ALPO-Japan

2000/04/23 月惑星研究会関西支部 例会模様

ALPO-Japan Meeting 2000/04/23





月惑星研究会関西支部通信25(安達) 2000年4月23日

  
会参加者:小嶋/安達/池村/奥田/伊賀/永長/林/河原/西谷
今回の例会には新しく入会していただいた,兵庫県の永長さんが参加されま
した。参加人数が少ないのではないかと危ぶまれましたが,最終的に9名の参加
と成りました。いつも自己紹介を行いますが,毎回になるので今回は,近況報
告を中心にしてはじめました。

○○○○近況
小嶋: 
  東京での木星会議以来THE GIANT PLANET JUPITERの訳を見ながら勉強して
 いる。夏までにはデジタルビデオで撮ってみたいと思っている。今回の木星
 や,来年の火星はこのデジタルビデオを使って撮影に取り組みたい。もちろ
 ん,銀塩も続ける。
安達:
  今回の木星観測のまとめを作成している。現在は観測活動ができ無いので
 この間に来シーズンに向けて望遠鏡の調整を行いたい。木星の最終観測は3
 月27日でスケッチは149枚になった。
池村:
  最終観測は土星が3月13日,火星は3月30日,木星は4月8日となっ
 た。現在は木星会議の集録の編集にかかっている。また,火星のシミュレー
 ション画像の更新もしなければならない。木星会議の時以来,4人の方に処
 理のソフトを渡した。望遠鏡は水野さん自作の強力な架台にかえるために,
 現在自力で土木工事をしている。
奥田:
  木星の最終観測は3月18日になった。現在,今までに撮りためた惑星画
 像の整理をしている。冷却CCDの画像のカラーがうまく出るようにフィルター
 を考慮中。
伊賀:
  現在,天文ガイドの3回目の担当になった。今回の原稿では,3系で作っ
 た永続白斑のまとめを掲載することにした。このまとめには支部のメンバー
 の観測を使った。今回は書くものがあったが,これから3ヵ月の間は惑星が
 全く無い状態になり,書くものが無くなるので,困っている。みんな強力を
 頂き,乗り切りたい。
  私の課題は,たまった画像を公開することで,これを急がねばならない。
 また,仕事ではDEの位置がかわってもできる,展開図のソフトを作っている。
永長:
  石川県生まれ。1963年から天文に興味をもって,獅子座流星群の観測や,
 池谷・関彗星の観測をして以来ずっと彗星の観測を行ってきた。石川県は11
 月から3月までは天候がだめなので,就職を機に兵庫県に来た。石川県とは
 全く違って良く晴れて,良く観測ができる様に成った。自宅は観測条件と居
 住環境の良いところを探し,現在の住所となった。
  年とともに,彗星の写真観測に疲れ,行き詰まりを感じる様に成った。手
 にいれたデジカメでも木星や火星を撮影してみたら,案外よく撮れた。これ
 なら,惑星の観測に使えるかもしれないと思い,惑星を撮り続けるようにな
 った。ピコナを知るようになったが,ピコナには太刀打ちできないので,が
 んばって撮影を続けたが,なかなかコンスタントには撮れていない。処理に
 も時間がかかり,能率が上がらなかった。そこで,常時の観測につながるよ
 うなものにしたくて,ピコナにしようと思い,支部に入った。来シーズンま
 でには環境を整えたい。
  家に1973年から75年にかけての木星のスケッチがあった。また,SL9の写真
 があったので,もってきた。(回覧していただきましたが,みんな懐かしく
 拝見しました。また,伊賀さんから当時の展開図の画像を出していただき,
 少しの時間思いで話と成りました)土星の最終観測は3月12日,木星の最終
 観測は4月8日だったそうです。自宅にはドームがあって,木辺鏡の25cm
 があるそうです。(うらやましおすなあ。)

○○○○BEとFAのその後のまとめ
 今回のBEとFAの合体劇についてのまとめを,現在わかっている情報を元に整
理していきました。

 池村さんの画像とPic du Midi天文台の画像を中心に確認していった。確認
作業は可視光,Iバンド,メタンの各波長を見比べながら行った。
  
○BEの動きについて
  BEは大赤斑の南側を通過するまでは,3系では前進しているが,大赤斑
 通過後からは動きが3系に対してはほとんど止まってしまった。(3系と同
 じ動きになった)
  2つの白斑の経度差は4月3日までは追跡できている。
      2月ごろ 11°〜12°
      3月はじめ 10°
      3月 9日 9.0°
   3月15日 8.5°まで接近してきた。(池村;伊賀測定)
   3月20日 7.0°(池村;伊賀測定)・・・・・・最終測定となる

○合体の様子
  2つの永続白斑は3月中旬になって変化を見せはじめている。ただ,木星
 が太陽の近くになり,観測条件が非常に悪くなり,鮮明な画像が得られず,
 正確な変化を捉えることはできていない。

  3月中旬  BEがFAの北側に入り込むような姿に捉えられている。
                          (Picの画像による)
        Iバンドとメタンバンドでは2つの白斑に位置のずれがみら
        れている。高い高度では2つの白斑は接近して見える。
  3月20日 A.Cidadaoさんの可視光でBEがFAの北側に見える。
  3月21日 Picの画像(Iバンド)では細長い明部に成る。
  3月23日 ハワイのInfrared Telescope Fecility(IRTF)で合体白斑を
        認める。890nmのメタンバンドで撮影
  このあと,あちらこちらで,合体白斑の確認が行われた。最終的には4月
 3日にIRTFで撮影されたものが最後になったもようだ。
  従って,3月23日に合体したといって差し支えないだろう。

○合体白斑
  以前BCとDEが合体したときには,大きさが20%大きくなった。今回の合体
 について調べてみると,BAとその周りのPatchを合わせると,約20%の増
 加になり,同じ傾向が確認されている。従って,2つのうち1つが消滅した
 ということではなく,合体したということを裏付けているものと考えている。
 BEとFAが低気圧性の渦なのか高気圧性の渦なのかが確認され,二つは高
 気圧性の渦であることが確認されました。地球上では低気圧が合体するこ
とが知られているので,これのメカニズムを調べれば参考に成るかも知れな
いとの意見もあったが,低気圧と高気圧とでは一緒にして考えるのには無理
があるとの事になりました。

○○○○基礎講座
 SEB撹乱についての基礎講座をもちました。今回は来シーズンに期待される
SEBの淡化と,その後に起こるであろう(起こってほしい(^^))SEBの撹乱につ
いての講座となりました。資料は事務局のほうで用意し,安達が解説しました。
 SEBの淡化は大赤斑後方撹乱の延長として起こる場合もあるが,これは完全
な淡化につながらず,1900年から1903年にかけて起こった全周を取り巻く淡化
は,大赤斑後方撹乱と同じドリフトをもって居り,撹乱の発生とは基本的に違
ったもので,例外的な現象だったが,同じ様な現象が起こらないとは言えない。
淡化が進んだら,SEB内部に見える暗斑や白斑がSEBの動きと一致するかの確認
が必要になる。
 SEBの撹乱は1900年代には左の様に起こっている。また,mid SEB outbreakが
SEBの暗いときに起こる撹乱だとして年代を右側に記録すると次のように整理で
き,面白い事実が見えてきた。

  SEB撹乱   mid SEB outbreak    THE GIANT PLANET JUPITERから年
    1919              代を取り出して示したものだが,
      28              SEB撹乱は1928年1964年1975年1993
               30       年のところで間が大きく開き,さ
      38              も撹乱が無かったように見えるが
      43              mid SEB outbreakをSEBが暗いとき
      46〜47             に起こる,これも撹乱とすれば,
      49              長いブランクと成る時期に発生して 
      52              いることになる。そうすると,SEB
       55                            撹乱は発生に大きなむらがあると
      58              考えられてきたが,それほど大きな
      62              むらに成らないことがわかる。
      64               結論的にみて,mid SEB outbreak
            66        は撹乱とみたほうがよいのではない
      71              かと考えられるのである。
      75             
            79         このように考えると,1998年にお
            80        こったmid SEB outbreakの時に発生
            85        した白斑の動きと,SEB撹乱の時に
      90              発生する白斑の動きとを対比する必
      93              要が出てきたと思う。次回の例会ま
            98        でにだれか,このことを追跡してい
                      ただきたいと思う。
    
  一般的な,SEBが淡化したあとに起こる撹乱は,淡化してから1年か3年して
発生することが多く成っています。上の表を見ながら考えると,最後の撹乱を
1998年だと仮定してみると,次のようなことになります。
   発生年
   1985 インターバル5年 
   1990       5年
   1993       3年
   1998       5年
   (2000年)  すでに2年経過。淡化して1〜3年として・・・・
 今年から淡化が始まれば5年くらいの周期に相当します。また,淡化が始まる
のは,過去の経験からSEBnの淡化からスタートすることが多いとわかっています。
シーズンの終わりにはSEBnが全体的に淡化していましたし,部分的に切れて見え
ていたところもあり,合体騒ぎで我々が注意を払っていなかった間に,静に淡化
は進行していた可能性があります。
 合が過ぎて,観測できるだろう6月の下旬以降,注意を払ってください。

  今回の例会では,このことが中心の話題と成りました。興味深い事なので,是
非とも皆さんの研究をお願いします。

○○○○その他
 
○ピコナ
 安達が良くわからないので,申し訳無いのですが,永長さんがピコナを購入し
改造されて持参され,池村大先生からいろいろとアドバイスをもらってはりまし
た。例会にこられると直接使用されている方からノウハウを聞くことができて非
常によいと思います。是非とも例会に出席ください。
 オークションについての話もたくさん出ました。安くてにいれる方法について
も話が出ていましたが,詳しくは普段のメーリングリストでのやり取りのほうが
いいので,ここでは省きます。悪しからずご了承ください。m(_ _)m

○大気差補正プリズム
 永長さんがほしそうでした。永長さん!かうのだったらお知らせ下さい。1枚
1500円です。他の方でほしい方はこの機会に申し込んでください。一括して
注文します。
 ホンマは1枚1500円では無いのです。薄いもの(角度の低いもの)はもう
ちょっと安く上がります。角度の大きいものは1500円ではかえません。でも,
平均してみると1500円に成ります。従って1500円です。でも,これは眼
鏡屋さんに入る原価でして,私の知り合いだから都合をつけていただいておりま
す。平面のプリズムは注文生産だからです。

○集録の原稿
 まだの人は,早く送ってください。成るべくFDやMOにしてください。

○次回の例会
          7月16日(日)13時〜です
  事もあろうに皆既月食の日です。宴会もしたいと,今回の例会の参加者は
  言うてはります。
   安達は撮影しないわけにはいかず,困り果てています。(T_T)
 




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            月惑星研究会関西支部支部長      安達 誠