月惑星研究会関西支部例会 報告

1998年 4月26日 13時〜17時

伊賀 祐一


支部例会が安達支部長自宅で行なわれました。今シーズンの木星観測が始まったばかりですが、活発な情報交換が行われました。
参加者は次の7名でした。なお、小嶋氏は今回初参加です。
参加者:安達、伊賀、池村、奥田、忍穂井、小嶋、吉田

(左から)池村・小嶋・忍穂井・奥田・伊賀・吉田・安達

自己紹介と近況紹介

小嶋孝弘(初参加)
23歳、昨年から和歌山県かわべ天文公園に勤務しています。

1m望遠鏡(三鷹、カセグレイン)で惑星のポジ撮影に取組んでいます。研究とかしたいのですが、昨年1年間は業務が忙しくて思うようにできませんでした。1年経ったので、惑星写真や冷却CCDカメラに挑戦したいと思います。

大学時代に天文ガイドに6点入選(木星のみ)しました(九州東海大学として3点)。


伊賀祐一:
今シーズンの木星スケッチは5枚です。前身の月惑星研究会大阪支部のメンバーでもありました。現在は関西支部のWebの運営を行っています。もっぱらInternetサーフィンを楽しんでいます。97年の木星観測のまとめを安達氏と行なっていますが、もうすぐできあがります。

池村俊彦:
天文を始めた頃は惑星が好きでやっていましたが、次第に彗星にシフトしました。自宅に半自作の31cm望遠鏡を設置してから惑星に戻ってきました。木星は大赤斑が写ればうれしいレベルです。

名古屋では惑星をやっている人が少ないので、Webで月惑関西を知り参加しました。

今朝もピコナで木星を撮影しました。現在まで3画像です。


忍穂井幸夫:
昨年から参加しました。木星の模様が動くのがうれしいレベルです。自分でもスケッチを始めたが、まだまだで、Webで他の人の観測と比べています。

小学生の頃に土星を見たのが始めで、95年に百武彗星を見たことから本格的に始めました。他の同好会にも参加して写真などを教えてもらっていましたが、月惑関西に参加してピコナでのデジタル・カメラに挑戦しています。スカイ・ウォッチャー98年5月号に初入選(オリオン大星雲)しました。現在木星スケッチ4枚です。


安達 誠:
年初から身体の具合が悪くて、ドームの整備もまだできていない状況です。

木星はまだドームでも見えていなくて、C8で移動しながらやっているので、観測が思うようにできませんでした。現在2枚ですが、みんなは何も見えないといっているが、結構見えてほっとしています。


吉田裕一:
今シーズンの観測はありません。今年は観測ができるかどうか分かりません。後輩の育成といっても最近の学生は継続的な観測は難しい状況です。

奥田耕司:
なかなか木星が山から出てくれなかったのですが、4/20に初スケッチを取りました。CCDでも挑戦しましたが、パソコンが壊れていて、現在修理中です。今年はカラーCCDにも挑戦したいですね。

会員状況
須田將昭:仕事の都合で不参加です。
浜野節子:就職しましたので研修で不参加です。
中村真三:仕事です。
永井靖二:仕事で忙しいので不参加です。

今シーズンの木星の状況

今シーズンの初観測は堀川邦昭氏の3月30日で、関西支部では伊賀祐一の3月31日でした。
まだ観測条件が悪く、詳細なことは分かりませんが、今シーズンの特徴をまとめました。
●大赤斑の後方のSEBが淡い。
池村さんの4/26の画像(ω2=91.6)。 SEBが淡くなっていて、1993年のSEB撹乱前の様相になっている? 早くSEBが淡くなってくれないかな
●大赤斑前方のSEBZのω2=0ぐらいに濃化部あり。
4/4 安達、4/10 伊賀、池村。
M.Adachi
1998/04/04 20:18(UT)
ω1=236.4 ω2= 38.0
Y.Iga
1998/04/10 20:30(UT)
ω1=267.3 ω2= 15.7
T.Ikemura
1998/04/10 20:19(UT)
ω1=260.6 ω2= 9.0
●NEBnのBarge/Notchは健在。
T.Ikemura
1998/04/11 20:19(UT)
ω1= 58.0 ω2=158.8
【右図】
NEBnのCM前方のω2=140付近に1997年に観測されたBargeが写っている。


K.Okuda
1998/04/19 19:40(UT)
ω1=216.5 ω2=256.5
M.Adachi
1998/04/19 19:55(UT)
ω1=225.7 ω2=265.5
Y.Iga
1998/04/19 20:10(UT)
ω1=234.8 ω2=274.6
Y.Oshihoi
1998/04/19 20:17(UT)
ω1=238.2 ω2=277.9

【下図】
1997年に見えていたBarge-Notch-Bargeの3連構造が今年も見えている。

ただし、奥田・安達の観測ではNotchはNEBnのGapのように見えている。 伊賀・忍穂井の観測では後方のBargeのみが見えている。

安達のCMTからGap ω2=258、Bargeω2=271



●昨シーズンのSTBの形状
これまでSTBsは見えなかったと理解していたが、HSTの97/09/20の画像で見えていた
●FAが大赤斑を通過した(1997年11月)のでSTBに変化が起こるかもしれない

論文のまとめ

河北氏から紹介された1993年のSEB撹乱の論文について前回の解説の続きを行った。
	F.Moreno, A.Molina, and J.L.Ortiz
	"The 1993 south equatorial belt revival and other features
	in the Jovian atmosphere: an observational perspective"
		Astron. Astrophys. 327, 1253-1261(1997)

  • 日本語訳を元に解説(伊賀)
  • 1993年のSEB撹乱の状況報告(天界から)
  • 1993年の撹乱の観測から
    安達 誠 スケッチ
    奥田耕司 スケッチ
    池村俊彦 写真
  • 周辺減光でも見える模様は高空の模様であることが分かる
  • これから起こるであろうSEB Disturbanceの参考になる
  • 撹乱発生時の暗柱の位置には、もっと前にstreakが存在し、すべての波長で暗いので、眼視でもわかるはずである。
  • 周辺減光の中でも明るく見える現象はEZのPlumeなどがあった。
  • 異なる波長で撮影したデータは解析に有効である。

その他

  • 関西支部のWebの状況(伊賀)
    今シーズンの木星観測報告を公開してからアクセスが増えている。
    最近は海外の検索エンジンがアタックしているので、海外からのアクセスが半分ぐらいになっている。
    英語でのWebページが必要である。

  • 他の惑星のWebページ(伊賀)
    最近、金星セクションとして浅田・池村の画像を公開している。
    他にも水星、天王星、海王星、冥王星などもカバーしたいので、観測情報を送って欲しい。
    いずれは、1950年代の月面スケッチも公開できるようにしたい。

  • 1997年の土星観測(安達)
    昨シーズン後半の土星観測は画像のみである。
    浅田、奥田・池村

  • PLANET-B支援観測(安達)
    1998年夏に打ち上げ予定の火星探査衛星PLANET-Bの支援観測として、火星共同観測が行われている。
    西はりま天文台の時政さんが運営していて、飛騨天文台なども参加している。
    関西支部からも火星観測情報を報告して欲しい。

  • 火星シミュレーション(池村)
    池村氏が作成した火星シミュレーションの動画の鑑賞会を行った。
    これらはWebでも公開しているが、今回は著作権のために未公開のホルストの惑星の音楽入りを楽しんだ。
    精密なシミュレーションに皆さん感心する。

  • 今年の木星会議(安達)
    1998年10月24/25日に東京主催で開かれます。
    会場は品川総合区民会館「きゅりあん」。
    参加費は一般3000円、学生2000円。
    関西支部からも参加・発表予定。


次回支部例会の予定

7月19日(日)13時 安達宅

懇親会

堅田駅近くの養老の瀧で。
参加者:安達・伊賀・忍穂井・小嶋。