ALPO-Japan: Jupiter Section (June 05, 1998)

STB Oval: Merged Oval 'BE'

June 05, 1998

Yuichi Iga


●永続白斑'BE'(BCとDEの合体)
永続白斑はSTBに位置する3個の白斑BC,DE,FAで、1940年頃から観測されてきました。その経度方向の大きさは年々指数関数的に縮小していましたが、ついにBCとDEが合体した様子です。58年間継続していた3個の永続白斑は、ついに2個となってしまいました。現在のところ、このマージした白斑は、BEと呼ばれるようです。

Pic du Midi天文台による5月7日の画像に、永続白斑'BC'と'DE'が合体(Merge)した様子が撮影されました。その後の確認観測は天候に恵まれずにできないでいましたが、ようやく我々も5月30日にその姿を捉えることができました。また、Pic du Midi天文台からも6月3日の画像が公開されました。

下の図は、左が池村俊彦氏の5月30日(UT)の画像(体系II=286)、右がPic du Midi天文台の6月3日(UT)の画像(体系II=290)です。池村氏の画像はNEC Piconaデジタルカメラによるカラー画像で、Pic du Midiの画像はI-Bandによるものです。4日間の差はありますが、ほぼ同経度の画像です。

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Original Image:
Left : The Observation in May 31, 1998(This Web Site)
Right: http://megasn.obspm.fr/galileo/02jun98/ju02698a.gif

両方の画像のほぼ中央子午線(CM)付近のSTBの南側(上)に、マージしたBEが存在しているはずですが、白斑といえる姿は見られません。Pic du Midiの画像のメタンバンドの画像では、明確な白斑と捉えられているので、その位置を同定することができます(下の展開図を参照)。STBはこのBEの後方から、右下にRift状に明部が見えていて、STBを分断しています。

ただし、このSTBの分断された箇所の明部は、本来のDEの位置すると予想され、何らかのDEの痕跡が残っている可能性も考えられます。この場合は、BCとDEの合体説ではなく、DE単独の消失説になるかもしれません。今後の解析が待たれます。

一方、FAはさらに後方に位置しており、これらの画像では見ることができませんが、Pic du Midiの画像では明確なOvalとして捉えられています。


●Pic du Midi天文台の画像からの展開図
これらの永続白斑を精力的に撮像してWebで公開しているPic du Midi天文台の画像から、展開図を自作のソフトウェアで作成しました。

ここで使用した画像は以下のURLで見ることができます。

1998/01/07http://megasn.obspm.fr/galileo/07jan98/ju07198a.gif
1998/01/17http://megasn.obspm.fr/galileo/17jan98/ju17198a.gif
1998/05/07http://megasn.obspm.fr/galileo/06may98/ju06598a.gif
1998/06/03http://megasn.obspm.fr/galileo/02jun98/ju02698a.gif

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1月7日の画像では、3個の永続白斑BC,DE,FAが並んでいる様子が分ります。メタンバンドでもきれいに3個の白斑として捉えられています。しかしながら、左から2個のBCとDEの距離が非常に接近しています。BC-DE間は10度、BC-FA間は30度の間隔です。

さらにこの接近した様子は、1月17日にも捉えられており、2個の白斑BCとDEはお互いにくっついているようにも見えます。木星は、この後2月23日に合を迎え観測できませんでした。

さて、5月7日の画像では、FAは明らかな白斑として捉えられていますが、BCとDEはI-Bandではよく分りません。メタンバンドでは2個の白斑が捉えられ、BCとDEがマージして1個の白斑BEになったことを示唆しています。このメタンバンドでのBEの位置には、I-Bandでは明るさのない白斑と、その後方にSTBにたなびくRift状の明部が見られるだけです。そのRiftの後端部のSTBは少し淡化しています。このメタンバンド画像から、BC-FA間は38度の間隔であり、1月7日の30度から広がっていることが分ります。

6月3日の画像では、観測条件は少し悪いようですが、メタンバンドではこのBEは捉えられています。しかしながら、I-BandではSTB南側からのRift状の明部だけが見えています。Riftの後端部のSTBは明らかに分断され、そこにわずかの明部があります。


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