月惑星研究会関西支部通信 No.6 (1995年8月20日)


木星会議の後の最初の例会報告。夏になったとはいえ気流の悪い日が多く、それぞれ観測には苦労しているようだった。木星の観測よりもむしろ土星の観測の話題の方が多く、活発な話し合いが行なわれた。PC98が多い中、支部ではマッキントッシュのパソコンが多く使われるという状況になり、最後はパソコンについての情報交換となった感じがあります。

《参加者》 8名

奥田耕司・吉田裕市・須田將昭・林 敏夫・伊賀祐一・浅田秀人・安藤和典・安達 誠

(欠席の方からも数名電話有り)


《参加者近況》

安藤氏

木星会議の研究発表の一つになった、木星のCCD画像から木星の展開図にするソフトを作り、自身の得られた木星の映像を展開図にして来られた。STB〜NTBの間においてはまずまずの実用範囲ということで、モニターを見る人も納得しておられました。高緯度になると暗部がフェストーン状に伸びた像になるためよほどの枚数がないと苦しいようだ。ただ、このソフトではCCDの映像だけでなく写真やスケッチでも映像に取り込めさえすれば使えるということで、スケッチからの展開図作成において強力な武器となりそうです。ただ、CMTの結果得られた位置を展開図上に修正して出すことまでは難しいようです。今後の活用を期待します(ちなみに安達はマッキントッシュLC630を購入しました。うちにもまわしてねそのソフト。私信で失礼をば...)。

浅田氏

木星よりも土星に精力を傾けられています。昨年の白斑の発見以来恐らく日本中で最もたくさん観測されていることでしょう。土星環の消失についてもたくさんの観測をされています。特に8月11日までには土星環のカシニの位置に太陽光が透けてみえることによって起こる白斑を土星本体のすぐ横に見ておられます。支部のメンバーの中で、この現象を見た人は浅田氏だけかもしれません。とても立派なことです。また、浅田氏は観測をこまめにOAAの宮崎氏に報告されています。まとめて報告している人は見習うべきことがあります。

例会後、浅田氏から後述のレポートがありました。すなわち土星の表面に、チタン本体の黒い斑点と、本体によってできるチタンの影の経過を見られています。最近はお子さんや奥さんにもスケッチさせているとの由。その2人共がスケッチをきちんと描かれたとのことで、かなりはっきり見えるようです。皆さんも注意して見てください。

奥田氏

観測数はかなり減り、休止状態との由。8月11日の土星環消失の時には自宅の望遠鏡で観測されました。

伊賀氏

伊賀祐一氏は、以前安達が行なっていた月面惑星研究会大阪支部のメンバーで、本年度の木星観測者会議に来られたおり、安達の悪魔のささやきに引きずり込まれ、ついに復帰されました。京都市山科区のマンションに住まわれており、C11を持っておられます。安達がけしかけ、いつのまにかスケッチを30枚ほど取られ、にこにこして参加されました(本人修正:11枚です)。頼もしい限りです。今後の活躍を期待いたします。また氏はパソコンに大いに関心を示され、安藤氏と会話が弾んでいました。

須田氏

1月17日の阪神淡路大震災のため公務が猛烈に忙しくなり、木星の観測が思うようにできず、残念がっておられましたが、仕事の合間を丈夫にぬって参加していただきました。観測が自宅の近くの公園になることもあり、夕方になると人がいて観測になり難く、今シーズンは事実上観測終了ということになったようです。8cmの屈折で土星環復活の様子を観測しようと試みたが、8月11日には何も見えなかったとのことで、他の人の観測結果を聞き、残念に思っておられました。

林氏

ここしばらくの間、観測はできていない。また、久しぶりに参加できたとのことでした。久しぶりでも参加していただけたことに感謝しています。頑張ってください。

吉田氏

木星会議以降、観測はあまり進んでいないとのことでした。しかしながら、このすぐ後に報告する木星の白斑の追跡調査にはしっかりとデータを提供していただきました。京都大学天文同好会のメンバーに木星の観測をしそうなのがまだ数人いるとのことで次回には連れて来れるように頑張りたいとの言葉がありました。

安達氏

木星観測者会議の後も観測を続けていましたが、7月の中旬より家庭的な事情(家内の入院)により観測が殆どストップ状態になりました。スケッチは67枚でストップしたままになっています。土星の方は何とか見たいものだと思っていましたが、8月11日の夜から5日間連続で観測はしましたが、その後はやはりストップしたままです。

その代わりといっては変ですが、パソコンを買いました。マッキントッシュのLC630です。自分用ではなく、基本的に子供に買ってやったものでスポンサーが親ですから「お父さんも使わせてくれよ」ということで、活用したいと思います。子供が花粉の研究用にビデオで入れた顕微鏡による映像を入力するためのもので、ホームビデオでもファイルいておけます。もちろん木星の映像も、現在勉強中です。安藤氏はこれからパソコンを持って来て頂かなくても結構です。


木星報告

LEBS

BC、DEは順調に前進していますが、精度が低く、口径の小さな望遠鏡ではかなりきつい対象のようです。支部のメンバーのスケッチでもかなりのばらつきが見られ、苦労している様子がうかがわれます。

BC、DEの間にある小さな白斑ですが、精度が低いながらもまだ健在です。ある程度の口径とシーイングがないと観測できませんが、存在は確かなようです。また、FAは良く見えていますが、FAより少し前方にSTBの切れ目というか、ギャップというか明るいところが見られており、LEBSと紛らわしい様子を見せています。

この白斑はGRSを通過する時に特に目立った経度変化は示していないように思われますが、BCとDEについてはGRSを通過する時に微妙に経度変化の起こった事がうかがわれます。最もこのころはコントラスト効果も加わり、CMTそのものの観測がやりにくくなりますので、その影響がドリフトチャートのでこぼこになって現れたのかもしれません。FAはGRSの付近でやや減速傾向になった?ようにも見えますが、通過してしまわないとはっきりしません。

支部の方々でLEBSのCMTの値を得られた方は、お手数ですが安達まで葉書か電話で知らせてください。

GRS

特に目立った変化はないようです。経度の方はU=48°に位置しています。全体的に淡い赤みを保ったままですが、右上の方がやや濃くなった見え方をしているように思います。SEBのBayはGRSに殆ど接していて、明るい隙間として捕らえた人はいないようです。

SEB

木星会議の時と同じ状態が続いています。STrZに見られる白斑について、別紙のような追跡を行ないました。東京本部の堀越氏によれば2つの動きを追跡できるのが見られるとのことでしたが、支部の方でもおよそ同じ傾向が見られました。グラフの×印はCMTの値です。また、消長を確認するためにスケッチよりおよその位置をネットで確認したものを△印で表わしています。

U系で170°付近のものと300°付近のものは目立っています(堀川氏と同じ物)。この白斑は小さなものや短命なものも多く、確実なものとして捕らえにくいものですが、U系に対してやや後退(およそ100日に10°)し、自転周期は9時間55分36秒程度になるものと思われます。これはSEBsの普通の自転周期と殆ど一致しており、南赤道縞撹乱の58分台の自転周期と大きく異なっています。したがって、この白斑に前後して見られる暗班も殆ど同じ自転周期と考えられ、南赤道縞撹乱のような斑点ですが、やはり撹乱ではないように思われます。

NTB

所々に暗班が見られます。NTrZCかと思われましたが、かなり微妙な見え方でNTrZに食い込んだ見え方をしていないため、違うのではないかという話になりました。悲しくもかなり微妙でCMTが殆ど無く、はっきりしたことは支部の例会では出て来ませんでした。


土星観測

環の消失をめぐり、見えたとか見えなかったとか色々と話が飛び交いましたが、天候に恵まれれば11日の夜には20cmでも見えたようです。なかでも安藤氏はCCDで撮影に成功されています。翌12日には6cmでも見られたようです。支部では十分なまとめができなくて申し訳ありません。

浅田氏からチタンの影の経過が見えることを報告頂きました。同封の資料は浅田氏から事務局に届けられた通信の一部です。9月23日、10月9日・25日に経過が見られるはずですので、皆さん大いに目を凝らして観測してください。また、時々白斑が発生しているようでもありますのでご注意ください。


事務局より