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月惑星研究会関西支部 例会を開催しました


2001年7月15(日)13時から安達宅で行われました。

(滋賀県大津市本堅田4-8-11)


◎例会内容
月惑星研究会関西支部通信  No.30   2001/07/16発行

 本年3回目の支部例会を行いました。今回は火星に28年ぶりに
全球を覆う大規模な黄雲が発生したことと、木星の初期の観測がで
きたことなど、話題の多い例会と、なりました。当初は参加人数が
少なくなると予想されましたが、10名の参加者を得て、有意義な
例会が持てました。
 今回は、初参加の方もなく、近況報告は割愛しました。

参加者 奥田・伊賀・池村・河原・西谷(父子)・畑中・風本・林
    安達 以上10名 

1)最近の支部のMLから(池村)
・ 火星改造計画反対
   最近、NHKから火星の改造計画が放送されたが、それに対して
  池村氏が自然破壊を許すことはできないとの意見が寄せられま
  した。
・ 月面の観測
   大学生の会員から、月面に興味を持つ人がいて、観測対象を
  探しているが適当なテーマがないかという質問が寄せられた。
  当会の池村・安達それに当会月面課の浅田英夫氏にそれぞれ回
  答をしていただいた。残念ながら適当なテーマはなく、アマチ
  ュアの研究対象としては、難しいことが伝えられた。
・ 火星の南極冠の出現はいつだったかという問い合わせ。
   南極冠が見たり見えなかったりと、決定的な日にちは決めら 
  れなく、良くわからなかった。
   今シーズンの例から見ると、赤外で撮ると、霧を通して写る
  ことがわかった。CCDのチップは10000nmまでは感度があり、こ
  の事から考えると、7000nm以上でとるべきではないかと考えら
  れる。また、Iバンドで撮ったらどうなるだろうか。ピック=
  ドュ=ミディでは7800nmで撮っている。
・ 平林会長の挑戦
   会長の火星観測のコメントが多く送られてきています。
・ 火星、黄雲の輝点の確認
   CCDではかなり強烈に写る火星の黄雲の起点は肉眼では、なか
  なか確認されにくい。眼視ではどうなのかという質問がでた。
  肉眼で火星を見ると大陸部は非常に明るく見えて、明るすぎる。
  たとえ、その中に光点があったとしても肉眼では明るさが飛ん
  でしまい。よくわからなくなるらしい。
  眼視での右上がりガンマ曲線では明るい部分は上に凸の右肩部分
  にあたり、検知しにくい。そのため、薄雲にかかって減光したと
  き等に木星などでは明るい領域に隠れて見えなかった白斑が見え
  たというような経験がある。(安達)
  濃い色フィルターで減光して見る事も必要である。
2)火星の状況
(1)黄雲はいつ発生してどのように広がったか
  今回の黄雲は、観測の最適地が日本ばかりに集中していた。た
 だし、優良な画像日本にはあまりなくて、シンガポールのタン・
 ウェイ・レオング氏と、マーシャル諸島の方が、良好な気流のも
 と、優秀な画像をとらえられました。ヨーロッパとアメリカは今
 回の黄雲の発生したところは見ることができず、残念な思いをし
 ておられることと思います。最近になってようやくこれらの地域
 でも見られる巡りになりました。過去の大黄雲も1956年や1973年
 は今年と同じく日本を中心として見られた大黄雲となりました。
  CMOでは6月24日に発生したように報告されているが、支部で
 は新潟の伊藤氏が観測されており、参加者と検討した結果、今年
 の大黄雲は6月23日に発生したとの結論を導きだしました。

  支部では、この時期6月23日と24日は伊藤さんのみ観測が
 寄せられました。6月24日にはヘラスの北部に輝点がみつかり、
 数も3〜4個見つかりました。これをもって黄雲の発生としている
 ところもありますが、その前日の23日にはヘラスに輝点があり、
 大きさは直径が50キロから80キロもありました。特に、ヘラスに
 その輝点が見られました。ヘスペリアにも、雲はありましたが、
 ヘラスほど明るくはないようです。

  伊賀氏は黄雲の移動していく様子を火星地図に書き込まれまし
 た。その図を見ると、黄雲が大きな変化をしていく様子がとらえ
 られています。追跡していくと黄雲は一日におよそ40キロメータ
 ー移動しているらしいことはわかってきました。

  今回の黄雲の発生は米山さんが最も速く通知を出され、そのこ 
 とからまとまった観測がたくさん行われてきました。1日でも早い
 情報の伝達が大切であることが今回の事からも痛感されました。
 また、それと同時に、いち早く英文に直して、世界にも発信しな
 ければならないことも。

(2)MGSの画像の紹介
  忍穂井さんから MLを通して紹介があった、MGSの連続写真の解析
 を参加者で行いました。パソコンのモニターでは動画のようにな
 って、6月17日から次第に、南半球は温度が上がってきている様子
 が読み取れます。そして、6月27日に赤い色をした、最も赤い部
 分すなわち、もっともdustyな部分が姿を現し、火星全面に拡張し
 ていく様子が映し出されていました。
  私たちは、ついつい現象が肉眼ではっきりとらえられた6月27日
 ごろを話題にしがちですが、6月17日から徐々に進行していること
 を、この画像から読み取れました。

(3)暗色模様と地形とのかかわり
  伊賀さんが、火星図と地形図を合成したものを用意されて、そ
 の地図を見ながら、火星の模様と照合しました。模様と地形とを 
 考えると、大黄雲の出ているときの暗色模様と、高地になってい
 る部分とが、比較的よく一致するとのことでした。また、オリン
 ピア山のように高い部分は、むしろうす黒い暗斑として観測され、
 大黄雲の上に山頂が姿を見せている姿であることが伺えます。
  今回のたくさんの画像を見ていると、山岳部のところや、高い
 山の部分は暗色模様として観測される場合が、かなり認められま
 した。
  また、7月に入ってからは、シレーンのすぐ南側をソリスに向
 かって明るい雲のストリークが進入しましたが、この部分を地形
 と重ね合わせると、山岳部の谷間を進行している様子がわかりま 
 した。たくさんの雲の動きを解析するには、地形をよく考えない
 と話にならないことがわかります。
  この様子は、普段の雲でも同じことが言え、雲は高地を避ける 
 ようにして流れている様子が見受けられます。白色雲と、砂嵐を
 同じ土俵で考えることはナンセンスですが、白色雲ですら影響を
 うけるのに、地表で起こった砂嵐が地形の影響を受けないという 
 ことは絶対にありません。

(4)発生メカニズム
  今回の大黄雲の発生した原因は何だったのだろうか。ここのと 
 ころがもっとも知りたい部分ですが、よくわかりません。いくつ
 か考えられることはあり、例会でも話し合われました。
 
○地形によって、輝点ができる?
  大きく深いクレーターや渓谷があると、その地形によって、渦
 が発生し、砂が巻き上げられ、輝点ができるかも知れない。
○地形によってブロックされる
  大きな地形があると、その部分で砂嵐が濃縮されて、地球から 
 見ると輝点に見える。
○低気圧ができる
  気温差による低気圧が発生すると、その中心付近では、砂が巻 
 き上げられ、上空まで達する輝点となる。水蒸気が上昇するとき
 に、砂も巻き上げられるかも知れない。
○竜巻
  気流の流れから、竜巻がでると、その部分が光点になる。しか
 し、大きな光点にはならないだろう。

 これらのうちどれがそれに当たるのか、それともほかにも原因が
あるのかははっきりしませんでしたが、多分大いに関連があるもの
と思われます。
 安達が認めている現象の一つに、光点は単純な砂嵐ではなく、ブ 
ルーでもわずかに白く写っている。このことは輝点に水蒸気を含ん 
でいる可能性があると指摘している。しかし、参加者の中には大気
の上まで昇った砂嵐の雲は、ブルーでも白っぽく写るはずだという
意見が出されました。現在、安達は後者の意見に傾いていますが、
まだ、完全に水蒸気を含んでいないとは断言できないでいます。み
なさんから広く意見を求めたいと思います。

 過去の記録を見ると、1956年の黄雲は発生後西進しました。また、
1971年の時は西進。1973年は発生地点から東西に広がりました。今
回は東進しており、同じ南半球で起こった大黄雲ですが、毎回違っ
た様子を見せてくれています。

(5)今後の予測
 過去の大黄雲の後には、暗色模様の変化の起こることが多く、お
そらく今回も、どこかにそのような変化が起こると考えられます。
もちろん砂嵐の大規模に起こった部分であることは容易に想像でき
ますが、再来年の大接近のときにその様子がとらえられることでし
ょう。
 輝点となった部分は強い吹き上りが起こった場所と考えられ、地
表の砂が除去されたとすれば、その場所が、黒く見えるように変化
するかもしれないと池村氏は考えておられるようです。

(6)エドムの光点
 6月7日にメリディアニのすぐ隣にある。クレーターである、エド
ムにフラッシュが観測された。IAUCに流れて、いち早くその情報は
世界中を駆け巡りました。過去に、何度も観測されたものでもあり、
アメリカのドン・パーカー氏を含む6人のチームで観測チームを作
られ、今回の現象をキャッチされました。この現象はスカイアンド
テレスコープ誌で、予報されており、それに基づいて観測をされた
もので、ビデオによっても観測されたとIAUCでは報告しています。
 望遠鏡は6インチの反射が2台と、12インチのシュミカセを使い、
肉眼とモノクロビデオによる観測が行われました。6月7日にはUTで
6:35〜6:40まで、10〜15秒間隔で光ったらしく、肉眼
でもビデオでも確認されたそうです。また、6月8日には5:40
〜8:36まで、2回のピークがあって、1回目は7:00〜
7:20まで3〜5秒光った。2回目は7:53〜8:24で、何
度か光ったそうです。このころは、ちょうど日本からは観測できな
い経度でした。
 過去には佐伯恒夫氏が同じ場所で5秒間。ドルフィスや田阪氏も
観測されています。原因としてはエドムの底が平らで太陽光が反射
しているのではないかという説や、クレーターの底に氷がはったた
めにおこるのではないかなどいろいろな説があるが、決定的な説は
ありません。スカイアンドテレスコープの記事では、上空に浮かん
だ雲の中に含まれる氷晶により、太陽光が反射されて起こるのかも
しれないと、紹介されていました。それならば、なぜエドムに多い 
のかが説明できません。不思議なことです。もっとも、この現象は
いつもエドムだけではなく、ソリスの近くでも起こった記録が残っ
ています。
今回の現象はドナルドパーカー氏も臨席して大勢で確認したとの情
報になっているが決定的なシーンの証拠画像が公開されていないの
で、月惑星研究会関西支部としては確認できていない。

(7)NPRを横切るダストストーム
 HSTが撮影して公表された画像の中に、6月26日の美しい画像
があります。シルチスの東側に出てきたダストストームを鮮明に
とらえている画像です。
 この画像を注意深く見ると、北極地方にもダストストームがある
と注釈が出ています。北極地方にはよく起こる物ではありますが、
今回写っているものは極めて大きく立派です。同じ日には、日本で
もたくさんの画像が得られています。安達も肉眼で観測しています
が、この日、日本ではキンメリウムの付近を中心としたロケーショ
ンで観測がおこなわれました。この経度で観測すると、エリシウム
のすぐ北側にダストストームが見られます。今回公表されたHSTの
ダストストームとは全く同じもので、北極点を横切っている、舌状
のダストストームです。
 北極を横切って、これだけ大きなものはまずめずらしいものです。
肉眼では、付近の白色雲と並んで、黄色っぽい雲が対照的に見えて
いましたし、画像でもきれいな対象を見せていました。

(8)暗色模様と最近の模様との差異
 大黄雲が出て、観測するときの模様が一変しました。シュミレー
ションとも全く合わなくなっています。どうしてこのようなことに
なっているのかを参加者で考えました。
 まず、安達が過去の1971と1973年の時の様子を報告しました。と
りわけ、1973年の時は今回と同じような暗い模様がソリスの付近に
どかんと現れ、観測者を驚かせました。当時も、この暗い模様はな
んだろうと随分話題になり、雲が降らせた雨の跡だとかいろいろな
ことが言われましたが、結局は雲の影を見ているからだろうという
ことで、落ち着きました。しかしながら、しっかり科学的に説明が
済んだわけではなく、原因はわからないまま今日に至っています。
 今回、同じことが起こりましたが、(3)で書いたように、地形
とのかかわりも否定できません。皆さんで考えてください。海外で
も影だと考える人が多いと思いますが、注意点を一つ掲げておきま
す。

 画像では、明るい雲が発生すると、つい、その部分に露出がいき、
いつもとちがったコンビネーションで処理をしてしまいます。そう
すると、明るい雲と雲の間は、暗色模様のように再現されてしまい
ます。本当は明るくて、暗色模様は見えていないのに、周囲が明る
すぎる結果観測模様のごとき写り方になってしまうのです。例とし
ては太陽黒点があげられるでしょう。黒点は本当は非常に明るく、
たくさんの光を出していますが、光球が明るいため、黒点となって
観測されます。これと同じです。
 おまけに、非常に淡い光度差を画像処理することによって、とん
でもなく暗く処理をしてしまうことも起こりがちです。

 みなさん。注意してください。黄雲が出ていないときに行ってい
た処理と同じ方法で処理してください。強調することを強めるなら
ば、従来の処理をしたものと並べて公開してください。そうでない
と本当の火星面の状況を記録したことになりません。

 
 木星観測レポート (伊賀)
 伊賀氏の自宅からは、仕事が終わって帰ったときに、火星を観測
することが次第に困難になり、火星で盛り上がっているときではあ
りますが、木星の観測を3回されました。
 4時の時点で10°位の高度になっているとのことです。観測時間
は4時半が限界だそうです。
 例会の当日の朝は気流が比較的よく、衛星の影の映る木星の画像
が得られたそうです。

 NEBは相変わらず太く観測されています。
 SEBも細くなっているが、しっかり確認できたそうです。
 NTBがかろうじて確認できるとのことです。

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    安達  誠
   520-0242  滋賀県大津市本堅田4-8-11
          東亜天文学会理事・企画部長
          月惑星研究会関西支部支部長
   @「jh3svw@yahoo.co.jp」@
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