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2011年9月18日、惑星撮影のための情報交換会より

三品利郎 2011/09/18

2011年9月18日関東方面の有志で、惑星撮影の情報交換会を開きました。
 非常に内容が多いため、全ての記録をとることはできませんでした。断片的ですが、何とか残した記録をご紹介します。

 新しいカメラの使い方やレジスタックスの使い方は、WEBやメールでの情報交換だけでは、難しく、やはり、集まって
  あれこれ話さないといけないということを痛感しました。


2011年9月18日に、川崎市平和館で、有志が集まり、新しい工業用カメラやレジスタックスについての情報交換を行いました。
以下は、簡単なまとめです。
 
《工業用カメラについて》
1  CCDとCMOSについて
(手短に書きましたが内容がかなり専門的です。補足説明のための参考資料も紹介しました。)

・従来からあるCCDに加えて、最近はCMOSを撮像素子に使ったカメラも増えている。
  しかしながら、CMOSの撮像素子は、CCDに比べると感度が低く、ノイズも目立つ。 
  将来はCMOSの撮像素子が主流になると思われるが、現時点では、まだ、CCDの方が一日の長がある。
・CMOS素子の電子シャッターの方式は、
  一列づつ画素を読みだすローリング・シャッターと
  すべての画素を一斉に読み出すグローバルシャッターがある。
(参考資料)
  http://www.sony.jp/products/Professional/c_c/hdv/support/info/technical_01.html

  グローバルシャッターは、CCDと同じ方式である。
  ローリングシャッター方式の場合には、画素の読み出しのディレイにより、被写体が激しく動くと歪むことがある。
 (ネットでは、この現象が、コンニャク現象と呼ばれている。)
・CMOSを使っているWEBカメラで実験すると、故意に望遠鏡を揺さぶると、確かにコンニャク現象が起きる。だが、月や惑星を
  通常の普通に撮影する限りでは、コンニャク現象の影響はないので、心配しなくても良さそう。
  http://youtu.be/DLHRzfwulDg
 気になるならば、グローバルシャッター方式のカメラを選ぶと良い。

2  高感度な撮像素子、ICX618について

 DFK/DMKシリーズで使われていた、ICX098に比べて、赤外域の感度が高い、ICX618を使ったカメラがある。
 メタンバンドでの感度は、ICX618はICX098の2倍弱と推測できる。
 (正確な比率はわからない)

3  ICX618を使ったカメラについて
(カメラの紹介ページは日本語で読めるものを紹介しました。)

 ・Flea3とDMK21AU618/DFKAU618がある。
  Flea3 http://www.viewplus.co.jp/product/01/images/04/flea3.pdf
    DFK21AUBU618 http://www.argocorp.com/cam/usb2/tis/DFK21AUBU618.html
    DMK21AUBU618 http://www.argocorp.com/cam/usb2/tis/DMK21AUBU618.html
  ・Flea3の特徴は、IEEE1394b接続を使い、一画素12bitでの撮影が可能であること。 
    反面、ドライバーの制約で、0.654秒までしか長時間露光ができない。
  (メタンバンドの撮影の時は合成焦点距離を短くすることになるので、少し使いにくい。)
   発熱対策として、ペルチェ素子での冷却が有効である。ノイズも減る。
  ・Flea3のキャプチャソフトは、firecaputureを使う。
     http://firecapture.wonderplanets.de/ (英語のWEBです。)
 ・Flea3のドライバとDMK/DFKのドライバが干渉して同時には使えないことがある。
   (その場合、一旦、DMK/DFKのドライバをアンインストールし、Flea3のドライバが入っている状態で、DMK/DFKのドライバを
    再度インストールしてみて、両方共正常に使える様になるか試してみる。)

 ・IEEE1394b接続をするために、ノートPCならば、IEEE1394bカードと電源が必要である。
  IEEE1394bのケーブルが太くて扱い難いので、配線に注意が必要である。
  カメラを交換する時には、IEEE1394bカードを必ずノートPCから外すこと。
    カードを差し込んだままカメラを交換するとカードが壊れる恐れがある。

 ・DMKAU618は、USB2.0接続を使っており、普通にパソコンについているUSBポートに接続できる。扱いは楽である。
    ただし、1画素8bitになる。
  長時間露光は30秒まで可能である。ICcaputureでフレームレートは15fpsを指定すると、0.5秒露光なら1秒に2フレーム、
    1秒露光ならば1秒に1フレームを書き込む。
  メタンバンドでの撮影は、冷却してノイズを減らすと良い。

  ICX618のデザインシートのP5に出ているデータでは、保存温度?30〜+80 °C  動作温度?10〜+60 °Cなので、冬は冷やしすぎないように
    注意が必要である。
   http://blogs.yahoo.co.jp/s_yonex/61004147.html
  (http://blogs.yahoo.co.jp/s_yonex/61008053.html)

 ・カラータイプのDFKAU618は、やはり、色の調整が難しい。ICcaputureのワンプッシュで上手く行かないこともある。
  赤のレベルを下げて(青の1/5位まで下げて)調整する。

3  Y800フォーマットからのデベイヤについて
 ・ICCaputureで、ファイル形式をY800、CODECをY800にすると、ベイヤー配列の状態で記録される。そのままの状態で表示すると
    黒白の画像になる。これを、RegistaxのDebayerでカラーに変換してアライメントを行う。
    ICCaputureでトリミングしたときは、トリミング後のRGBの配列によって、DebayerのmethodをGBにしたりBGにしたりその都度、設定を変える。
  ファイルのサイズは、RGB24-YUVYを指定したときの1/3 になる。
    ・Flea3のキャプチャソフト、firecaputerは、カラーの時もY800で記録し、付属ツールでDebayerするか、レジスタックスでDebayerする。
     (http://blogs.yahoo.co.jp/s_yonex/61019816.html)

4  今後の可能性

   ローム社が、新型の高感度なCIGSイメージセンサーを開発した。
   そのうちに、この素子を使ったカメラが製品化されのではないだろうか。
  (http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0804/18/news023.html)


《RegistaxV6.0について》

1 マルチアライメント・ポイントを使うためには、Core Duo以上のCPUパワーが必要なようだ。 
  新しいパソコンを買うなら、Core i5或いは Core i7を搭載したパソコンが良い。
2 アライメントをV5で行い、Wavlete処理をV6で行うという使い方もある。
3 Align by Centre of gravityの機能が、V6ではマルチアライメント・ポイントと併用になっている。従って、最低一つは
  アライメント・ポイントを指定して、併用する。
4 Blurフィルタ(ボカシフィルタ)は、ノイズが多い時に有効だが、アライメントの精度向上にも効果があるようだ。
 (ノイズを目立たなくしてからアライメントを行うことになるので、ノイズの影響によるアライメントの狂いが無くなるらしい。)
  月の画像で試すと、クレータが多い場所では、Blurの半径4でも、16でも、殆ど変らない。ところが、海のような滑らかな場所
  を写した画像では、Blurの半径4にすると、細部が明瞭になった。


《PixInsightについて》
  スペインで作られた、この天体用画像処理ソフトには、様々はツールがあり、とりわけノイズリダクションのツールが豊富である。
  惑星に使えるものもある。
  http://pixinsight.com/index.html (英語のWEBです。)
  http://pixinsight.com/tutorials/obsolete/Planetary/en.html (英語のWEBです。)
  ネット販売されている。

《大口径ドブソニアンについて》
   GOTOタイプの大口径ドブソニアンがある。口径40cmでも手が届く価格である。最近の大口径の反射鏡には、裏面が平面ではなく、
  すり鉢状になっている。
(例えば、Sky-Watcher40cm http://www.syumitto.jp/SHOP/814057/list.html)
  すり鉢状の鏡は、支持方法など戸惑うことも多い。軽量にできるという長所がある反面、光軸が狂いやすい。その欠点を熟知した上で、
  大口径の長所を生かした使い方ができそうである。


《その他》

・シーイングが良い時は、カラーカメラとモノクロカメラで、解像度の違いが見られない。カラー撮影で十分な解像度を得られている。
・画像の仕上げ処理で、一旦、200%拡大して画像復元処理をかけたものを50%縮小して、もとどおりの大きさに戻すと、見栄え(解像感)が良くなる。 
・最近は、強めの処理を惑星の画像が流行しているが、写真として見た時に、不自然ではないのだろうか。 
・常に、同じような仕上がりの画像にするというのは、大変に難しい技術である。そのように仕上げられた画像は、TV番組や図書出版などに
  使いやすいので、大いに価値がある。解像度を追い求めるのも一つのロマンではあるが、常に同じような仕上がりにするというのも有用な
  チャレンジである。


  以上(三品 記) 


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