STBnジェット気流暗斑群の大赤斑との会合 by Y.Iga


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STBnジェット気流暗斑群の大赤斑との会合 by Y.Iga


STBnジェット気流暗斑群の大赤斑との会合 by Y.Iga
●STBnジェット気流暗斑群の大赤斑との会合
Conjunction of dark spots on STBn jetstream with GRS

2010年9月中旬から、前進するSTBnジェット気流に乗る暗斑群が大赤斑後方に接近
する様子が観測されました。

STBの暗斑や白斑BAは、大赤斑の南方に接近すると、大きな影響を受けることはな
くて通過します。ところが、STBn暗斑は緯度がやや北寄りで、より大赤斑に近い
コースを通ることから、何らかの相互作用を予想しました。おそらくはSTBn暗斑も
大赤斑の南を通過していくだろうと考えられますが、大赤斑の周りの強力な気流に
とらえられて飲み込まれてしまうかもしれません。

さらに、大赤斑直後のSTropZには、大赤斑孔に沿って円弧状の暗部が出現していて、
もしかしてSTBn暗斑がこの暗部に沿って北向きに移動して、さらにSEBsジェット
気流に乗って後退するかもしれないと考えました(STropZの大循環気流)。

この中間報告は、9月11日から10月13日までの観測に基づくものです。

◆STBn暗斑は大赤斑南方を通過時に白斑が出現

(1) 大赤斑へのアプローチ【赤色矢印】
9月14日 前進するSTBn暗斑群の先頭の一つが、いよいよ大赤斑孔直後の注目すべき
     位置に到達しました。
9月16日 STBn暗斑は大赤斑孔内部に進んでいます。この時点で、STBn暗斑のSTropZ
     への反転の可能性は無くなりました。
9月17日 大赤斑に接するまでに接近しています。
9月18日 大赤斑の真南まで進み、STBとの間の狭い領域に達しました。

(2) STBn暗斑が白斑に変化して、大赤斑前方まで移動【赤色矢印】
9月19日 STBn暗斑が大赤斑の真南を通過した後で、暗斑の位置に突然白斑が出現し
     ました。おそらく暗斑が白斑に変化したものと思われます。
9月21日 白斑が大赤斑の周りの気流にとらえられて、次第に大赤斑の周りを反時計
     回りに移動しています。しかし、白斑は次第に大赤斑から離れています。
9月23日 白斑は大赤斑の前方(東)に進んでいます。

(3) 大赤斑前方から、再びSTBnジェット気流へ【赤色矢印】
9月25,26日 条件が悪いためか、白斑は見えません。
9月28日 白斑がBAの北に出現していて、大赤斑前方から再びSTBnジェット気流に
     乗っているように見えます。
9月29日 白斑はBAを通過して、さらに前進しています。
10月01日 白斑は暗いエッジに取り囲まれて、比較的見えやすいようです。

(4) 白斑消失と新しい白斑の出現【オレンジ色矢印】
10月01日 白斑の直後でBAの真北に、新しい白斑が形成されました。
10月03日 最初の白斑は2日には消失したようです。
     新しい白斑は丸くはっきりとしてきました。
10月06日 白斑はBAに対して少し前進しています。
10月08日 白斑は斜めのストリークに変化しました。
10月10日 白斑が変化したストリークは東西に伸びています。
     11日にも見えているかもしれませんが、13日には消失しています。

(5) 第2のSTBn暗斑【ピンク色矢印】
9月22日 暗斑は19日に大赤斑孔内部に入り、第1暗斑と同様に、大赤斑の真南に達し
     ています。
9月23日 暗斑は大赤斑の南を少し通過するまで追跡できました。これ以降は暗斑は
     見えなくなり、消失したようです。また、第1暗斑のように白斑に変化した
     痕跡も見られません。

(6) 第3のSTBn暗斑【黄色矢印】
9月23日 暗斑は大赤斑孔直後に達しています。
9月26日 暗斑は大赤斑の真南に達する前に、白斑に変化しました。
9月28日 白斑は大赤斑の真南に達しましたが、以降は消失したようです。

(7) 第4のSTBn暗斑【青色矢印】
9月29日 暗斑は大赤斑孔の後方に接近してきました。
10月01日 STB Remnantの白雲と接触して、暗斑が白斑に変化しています。
10月02日 STBに取り込まれた白斑は消失したようです。

(8) 第5のSTBn暗斑【水色矢印】
10月03日 暗斑は大赤斑孔の後方に接近してきました。
10月06日 暗斑は大赤斑孔に侵入し、東西方向に長く引き伸ばされています。
     その10時間後には、丸い暗斑として大赤斑の南に達し、その後消失
     しました。

(9) 第6のSTBn暗斑【緑色矢印】
10月08日 やや大きく緯度が少し北寄りの暗斑は大赤斑孔の後方に接近してきました。

10月10日 暗斑は大赤斑の南に達し、その後消失しました。
◆考察
今回の解析によって、STBnジェット気流に乗って前進する暗斑群が、大赤斑の南を
通過する際の奇妙な振る舞いを明らかにすることができました。それはこれまでに
ない高解像度画像が連続して得られたことによる大きな成果です。

この解析では、6個のSTBn暗斑の大赤斑通過を追跡することができましたが、大赤斑
通過には3つのバリエーションが観測されました。
(1) 暗斑は大赤斑の真南で白斑に変化し、大赤斑の前方へ進み、再びSTBnジェット
  気流に乗って前進しました(第1)。
(2) 暗斑は大赤斑の真南で白斑に変化しましたが、すぐに消失しました(第3、第4)。
(3) 暗斑は大赤斑の真南で消失しました(第2、第5、第6)。

大赤斑の前方からBAの真北には、薄い黄色の雲の領域が見られます。この領域は
さらに前方に伸びていて、STBnジェット気流の範囲を示しているようです。大赤斑
前方の領域には、淡い白色ストリークや薄暗いストリークがしばしば見られました
が、模様を同定することはできませんでした。もしかして、大赤斑の真南で消失し
た暗斑や白斑の痕跡かもしれません。

また、10月08日以降には大赤斑のエッジに移動する小さな暗斑が見られますが、
うまく同定できませんでした。これは大赤斑の渦にとらえられたSTBn暗斑の可能性
もあります。

STBn暗斑が大赤斑を通過する際に、BAの影響が考えられます。BAの真北には、何ら
かの乱流があるようで、それが10月01日に新しい白斑を形成させたのかもしれませ
ん。これが正しいとすると、BAが大赤斑にもっと近くに位置にあった時のSTBn暗斑
の通過に、BAが及ぼす影響があったかもしれません。


※謝辞
第1暗斑が大赤斑の真南を通過した後で、私は暗斑を追跡できなくなりました。暗斑
としてのしっかりとした斑点が見えなくなったことや、大赤斑前方に新たに白斑や白
雲が生まれたようで、暗斑の同定を難しくしていました。それでBAAのRogers氏に組
画像を送ったところ、すぐに暗斑が白斑に変化しているとの解説が届きました。
また、暗斑が大赤斑通過時に白斑に変化した同様な現象は、2008年の南熱帯に出現し
た"Baby Red Spot"の例を教えてもらいました。Rogers氏に感謝します。 
≪京都市山科区  伊賀 祐一≫

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