戸棚にあった木星スケッチ

朝日新聞 1997年 1月27日夕刊から


 「興奮しながら、古いフランス語が読めるかどうか、不安になった」

 約300年前にも木星に小天体がぶつかったことを示す観測スケッチをパリ天文台で見つけた田部一志さん(40)=写真=は、感激をそう語る。横浜市に住むアマチュア天文家だ。

 17世紀の大天文学者カッシーニによるスケッチだった。10ページほどの古びた冊子は、肖像画や昔の観測機器が飾られたホールのガラス戸棚に眠っていた。シューメーカー・レビー第9すい星(SL9)が木星に衝突して以来、この種の史料を世界の研究者が追っていた。

 木星の大赤斑(はん)が約300年間続いているという定説に疑問を抱き、17世紀から18世紀にかけての資料を探している。科学機器メーカーを退社し、プラネタリウムの番組を作る会社を2年前に作った。「次は、18世紀の観測記録があるドイツへ言ってみようと思います」