天文ガイド 惑星の近況 2004年10月号 (No.55)
伊賀祐一
2004年7月の惑星観測は、西空に低くなった木星観測が16人から27日間で222観測(そのうち海外は4人で35観測)で、2003-04年度の観測シーズンのほぼ最後となりました。火星は9月15日に合をむかえ、土星は7月9日に合となりましたので、観測対象になりませんでした。その他の惑星では、6月8日に内合を終え、明けの明星となった金星を海外の観測者2名から2日間で3観測、8月28日に衝をむかえる天王星を海外から4名から9日間で20観測の報告を受け取りました。

2003-04年の木星のベストショット
2003-04年の木星の観測シーズンは2003年9月から始まり、国内では2884観測、海外では1266観測、合計すると4150個もの膨大な観測が得られました。これらの観測には、眼視スケッチ・デジタルカメラ・デジタルビデオカメラ・冷却CCDカメラが含まれますが、約8割はWEBカメラ+Registaxによる観測であることは特筆すべきことがらです。

今月と来月の2回に分けて、国内のメンバー33名による木星観測のベストショットを掲載いたします。使用している機材は16cm〜35cmですが、気流に恵まれると素晴らしい高分解能の画像が得られることをご覧ください。


画像1 2003-04年の木星観測ベストショット(1)
撮影/月惑星研究会
今回は名前のABC順で、A-Mのメンバー16名の画像。(拡大)

2004年7月の木星
STB(南温帯縞)の白斑'BA'が、GRS(大赤斑)の南を通過する現象が観測されました。GRSの経度はII=95.5°にあり、'BA'は7月7日にII=100.0°(永長氏)でしたが、14日にII=95.5°(D.Parker氏)とちょうど真南に位置し、その後19日にII=92.1°(瀧本氏)、24日にII=89.0°(福井氏)と前進しています。6月初めに'BA'の直前に暗斑が出現し、そのままの姿でGRSを通過しています。特に通過後に'BA'の形状に変化は起こらなかったようです。

7月9日、SEB(南赤道縞)のII=18.6°(福井氏)にやや明るい白斑が出現しました。その後はこの白斑の活動は衰えたようですが、今シーズンのSEB北部は青みを帯びたベルトで、その中に不規則な白斑が入り乱れる様子が観測されてきました。合明けの新しいシーズンに、SEBがどのように変化しているか、もっとも注意する点でしょう。

北半球のNEB(北赤道縞)は、ほぼ全周に渡って拡幅が見られます。今シーズンはNEB内部を斜めに横切るrift(リフト)の活動によって、次第にNEBが北に幅を広げていて、5月に2/3程度であったものが、6月には全周に波及しました。7月もこの傾向は続いており、全周に渡って拡幅したNEBを見ることができます。


画像2 2004年7月の木星展開図
撮影/永長英夫(兵庫県、25cm反射)、D.Parker(米国、40cm反射)(拡大)

●第28回木星会議(国立天文台)

6月27/28日に、第28回木星会議が国立天文台で開催されました。全国から40名の参加者が集まり、2日間に渡り議論が行われました。国立天文台のご協力をいただき、例年とは異なった雰囲気で、とても有意義な会議でした。

6月27日(土)
・2003-04年の木星面のまとめ(堀川邦明、伊賀祐一)
・講演「シューメーカー・レヴィー彗星の木星衝突から10年」(国立天文台:渡部潤一先生)
・金星によるブラックドロップ現象の正体(中神輝男)
6月28日(日)
・木星の縞模様構造とアンモニア分布について(竹内 覚)
・緯度計測からの白斑マージに関する考察(伊賀祐一)
・1990年以降における大赤斑の縮小とその寿命に関する考察(堀川邦明)
・USB2.0 WEBカメラPBC003の紹介(福井英人)
・分科会:
撮像(平林 勇)
画像処理(伊賀祐一)
解析(堀川邦明)
次回は2005年9月に北海道旭川市で開催される予定です。

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