月惑関西例会資料

冥王星は何色に見えるのか?

 

                               2004.10.17

                                                          三 品 利 郎

 

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概要

2004615日にフランスのクリストフ・ペリエ(Christophe Pellier)が撮影した3色合成画像には、 灰青色の冥王星が現れて

いた。冥王星の色と言えば、1970年代には、黄色に見えると予想されていたことを思い出した人も多いと思う。 

果たして、冥王星は何色に見えるのだろうか?

現在、インターネットのサイトに公開されている情報を手がかりとして、以下を調査した。

() STScI*1 の同一視野のR,B,IRの画像からペリエの画像の裏づけを行なった。

() アメリカのWebsiteで冥王星の色についてどのように書かれているかを探った。

 

1 青い冥王星

きっかけとなったこの画像から見てゆきたい。

ペリエが撮影したこの画像は冥王星を見事に青く再現している。冥王星の近くには、赤(上)、青(右)、黄(左)の星が三角形を

作っている。これらの星のスペクトル型がわかれば、この画像の色の再現性が確認できる。 しかし、残念なことに、これら3つ

の星が暗すぎて、スペクトル型のデータが手に入らない。

 

 

 

1.1            単色画像との比較

そこで、同一の視野を写した、V,B,Rなどの単色画像との比較を行うことにした。 「The STScI Digitized Sky Survey*1

というサイトから入手した「POSS2/UKSTU」の 画像を下に示す。赤経:17h22m05.0s  赤緯:-14d16mを中心にして高さ6.5分、

4.5分の範囲を指定した。左から、RED,BLUE,IR の画像である。  

 

 

それぞれの画像の下半分にある三角形を作る星の明るさに注目してみる。星の呼び方は、上をA,右をB、左をCとする。   

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 (左が明るい)

       

R画像

B画像

IR画像

ペリエ

C

B

A

B

C

A

A

C

B

STScI

C

B

A

B

C

A

A

C

B

 

 

 

 

 

 

 

R画像では、明るい方からC、B、Aの順である。

B画像では、B,C,Aの順になる。

IR画像では、A、C、Bの順になる

 

ペリエの画像とSTScI画像のR、BとIR各画像での3つの星の明るさの順序は上の表のようになる。ともに、三角形の星の

明るさの順序は、同じである。

次に、これら3つの星の色を推測する。

Aは、IR画像での明るさから、赤外線が強いR型の恒星と推測される。Cは、R画像での明るさから、K型かG型の恒星と推

測される。上にあるA3型の9.3等星は、B画像とR画像でほぼ同じ明るさに見えるが、Cは、B画像よりR画像で明るいことから

G型かK型と推測できる。Bは、上にあるA3型の星との比較で、A型もしくはB型と推測される。

ペリエの3色合成画像は、赤、青と黄で三角形の星の色が再現されており、上で推測したスペクトル型と矛盾することはない。

従って、ペリエの画像が色を正しく再現しているといえる。    

 

2 海外サイトで紹介されている冥王星

2.1 CERRO TOLOLOで撮影した画像

SOLA SYSYTEM  ASTROPHOTOGRAPHY*2 というサイトに冥王星の画像がある。二枚の画像がアニメになって

おり冥王星が右方向に移動している様子がわかる。一枚目の画像は少し青味がかっており、二枚目は白のようだ。二枚の色の

違いは周りの星の色やバックの色目も変わっているので、画像の再現性によるものである。

     冥王星のアニメ ASTROGRAPHYより

テキスト ボックス: 1 クリックするとSOLA SYSTEM ASTROGRAPHY へ
2 画面をスクロールダウンすると冥王星のアニメがある。
 

 

 

 

 

 

 


2.2 コロラド大学のサイト、「PLUTE

コロラド大学の天体物理と惑星科学のフラン・バグナー教授がまとめている「PLUTE *3 というサイトがある。

ここに各惑星の図が掲載されている。この図では、冥王星とカロンは青系色に着色されている。これから、冥王星とカロン

が青系色に見えることを意味していると推測できる。(文章では色について明言されていない。)

      各惑星の図 「PLUTE」より

テキスト ボックス: クリックすると「PLUTE」のサイトの図が開く
 

 

 

 

 


「PLUTE*3 には冥王星とカロンのデータも掲載されている。

この表から、

T 冥王星には大気が存在すること。

U COLOR(V-I)(色指数)は、カロンの方が少し小さく、従って、カロンの方が冥王星より

少し青味を帯びていること

がわかる。

先ほどの図でもカロンの方が青く描かれていた。 

なお、V−Iの色指数、0.930.83に相当するスペクトル型はG型である。

 

冥王星とカロンのデータ

PARAMATA

PLUTO

CHARON

ROTAITION PERIOD

6.3872 days

6.3872 days

RADIUS

1150 - 1215 km

600 - 640 km

DENSITY

about 2 g/cm3

1 -  2 g/cm3

BRIGHTNESS

13.6 magnitude

15.5 mag

GEOMETRIC ALBEDO

0.55, variable

0.32

COLOR(V-I)

0.93 magnitude

0.83 mag

KNOWN SURFACEICES

CH4, N2, CO,?

H20,?

ATMOSPHERE

CONFIRMED

DOUBTFUL

出典:PLUTO Paul McGehee 1986  http://dosxx.colorado.edu/plutohome.html  *3

 

 

3 まとめ

(1) ペリエの画像から冥王星が青系統の色であることは間違いない。

(2) 海外のサイトで、冥王星の色が青系統だと明確に書いたものは見つからなかった。 

しかし、青系統の色であることを示唆するサイトはあった。

 

4 今後の展望

ペリエの画像は、「冥王星の色」がアマチュアの機材で観測可能なことを教えてくれた。これは、即ち、アマチュアの新たな

観測対象が現れたことを意味する。 

色を調べるために、一番簡便な方法は、デジカメ写真である。移動可能な口径20cm級の機材を空の澄んだ場所へ運び、デジ

タルカメラで冥王星を撮影、色合いを記録することが可能だと考えられる。より精緻な観測は、冷却CCDによる三色合成で色

を再現した画像に委ねることになる。 さらに、口径1m級、あるいは2mの望遠鏡をアマチュアが利用できる天文台もあるの

で、このような大口径で、実際に目で見て色を確認することも可能であろう。

「冥王星の色」と言う新たな観測対象について様々なテーマや観測法が考案されるだろう。例えば、「冥王星の自転と色の変化

の関係を追う」といったテーマがあるのではないだろうか。そのほかにも様々なテーマがあると考えられる。新しい観測対象な

ので、従来の形にとらわれず、自由に柔軟な発想で観測テーマ、観測法を考案する楽しさもあろう。

 

ペリエさん,冥王星の写真,ありがとう!

 

以上

 

参考文献

*1  The STScI Digitized Sky Survey  http://archive.stsci.edu/cgi-bin/dss_form?

*2  SOLA SYSYTEM ASTROPHOTOGRAPHY   http://www.chara.gsu.edu/~subasavage/astrophot.html

*3  PLUTO Paul McGehee 1986    http://dosxx.colorado.edu/plutohome.html

 

冥王星に関する解説(WEBSITES)

(a)  Pluto and Caron Thralow,Inc,2003   http://www.the-planet-pluto.com/pluto-overview.html

(b)  Pluto by Rosanna L. Hamilton 1998  http://solarviews.com/eng/pluto.htm

 

© Tohsiro Mishina 2004