月惑星研究会関西支部通信 No.19

1998年11月22日


参加者
伊賀・池村・奥田・忍穂井・林・前田・安達
    以上7名

 木星会議後の初めての例会となりました。今回は木星会議の報告や木星面の近況報告や土星の白斑のまとめなど,内容の多い会となりました。1時から始めて6時前まで話しが尽きず,話し足りない思いをされて帰宅されたかたもあったかと思います。

 また,先日あった獅子座流星群の顛末も話しの中に飛びだし。和やかな会となりました。その後忘年会を5名で行い。さらに2名が3次会までいきました。


◎自己紹介と近況報告

安達

木星のスケッチが120枚になった。自宅での観測はマンションの関係で後わずかしかできないが,職場に望遠鏡を持っていき,昨年同様後期の観測を実施したい。都合200枚を目標に観測したい。土星は2枚観測したが,肉眼では白斑を捕えることはできなかった。その他の日にも見てはいるが,気流が悪く観測にならない。火星のほうはまだ未着手。冬休み中に望遠鏡の極軸部分を交換する予定にしている。

先日の木星会議の後,その日のうちに村山定男先生のお宅におじゃまし,1940年代に永続白斑が発生した当時のスケッチを100枚ほど見せていただいた。強烈に大きい白斑が印象的だった。


伊賀

木星の観測は8月いっぱいに43枚のスケッチを取った。ピコナの画像は撮像を開始して以来1400ショット撮影した。今は18時で木星は自宅からは見えなくなる。これからはシーズンオフになる。木星会議に参加してきた。

池村

望遠鏡の赤経のモーターが動かなくなったが,修理の結果動くようになった。撮像したものも多いが,これから整理していきたい。明け方に見えてきた火星もがんばりたい。(1ショット撮影されたプリントをお持ちいただきました。)ピコナを使って撮影したいと栃木県の方が連絡されてきたそうです。現在,ショット数はおよそ10000を越えた。模様が撮れた火星は国内最初(地上からなら世界初だろうとはなしていました)。

奥田

自宅では山に隠れるまでの22時ごろまで観測可能な状況。11月でも今年はシーイングがよかった。11/12が最後の観測になっている。FAの後ろ辺りのSTZに白いものができてきたようだ。ω2=180°のSTBsのdark spotが独立してきた。

土星の白斑は,移動量を間違って追跡してしまった。画像処理の機器が故障して修理に出した。ようやく帰ってきたが,直っていなかったのでまた出している。現在撮像したものを処理できない状態になっているがこのところはシーイングが悪いのでやや安心している。


忍穂井


左:前田氏 右:忍穂井氏
ここ1・2ヵ月,観測のほうはペースダウンしている。自宅では20時くらいまでしか見られない。観測は11/14日が最後になっている。70枚くらい画像を撮った。10/14日に土星を撮ったが白斑は写らなかった。

スケッチから足を洗おうかと考えている。ピコナで画像を撮りたい。スケッチは74枚になった。(また眼視派が減るの?ああ・・・A)

前田

亀岡はシーイングが,平均的に悪いようだ。支部のHPに送れるような画像は撮れていなかったので,送っていない。画像は現在3000ショットくらい撮った。さすがに気流が悪くなると写らない。

移動用の望遠鏡をもって九州の九重山にいった。空の透明度がよく,コントラストがとてもよかった。それにひきかえ,奈良県の大台ヶ原は悪かった。富士山にも行ったが風が強くて,よい結果は出なかった。

最近ピコナの電源が入らないトラブルが起こった。温度が低いと入りにくい可能性がある。どうやら,コンセントに差し込むところの温度が低くなると駄目なようだ。



◎木星近況

1 STBの暗部と暗斑(ω2=140°〜180°)

STBsの小さなBARGEのすぐ後ろに,STBの濃くなった部分が見られていたが,最近になって,後端部が独立した。しばらくの間,斜め右上がりの模様になっていたが,緯度の違ったことが,自転周期の違いにつながり,ちぎれてしまったように思われる。契れた部分はSTZに存在している。

2 GRS前方のstreakについて

GRSの前方にはアーチから伸びていたstreakが伸びていたが,次第にその長さは長くなり,STrB(South Tropical Belt) と呼んだ方がよい状態になった。現在ω2=290°あたりにまで達している。今後は消滅の方向に向かうかもしれない。全体的に淡くなってきている。

3 GRS

ここしばらくの間GRSの経度は69°位に後退している。内部に濃い模様がある。

4 NEB bright streak

あちこちにriftが見られるが,下記のような場所に位置している。
  ω1=0°〜30°/50°〜70°/90°/200°〜260°
riftというよりはbright streakと言ったほうが適当かもしれない。とりわけ200°から260°の内部には雫型の見えかたになっている。

5 SEB

mid-SEB outbreakの白斑の見られなくなった部分では一様なベルトになって見えるようになり,かなり収束した様子がうかがえる。また,反面GRSの直後のSEBは中央組織がくねくねと濃く,ねじれ他のような姿になってきている。

◎火星

いよいよ明け方に高く昇るようになり,観測ができるようになってきた。視直径はまだ4秒と最小だが,大きな模様はしっかり捕えられている。極冠が小さいという情報も流れていたが,画像を見る限り,普通の大きさだと思われる。とりわけ,池村氏のシミュレーションのものとほとんどかわることがないようだ。

あまりお薦めできないが,観測にはいる前に経度を計算して観測されることを薦める。特に,南半球に位置しているたくさんの海の位置を違えて書きがちだから,あれば火星儀をつかって見え方を確認しておきたい。

池村氏の2枚の画像を見る限り,例年と大きな変化は見て取れない。これから視直径が大きくなるにつれて,しだいに様子が明らかになってくるであろう。

  • 10/19 CM=301.28°
    SYRTIS MAJORがはっきりと確認できる。また,BOREOSYRTISからArethusa湖までが淡くベルト状に認められる。また,HELLASも明るく認めることができる。
  • 11/12 CM=173.74°
    Amazonisあたりの大陸が中央に見える。最も模様を見るのには困難な部分だが,画像からはPROPONTIS IIがやや濃い暗斑として認められる。この当たりはこの時期の火星面では普段通りと考えてもよい。MARE SIRENIUM から MARE CIMMERIUMにかけてはリムに近く,なんともいえない状況であった。

◎土星の近況

見つかった白斑は動きが早く,-12°/1日と成っている。位置はω1=260°(11/22現在)となっている。10/29の画像では写らなかった(池村)。白斑は10/31パーカー氏によって発見されたが,以後11/2・3日だけしか撮られていない。また,眼視観測でも観測は試みられたが,眼視的には捕えることはできなかった。安達がかろうじて11/3の備考欄に明るいような気がするという記述があるにとどまった。その後,観測が無いところから,一時的な現象だったもようである。

◎木星会議報告(伊賀)

第1日目
東京で行われた。久しぶりに平林会長に会った。昔,「後輩を育てなさい。」と,言われたことを思いだした。いか,大ざっぱな経過を示す。(詳しい資料はHPをご覧いただくか,安達まで請求下さい。)
BEのまとめ
1942年のスタートから繭山さんの作られた資料を使って説明をして,まとめていった。単独で消えたのか,合体したのかを参加者で検討した。ドリフトチャートを使っての解析や,合体後の渦の大きさなど,さまざまな検討が加えられたが,ガリレオ探査機の観測から得られた情報をもとに,渦の方向から最終的に合体説にまとまった。伊賀さんから,今年の画像から関係部分を並べて資料を提示した。FAは去年から同じ様な移動量を示している。ドリフトチャートからBCの上にBEは乗っているらしい。現在BEの自転周期は遅くなってきている。また,色調は青っぽい。
mid-SEB outbreak
4/3の眼視観測では発生していないようだ。4/10池村氏の画像に暗部が写った。4/29になって白斑発見(伊賀眼視観測)。5/7pic.du.midi天文台の画像で確認された。その後,大規模に広がる。そこで,この現象の追跡結果の発表を行った。浅田さんからの画像から作成した全周の展開図を使って活動の様子をまとめた。mid-SEB outbreakの明部(白斑群)は前進してきてGRSの前方部分になって北側に流れたようだ。SEBの中央にあるBARGE or STREAKのところで白斑は緯度が北に中心位置が寄ってくる。そのために自転周期に変化が起こり,mid-SEB outbreakの白斑は前方のものほど加速されるようだ。
NEBのBARGEやNOTCH(浅田)
昨年の3連構造やその他の模様について追跡した結果を発表された。NEBが細くなるに連れてNOTCHはむき出しになった。また,98年にやや広がったときもあった。ドリフトチャートからの追跡ではほとんど動かなかったものや動くものなどが公開された。移動しているものや移動していないものを比べると,緯度がやや違うようで,これが原因となって移動量が違うようになったらしい。
STBsの暗斑(大きいほう)
この暗斑は5月ごろにSTBsの緯度で発見された。BE/FAと同じ移動量を示していた。(BE直前のdark sectionは最近になって分裂した。)GRSの直前に出た小さな暗斑の追跡調査の発表。これについては日本だけの発見となった。とくに,これは9月初めごろに見やすくなった。非常にリニアに動いた。眼視観測では認められなかった。最終的にGRSにぶつかるところまで観測された。
STrBand
GRSの直前のdark streakがバンドになって来た。伸び始めたのが8/12あたりで,先端がSTBに合流している。ω2=310°で,11月になって淡くなった。
メタン白斑
北半球にある白斑をドリフトチャートから追跡した。非常にリニアに移動している ことがわかった。また,長命なものもあることがわかった。
第2日目
これについてはHPをご覧ください。

◎事務局から

・過去の観測者の記録を保存して公開したい。
佐伯先生や村山先生の記録などを,保存公開できるようにならないかを話し合いました。
だれかに英訳していただく事も必要かと思います。
・次回の木星会議は場所など未定です。

・次回の例会
次回の例会は1月に行うか,2月の初めに行うかどちらにしましょうか。学生諸君は後期のテストの最中かもしれないから,いつごろがよいか事務局まで連絡ください。

発行:月惑星研究会関西支部

〒520-0242 大津市本堅田4-8-11
TEL(0775)73-7605

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