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色分散補正用プリズム 2001/07/15 池村俊彦



枠の外径 38mm

プリズムの有用性について   

カラー分解撮影のための単色撮影の場合に、プリズムが必要か不要かですが、これは、地平高度とも関係してくると
思います。また、カラー単色のフィルターの性能にもよると思います。高度45゜以上であれば、赤外カットが十分
してあるという条件で、プリズムはなくても良いかもしれません。しかし、これでも、厳密には単色の感光領域内で
色ずれが起っているはずで、最良のシーイング、最良の光学系の理想的条件下では、この色ずれが画質低下の1原因
となるかもしれません。また、単色と一言で言っても、フィルターの性能が同じではないので、ずれが大きい場合、
小さい場合などあると思います。
論より実行というわけで、いろいろな高度でプリズムなしで、恒星を最高倍率で単色光撮影してみてください。
ただし、恒星のエアリーディスクを写す程の拡大率でテストする必要があります。丸に写れば色ずれの影響は無しと
判断できます。カラーで撮影した場合はそのまま180゜回転させて元の画像と比較して、縁の色の出方が全く見え
ないならOKです。ついでに赤外カットなしの場合もやってみてください。私はピコナのカラーCCDで赤外カット無
しでシリウスを撮影し、愕然(がくぜん)としました。各色別にみると、全てひじきのように短い線になり、赤外の部
分は共通に感光し、i のような姿だったのです。こんな状態で、きれいに写るわけが無いと思いました。
赤外カットフィルター(DR655)をつけても赤外にわずかに感光しており、各色ともひじきのように、(目がつ
いているので白魚のように)写っていました。ピコナのカラーCCDの色分解は特に甘いのかもしれません。
これをプリズムの選択と調整により、まるで天頂の星を撮影しているようにシリウスの色ずれを完全に消すことがで
きるので、プリズムの効果は絶大だと思うようになりました。また、粗悪研磨面のプリズムでも、像の悪化は感じた
事はありませんが、最高解像度を要求して撮影しているので、挿入するプリズムの面精度も良いものが必要だと思い
ます。
プリズムの強さの種類は 1/2 1 2 3 4 5 6 7 8 の9種類で、この数字は偏角と思っていたのですが、測っ
てみると頂角と一致しました。両眼視角の斜視の検査に使うようで、本来、色ずれは無い方がよいものです。厚い
6 7 8 は青ガラスの場合があります。

撮影時に使う場合は、本当はコーティングしてあるものの方が良いと思います。現在、検眼用に眼鏡業界で作られて
いるものは、両球面メニクスのものでコーティングがしてあり、1個3500円と2倍以上の価格です。(ニコン)青森の
根市さんがこれを使用されているようですが、調子が良いそうです。近くの眼鏡店で注文できます。(安いルートは
探してください。)
両平面無コーティングのものは、1個約1500円ほどです。私はこれを使っています。

眼視の場合は目に当ててフリーハンドで方向を調整すればよいのですが、撮影の場合には拡大レンズとCCD面の間
にブリズムを取り付ける必要があり、
●拡大レンズに近いほどプリズム効果が強く出て、面精度が悪いと像が悪化します。ゴミはほとんど写らない。
●CCD面に近いほど、プリズムの効果は弱く、プリズム表面のゴミが写り込みやすくなる。
・ピントあわせ時に見ながら簡単に強さの違うプリズムに交換でき、最良の 角度に回転させて固定できるようにする
  ことが必要です。
また、できれば、
・拡大レンズとCCD間の位置も可動式にしたい。
・大きな角度のプリズム(3゜以上)の場合は光路がプリズムの位置で大きく曲がるので、プリズムの位置で筒を曲
  げたい。

もちろん、天頂付近で色ずれの心配がない場合はプリズムは使いませんが、私は、高度70゜付近まではプリズムで
色ずれ補正を行って撮影しています。ピント合わせ時に色ずれを感じたら、プリズムを使用するという状況です。

デジカメコリメートの場合は、アイピースとデジカメレンズの間に置きます。デジカメなしで眼視で覗き、目でみて
適当な強さのプリズムを選択し、角度を回転させて、色が消える場所で固定する方法をできるだけアイピースとデジ
カメレンズの間に密着させて取り付け、固定できるようにします。また、プリズム表面のゴミが写り込みやすいのと、
プリズムに傷が着きやすいので、十分に清掃し、プリズムや撮影レンズの真ん中に傷を付けないよう注意する必要が
あります。

木曽シュミットで、4枚構成の対物プリズムを使っていることは既知のとおり。アクロマートレンズは色消しですが、
このプリズムでは、偏角0゜で色だけが出る、「色出し」プリズムになっています。同じもの2セットを取り付け、
角度が可変になっていて、同じ方向にすると、色出し2倍、  180゜にすると色が無しになり、角度を調整して大気
差と一致させて補正して撮影している、と直感しました。いつでも偏角0゜でうらやましいです。4枚構成色出しプリズムで
は、8面の高精度平面で、全面コーティングが必要で、回転角調整装置もつければ大変高価と思われます。

 私は強度な近視で、2倍バーローレンズ(焦点距離-100mm)と同じくらいの強さの凹レンズのメガネをかけています。
もちろん単レンズで、色消しではありません。1994年のSL9 木星衝突の画像を見ていて、HSTの画像では鮮明なのに、
われわれが撮影した画像では衝突痕まわりの半影部分が判別できないほどでした。じっと見ていて、大気による色分散
のにじみのため鮮明さが落ちていると思いました。横目で私のメガネの視野の端を見ると色分散が出ていることに気づき
私のメガネの視野の端でわれわれが撮影したSL9 木星衝突の画像を色分散を打ち消すように見たところ、
衝突痕まわりの半影部分が少し鮮明に見えることに気がつきました。
つまり、単凹レンズの中心を外すことで任意の強さ、任意の方向で色分散を打ち消すことができると思いつきました。
 この補正をするのに当初は望遠鏡用アクロマートレンズの2枚目の凹レンズを手で持って偏心させて眼視しましたが、
この状態で固定する方法が思いつかず、これでは写真撮影は出来ないので、ずいぶん考えた末、
メガネ店の検眼用プリズムが使えるんじゃないかと思い付き、眼視で接眼部に当てて見たりして効果を確かめましたが
どのくらいの度の強さが適当なのか、全くわかりませんでした。誰もこんなことに気づいてないんじゃないかと思いました。
しかし、スバル望遠鏡では凹レンズを制御し可動偏心させて大気による色ずれを補正するということを聞きました。
私は半信半疑で度の弱い2〜3枚プリズムを購入し、初めて大気差の色ずれをプリズムで補正して撮影したのが、
1995年の土星の輪の消失時でした。 フィルムでの撮影でした。CCDでは1998年1月からプリズムを使用しています。
度の強い近視のおかげで、度の強い凹レンズのメガネをかけ、メガネ店に出入りする機会があったことが
気づけたきっかけでした。 このことを、メガネをかけていない人やメガネレンズにが弱い人に、
強い近視凹レンズのメガネの視野の端を見ると色分散が出るということを話しても、全く理解されませんでした。


                                              池村 俊彦
2009/07/10 追加補足
 2枚のプリズムだけで行う場合、2枚のウェッジプリズムの間隔はできるだけ狭くするべきです。
CCDから遠いほうが強く働くので、同じ角度の2枚を180゜回転させて配置しても、完全に偏角0゜にならない
です。できるだけ2枚を接近、密着させて配置したほうがよいと思います。
ノーコーティングのプリズム2枚重ねでは20%近く減光し、見た目にも大変暗くなります。
コーティングはぜひ必要となります。
ただし、大気による色ずれは、カラー撮影では問題となりますが、紫外線、赤外線等の狭い波長域の場合は
カラーのときほど悪化はしないので、単色光白黒撮影の場合はウェッジプリズムは使いません。
したがって、ウェッジプリズムのコーティングは紫外線、赤外線を透過しにくい、マルチコートでも
それほど支障はないと思います。

赤外線は私たちが撮影できる範囲は700nm〜1000nmですが、撮影時の色分散はこの付近は詰まっているので
ウェッジプリズムなしでもたぶん大丈夫です。

紫外線は 300nm〜400nm付近で色分散がずいぶん広がっています。撮影してみて地平⇔天頂方向のボケが
気になるようでしたら一度プリズムで補正して撮影してみるとよい。ただしマルチコーティングは紫外線は10%近く減光するので
ノーコーティングのウェッジプリズムを使用することが必要です。


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