月惑星研究会関西支部例会 報告

1998年 1月25日 13時〜17時

伊賀 祐一


1998年の最初の支部例会が安達支部長自宅で開かれました。参加者は次の7名でした。
なお、池村氏は今回初参加です。
参加者:安達、伊賀、池村、薄出、奥田、忍穂井、林

自己紹介と近況紹介

安達 誠:

左:奥田氏、右:薄出氏

左:忍穂井氏、中央:池村氏、右:安達氏
関西支部を運営している。30cm反射を納めたドームがある。ドームが無いと風の影響を受けやすい。ドームのシャッターの雨漏りもあって改造を予定している。
今年は8mmビデオでの木星観測をやりたい。小さな白斑(STrZ、NTrZ)が分かりやすいので、白斑の成長などを追いかけたい。
今シーズン観測されたNEBnのnotchは1996年にも存在していた。もっと以前の観測につながるかもしれない。
眼視を中心として何か新しいことに取り組みたい。
今シーズンは102枚。まだ職場での観測が可能で、もう2〜3枚は行なうつもりである。
伊賀祐一:
今シーズンの木星スケッチは62枚で、久しぶりに本格的に取り組めた。
現在は月惑関西のWebの更新や、世界の惑星のWebページを渡り歩いている。
今シーズンの木星観測のまとめを行なう時期にきている。
奥田耕司:
信楽で観測をしている。1990年に15cm反射経緯台作成。安達さんに指導を受けて火星の観測を開始。1991年から木星を始め、1997年から冷却CCDでの観測に切り替わっている。
25cm反射を庭に置いて観測、視野の関係で1/10が限界だった。
最新の木星CCD画像(12/31,1/5,1/10:7枚)。
天界:佐伯恒夫氏の「火星の模様とその名」の連載をまとめたファイルを持参。
薄出敏彦:
病院の視聴覚関係の仕事を行っている。これまでは趣味で色々やってきたが、ドームを自作中でほぼ完成した。望遠鏡は25cm反射でこれも自作(鏡筒アストロ製、架台ミカゲ光器)。ドームが完成したら、観測に向けて取り組みたい。
木星スケッチを始めているが、次第にCCDに移行したい。
※ミカゲ光器が倒産した情報。
木星スケッチ4枚(6/19,11/08,11/24,12/14)。
ビデオ合成画像(9/28、Canon Ci-20R,4枚コンポジット)。
忍穂井幸夫:
スケッチは夏以降は増えなかった。71枚(ベランダから見えなくなった)。
池村さんの指導の下でデジカメでの撮影に挑戦している。まだシャープな画像は取れない。C8-EXを昨年末に入手。
池村俊彦(新会員):

今回、初参加の池村氏
名古屋からの初参加で、堅田駅から迷ってしまい出席が40分遅れた(地図は伊賀が作成しました。すみません)。
望遠鏡は半自作31cm反射ニュートン。旭精工製の架台、鏡筒は30kg。
観測歴は惑星から彗星に、仕事の関係から夜空が明るく再び惑星に。1988年7月の火星の接近で病気になってしまった。その前にも土星に集中してしまい鼻炎にもなった。
最も興味があるのは火星。カラー写真がきれいで、スケッチはやらない。
木星もスケッチだと精度がでないので、もっぱら写真。
昨年9月にデジカメ・ピコナを入手して、試しに取ってみたら見事に写ったので、これからこのデジタルの世界に取り組みたい。
木星の模様についても詳しくないので、どのような点で観測したら良いかを教えて欲しい。
デジタル火星シミュレーション・プログラムも作っているが、MS-DOSなのでWindowsに移行したい。NASAの画像をベースにシミュレーションソフトを作成。
※天文観測年表94年に掲載されている。周辺減光までもシミュレーションできていて素晴らしい。
内合の日の金星のデジカメ写真を持参。シーイングが悪くボケボケだった。
林 敏夫:
MLではあまり発言していません。
昨年から木星スケッチを再びやりはじめた。来シーズンに向けて練習のために何かスケッチをやりたい。
今シーズンの木星スケッチは70枚。
小嶋孝弘(本日不参加):
ホームページ(かわべ天文台)作成中

デジカメでの惑星写真(池村)

ピント合わせのテクニック(デジカメのモニターでは無理)
3万円以下の投資で撮影できる。
撮影データを自動記録できる。
大気差補正フィルターとして斜視検出用プリズムを使用している。
	アイピースの手前につけて見るだけでも改良される

今シーズンの木星のまとめ

1996年の木星のまとめを関西支部のWebページで掲載している。
1997年の現象について観測のまとめを行なう予定である。
今シーズンの現象を以下にまとめる。
●STrZ白斑と大赤斑との会合
●NEBのnotchとbarge
	1996年にさかのぼって追跡(伊賀)
●STB以南の模様
	床屋の看板状態はどうなっていたか?
●SEB内の白斑
	大赤斑後方の活動
	SEBsを突き抜けたような白斑もある
	大赤斑後方から前方にすり抜けた現象も観測(浅田)
	300°付近の2個の白斑の動き
	SEBsのstreakがどうなったか
		大赤斑から後方へ吹き出した
		さらに後方ではSEBsが淡化した部分がある(100°ぐらい)
	中央組織の動き
		どんどん前進してきて大赤斑の直後に来ている
●NTBとNNTBとの間のNTZにストリーク
●NTC-Cの高速移動暗斑
総括は安達が担当、画像・スケッチの編集およびCMTの整理は伊賀が担当する。
1997年9月20日のHSTの画像を元に議論を行なう。
この画像は木星のオーロラを捉えたものだが、Webでは木星本体の画像もアクセスできる。

論文のまとめ

河北氏から紹介された1993年のSEB撹乱の論文について
	F.Moreno, A.Molina, and J.L.Ortiz
	"The 1993 south equatorial belt revival and other features
	in the Jovian atmosphere: an observational perspective"
		Astron. Astrophys. 327, 1253-1261(1997)
1993年のSEB撹乱の状況報告(天界から)
	この論文の写真は通常の画像から上下が反転している
カイパー(アリゾナ大学)
	固体核が自転している(デカメータ波)→体系III
E.J.Reese
	過去の発生源を体系IIIでプロットすると3個の発生源になる
	発生源A:北組織が激しく変化する撹乱
	発生源B:中央組織の活動が活発
	発生源C:あまり活動的でない
今回の撹乱は発生源Bであった。
波長を変えて撮影することで物理的な性質が分かってくる。

探査機の模型紹介(伊賀)

ガリレオ・ホームページ(http://www.jpl.nasa.gov/galileo/model.html)に公開されているガリレオ探査機の1/45モデルを作成して持参。

惑星用反射鏡筒について

平行平面ガラスを反射鏡筒の前に付けたらどうかと議論する。
筒内気流はミラーから発生する(0.5度の温度差があればでる)。
筒内気流は鏡筒の先からも発生する。
ファンで後方に抜いてやると効果的。
観測者自身の熱も気を付ける。

その他

  • Pic du Midiの土星(伊賀)
    1997年の9月/11月の土星の動画が公開されている。
    http://www.bdl.fr/s2p/saturne.html
    1996年のEZの白斑のようなものが撮影されている。

  • Pic du Midiの木星(伊賀)
    1997年9月18日の画像がベストショット
    http://megasn.obspm.fr/galileo/18sep97/ju18997a.gif
    大赤斑付近のクローズアップが見事。

  • ガリレオ探査機の3Dビュー(伊賀)
    近赤外での3つの波長で撮像した画像から雲の高さを推定。
    その3次元ビューが公開されている。
    http://www.jpl.nasa.gov/galileo/europa/102897.html
    まるで高層から見下ろしているように表現されている。

  • 1997年のBAAの報告書(伊賀)
    BAAのRogers先生から送られた1997年中間報告の訳を配布。
    今シーズンの木星の特徴が良くまとめられている。

  • 1997年の木星観測集(伊賀)
    今シーズンの観測をWebページにまとめているが、活用法を考える。
    プリントしたものを製本して配布する(たくさんはできない)
    CD−Rに焼く(ハイブリッド版の作成が必要)

  • 中学理科の教科書(池村)
    惑星の満ち欠けの写真の注釈が誤っている。
    天体望遠鏡で見えるものを上下左右入れ替えている。

次回支部例会の予定

4月26日(日)13時 安達宅

事務局より(名簿・通信等)

名簿を更新する予定である。

新年会

堅田駅近くでちゃんこ鍋を囲み新年会。
その後、安達・薄出・伊賀で2次会。