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2000/07/16 月惑星研究会関西支部 例会模様

ALPO-Japan Meeting 2000/07/16





月惑星研究会関西支部通信26(安達) 2000年7月16日

  

 木星の観測シーズンに突入しての最初の例会と成りました。今回は11名の
参加がありました。当日は7月16日の皆既月食のある日と重なり,月食関連
の行事のために欠席を余儀なくされた方も多く,大変皆様にご迷惑をおかけし
ました。事務局といたしましておわび申し上げます。
 また,今回は機械を持参された方が居られ,午前11時から4名の方が集ま
られ,早くから話しが始まりました。
 今回は木星の状況把握に大きな時間を使わないことから,新川さんや伊賀さ
んから画像のシステムや処理方法などについての演示がたくさん行われ,画像
を扱って居られる方には大いに参考になったようです。木星会議の集録が完成
して参加者に配布されました。

◎ 近況報告

安達:観測は全くできていない。腰の調子が悪くて,何もできないでいたが,
  椎間板が痛んでいるとのことで,ここしばらく痛みを辛抱しなければいけ
  ないそうです。でも,痛みをこらえてでも運動をしたほうがよいとのこと
  で,ドームを回したり,スリットを開けるのが大変だが,観測活動を再開
  することにする。
前田:亀岡で木星と土星を見ている。機器の整備を行ったのだが、まだ気流に
  恵まれていない。もう少し高度が上がってくることを期待している。
永長:木星は今シーズンに入って3回観測した。現在デジカメをオリンパスか
  らピコナへ移行しようとしている。自宅での観測は,観測態勢に入るまで
  に30秒しかからない。今後もがんばりたい。今回は河原さんに望遠鏡の
  ドライブシステムを作っていただいたのでそれを取り付ける予定だ。
奥田:7月から観測できるようになった。現在2回観測できた。
新川:木星観測は自分の観測活動のサブで,主体は火星/土星/金星である。
  HPに昨年の火星の画像をupした。RGBとブルーの画像を並べたのでHPを見て
  ほしい。(各々のメンバーのHPは支部のHPからアクセスできるように成っ
  ています;事務局)最近はリニア彗星も撮ってみた。C11の直焦点で撮った
  が7〜8等で写っていた。(画像の公開がありました)また,姫路の「星
  の子館」でヘール・ボップ彗星の写真を公開している。ついでがあったら
  みて下さい。
西谷お父さん:観測小屋作りに専念している。現在,木星は観測場所から見え
  ない方向から上ってくるので,早く観測できるように準備したい。木星は
  双眼鏡で2回。ミードで1回見た。これからがんばりたい。
西谷息子さん:あと10日で最近話題の「17歳」になる。受験などをひかえ
  ており,今のうちにせいぜい見ておきたいと思っている。
  (すばらしい「17歳」にしてね。;安達)
河原:望遠鏡を整備している。早く出せることを目標にがんばっている。望遠
  鏡が良く成ったので,昨年よりも成果があがると期待している。ただ,自
  宅は今いち,気流がよくないようだ。
池村:最近まで集録の印刷にほとんどの時間が使われた。(膨大な時間を使っ
  ていただいております;事務局)ようやく完成してほっとしている。
  ピコナのソフトをほしがる日とが現在2人でている。6月上旬に水星が良
  く撮れた。うしかい座のζ星の0.6秒しか離れていない重星を完全に分離し
  た。現在,土星を2回,木星2回観測した。これからジャンジャンやりた
  い。
中西:地人書館の2000年双眼鏡望遠鏡カタログに前田さんと写っている。
  観測小屋からはまだ見えないが,リニア彗星を撮った。
伊賀:今シーズンもっとも早い観測になったと思う。河原さんや前田さんから
  情報が入ってきたおかげで,観測活動も活発になったと思う。得られた画
  像はどんどん送ってきてほしい。今まで溜まったものも処理していくつも
  りだが,気長に待っていてほしい。天文ガイドの編集のほうは順調に進ん
  でいる。皆さんの画像も使わせていただいているが,いくらかの報酬が入
  ってきていると思う。これらも送っていただいた画像を使わせていただき
  ながら続けていこうと思っている。展開図や測定が楽にできるようなソフ
  トを作ったので,作業が楽になった。新潟の伊藤さんからは展開図がよい
  という声もあり,これからは展開図をたくさん取り上げていこうと思う。

◎ 木星の近況(伊賀)
○大赤斑周辺
 7月4日の画像にへんなものが見えると,前田さんから連絡が入り,ひょっと
するとSTrZ Dist.南温帯撹乱)かということでたくさんの観測が集まるように
なった。確認に宮崎さんの観測を送ってもらい,どうやらそうではないことが
判明した。大赤斑は現在78°くらいにいる。
 今回の現象を振り返ると,7月4日におかしなものが大赤斑の後方に見えた。
7月6日になって伊藤/永長/伊賀によって,大赤斑にくっついている斑点と
なって捉えられ,宮崎さんの観測で確認された。7月9日には永長さんが木星
像の端に捉えたが,撹乱ではないらしいことがわかった。7月1日の時点では
何もなく,6月29日と7月1日の宮崎さんの画像にも何も捉えられていない
ので,このあとになって変化が起こったようだ。7月11日と14日ではこの
斑点はまだ動いていない。今後アーチができる可能性があるだろう。
 大赤斑の後方のSEBsは淡くなっている。また,大赤斑後方撹乱領域では大赤
斑の右下に入り込んだ形に白斑が見られている。大赤斑は南のエッジが濃くな
っている。大赤斑の前方にstreakが出ているようだ。後方のdark sectionから
出た物質が供給されたためだろう。これから伸びていく可能性がある。
 (7/18早朝,長く伸びた姿が確認されました。)

○SEBの状況
 大赤斑の右下の淡化部がこれから先にどのようになるか注目される。SEBnは
ほとんど見えない。
 EZsの白斑は7月22日ごろに大赤斑の真下にくる。この白斑へ,SEBnから
白斑が流れ込んでいるように見える。そのため,SEBの中央は白帯になっている
様に見える。7月22日ごろにおこる大赤斑との会合は,今回で見つかって以
来6回目くらいになるだろう。通過するときに白斑が広がるのではないかと思
われる。白斑のところから後方に伸びるベルトは次第に南へシフトし,昨年の
SEBの中央組織の様に成っているようにも見える(安達)。大赤斑の直前にま
で来ると,SEBZからEZsに入り込んでくるだろう。

○NEB
 festoonはプラトー状に成ったものがいくつかあり,大規模なfestoonはずい
ぶん少なくなった。つけ根が濃く,その周囲のNEBは淡化している。NEBは北側
に幅が広くなったようだ。

○BA
 STBは330°〜20°までは見えている。220°付近にも少し見られる。
BAは330°にあるはずだが,ほとんど分からない。昨年見られた(#1)の
暗斑がSTBの170°付近に相当し,#2の暗斑は220°付近のものがそれ
に相当する。BAは330°付近で,宮崎さんのものでは1度だけ良く判るもの
があるが支部の人の観測では周辺部でしか捉えられておらず,良く判っていな
い。

 ちなみに,外国ではまだほとんど観測はされていないらしく,どこの情報も
流れていないようだ。

◎火星の展開図(池村)
 昨年の写真を元に,次のシーズン用にシミュレーション画像(展開図)を作
制した。おそらく,世界でもっとも肉眼で見た火星に近いものができたと思っ
ている。
 展開図は火星面に雲が無いものとして作っているので,観測のときに見比べ
る事により,雲をいちはやく捉えることができるものと考えている。今年はた
ぶん12月から観測に入れるものと考えている。

◎水星(池村)
 画像では露出がオーバーに成りやすく,模様の撮影は難しいが,写らないこ
とは無いのではないかと考える(池村)。夕方の撮影では正確に光軸を合わせ
ている時間が無く,撮影は大変困難だ。

◎土星(池村)
 SEBが濃く,コントラストがついて,はっきりしてきたように思う。どちら
かというと,SEBの南側がはっきりしてきているように思う。
 SPC付近の赤い色をしたベルトはもはや見られない。ただし,seeingは良く
なかった。

◎PICONAによる画像処理(伊賀)

池村氏開発のPICONAの画像処理ソフトウェアの実践編を紹介しました。

まず、ソフトウェアを動作させるための環境設定から始まりました。実際に
PICONAで撮像した画像を、CFカードからパソコンにコピーし、BATMを起動
します。これによって撮像された一連の生画像(RAW)を、BMP形式に変換し、
さらにカラーバランスの調整、大気差によるカラーの位置補正、さらにコンポ
ジットに使用するための画像のセンタリングまでを処理するMSDOSモードの
BATファイルが自動生成されます。池村氏の処理ソフトウェアの良い点は
、たくさんの生画像をバッチ的に処理することができる点にあり、これによっ
て PICONA画像の後処理がとても簡単になります。

得られた画像から良い画像を選び出すのは自分の眼に頼る必要があります。
Windowsのいくつかのソフトウェアを利用して、良像を選び出し、コンポジット
するBATファイルを編集します。コンポジット画像の作成から、撮影データの
作成までが自動処理されます。

この後は、私自身が送られてきた画像を公開するにあたり、画像に対し
て行う画像処理を紹介しました。Photoshopに画像を読み込み、Lab空間
に変換します。この強度画像(L)に対して、StellaImageを利用して、画像
復元(最大エントロピー法)を適用します。この画像をPhotoshopでL画像と
置き換えます。さらに、L画像に対してアンシャープマスクを適用して、
強調処理を行います。場合によっては、ab空間でのレベル補正を行い、
カラーのバランスを調整します。最後はRGB空間に戻して、レベル補正
とガンマ補正を施して、最終画像とします。


◎画像処理の実際(新川)
楽して惑星観測を

(1)
望遠鏡をベランダに設置して観測しています。夏の蚊や冬の寒さをしのぐため、
そして、望遠鏡の側に人間が居ることの悪影響(気流や微振動)を防止するた
めに、望遠鏡とデジカメを室内からコントロールできるようにシステムを改造
しました。(といっても、光軸修正やピントだしやメモリカードの交換は屋外
にでて行うのですが、近い内に、新川のホームページで作例を公開します)

http://niikawa.hoops.ne.jp/

モニターでシーイングをチェックして、シーイングが良くなった瞬間に連写で
シャッターをきります。たしかに、観測は楽になったが、やはり睡魔との戦い
が激しくなってきています。

(2)
池村さん作成の非常に便利な惑星物理計算ソフトzw.exeをWindows上で使用する
ためのソフトZwforWindowsを開発しました。同じく新川のホームページ
http://niikawa.hoops.ne.jp/
からダウンロード可能。フリーウエアです。

例会の時に、うまく動かなかったのは、ZwforWindowsをインストールしたフォ
ルダにzw.exeが入っていなかったためでした。

池村さんの好意で、zw.exeも提供していただいているので、インストーラの指
示に従ってインストールすると、zw.exeも自動的にインストールされ、大抵の
環境ではうまく作動するはずです。

本来のzw.exeとは異なり、ファイルのタイムスタンプが撮影時刻に一致してお
れば、ファイル形式を問わず、自動的に物理計算を行います。

ピコナ族以外の方でも便利に使用できると思いますのでよろしければご活用く
ださい。

(3)
その他、Windows版で、バッチ処理ができる。(つまり、寝ている間に処理の一
部が完了する)汎用bmpファイルやjpegファイル用の重心演算ソフトとホワイト
バランス設定ソフトを作りました。こちらの方は、まだα版で、機能制限がいろ
いろありますが、ご希望の方がおられたら、配布します。

◎事務連絡
○月面課
 名古屋を中心に拠点はあるが,活動をするためにメーリングリストを作り,
活動再開を期して,討議をしている。次回には何らかの方向を示したい。
○集録の残部
 会員に配布することを確認。余ったものは東京本部の月惑で堀川さんに面倒を
かけるけれども集約していただき,送料とも1000円で販売する。収益金は次
回の木星会議に充当していただく。本部ではけない場合は,次回の木星会議にも
っていき,その場で販売する。
○次回の例会

 安達の都合で 10月22日(日)になりました。

◎おまけ
 7月20日の朝,眼視でBAを無事捉えることができました。(安達)
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            月惑星研究会関西支部支部長      安達 誠