在した。

北赤道縞(North Equatorial Belt)

 NEBは幅広いままである。NEBの拡張に引き続いて、来年には渦巻状(cyclonic)の暗いバルジ(barge)が16°Nによく発達することであろう。もしもガリレオ・チームが対象として置いてくれるならば、1997年春のIRTF 5ミクロンのイメージがそうなる良い機会だと思われる。

 NEBsの端には、NEBの拡張以来、dark projection(5ミクロンではhotspot)が非常に大きく暗くて青味がかって見えている。これらは多様なドリフトを示している。4個(下表に示す)の大きなプラトー(plateaux)は通常ではない遅い自転周期を持っている(例えば体系Iに対して+13から+20°/月の範囲の正のドリフトである)。これらの形状は大きく変化していて、9月にはもっとコンパクトなdark projectionであった。経度でほぼ180°に渡り、dark projectionはもっと小さく、ドリフトも多様ではあるがもっと小さな値を示していた。9月8日には、体系Iで48,68,88,122,158,184°の経度にあった。最初の2個は今年の最初には正のドリフトであったが、9月には静止した。(ここでPES Hotspotは7月後半から9月中旬まで経度(体系I)=68°に停止していたが、その20°西のprojectionと合体し、その結果9月22日にはもはや区別できなかった。)その他のものは、6月に初めて観測されて以来だいたい静止していたが、ドリフトと見え方は変化していた。最後のものは、下表に示す後退するprojection (a)の跡を追って、ちっぽけな暗班(dark spot)から発達した。これらのdark projectionが12月まで変化しないで残っているか確信はない。

南熱帯領域(South Tropical Region)

 大赤斑の直後のSEBZの活発な白斑の活動は継続している。その後端は8月31日に約93°(体系II)であったが、別な新しい白斑群の出現が9月2日の98°までに見られた(イメージと同様に眼視観測者によって)。今のところさらに拡張はしていない。

 SEBの16.5°Sにある小さなオレンジ色のstreakは少なくとも9月3日まで残っていたけれども、SEBsの端にあるほとんど静止したSTrZ内の暗班の大部分は一時的であった。

 1987年以来追跡されている顕著な白斑は着々と大赤斑に近づいている。現在のドリフトからみると、1997年4月に大赤斑孔(Red Spot Hollow)の端に位置するだろう。もしそれが残っていれば、とても興味深い相互作用の観測になると思われる。なぜならば、このように長く存続したS. Tropical ovalが大赤斑と相互作用したことはなかったからである。このovalはSEBsのjetstream spotのように大赤斑と合体してしまうのだろうか、あるいはS. Temperate ovalのようにお互いに距離を保っているのだろうか、あるいは遭遇する前に消滅してしまうのだろうか?

 大赤斑は次第に南端の周りの非常に暗いグレーの襟(collar)が消失している。

南温帯領域(South Temperate Region)

 4個の反渦巻(anticyclonic)の白斑(white oval)BC-DE-XY-FAのクラスターの様相はわずかに変化していて、それらの間の空隙に3個の渦巻(cyclonic)のovalを伴っている。BC-DEの間とXY-FAの間の白い渦巻のOvalは、ドリフト量がわずかに変化していたので前後に振動していたが、際立って見えていた。また、グレーの渦巻のOvalがDE-XY間で発達した。反渦巻のOvalの平均の経度方向の間隔は、20°(5月)から18°(9月)までゆっくりと縮小した。また、2個のもっと小さな反渦巻のovalが両端18°に出現したために、現在では配列は6個の反渦巻の白斑(white oval)となった。oval DEは体系IIで-12°/月の完全に一定のドリフト量を保っていた。これらのことから、このoval(それと多分その興味のある渦巻の近傍も)が、1997年2月にガリレオが対象とする場所に正確に位置するものと予想している。

経度(体系I)
7/49/812/19Drift Rate(deg/mo)
NEBs dark plateaux
a201246315+20.4
b259292344+15.2
c29933843+18.6
d3481559+12.7

ガリレオ探査衛星の見る範囲(12月12.00日UTに体系IIIで290-330°)は体系Iで174-214°に相当する。ここは、現在のところ静止した模様(本文参照)と後退する模様との間の領域(sector)である。

経度(体系II)
(体系IIIへの変換を最下行に示す)
7/49/812/19Drift Rate(deg/mo)
N.N. Temperate ovals
LRS-1185162129-10.0
LRS-2344254+3.6
Dark NTB(N)
p. end254~290~344~+16
f. end42~ 89~160~+21
S. Tropical ovals
Tiny orange streak in SEB (16.5 deg.S)221230245+4.5
White oval on SEBs51532+4.9
GRS596165+1.0
S. Temperate ovals
BC215190152-11.2
DE237210170-12.0
XY255228184-12.6
FA276247205-12.6
To convert SYS II to III-98-80-53+8.0

ここで経度は
(a)7月4日(衝)(最適直線からの値)
(b)9月8日(G2探査の日、衝から2.20ヶ月)(実測値)
(c)12月19日(E4探査の日、衝から5.60ヶ月)(外挿値)
ドリフト量は体系Iと体系IIで°/30日と定義。
これらの高品質のイメージでは無視できるだろうから、位相効果(phase effect)については考慮していない。それを決定するためにはさらに測定が必要である。もし位相効果があると、12月19日の経度は3°ぐらい過修正かもしれない。