月惑星研究会関西支部通信 No.7 (1995年11月19日)


本年最後の例会を11月19日に行ないました。木星はすっかり高度が低くなり、観測には適さなくなり、事実上シーズン終了といった感じがありますが、土星の環の消失日の例会とあり、初めは木星よりも土星の方が話題の中心となりました。また、1年間のまとめとしてGRS・LEBSのCMTのデータも整理しました。

《参加者》 7名

奥田耕司・浅田秀人・河北秀世・伊賀祐一・吉田裕市・須田將昭・安達 誠


《参加者近況》

川北氏

支部発足後初めての参加となりました。支部の発足時には、仕事の関係で福山市におられたためで、これからの活躍が期待されます。今回は奈良市から車でかけつけてくださいました。仕事の関係もあって、最初からパソコンの話に盛り上がりました。今後とも宜しくお願いいたします。12月になって美星天文台に観測に行かれるそうです。

須田氏

仕事が忙しく、観測もできていないとのことでしたが、来年にかけてOAAの総会を須田氏の地元で開催することになり、スタッフとして活躍されることになりました(後記します)。

宮崎氏からの紹介にありました、THE GREAT PLANET JUPITERを持ってこられ、集まったみんなで見ました。ちなみに、支部のメンバーで購入したのはどうやら川北氏とのお二人のようです。

浅田氏

土星の観測に力を入れておられます。土星の表面にタイタンとその影が写った写真が公開されていました。毎日のように観測されているので、このようなシャッターチャンスを捕らえられただと思います。また、先日見られたタイの日食観測で撮られた写真を公開されるなど、珍しいものを見せていただきました。

伊賀氏

ワークステーションを使って木星の写真を、展開図にするソフトを作り、木星の写真の展開されたものを持って来ていただきました。今後の研究に大いに役に立つと思われます。写真だけでなく、スケッチも展開できるとの由、安達の1995年のスケッチを帰宅の時に持ってかえっていただきました。次回の例会の時に、それを使って展開したものが見れそうです。また、各人が取ったスケッチをパソコンにデータベース化してはどうかという提案を頂きました。

吉田氏

大学の「11月祭(学園祭)」直前の忙しい中を来ていただきました。土星はもっぱら観望程度になっているとのことでした。

奥田氏

前回の例会の時にパソコン(マック)を買われ、随分使われているようでした。土星の方は専用の観測用紙を作られ、観測を始められています。

安達氏

前回から木星の観測はゼロのまま。土星の観測だけが進んでいます。特別たいしたことはやっていません。天文台の中に据え付けていた31cmの架台の邪魔になっていた脚をようやく切り落とすことができ、観測がやりやすくなりました。


土星観測報告

12月中旬にcondensationが最も見易くなりそうなので、集中した観測をしたい。透明度の良い日を選び各人で観測してください。観測する時は、かなり淡い見え方になると思われますので、反射望遠鏡の場合はスパイダーを重ならないようにして観測しないと見えない可能性があります。縞模様と同じ方向ですので十分注意してください。見え始めたら安達までコピーを1枚送ってください。すぐに葉書版のニュースに仕立ててお知らせいたします。

金星観測

夕方に金星が出て来ました。次第に観測の好機に向かいます。土星の観測に忙しいとは思いますが、観測して見てください。安達の手元にラッテンのB47のゼラチンフィルターが少しですがありますので、近紫外の光で観測して見てください。安達は何年かこの方法で観測していますが、可視光での模様と違った模様を観測することができます。観測してどのような意味があるか分かりませんが、可視光での模様と違った模様の変化を観測できる楽しみもあります。アイピースと肉眼との間に挿入するだけでできますので、関心のある方はお試しください。なお、ゼラチンフィルターが入り用な方は安達までお知らせいただければ少量ですが観測に使えるだけお送りいたします。スケッチ方法は安達の金星のスケッチの所を参照してください。

観測報告

失礼なことですが、11月19日現在の各人のスケッチのトータルを出してもらいました。浅田氏が断然頑張っておられます。時間の都合の付く方は観測を頑張って欲しいと思います。仕事の都合など、宵の口に帰宅することは大変ですが、時間は待っていてもできません。上手に作り出して頑張りましょう。

観測者
木星
土星
浅田秀人
58枚
43枚
安達 誠
77枚
9枚
奥田耕司
10枚
2枚
伊賀祐一
11枚
須田將昭
10枚
河北秀世
78枚
吉田裕市
43枚
1枚


ホームビデオカメラの活用について

安達は本部の石橋氏と協力してホームビデオカメラの活用に関する記事を月刊天文に送りました。今年のOAAの総会の時に月刊天文の記者と約束したものです。およそ2ヶ月ほどかかり原稿を仕上げました。1月号から何回かに分割されて掲載されると思いますが、支部の例会でこの話を出したところ、川北氏を始めたくさんの示唆を頂きました。

ビデオカメラは、ST5などのような特別なものにする必要もなく、家庭用に普段使っているビデオカメラでかなりの観測効果を上げることができるという紹介で始まりましたが、モニターに写る木星像からネットをあてて市を読み取ることが果たしてどこまで信頼できるかという議論となったのです。木星の周辺減光は思ったよりも大きく、モニターの上で木星のディスクがどこまであるのか判別できないのではないか。東矩や西矩の時のようにターミネータが大きく見える時など、子午線の位置を中央に正しく決めることができないのではないか。結果として眼視観測で出る誤差と変わらない(信頼できない)事になりはしないかというものです。

ホームビデオは天体用のものと違い、安価であるということと家庭用として家族みんなが使えるため、購入に当たっては家族の了解が得易いという利点があります。また、パソコンなどによる処理もせずに、望遠鏡のそばにいたまま即座にモニターを活用することができるということも優れた点の一つです。とりわけ、CMTに関しては模様が中央子午線に来るまでじっと待っていることも必要なく、ネットを当てれば子午線から±15°位までは眼視観測程度以上の値が一度に得られるものと期待しています。次々に中央子午線にやってくる模様を今か今かと待たなくてもよいことになります。実際、木星の眼視観測をしていて、CMT観測はかなり骨の折れる仕事ですから、ホームビデオを活用することは非常に効果の高いことといえるわけです。

しかしながら、この時当てるネットの中央をどの位置に決めるかは大変な問題で、位置どりが違っていれば測定した模様も全てずれてしまいます。川北氏の話では、「木星の周辺減光は非常にきついもので、感度を上げればどこまでもディスクが出て来てどこがディスクなのか分からなくなることがある」ということです。説明のため誇張した言い方をしていただきましたが、まさにその通りで、周辺減光による影響は非常に大きく、このことは実際に使用するまでによく考えておく必要がありそうです。また、撮影レンズによる歪み、テレビモニター(ブラウン管)の上下左右の歪みなど、正確さを競うとなると解決することが山ほどありそうです。次回の例会までに、安達の方で問題点を整理したいと思っています。

ただ、歪みの問題など、正確さを追及すれば果てしなく大変ですが、有効数字的にどこまで補正するかは議論のある所です。会員の皆さんの意見をぜひとも聞かせてください。


事務局より

会費を頂きました(2名)

須田、浜野

来年のOAA総会

須田氏が世話係の一人として活躍されることになっています。私市「ふれあいの里」にて行われます(宿泊もできるそうです)。メンバーの中から手伝われる方もありますので、来年のOAAにたくさんの参加があることを願います。我々のメンバーの中から誰か発表して欲しいという依頼がありました。皆さんで考えておいてください。

森田氏(広島)の木星写真

広島の森田氏から、前回以降の7月8日〜8月3日までの木星の写真を頂きました(合計44枚の写真を頂いたことになります)。閲覧希望の方は安達までお申し出ください。

CMT一覧

この通信の後ろに付けているCMTの一覧表は、今シーズンのGRS・LEBSの位置です。数値にかなりのばらつきがあるのですが、皆さんの整理の参考にお使いください。伊賀氏はこのデータを使って来シーズンの予報を立てるとのことですので、判り次第皆さんにお知らせできるようにしたいと思います。

その他

天文観測年表が発行されています。いつも部数が少なく、早めに買わないと手に入らなくなる事もありますので、必要な方はお急ぎください。