天文ガイド 惑星の近況 2001年3月号 (No.12)
伊賀祐一
2000年12月は、木星・土星が前月に衝を迎えましたが、季節風のために誰しも悪気流との闘いでした。それでも数多くのショットを得やすいデジタルカメラやデジタルビデオが観測に優位だったといえます。12月の観測数は、木星が23日間(のべ76人、195観測)、土星が10日間(のべ18人、34観測)、朝方の火星が8日間(のべ9人、14観測)、宵の明星の金星が1日でした。
木星の"BA"とSTB
STB(南温帯縞)に位置する白斑"BA"は、輝度は高くないものの相変わらずやや大きめのovalとして見られます(図1右矢印)。位置は第II系で12月2日UTに268.0度、12月29日UTに259.0度で、-12.3度/月でゆっくりと前進しています。約17度後方のSTBs(STB南組織)の小白斑も健在ですが、カッシーニ探査機の動画を見ると、反時計回りの渦である"BA"と小白斑との間のSTBには、時計回りの渦が形成されています。"BA"が合体する前の2個の白斑"BE"と"FA"の様子に非常に似ています。

STBは、"BA"の後方のII=280度付近に30度の長さの濃化部と、II=130度付近に30度の長さの濃化部が見られます。後者は1998年から観測されてきたSTBsの暗斑(#2)が経度方向に引き伸ばされて見えているものです。SSTB(南南温帯縞)は二重化された経度があり、またII=130度付近には3個の小白斑が並んでいて、それらの間の距離は次第に接近しています。

図1 2000年12月の木星

左:2000年12月22日UT 池村俊彦氏(31cmニュートン)
右:2000年12月 9日UT 伊藤紀幸氏(60cmカセグレイン)

●大赤斑とSEB

GRS(大赤斑)はII=75度に位置し、中心部に濃いオレンジ色のコアが見られます。先月号でお伝えしたGRS前方のSTrZ(南熱帯)の暗斑はII=44度で停滞しています(図1左矢印)。この暗斑が10月中旬に形成された時には後退していて大赤斑への接近が期待されましたが、12月に入るとほぼ停止してしまいました。このためにこの巨大なSTrZの渦とGRSとのめったに見られない会合現象は、2月上旬の予想から大きく遅れそうです。

SEB(南赤道縞)の明化は全く止まってしまいました。SEBs(SEB南組織)のII=160-320度には暗斑群が後退し、SEBn(SEB北組織)はII=60-280度で濃いベルトとなっています。GRS後方の擾乱領域(II=80-140)も穏やかな活動です。

●NEB以北

NEB(北赤道縞)は北側のNTrZ(北熱帯)へ幅を広げ、ほぼ拡幅期の活動に入りました。ベルトの中央になってしまったNEBn(NEB北組織)には、濃い赤茶色の斑点barge(バルジ)がII=33,143,190,210,307度にあります。また太いベルトの北縁になったNTrZには明るい白斑notch(ノッチ)がII=200度にあり、前後のbargeとともに典型的なbarge-notch-bargeの3連構造が目立ちます。

NNTB(北北温帯縞)には、11月末からII=350-30度に濃い濃化部が見られるようになりました。この経度には2000年7-9月までに赤暗いbar(バー)が見られていましたが、今回の活動と関連があるかもしれません。


図2 2000年12月8/9日の木星展開図
撮影/池村俊彦氏(名古屋市)、伊藤紀幸氏(新潟県)、永長英夫氏(兵庫県、25cmニュートン)(拡大)

■土星と火星

土星も精力的に観測が続けられていますが、白斑などの目立った模様は検出されませんでした。 火星は月末には視直径が5秒を超え、詳細な表面模様がとらえられるようになってきました(図3)。6月の準接近(視直径20秒)に向けて、観測準備を整えましょう。
図3 2000年12月29日の火星

撮影/池村俊彦氏
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