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木星CMT観測データファイルフォーマット

堀川 邦昭

木星CMT観測データファイルフォーマット

File Format for Central Meridian Transit (CMT) Observations of Jupiter
                                                V1.0    1993/02/28

                                                月惑星研究会
1)ファイルの文字コード

データはできるだけ単純な形で、多くの計算機環境で読めるようにするために
文字データファイル(ASCIIコード)で記述する。また海外とのデータの交換
も考慮して日本語コード(半角カタカナ、全角漢字)は使わないようにする。
これならば特殊な入力ソフトに頼らずともエディタさえあればデータファイル
を作成することができる。またデータを直接見ることができるので入力された
データを確認することも容易になるだろう。

アルファベットの大文字小文字は特に規定しない(case insesitive)。どちらで
も同じものであると解釈する。

2)データのフォーマット

データファイルは1観測者について観測者ヘッダ部とデータ本体の2つの部分から
なる。

2.1 観測者ヘッダ部

データの先頭には必ず観測者ヘッダを付ける。観測者ヘッダは、

        1 観測者(OBSERVER)
        2 住所(ADDRESS)
        3 観測機材(INSTRUMENT)
        4 所属(AFFILIATION)

の4つのフィールドから成る。OBSERVER,ADDRESS,INSTRUMENT,AFFILIATIONをキー
ワードとして、これらの単語から始まる行を観測者レコードと解釈する。各キー
ワードの後に等号記号"="で区切って相当する観測者、住所、観測機材を入れる。
キーワードと"="の間にブランクがあってもかまわないものとする。ここには最
低でもOBSERVERレコードだけは付けるようにする。他のフィールドは強制はしな
いが、できるだけあった方が望ましい。ただし、過去の古いデータで観測者が不
明の場合は、UNKNOWNまたは、所属だけでもわかる場合は、所属を書いておく。
これらのフィールドは可変長で改行まで情報を記述することができる。

複数観測者のデータが1ファイルにまとめられている場合は、OBSERVERフィール
ドを観測者の区切りレコードをして解釈する。したがってNAMEフィールドは必ず
観測者フィールドの先頭に入れる。

例)

OBSERVER=Hitoshi Hasegawa
ADDRESS=2-3-1-408 Kitakarasuyama Setagaya Tokyo 157
INSTRUMENT=30cm Refl. x300    
AFFILIATION=GETSUWAKU
        .... データ部 ....
OBSERVER = Next Observer
        .... データ部 ....


2.2 データ本体

基本的に1データ1行とする。1行の中に時刻や経度などの情報が複数の固定
長のフィールドとして入る。改行コードがあるまでを1行とする。

ただし、先頭が"#"で始まる行はコメント行とし、データとして解釈せずに無
視する。

空行は無視することとする。10行程度ぐらいに1行空行をいれた方がデータが見
やすくなるだろう。

         1         2         3         4         5         6         7
123456789012345678901234567890123456789012345678901234567890123456789012
.........+.........+.........+.........+.........+.........+.........+..

YYYY/MM/DD HH:MM LLLLL B OOOO P S LLL.L CCCCCCCC NNNNN.....

各フィールドの説明(左から順に)

  YYYY/MM/DD  観測日(UT)      10カラム
                                YYYY: 西暦
                                MM:   月
                                DD:   日

    -- 1カラムスペース --

    HH:MM    観測時刻(UT)    5カラム
                                HH: 時
                                MM: 分

    -- 1カラムスペース --

    LLLLL       模様の場所      5カラム
                  北極域        NPR
                  ....
                  北北北温帯    NNNTZ
                 北北北温帯縞  NNNTB
                  北北温帯      NNTZ
                 北北温帯縞    NNTB
                  北温帯        NTZ
                  北温帯縞      NTB
                 北熱帯        NTRZ
                  北赤道縞      NEB(NEBN,NEBS,NEBZ)
                 赤道帯北      EZN
                  赤道帯南      EZS
                  南赤道縞      SEB(SEBN,SEBS,SEBZ)
                  南熱帯        STRZ
                  南温帯縞      STB
                  南温帯        STZ
                  (南温帯?      STZB)
                  南南温帯縞    SSTB
                  南南温帯      SSTZ
                  南南南温帯縞  SSSTB
                  南南南温帯    SSSTZ
                  ....
                  南極域        SPR

        最近の模様の位置の例
                大赤斑(RS)              STRZ
                永続白斑(LEBS)          STB(以前はSTZが正しかった)
                フェストーン(FEST)      EZN

    -- 1カラムスペース --

    B           模様の明るさ    1カラム
                                W: 明るい模様(white markings)
                                D: 暗い模様(dark markings)

    -- 1カラムスペース --

    OOOO        模様の種類      4カラム(左詰めで)
                  White Markings
                    SPOT        丸い白斑
                    OVAL        楕円形の白斑
                    BAY         ベルトの縁にできた凹み、湾
                  NICK        ベルトの縁の鋭い凹み。NEBnによく見られる。
                    STRK        ストリーク(streak)
                    AREA        明るい領域
                    GAP         ベルトの切れ目または薄くなったところ

                    RSB         大赤斑湾(Great Red Spot Bay)
                    RSH         大赤斑孔(Great Red Spot Hollow)

                  Dark Markings
                    SPOT        丸い暗斑
                    SECT        ベルトやゾーンの暗い部分(section)
                    VEIL        幅広く一様に暗い領域(vail)
                    BAR         経度方向に伸びた暗斑(bar)
                    FEST        フェストーン(festoon)
                    COL         暗柱(column)
                    PROJ        突起のようなもの(projection)
                    STRK        ストリーク(streak)

                    RS          大赤斑(Great Red Spot)

        模様の名称は基本的にはIJVTOP(International Jupiter Voyager
        Telescope Observing Program)に従った。

        永続白斑(Long Enduring Bright Spot)は一般名のOVALとして、コメ
        ント欄に名称を書くようにする。

                例      LEBS(FA)

    -- 1カラムスペース --

    P           模様の位置      1カラム
                                P : 前端(Preceding End)
                                C : 中央(Center)
                                F : 後端(Following End)

    -- 1カラムスペース --

    S           体系(システム)1カラム
                                1 : System I
                                2 : System II
                                3 : System III

    -- 1カラムスペース --

    LLL.L       経度            5カラム(右詰めで書く)

                経度計算は体系さえ指定されていれば解析プログラムの方で
                時刻データから計算が可能であるが、これもイージーミスを事前
                に検出するために必要。

    -- 1カラムスペース --

    CCCCCCCC    コメント        8カラム(左詰めで書く)

                後で分類しやすいように永続白斑の区別ができる場合はあらかじめ
                分類しておく。その他固有名詞的なオブジェクトの識別に使う
                が、強制力はない。ただし永続白斑に関してはLEBSを使いたい。
                永続白斑などは、身近に情報元がないとなかなか判別できない
                ので、無理に書く必要はない。

                例: 
                        LEBS(BC)
                        LEBS(DE)

    -- 1カラムスペース --

    NNNNN...    観測者名        改行まで

                重複された報告をチェックする必要からあればよいが、
                観測者フィールドが記載されている場合については省略化。

例)

#........+.........+.........+.........+.........+.........+.........+..
# Mr. Hasegawa is crazy.
OBSERVER=Hitoshi Hasegawa
ADDRESS=2-3-1-408 Kitakarasuyama Setagaya Tokyo 157
INSTRUMENT=30cm Refl. x300    
AFFILIATION=GETSUWAKU
1992/05/10 09:54 STZ   W LEBS C 2 233.4 LEBS(BC) H.Hasegawa 
1992/05/13 10:13 STZ   W OVAL P 2 371.9    
1992/06/13 14:34 EZN   D FEST C 1  56.7    
......
#-----------------------------------------------------------------------
# Mr. Horikawa is also crazy.
OBSERVER =Kuniaki Horikawa
ADDRESS =5-8-16 Ryokuen Izumi Yokohama Kanagawa 245
INSTRUMENT =16cm Refl. x200    
AFFILIATION =GETSUWAKU
1992/05/10 09:54 STZ   W LEBS C 2 233.4 LEBS(BC) 
1992/05/13 10:13 STZ   W OVAL P 2 371.9          
1992/06/13 14:34 EZN   D FEST C 1  56.7          
......
OBSERVER=Unknown
# May be a student of the Tokyo Sci. Univ.
1992/05/13 10:13 STZ   W OVAL P 2 371.9          
1992/06/13 14:34 EZN   D FEST C 1  56.7      
......

ファイル名は観測した年号が分かるような名前がよいだろう。例えば、

        1991-92.cmt

のような名前がわかりやすくてよいだろう。

3)問題点及び今後の課題

3.1 観測者コードについて

このフォーマット案では観測者コードを定義しなかった。観測者コードを全観測
者に割り当てることによって、後で解析する時に同一観測者のデータとかを抜き
出すのに便利であるし、1レコードの文字数を減らすことができる。また、同姓
同名の観測者の区別も可能になる。ただ、特に大学のサークルのような場合に観
測者数が多くなって観測者コードを発行するのが面倒なのと、観測者コードの発
行を受けないとデータ入力できないという不便が生じる。また、データファイル
を見ただけではコード番号ファイルとつき合わせないと誰の観測であるかを知る
ことができないのも不便である。以上の理由で今回のフォーマットでは観測者コー
ドを設けなかった。

3.2 データの収集

データはフロッピーディスクまたは計算機ネットワークを通じて集計センターに
集められる。集計センターは報告されたデータをマージし、データベースとして
管理しなければならない。グループ自身で観測をある程度まとめられる場合は、
一旦集計されたデータを送られる方が望ましいが、もちろん個人のデータ報告を
阻むものではない。

本データフォーマットは可読性が高いので間違いは見つけやすいが、細かいカラ
ムの位置が間違う可能性はある。これは報告前にチェックできればよいが、最後
は集計センターの仕事となる。センターの負担を減らすためにも、報告前のチェッ
クはできるだけしてほしい。この手間を省くためにもデータ入力用のツールの開
発も必要かもしれない。ツール開発のボランティアの参加が期待される。

データ収集のタイミングであるが、シーズン終了後と、シーズン途中の両方が考
えられる。シーズン途中の場合は、シーズン途中に何度かに分割されて報告され
ることになるので、データのマージが多少面倒になる可能性もある(データが抜
けていたり、重複してデータが送られて来る可能性もある)が、それはデータ提
供者の判断に任せることにする。ルーズな規則の方が参加しやすいという法則が
ある(?)。

3.3 データの配布

集められたデータは、整理されデータ提供者に還元される。データは集計センター
を通じて提供者以外にも、誰でも要求に答えられるようにする。ただし、提供で
きるデータ配布メディアには制限がある場合がある。また集計センター以外にも
再配布できる下位のセンターの運営も歓迎される。ただし、データの一貫性は重
視したいので、連絡体制だけは確立したい。

3.4 データの解析

このデータは誰でも利用でき、研究の資料として用いることができる。

3.5 写真観測データについて

今回のフォーマットでは写真から測定したデータについて考慮されていない。写
真の場合は同一時刻で多くの模様の位置を測定することができる。また、経度の
他に緯度の情報も得ることができる。写真であることを示すフィールドと共に緯
度情報も持たせるようにしたい。

本案は以下のメンバーの意見をまとめたものです。

        長谷川 均、堀川 邦昭、佐藤 幹弥(月惑星研究会)
        河北 秀世 (京都大学天文同好会)


1998年に画像を測定したデータも取り扱えるように、福岡大の竹内さんの改訂案

========================================================================
「木星CMT観測データファイルフォーマット」の画像測定データへの拡張(案)(拡張案)
         1         2         3         4         5         6         7
123456789012345678901234567890123456789012345678901234567890123456789012
.........+.........+.........+.........+.........+.........+.........+..

YYYY/MM/DD HH:MM LLLLL B OOOO P S LLL.L T E LLL.L CCCCCCCC NNNNN.....
                 ^^|^^ | ^|^^ | | ^^|^^ | | ^^|^^ ^^^^|^^^ ^^|^^
             belt/zone |  |   | | Long- | |   |       |  Observer
                       | Obj- | | itude | | Latitude  Comment
              white/dark  ect | System  | Latitude System
                              |         |
                     Position(P/C/F)   Data Type

説明
------------------------------------------------------------------------
    T		データタイプ	1カラム
				I : 画像
				C : CMTデータ

    -- 1カラムスペース --

    E		緯度システム	1カラム
				G : 木理緯度
				C : 木心緯度

		緯度が木理緯度か木心緯度かを示す。
		CMTデータでは空欄にする。

    -- 1カラムスペース --

    LLL.L	緯度		5カラム (右詰めで書く)

		南半球のデータでは、頭に "-" を付ける。
		北半球の場合は、"+"を付けてもいいし、何も付けなくてもいい。
		CMTデータの場合、この欄は空欄とする。

    -- 1カラムスペース --
-----------------------------------------------------------------------
を追加する。(10カラム追加)

最低限の変更で済むように、できるだけ後ろに追加するようにした。
すでに入力してあるCMTデータとの互換性だが、
変換のスクリプトを書けば、一発で変換できるだろう。

========================================================================
詳細についてのご質問は、E-Mail でOAA木星土星課 堀川邦昭さんへお願いします。
@@[kuniaki.horikawa@nifty.com]@@

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